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クラフトプレス
心を刷る
本を支える専門技術者

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「これ、おもしろくないですか。スタジアムのビジュアルブックで、本自体がスタジアムのような円形状になっている」

「こんなに分厚い本、つくるの大変なんですよ。アイデアをもらったときはむずかしそうと思いましたが、だからこそきちんと向き合って本をつくりたいと思いました」

本は、その人らしさを表現する方法の大きなひとつ。

色、かたち、素材、見た目。つくり手の気持ちが、純粋なままに紙のうえにあらわれたもの。

そんな本をつくっているのが、藤原印刷株式会社です。

長野県松本市。この地で、70年にわたり本をつくり続けてきた藤原印刷は、学術書やアートブック、ZINEなど、多種多様な印刷物を手がけてきました。

その多くが、ここでしか生まれない特別な一冊ばかり。

それは、他社が「手間がかかる」と敬遠するような、チャレンジングな仕事もかたちにしてきたから。

職人技でこだわり抜いた本づくりと、クラフトビールのように、つくり手の個性や情熱を大切にする。その姿勢から、藤原印刷は自分たちの本づくりを「クラフトプレス」と定義しています。

今回募集するのは、DTPオペレーター。

クライアントの原稿や修正指示をもとに、専門ソフトで印刷用のデータをつくる仕事です。

細部にこだわり、読みやすさと美しさを追求していく仕事は、まるで本の「設計図」を描くようなもの。

ソフトの操作は研修や実務を通じて徐々に覚えられるから、未経験でも大丈夫。

あわせて、東京支社の経理事務スタッフも募集します。営業や松本本社と連携し、請求書作成や入金管理を担うほか、備品管理や事務所の環境整備など、幅広い仕事に携わります。

掃除や整理整頓が好きな人や、主役というよりも脇役として、チームを支えることに喜びを感じる人が向いているはずです。

 

新宿から特急あずさ号に揺られることおよそ2時間半、松本駅に到着。駅から車で10分、電車なら二駅の場所に、藤原印刷の本社工場はある。

3階でDTPオペレーターがデータをつくり、2階で画像補正と製版、1階で印刷。データが上から下へと流れ、本へとかたちづくられていく流れがよくわかる。

大型の印刷機がせわしく稼働するのを通り過ぎ、打ち合わせ室に入ると、色も形も多様な書籍が並ぶ本棚が。

「ここはクライアントさんが本番の印刷を待つ場所。待ってくださっている間に、ぜひ僕らのものづくりを見て、新しい本の出会いや、次の作品のヒントにしてもらえたらと思って」

そう笑顔で迎えてくれたのは、専務取締役の藤原隆充(たかみち)さん。向かい側に座っている、くしゃっとした笑顔が似合うのは、現在DTPオペレーターを務めている飯沼さん。

飯沼さんの趣味が、マラソンとのこと。僕も去年フルマラソンを走ったことを伝えると、興味深そうに次々と質問してくれる。

まずは隆充さんに、藤原印刷について話を聞く。

「藤原印刷の歴史は、僕の祖母が、1955年にタイピストとして独立したことからはじまりました」

そこから出版社向けの印刷業を基盤に、事業を拡大してきた。

現在は隆充さんのお母さんが代表取締役社長、隆充さんが専務取締役、弟の章次(あきつぐ)さんが東京支店長を担っている。

隆充さんが入社した2008年当時、出版業界は活字離れや書店の減少で、状況は右肩下がりの真っ只中。

「新卒を採用しても定着せず、電子書籍の新規事業も収益化が難しい。いろいろ挑戦しては、うまくいかないことばかりでした」

漠然とした不安を抱えていた隆充さんに、転機が訪れる。それは、弟の章次さんが東京で耳にした、あるデザイナーの声だった。

「『印刷会社が理由で、つくりたいものがつくれない』。どうしてそんなことが起きてしまうんだろうと動いたのが、『N magazine』の再版でした」

N magazineは、当時大学生だった若者が、プロのカメラマンやモデルを起用してつくったファッション雑誌で、1000冊が完売するほどの話題を呼んだ。

しかし、制作者は他社で製作した初版の仕上がりに落胆していた。

そこで章次さんが再版を提案。服の繊維感や色味を鮮明に再現し、生まれ変わったような仕上がりに。

「高品質なカラーの仕事はこの時がはじめてで。リスクをとってチャレンジしたことが転機になりました」

この経験から、「難しい本なら藤原印刷」と言われるようになり、評判は出版業界を飛び越え、さまざまなデザイナーやクリエイターから支持を集めるように。

ZINE、リトルプレスといった個人がつくる本。なかには16ページごとに異なる紙を使ったアートブックや、表紙に段ボールを使用した本など。

規模やジャンルにしばられない、多様な本をつくってきた。

「どんな難しいオーダーでも、『NO』とは言わない。紙の種類、インク、製本方法まで、どんな本にしたいかをクライアントと一緒に考えていきます」

「手間とお金がかかっても、面白そうだからやってみる。誰かのやりたいことの、選択肢のひとつでありたい」

人の個性や想いをおもしろがる、あたたかな目線。結果的に、藤原印刷でしかつくれない本が生まれてきたんだと思う。

「僕らは、心で刷ると書いて、“心刷”をいまも大切にしています。一文字一文字に心を込め、一冊一冊を大切にしながら本をつくるという意味で。創業者が残してくれた言葉です」

当時はデータ入稿などはなく、手書き原稿には赤字がぎっしり。なかには読むことさえ難しいゲラを、タイピストが熱を込めて、一文字一文字原稿を打ち込んだという。

「まさに“心刷”を体現する仕事が、今回募集するDTPオペレーターです」

「表舞台には出ないけど、品質を支える土台となる。圧倒的な細やかさとホスピタリティが求められる。大事なのは実務能力の高さよりも、人を想えるいい人であることかな」

それを象徴するのが、藤原印刷で数十年前から続く「青字」という取り組み。

DTPオペレーターは、クライアントの赤字修正に従うだけでなく、誤字や改善点を青鉛筆で書き込み、原稿を返す。

書籍のあとがきで、著者や編集者から『細かいところまで根気強くサポートしてくれた』と、DTPオペレーターを名指しで感謝されたこともあった。

「スピードとコストの競争に巻き込まれないためにも、心を配り提案することや、違和感があったら一度立ち止まって確認するような、緻密さや丁寧さを大切にしています」

製造業であり、サービス業のような。藤原印刷での本づくりは、技術を磨くことはもちろん、つくり手の想いに寄り添ってかたちにしていく、そんなやりがいが大きいはず。

「仕事というより、もっと言えば人間性に近い部分。それが心刷の根っこであり、それは、生き方働き方に間違いなく活かせるものがある。そんな気持ちに共感してくれる人が仲間になってほしいです」

 

ここからは、DTPオペレーターの飯沼さんにバトンタッチ。3年前に藤原印刷へ入社した方。

飯沼さんは大学まで新潟で過ごし、就職を機に東京や埼玉で働いてきた。飲食店で5年、図書館で8年働いた経験を持つ。

「長野へ移住したのは、僕のパートナーが、安曇野の景色や雰囲気を気に入って。山に囲まれて川のある環境が、なんだか落ち着いたんですよね」

「図書館で本に囲まれていたから、本に関わる仕事がしたいと思っていたところ、知人から藤原印刷を教えてもらって。ホームページを見たら、70年の歴史ある会社なのに、つくる本やその姿勢のギャップが面白くて。直接問い合わせフォームから連絡しちゃいました」

藤原印刷のDTPオペレーターは、全体で約25人。扱う本の種類によってチームが分けられている。

「僕のチームでは、学術書を中心としたまじめな本を扱っています。難しい文字や数式だらけで、大学の教授が読むようなガチガチの本ですね」

最近手がけているのが、経済の仕組みを数式や指標で解説する学術書。

実際にクライアントから届いた原稿や赤字修正を基に、専門のソフトでレイアウトをつくっている様子を見せてもらう。

1ページに何行、1行に何文字、フォントの大きさ、ページ番号など。ふだん本を読んでいても意識しない、細かな設定たち。

たしかに、すこしの位置や大きさを調整するだけで、読み心地が格段に良くなる。

「数式の1文字のズレで、読みやすさだけでなく、本の信頼性も一変する」

「仕事の基本は、赤字修正やデータチェックと修正を繰り返して、印刷工程に渡すことの繰り返し。見落としが出ないよう、目がチカチカするくらい何度もチェックしていきます」

アプリケーションが一部を修正してくれるものの、最後は自分の目で確認する必要がある。

「上司に『ここ見落としてるよ』って何度も指摘されて。ヒューマンエラーはなくならないけれど、精度を高めていくのが面白いんです」

「行頭に『、』や『。』が来ちゃダメとか、書籍を作る上で組版には細かいルールがたくさんある。最初はそれを覚えるのも一苦労でしたね」

新しく入る人は、デザインが好きな人はデザインの凝った本を扱うチーム、細かい作業が得意な人は学術書を扱うチーム、というように適性に合わせて配置される。

「自分に合った役割で始められるから、心配しなくて大丈夫ですよ」

入社後の研修でも、全部署を回り、印刷や製本の現場、協力会社の仕事まで見学してものづくりの流れを理解するから、未経験でも入り込みやすいと思う。

「本づくりの世界は、知れば知るほどわからないことが増えていく。どれだけ深いんだこの沼は、みたいな。知らない世界を知って、できないことができるようになってくるのが圧倒的に楽しいです」

DTPオペレーターの仕事は、黙々と仕事を進めていける人が向いていると思う。飯沼さん自身も、編み物やマラソンが趣味。

「たとえば、料理の下ごしらえに没頭しちゃうとか。コツコツ積み上げるのが好きな人は絶対ハマると思います」

基本はひとりで黙々と進める仕事でありながら、チームスポーツのような側面もある。

「藤原印刷の仕事でできるのは、紙の束の状態まで。それを製本会社が仕上げて、書店に運ばれ、お客さまの手元に届く。だから自分がつくったデータが不十分であれば、その後の仕事が止まっちゃう。次、その次の工程のことを考えて、データをつくらないといけない」

足りないデータがあれば営業を通じてクライアントに確認したり、後工程の印刷スタッフとデータを擦り合わせたり。他部署、その先の連携会社への想像力が求められる。

「僕は、働くの語源でもある『はたをらくにする』ほうが、性に合っていて」

「自分が本をつくるわけじゃなくて、本をつくりたいと熱い想いを持つ人の、お手伝いをしている。そういう意味で、この仕事は自分にすごく合っているかな」

 

つくり手の想いが宿る、一冊の本。

DTPオペレーターはその想いが真っ直ぐに伝わるように、見えないところで橋をかける存在。

コツコツと本づくりと向き合いながら、お客さんの想いを「みんなで」紙に載せる。

そんな仕事にわくわくできる人の挑戦を待っています。

(2025/06/10 取材 田辺宏太)

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