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少子高齢化・人口減少で、地域のコミュニティ機能が弱まるなか、持続可能なまちづくりに必要なことはなんだろう。
あそこに行けば、今日も誰かに会える。面白そうなイベントが開かれている。
思わず出かけたくなる魅力があれば、地域に住む人たちが心も体も健康に、そして幸せに暮らせるまちになるのかもしれない。
そんなまちを目指して、新潟・三条市を拠点に活動しているのが、NPO法人えんがわ。
地域に住む人が、広場や図書館などの公共施設へ「えんがわ」のように気軽に立ち寄り、思い思いの時間を過ごせるように。そして、まちににぎわいが生まれるように。
イベントの企画運営だけでなく、三条市内で活躍の場を探している個人や企業に向き合ってアイデアを形にしてきました。
今回は、ここで働く地域コーディネーターを募集します。
ミッションは、地域住民や企業、公共施設、コミュニティなどの魅力を掘り起こし、新しい取り組みを生み出すこと。
イベントの企画運営から事業相談まで、内容は多岐に渡ります。
地域おこし協力隊の制度を活用するため、任期は3年。卒業後はNPO法人えんがわのスタッフとして働くことも、独立して自分の生業をつくっていくこともできます。
東京駅から上越新幹線で2時間ほど。
北に進むにつれ、景色が雪で白くなっていく様子を見ていると、あっという間に燕三条駅に到着した。
車で10分ほど走り、「三.Me(ミー)」と呼ばれる複合施設へ。
1Fはシェアオフィス兼コワーキングスペース、2Fはドミトリーになっている。中をのぞくと、働いている人や談笑している人たちが見える。
迎えてくれたのは、NPO法人えんがわ代表理事の長野さん。
穏やかな口調で説明をしてくれて、なんでも話しやすい雰囲気がある方。
もともとは東京の広告代理店で働いていた長野さん。
「こんなものがあったらいいな」という誰かの妄想を、デザイナーや企業とともに商品化するプロジェクトに長年携わっていた。
独立して地元の三条市に戻り、家業に携わっていたころ、市が新たなまちづくりの構想を立ち上げた。
「『ステージえんがわ』という交流広場の建設が決まって。ソフト面を中心に、にぎわいを創出できる仕掛けを考えられないか、というお話をいただいたんです」
「広場の近くに昔通っていた小学校があって。過疎化の影響で、廃校になるかもしれないと聞きました。母校がなくなるのは寂しい、もう一度この地域を盛り上げたい。そう思って引き受けることにしたんです」
市から地域コーディネーター業務の委託を受け、NPO法人えんがわを設立。これまでさまざまなイベントを企画してきた。
たとえば、普段は入れない空き家を活用した「今日だけカフェ」の開催や、ステージえんがわ周辺での花植え、夏祭りで花火の観覧席の設営など。
オープンから9年が経ち、いまでは市民の憩いの場所になっている。
その結果を受けて、図書館等複合施設「まちやま」、歴史資料館「ほまれあ」といった施設管理を任されるように。
年間で大小あわせて300個ほどのイベントを企画運営。長野さんだけではなく、これまでに8名の地域おこし協力隊が在籍し、活動してきた。
市民をはじめ、ほかの地域おこし協力隊や地元の企業などから、「新たにこんなことがやりたい」と長野さんのもとにさまざまな依頼が来るようになってきた。
「みんな熱意を持っているんですが、やりたいという気持ちだけではうまく形にならなくて。アイデアを実現するためには、地域に住んでいる人たちの協力が重要なんですよね」
たとえば、刃物メーカーから市場開拓の相談を受けたとき。ヒアリングを重ねると、ハサミの一部分を使うことで錠剤を半分に割ることができることに気づいた。
「本人は気づいていませんでしたが、これはすごく便利だと思って。地元の職人さんの力を借りて、錠剤専用のハサミをつくりました。食品工場だけでなく、製薬会社との新たな取引が生まれて、メーカーさんにとても喜んでいただけました」
「そこで、やりたいことを地域の資源と適切に結びつける人の必要性を感じて。地域コーディネーターの募集をはじめることにしたんです」
新しく地域コーディネーターになる人は、まずはNPO法人えんがわの企画したイベントの運営に入り、地域の人と関係性を築いていく。慣れてきたらコーディネーターとして、地域の人や企業などと関わっていく予定。
加えて飲食・造園・文化芸術の3つの分野で協力隊を募集しており、興味があれば、任期後の基盤づくりとしてそれらの技術を学ぶ機会もあるのだそう。
たとえば、飲食部門ではステージえんがわのなかに併設されている飲食店を拠点に活動。料理の技術や飲食店の運営ノウハウを学び、食を通じたコミュニティづくりを目指すことができる。
「コーディネーターとして、個人から企業までいろんなクライアントさんを担当してもらいながら、専門的な技術も身につける。その経験は、3年後に自分自身の生業をまちでつくっていく土台にもなります」
地域コーディネーターの仕事をきっかけに、三条市で生業をつくって生活している先輩たちもいる。
「こんな場所があったらいいな」と架空の喫茶店のイメージをSNSに投稿していた人が、空き家を借りて実店舗を開いたり、出版の技術を学び、個人で書籍をつくれる本屋を立ち上げる人がいたり。
新しく協力隊になる人も、任期中に技術を学び、まちの人と触れ合うなかで自分のやりたいことを形にしていくといい。
「自分がやりたいことを形にするためにも、まずは地域のみなさんのために働くことが大切です。地域のみなさんがやりたいことも大切にしながら、これはいいなって思ったことに対して、一生懸命に力を注いでいける人と巡り会えたらうれしいですね」
次に話を聞いたのは、入職して5年目の西陸さん。
新しく入る人は、西陸さんのもとで業務を教えてもらいながら働くことになる。
東京の大手小売業で接客販売、社員教育の仕事をしていた西陸さん。
地元で地域に関わる仕事を探したところ、えんがわの募集を見つけて協力隊として入職。卒業後はNPOえんがわの職員として働いている。
「私が協力隊として入った2年後に、図書館や科学教育センター、鍛治ミュージアムが一緒になった複合施設『まちやま』のオープンが決まっていて。まちなかがよりにぎわうためにイベント企画を担当しました」
すでにたくさんの先輩が活動していることもあり、協力隊や「えんがわ」の知名度があって関係がつくりやすいそう。
「イベントに参加してくれた地域の方が、私の顔を覚えてくれて、すぐに知り合いができました。近くの温泉を教えてくれたり、ときには美味しいお惣菜を分けてくれたりすることもありました」
そういった日常の会話のなかから、イベントの企画が生まれることも。
西陸さんが印象的なものとして紹介してくれたのが、「そば心の会」。
「近くの工務店で働く大工さんに、ステージえんがわの建物の一部を直してもらって。そのときに趣味で『そば心の会』という蕎麦打ち仲間がいることを教えてくれたんです。それで、ステージえんがわで蕎麦打ち体験をしませんかと声をかけさせてもらいました」
「仲間の方が蕎麦打ちの道具を貸してくれたり、近くの畑で野菜を育てている人がネギをくれたりして、みんなでイベントをつくりあげました。いまでは子どもたちも楽しみにしている定番のイベントになっていますね」
ほかにも、刺繍のワークショップを開いたり、カリンバと呼ばれる小さな手持ちピアノのワークショップを開いたり。定番化したイベントを楽しみにしている地元の人も増えてきた。
具体的には、どのように仕事を進めていくんですか。
「まずは毎日何かしらのイベントがあるので、運営のお手伝いに入ってもらいます。企画から当日運営、次回開催までのフォローに入って、一連の流れを掴んでもらって。顔を知ってもらうために、私や長野と一緒に、地域の人に話を聞きにいくこともありますよ」
「3年後を見据えて、ご自身の専門分野を決めて地域コーディネーターとして活動することもできます。どんなことをやるにしても地域の人と会って、話を聞くことが大切なので、まずは既存の仕事をやりながら覚えていってほしいですね」
西陸さんは、どんな人が向いていると思いますか。
「たくさんの人と関わるので、プロジェクトごとに仕事の進め方が明確に決まっていないこともあって。どのように進めていけば良いか、最初は悩むかもしれません」
「そのぶん仕事の裁量が大きいので、こうした方がいいんじゃないかっていう自分の考えも形にしやすい。目の前にいる人の魅力を発掘してどう活かすか、考えることが好きな人には向いていると思いますよ」
次に紹介してもらったのが、三浦さん。「三.Me(ミー)」でオフィスを借りている移住定住の支援をしている会社で働いている方。
住まい探しから、移住後は三条市に住む人の紹介まで。今回入る人の幅広くサポートをしてくれる。
「いま三条市では、移住世帯に大きい戸建て住宅を4万円で貸しているんですよ。そのPRとして、さっきまで某Youtuberの人とコラボ動画を撮っていて、Tシャツのまま来ました(笑)」
今では三条市のキーマン的存在になっている三浦さん。茨城が地元で、エンジニアとして働いていた。
もっと自由に働いて暮らしたいと、2年前に三条市へ移住。当初は知り合いもいなかった。
「偶然、居酒屋で知り合った地元の方に相談したら、いくつか会社の社長さんを紹介してくれて。はじめましての人にそこまですることって、普通ないじゃないですか」
「三条は日本一社長が多いまちと呼ばれていて、いい意味でおせっかいというか、挑戦を応援してくれる人が多いんですよ。家の困りごとも相談できて、すぐに生活には慣れましたね」
ほかにも、協力隊同士で集まるコミュニティなど、単身でも入って行きやすい環境ができている。
「現在は、40名以上の協力隊が活動しています。ステージえんがわで作業をする人も多いので、顔をあわせる機会は多いですね」
「三条市では、NPOえんがわのほかにも様々な協力隊を募集しています。もし三条に興味を持ってくれたら、ほかの職種も検討してみてください。ピンとくる仕事との出会いがあるかもしれません」
3年間で、いったいどれくらいの魅力をまちに生み出せるだろう。
地域の人と信頼関係を築いて、みんなのやりたいことを形にしていく。
地域の人とともに自分の生業をつくり、まちのにぎわいの一つとして生きていく。
そのたしかな手応えを感じられる仕事だと思いました。
(2025/01/16 取材 櫻井上総)