クライアントが持つイメージを実現できるよう、企画を一からつくりあげてみたい。
繁忙期は一生懸命に、余裕のある時期はしっかり休んで、メリハリをつけて働きたい。
そう思ったことのある人に紹介したい仕事があります。
株式会社学会サービスは、医学会の企画運営を手がける会社。
医学会とは、病院や大学に勤める医師や医療従事者が、日々の研究や臨床の現場で得た知見を発表する場です。
100人程度の研究会もあれば、1万人以上が参加する規模の学会となることも。学会を主催する先生にとっては集大成であり、まさに「晴れ舞台」。
その「晴れ舞台」を裏方でプロデュースしているのは、元塾講師や元販売店員など異業界から転職してきた人たち。
今回はその一員となる営業と、営業アシスタントを募集します。企画から当日の運営まで、医学会が円滑に進むよう支える仕事です。
すべてのスタッフが未経験からのスタート。医療の知識も、場づくりの仕事も経験は問いません。
なぜ医学会の運営という仕事に就いたのか。まずは先輩たちの話を読んでみてください。
学会サービスのオフィスは、渋谷駅から代官山へ向かう一歩手前、鶯谷町にある。
渋谷のスクランブル交差点を通り過ぎ、駅から離れるにつれて静かな通りが続く。
目印は桜丘郵便局。目の前の信号を渡るとすぐ、4階建てのマンションが見える。
この101号室がオフィスだ。
医学会の運営に携わる仕事。どんな人が働いているんだろう。
そう考えながらチャイムを鳴らすと、営業担当の中本寛二(ひろつぐ)さんが迎えてくれた。
「こちらにどうぞ」と、奥の会議室に案内してもらう。
席に着くと、「日本仕事百貨の編集の方は何人いらっしゃるんですか?」と寛二さん。
「へえ、そうなんですね。それでそれで… あ、逆に質問ばかりしてしまってすみません(笑)」
こちらのことを知ろうとたくさん質問してくれて、なんだか気持ちがほぐれる。
場が和んだタイミングで話を聞く。
学会サービスは、寛二さんの祖父が1973年に立ち上げた会社。今年の4月から2代目の明さんが代表を退任し、兄の丈也さんが新しく代表に就任した。
「祖父が創業したころは、医学会の運営をする会社はほとんどなくて。当時は家族で経営していました。今でも規模感はあまり変わらず、社員数は12名、そのうち8人が営業を担当しています」
お医者さんが日々の研究や臨床で得た知見を発表する、医学会。
内科や外科など診療科ごとにさまざまな学会があり、それぞれの診療科の第一人者である先生が医学会を主催している。
「医学会当日に向けて、2〜3年かけて準備することが多いです。テーマやプログラムは主催の先生方が中心となって決めるので、それを基に私たちは、当日参加者へ配布する資料作成や案内の連絡など、当日の運営に必要な準備をしていきます」
創業以来、学会サービスではさまざまな医療領域の案件を運営してきた。参加者数が100人程度の研究会から1万人以上にのぼる医学会まで、全国で年間60〜70件ほどを手がけているそう。
100人ほどのスタッフを抱えて運営する会社もあるなか、学会サービスでは小規模体制を続けている。
「顔の見える会社でありたいと思っていて。ワンチームで動ける少人数の体制で医学会の運営に向き合ってきました」
「少人数であるからこそ、開催エリアに関わらず、同じメンバーが運営を担当して、過去の経験や慣習を次の学会に還元できるところが強みです」
参加者数が100〜1000人程度の中小規模の学会であれば、営業と営業アシスタントのペアで担当することが多い。それ以上の大きな案件は、主担当に加え、数名がサポートに入る形で取り組んでいく。
メンバー同士で直接知見を共有できる規模感のため、スムーズな運営やクライアントの満足感にもつながっている。
「私たちは業界のなかで小規模な会社。それでも50年ぐらい続いてきた老舗でもあります。これまで担当したクライアントさんからは、『また次の学会もお願いします』と継続的にご依頼いただくことも多いです」
加えて、学会サービスではどんなスケジュールや業務量で仕事をしたいのか、裁量権限はそれぞれの社員に委ねている。
「すべてのご依頼を受けるのではなく、丁寧な仕事ができる範囲内で引き受けていて。たくさん案件を持つ人もいれば、そうでない人もいる。個人のペースに合わせて仕事ができる環境づくりも大切にしています」
休むときは休む、頑張るときはぐっと集中して働く。長くこの仕事を続けてきた老舗だからこそ、メリハリをつけて働ける体制が整えられている。
「僕、槇原敬之が好きで。この間コンサートに行ってきたんです。ここ最近のいそがしさや疲れを忘れるくらい、人の心を取り戻した気分です(笑)」
冗談まじりに話すのは、入社18年目、営業担当の小田さん。前職では塾講師を務めながら、新しい校舎を立ち上げる仕事もしていたそう。
これから入社する人は、まずは小田さんやほかの営業部の先輩につきながら、学会運営の流れを覚えていく。
「今は2028年に向けた学会の準備をしています。ひとつの学会を開催するのに2〜3年は費やすので、業務を一通り覚えるまでに3年くらいかかりますね」
「A学会を進めながら、B学会の進捗も把握して、C学会を立ち上げなくちゃいけない。頭を常に動かす必要があるんです。なので、マルチタスクの得意な人が向いていると思いますね」
ちょうど大きな案件を任されるようになった入社5年目に、印象的な出来事があったという。
全国規模の医学会でのこと。会場は新潟、参加者5000人の大規模な医学会だった。
「学会長の先生が、僕たちにもとても丁寧に対応してくださって。なんとしてでもいい学会にしたい、そんな気持ちで準備を進めていたんです」
懇親会では花火を上げるため、業者を手配したり、消防関係に許可取りをしたり。2年前から準備を進めていく。
「学会を閉会するとき、会長の挨拶があるんです。先生にとっては、人生の集大成くらいの場面。はじめは感極まってなにも話せなくて、30秒ほどして『感無量です』という言葉が出てきた。ほんとうに感動しましたね」
最後の挨拶では、準備に関わった大学の医局員の人たちへの感謝で締められることが多い。でもその先生は「今回の企画運営は学会サービスさんにお世話になりました」と、名前を挙げてくれた。
「われわれは黒子的存在なので、表舞台で名前が出てくることってほとんどないんです。この仕事をしていてよかったなと思った瞬間でした」
裏方として晴れ舞台をつくる仕事。直接スポットライトが当たることは少ないのかもしれないけれど、長い期間、携わったからこそ見える景色があると思う。
せっかくなので、オフィスをのぞかせてもらうことに。
広めのワンルームに、デスクの島が4つほど。
パソコンに向き合う人もいれば、お弁当を食べている人もいる。立ち話から打ち合わせに話が膨らんでいる人も。壁には2026年やその先のカレンダーが。
「にぎやかですよね。仕事の話もしますし、ちょっとした雑談もしやすいですよ。小田は最近まで多忙だったので、コンサートに行けたと聞いてほっとしました(笑)」
そう話すのは、入社3年目の瀧口さん。学会サービスのなかでは一番社歴が浅く、今回入社する人にとって身近な先輩だ。
最近まで200人程度の小規模の学会を担当してきたけれど、今年から大きな学会も担当するそう。
前職は、ジュエリーショップの店舗スタッフ。11年間勤め、うち後半の6年は店長を任せられていた。
まったく異なる業界。どうして学会サービスに転職を決めたんでしょうか。
「前職での経験が大きいですね。店頭に立っているとき、あるお客さまから『既製品ではなくて、一から全部商品をつくりたい』とご要望いただいたことがあって。お客さまのお話を聞いて形を考えたり、デザインにおこしたり。1年かけてジュエリーを完成させたんです」
「そのとき、私がやりたいことってこれだなって。お客さまとじっくりとお付き合いしながら、
希望を叶えられるものを一からつくりあげていく。そんな仕事をしたいと思いました」
そんなとき、たまたま求人サイトで見つけたのが学会サービスだった。
「学会の企画運営と一口に言っても、たくさんの仕事があるんです。その分、いろんな分野に関係性が広がっていく仕事だと思います」
講演会場はいくつ必要か、各プログラムはどのようなタイムラインで進めるか。やりたいことと予算のバランスは取れそうか。
大枠が決まったら、スポンサーとなる企業を集めたり、ホームページやパンフレットをつくったり。
当日のお弁当の手配や、照明・音響を調整する業者の手配など。学会とあわせて懇親会やパーティなどが開かれることもあるため、クライアントから要望があれば、余興で芸能関係の人を呼ぶことも。
みずからが手を動かすだけではなく、協力会社やスタッフをディレクションし、ともに「晴れ舞台」をつくっていく。
新しく加わる人は営業のアシスタント業務から始めて、先輩について回りながら学会の流れを覚えていく。
細かなマニュアルがあるというよりは、OJTで実践的に学んでいくスタイル。話しやすい雰囲気を持つ人が多いので、気になることはどんどん聞いていけるといいと思う。
「お医者さんと仕事したこともなかったので、最初はメールひとつでもすごく緊張しました。
一度、変にかしこまりすぎちゃって、膨大な文章量のメールを送ってしまったことがあって。先生から『何が言いたいかわからない』ってお返事をいただいたんです」
「患者さんの治療や研究もあって、先生はいそがしい。ずっと学会のことばかり考えているわけじゃないので、端的にわかるようにする必要があるんだなと気づきました」
お医者さんによっても、営業の担当者によっても、コミュニケーションの取り方は少しずつ異なる。それぞれに流儀があるので、いいところは真似して、自分なりの方法をつくっていけるといい。
「仕事の進め方も仕事量の調整も、一人ひとりに任せられているからこそ、自分のことはしっかり自分で管理できる人が向いていると思いますね」
どの方もお話し好きで、好奇心旺盛。やわらかな人柄が印象に残った取材でした。
一人ひとりが自律して働いている格好よさがある。内側から染み出すありようが、きっと仕事の場でも活きているんだと思います。
知識や経験は不問。人と場をつくることに喜びを感じる人が働いてくれたらうれしいです。
(2024/12/17 取材、2025/05/14 更新 大津恵理子)