※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
2025年夏、名古屋大学駅のすぐ近くに「東海国立大学機構 Common Nexus」略して「ComoNe・コモネ」が誕生します。
地面をめくったような屋根が特徴の建物。
広く人々にひらかれた公園のような、現代美術の美術館のようにも見える。
ComoNe は、学生や地域住民、クリエイターや研究者など、世代も領域も越えた人たちが集う共創の場。名古屋大学と岐阜大学を運営する「東海国立大学機構」を主体に、ロフトワークが施設の立ち上げやその後の運営といった建築以外のすべてを担当します。
今回は、クルーと呼ばれるComoNeを運営するスタッフの募集。
展示の案内やイベントの運営補助をしたり、訪れる人や会員同士をつなげたり。誰かの好奇心の種が育つお手伝いをする仕事です。アルバイトスタッフとして働きます。
なんだかよくわからないけれど、見ているとワクワクするし、気になってくる。そんな人におすすめしたい仕事です。
ComoNeはまだオープン前。
ということで、取材は渋谷にあるロフトワークのオフィスへ。
中に入ると、スタッフのみなさんが窓際のカウンターやソファなど、思い思いの場所でデスクワークやミーティングをしている。
「こんにちは」と迎えてくれたのは、Culture Executive兼マーケティングリーダーの岩沢さん。話していると温かさを感じられる方。
クライアントがつくりたい「なにか」に丁寧に向き合い、整理し、新たな価値を生みだしてきたロフトワーク。
行政、教育機関、企業など多様なクライアントとともに、Webやサービス、都市、空間、コミュニティ運営など、多岐にわたるプロジェクトに取り組んできた。
これだけ多様なクリエイティブを手掛けているのに、社内にデザイナーはいないそう。ディレクターが都度チームを組んで、各プロジェクトにあたっている。
そんなロフトワークのチームだから、生み出せる化学反応がある。
クリエイティブコミュニティ「FabCafe」、パナソニック クリエイティブミュージアム「AkeruE」、若手クリエイターやスタートアップを支援するプロジェクト「100BANCH」もロフトワークのプロジェクト。
「私たちの出発点は『すべての人のうちにある創造性を信じること』。その人が創造性を発揮できるかどうかって、環境によるところが大きいと思っていて」
「私はロフトワークに入る前、ITやビル管理の会社などを転々としていたときは、自分自身が創造性を持っているとは信じられませんでした。バタバタと転がってきた私だから、よりロフトワークって豊かな『土壌』に感じられるんです」
土壌、ですか?
「そう、土壌。植物がすくすく育つ豊かな土壌には、多様な微生物やミミズがいます。微生物が活発に動くことで栄養豊富な土になるし、ミミズの活動でふかふかな水や空気の通りやすい土壌になる」
「なにかをつくってみたいという欲求や課題感は、そこに蒔かれた種。結果としてどんなものが芽吹いて、実るかはわからなくても、『なにかができるかもしれない可能性の土壌』をどれだけ用意できるかが大切だと思うんです」
ロフトワークは、常に新しい価値の想像や未来に向けて活動をしている。前例のないものごとに取り組むには、戦略よりも可能性をたくさんもっておくことが必要なのかもしれない。
今回取り組むComoNeもそんな可能性の土壌のひとつになる。
どんな場所になるんだろう?
次に話を聞いたのはレイアウト事業部のディレクターの野島さん。
ロフトワークは東海国立大学機構からの委託を受けて、「何をつくるか?」というディスカッションからプロジェクトに関わってきた。
ComoNeの名称から、コンセプト、Webサイト、施設内のコンテンツやプログラム、家具やサインに至るまで。建築以外の部分をロフトワークが担当している。
「ComoNeのステートメントにある、『ここが未来かもね』。僕はこの言葉が気に入っていて」
「未来は、この場所に集う人たちの活動の延長線上にあると思っています。ComoNeはあくまで受け皿であり、土壌。集まる人たち自らの活動で未来をつくっていってほしいし、活動する人自身がそんな未来にワクワクしてほしい。『かもね』って、期待も希望もあるけれど、いい意味で背負いすぎてないんです」
建物の広さは、およそ7,000㎡。
屋根の上は広場になっていて、地下には3つの機能がある。
まずは、自身のアイデアややりたいことのアウトプットまでを支援する「Program」。たとえば自らの活動やプロジェクトを有識者に壁打ちできたり、ピッチイベントに参加できたり。ロフトワークが発案したものだけでなく、外部から公募した企画も準備しているそう。
活動を発信する「Museum」では、サイエンス、アート、テクノロジーといったさまざまな常設展示や企画展示、会員による屋台型展示を実施。大型スクリーンのあるホールやシアターは、イベントやプログラムでも活用され、さまざまなかたちのアウトプットに触れることができる。
そして多様な人たちをつなげる「Commons」。本棚の区画ごとに「棚主」がいるシェア型書店では月に一度の棚主同士の交流会があったり、つくる・味わうといった食の経験を共有し人と人が自然に交わるシェアキッチンがあったり。3Dプリンターなどの工作機器のスペースは地域の人が誰でも自由に利用することもできる。
一部の会員向けスペース以外は、誰にでもひらかれている。
この場所だからこそ、偶然となりに座った人や同じプログラムに参加した人と、なにかをはじめるようなことも起きるかもしれない。
野島さんは主に「Museum」部分、特に研究者とアーティストのコラボレーション作品の展示を担当している。
「アーティストや研究者って、世の中の当たり前に対して『?』を持って探求することを面白がっている人たちだと思うんです。そんな人たちの頭のなかを覗くような仕掛けができればと企画しています」
今は、「触覚を用いた情報学で自然と人の融合を探る研究者」「多様な人が感じるたくさんの現実をどのようにつなぐことができるかを模索する研究者」「数千年規模で太陽地球環境の極限状態に歴史文献と現代科学を通して迫る研究者」といった3人の研究者と、3組のアーティストによる展示を準備しているそう。
耳慣れない言葉がたくさんでてきて、こんな研究があるのかと驚く。
これはなんだろう?とちらっと覗くだけでも面白そう。その背景にある研究やアーティストのことを知ったら、もっと楽しい鑑賞体験になると思う。
「僕の理想とするComoNeのあり方は、研究者が熱心にプレゼンテーションやプロジェクトの展示をしているすぐ横でカードゲームをしている子どもたちがいる、みたいな」
「研究やアートと、日常的に出会える状態をつくっていきたい。どんな人にもひらかれていて、気軽に触れたり、学ぶことができるのが理想ですね。もちろん、研究でもアートでもない別のなにかでもいい。」
小さな好奇心の種が蒔かれる。人やコトとの出会いを栄養としてすくすく育てていける場をつくりたい。
そして育った芽が、今度は別の誰かを刺激し、力づけるような。
訪れる人は、次は発信する側としてComoNeを使って、誰かに好奇心の種を渡す側になってもいい。もっと大きく育ててみたかったら、名古屋大学や岐阜大学に入って研究してもいい。
どんな好奇心の種も、ここでなら安心して育てられるように、ふかふかの土壌にしていく。
ここで働く人は、まず利用者の声を聞いて、その人の好奇心を促進するような取り組みを一緒に考えてほしい。
まだ見ぬ「なにか」を期待してつくられるComoNe。ここでの働き方に、もう少し具体的なイメージを膨らませたい。
そこで紹介してもらったのが、レイアウト事業部のディレクターの守屋さん。
大学生のころにロフトワークが運営する「SHIBUYA QWS(キューズ)」でアルバイトを経験。2022年からは縁あって正社員として働いている。
QWSでの仕事と今回募集するクルーの仕事には、重なる部分があるという。
「わたしが見たQWSの求人には『渋谷スクランブルスクエアの15階、コミュニティスペースで何か新しいことはじめませんか?』って、ふわっとしたことしか書いてなくて。正直言うと、どんな仕事かはよくわかりませんでした(笑)」
「QWSで働く姿をイメージできなくて。それがかえって面白そうだなと思って応募しました」
イメージできないから面白そう?
「そうですね。それまで大手のアパレルで販売の仕事をしていて。基本的にはマニュアル通りに動くことが、正解とされていました」
「QWSでの仕事は、どれも正解がないから、自分で考えて動いていく必要があるもの。肩書きに関係なく、この場所をよくするためにみんなで考えるし、汗も流す。それが合っていたのかなって」
アルバイト時代に参加したのが、マニュアルのアップデート。
当時、基本的な業務のマニュアルとクレドはあっても、個々の事例への対応は細かく決められていなかった。そのため、実際に現場で働く人たちでマニュアルをアップデートしながら業務に当たることに。
「これも決めていいんだ!って、最初は戸惑いもありました。でもアイデアを出した自分が責任を負うことはないし、そのときの社員さんが親身になって私のやりたいことを聞いてくれて」
「編集やメディア業界に興味があったので、SNSの運用とQWSの会員さんのインタビュー記事を書くこともできました。アルバイトにも任せてくれる範囲が広く、とてもいい経験になったんです」
新しく入る人も、興味関心やこれまでの経験、スキルをComoNeでの業務に活かすことができる。自分の「好き」を伸ばして、将来に向けたトライアンドエラーを積むこともできる場所だと思う。
守屋さんは、どんな人がComoNeに向いていると思いますか。
「ここで自分なりの成果を出したい、何かを得たいと思える人が、働きやすいんじゃないかな。わたしの場合、QWSは経営者、投資家、アーティストなど、いろんな方が利用していて。『コミュニケーションの打席に立つ』ことが多くて、自分なりに試行錯誤をしていました」
「今でも目上の人に対して物怖じしないで質問や意見が言えるのは、QWSでの経験が活きているなって思います。体育会系みたいなことを言ってしまうと、量をこなすって大事ですね」
名古屋大学、岐阜大学の学生、職員。それに加えて、企業会員、地域の公共施設、美術館、地域のキーマン。もちろん近くに住む人たちも。
ComoNeは多くの人が日常的に出入りし、関わりあう場所になる。最初からうまくいかなくても、トライアンドエラーで最適な形を一緒に探していけると良さそう。
何が芽吹くかわからない。だから面白い。
新しい「なにか」のために一緒に手を動かして、芽吹いたときに一緒に喜べる。未来にワクワクする人と働けるとうれしいです。
(2025/02/13 取材 荻谷有花)