求人 NEW

3000坪の敷地に建つ
8棟のレストランで
温泉街をおいしく結ぶ

熊本・黒川温泉。

年間100万人が訪れるこの温泉街で、新たにはじまった食のプロジェクトが「Au Kurokawa(アウ クロカワ)」です。

およそ3000坪の敷地内に、8棟の店舗を新設。ほか7店舗に先駆けてオープンしたパンとコーヒーの店「Au Pan & Coffee」の求人では、山あいへの移住を伴う募集でありながら、多くの反響がありました。

今回は、残る7店舗のリーシングや店舗同士のつながりづくりなど、エリア全体の企画運営を担っていく人を募集します。

たとえば、日々の仕事はこんなこと。

「敷地内で小さな子が転んで、膝をケガしている」「店内の空調がうまく動いていない」

そういった、エリアのなかで起こる大小さまざまなトラブルに対応したり、ほかの店にも適用できるようにルールづくりを進めたり。

平常時にも、それぞれのお店や温泉街の旅館の人たちとコミュニケーションをとり、横のつながりをつくるマルシェやイベントの企画運営を通して、エリア全体のいい空気感を醸していく役割です。

さらにこのプロジェクトは、全国の温泉街が抱える課題解決のモデルケースになる可能性も秘めています。

経験は問いません。なぜこんなプロジェクトがはじまったのか、まずはその背景から知ってもらえたらと思います。

 

熊本県の北東部に位置する南小国町(みなみおぐにまち)。

その奥まった山あいに、30軒の旅館がひっそりと佇んでいる。ここが、黒川温泉。

平成12年までは、地元新聞が発行する「熊本県万能地図」に名称が記載されないほどの秘境だった。それが今では、年間100万人が訪れる人気の温泉街に。

「黒川温泉一(いち)旅館」というコンセプトのもと、バラバラだった案内看板のデザインを統一したり、黒川のすべての露天風呂に入れる「入湯手形」をつくったり。

地域全体をひとつの旅館と見立て、力を合わせて発展してきた。

そんな温泉街の中心から歩いて10分ほどの場所に、今回の舞台「Au Kurokawa」はある。

およそ3000坪の敷地に、8棟の店舗が並ぶ。阿蘇エリアらしい草原や色づいた木々が広がる風景のなかに、黒を基調とした建物群が映えている。

この場所の発起人は、旅館「奥の湯」の代表・音成さん。食やデザイン、建築など、さまざまな分野の人たちとチームを組んでプロジェクトを進めてきた。

いち旅館の経営者である音成さんが、なぜこんなプロジェクトを立ち上げたのか。

その背景には、旅館業の課題がある。

「今はどこの宿も人手不足で、従業員の数に合わせてお客さんをどれだけ入れるか決めています。必ず売っていない部屋があるんですね。ただ、素泊まりプランをつくろうにも、このあたりは朝晩に営業している飲食店がほとんどなくて」

「だったら、自分たちで地域共有のレストランをつくればいいんじゃないかと考えました」

一泊2食つきのおもてなしがスタンダードだった旅館業。

「泊食分離」をすることで、旅館スタッフの長時間労働を解消しつつ、より多様なお客さんに来てもらいやすくなる。地域の人も、近隣の食事の選択肢が増えてうれしい。

さらにこんなメリットも。

「ここは一日何万人も歩く場所じゃない。でも旅館からの送客があれば、競争の激しいまちなかで出店するよりも、安定的に売り上げを立てやすいと思うんです」

たしかに、事前にある程度の客数を見込めるのは飲食店にとってもいいことだ。

このプロジェクトがうまくいけば、全国の温泉地の課題を解決するモデルケースになると音成さんたちは考えている。

エリア全体の開業は、2025年の夏〜秋ごろの予定。

ひと足先に2024年9月にオープンした「Au Pan & Coffee」では、地域で育った野菜や肉などを使ったパンとコーヒーを提供。徳島県神山町で食の循環づくりを目指して活動する「フードハブ・プロジェクト」と連携しながら、この土地ならではの“地域のパン”をつくりはじめている。

残りの7店舗については、どういう状況なのだろう。

「入居してもらいたいなと思う飲食店をリストアップして、実際に食べに行って話をしている段階です。そのうち5軒は前向きに検討してくれています」

阿蘇名物の「あか牛」を扱う料理店や、天草の魚介を活かした洋食屋など。熊本県内のお店を中心にアプローチしているところ。

「なるべく地元の人と一緒にやりたいな、っていう気持ちがあって。全国各地、世界中からお客さんが来るので、この場所だから食べられるものを食べてほしいんです」

経験がないことにも次々とチャレンジしていく音成さん。「リーシングは大変だと聞いていたけど、本当に大変ですね」と笑う。

その行動力がプロジェクトのスピード感を生んでいる一方で、音成さんの負担がどんどん増しているのも事実。

今回募集する人は音成さんの右腕として、リーシングや施設管理、店舗同士のつながりづくりなど、Au Kurokawaの運営を現場で担ってもらいたい。

 

リーシングや施設運営にあたって音成さんをサポートしている、外部スタッフの荒木さんにも続けて話を聞く。

熊本市内で白青社というデザインファームを経営している荒木さん。建築や企画、グラフィックやWebのデザインなど、幅広く手がけてきた。

福岡で商業施設の開発をしていた経験を活かして、Au Kurokawaの立ち上げから関わっている。

今回チームに加わる人は、最初は荒木さんに伴走してもらい、いずれ独り立ちすることになる。

施設運営って、具体的にはどんな仕事なんでしょうか。

「事務的なところで言えば、家賃を集めたり、設備に不具合があれば工事業者を手配したり。あとは店舗同士をつなぐことも必要です。一言でいえば、番頭さんみたいな役割だと思うんですよね」

番頭さん?

「オープン前に挨拶へ行ったり、昼と夜の営業のはざまに顔を出したりすると、いろんな会話が生まれます。『寒いね』『今日はいそがしかった』みたいな雑談から、『海外のお客さんからこんなことを求められたんだよ』って話が出てくることもあって」

「その情報をほかの店とも共有して、エリア全体を成長させていく。まだ決まっていないですけど、月一の店長会議も必要かもしれません。『夏にビールフェスタをやりましょう!』みたいな企画提案も、番頭さんの役割になってくると思います」

魅力的なお店が集まれば、それだけでいいエリアになりそうだけど、より価値を高めるには“つなぐ人”の存在が欠かせない。

各店舗とコミュニケーションをとり、小さなトラブルや要望を拾い集め、一つひとつ対応する。

この日も、駐車場の精算機がうまく動作しなくなってしまい、音成さん自らサポートセンターに連絡する一幕があった。

日々そんなにやることがあるのかな? と思ったけれど、想定外のことも含めていろいろと巻き起こっていくんだろうな。

その対応の積み重ねが、エリア全体のいい空気感につながっていく。

「施設が平和なときには旅館さんをまわって関係を築いたり、SNSで発信したり。できることはいくらでもあります。あっという間に一日が過ぎて、仕事してても楽しいんじゃないかな」

荒木さんは熊本市内を拠点にしているため、これから入る人とはオンラインでのやりとりが中心になる。「困ることがあったら、気軽に電話してください」とのこと。

荒木さんが経験してきた福岡のまちなかの商業施設開発とは、環境がずいぶん違うので、ルールも一緒につくっていきたい。

「経験は問いません。ぼくも未経験から、実際の案件を通して吸収していくことばかりだったので」

日々いろんなことが起こるし、音成さんのもとで働いていたら、新しい取り組みがはじまるかもしれない。基本的に残業はほとんどなく、安定して働きやすい仕事のようだけど、変化に対する柔軟性はここで働くうえで大事な要素だと思う。

 

「音成さんの右腕、必要だと思います。音成さんがいそがしすぎると、やっぱり話が止まってしまったりするので。いい人が来てくれたら、ぼくたちパン屋も助かりますね」

そう話すのは、Au Pan & Coffee店長の菊池さん。

長く飲食業界に身を置いてきて、直近は阿蘇市にある人気のコーヒーショップで働いていた。

前回の日本仕事百貨でのAu Pan & Coffeeの募集を見て、「すごいことをやろうとしているな」と思ったそう。

「あまり意識されないけど、コーヒーも農業なんです。農家さんを守って、育てていく仕組みが世界的に広がっている。ここも同じように、過疎地域でつくったものをパンや料理にして売っていこう、そういうスタンスがいいなとシンプルに思いました」

9月末にオープンして、1ヶ月半ほど。どんな感触ですか?

「正直、もっとお客さんが来るのかなと思っていて。黒川温泉っていうブランドの強さ、建築もデザインもおもしろい人が集まってつくって、パンもおいしいし、とんでもないことになるぞと。でも蓋あけてみて、あれ? っていうギャップはありました」

「ただ、最初にバーンと流行ると、スタッフ側のオペレーションが間に合わなくなってお客さんにいやな思いをさせたり、商品も焦ってつくるとクオリティが下がって、評判がわるくなったりするので。じわじわ上がっていければいいのかなと思います」

残る7店舗は、春ごろから秋にかけて順次オープンを予定している。

お店が増えれば賑わいも増すだろうし、選択肢が増えることでいろんな層のお客さんに届きやすくもなる。何より、今回募集する施設運営の仕事が、Au Kurokawaというプロジェクトの今後のあり方に大きく影響するはず。

「どんなお店が入るかまだわかりませんが、おもしろい料理人さんだったら、うちのパンを料理にアレンジして使ってもらえたらいいような気もするし、コーヒーもオリジナルブレンドをつくったりできる。コラボできたらおもしろいですよね」

出身の愛媛・松山から、転々と引っ越しながら暮らしてきた菊池さん。

いろんな土地を見てきたなかで、このまちでの暮らしをどう感じているだろう。

「南小国のまちなかは、スーパーも保育園も小学校も、役場のまわりにぎゅっと集まっているので、生活の便はいいですね。九州のほぼ真ん中なので、福岡や大分へも行きやすいし、熊本市内へも2時間圏内。車があれば、娯楽には困らないと思います」

温泉街から車で15分ほどのまちなかには、音成さんが移住してくる人向けの住宅を建設中。南小国は空き家が少ないそうだけど、住まい探しの心配もなさそうだ。

それから、福利厚生で「奥の湯」の温泉に入り放題なのも魅力のひとつ。

なかには、お店に来て「うちはいつでも入っていいから」と言ってくれる旅館の方もいるという。

こんな場所にしていきたい。こういう企画があったら、おもしろいんじゃないか。

そうやって想像を膨らませることも必要だと思う。

だけどそれ以前に大事なのは、まず自分自身がこの地域に親しむこと。旅館やお客さん、いろんな人との縁をむすびながら、ここでの暮らしを楽しむこと。

Au Kurokawaといったらこの人、と顔が浮かんで会いに行きたくなるような。そんな人になってもらいたいです。

(2024/11/22 取材 中川晃輔)

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