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海の豊かさは森から
水産業のまちだからできる
“つなぐ”木育って?

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

さわやかな香り。心地よい肌触り。見た目にもやさしい温もり。

木を使った空間やおもちゃには、五感に働きかけるさまざまな魅力があります。

そうした魅力を体感することから、森林の大切さや、木と人とのつながりを学ぶのが「木育」です。2004年に北海道庁が提唱した教育概念で、今では全国に取り組みが広がっています。

長崎県松浦市もそのひとつ。ホールいっぱいに並べた木のおもちゃで遊べるイベント「木育キャラバン」の企画や、市内に住む子どもに1歳の誕生祝い品として木製のおもちゃを贈るなど、市の重点施策のひとつとして木育に取り組んできました。

今回は、この木育をともに推進していく地域おこし協力隊を募集します。

市民向けの講座やイベント、ワークショップの企画運営、松浦産の木材を使ったものづくりや場づくりなど。子どもから大人まで幅広い世代の人たちと関わりながら、木育を普及・啓発していく役割です。

水産業が盛んな松浦市。森から川、海へのつながりの観点から、水産業者さんとも連携することで、このまちならではの木育のあり方をつくっていけそうです。

経験や資格は問いません。自然が好きで、その大切さを丁寧に伝えていきたい。そんな仕事を探している人は、ぜひ続けて読んでください。

 

長崎県の北部に位置する、人口およそ2万人の松浦市。

日本一の水揚げ量を誇るアジやサバ、生産量日本一のトラフグ養殖、そのほかにもタイやクロマグロの養殖など。水産業がとても盛んで、最近では「アジフライの聖地」として売り出している。

道の駅には、新鮮な魚がずらりと並ぶ。揚げたてのアジフライもおいしそうだ。

水産資源が豊かなことがよくわかる一方で、このまちでなぜ木育なのだろう? 山や森はあるけれど、主要な産業ではなさそうだし…。

その背景について聞かせてくれたのは、松浦市役所子育て・こども課の課長を務める荒木さん。

「松浦市はたしかに林業のまちではないんですよ。ただ、森林はいろんな側面を持っていて、そのひとつに水源涵養(すいげんかんよう)があるんですね」

水源涵養とは、森林が雨水を貯えることで、河川の流量を安定させたり、水質を浄化したりする働きのこと。

森は、川を通じて海へとつながっている。森林を適切に管理することは、地域の豊かな水資源を守ることにもなるという。

加えて松浦市は、以前から子育て支援に力を入れてきた。高校生の医療費助成や保育料の完全無償化など、県内の自治体に先駆けて取り組んできた実績がある。

「木に触れる経験を通じて、子どもたちの情緒や豊かな心を育てていくことも、木育の大事な目的です。手触りや香り、音など、五感で感じる木の心地よさってありますよね。そこを入り口にしながら、環境意識を育んでいくことを目指しています」

2020年2月には、長崎県の自治体ではじめて「ウッドスタート宣言」に調印。市内で生まれた子どもには、1歳時に誕生品として木製のおもちゃが贈られるようになった。

木のおもちゃでめいっぱい遊べるイベント「木育キャラバン」の開催も、今年で3回目。回を重ねるごとに進化していて、今年2月の開催時には木工体験のワークショップやボルダリングも設置され、多くの人で賑わったそうだ。

ほかにも、図書館のボランティアの人たちとコラボレーションして、絵本の読み聞かせのあとに木のおもちゃで遊ぶ時間を企画したり、工場で不要になった木くずからオイルを抽出して、アロマの商品を企画・販売しようとしている移住者の方がいたり。

木育のタネは少しずつ芽吹きはじめている。今回募集する協力隊は、この土壌を活かしてさらに木育を推進していってほしい。

力を入れていきたいことのひとつが、拠点づくり。

市内には高齢者の集いの場が50ヶ所ほどある。その一角に木のおもちゃを設置することで、子どもたちが遊びに来たり、木や森の知識を教えたり。そんな拠点が増えてゆくと、高齢者の生きがいにもなるし、子どもたちの居場所づくりにもつながる。

市役所の近くにはみんなの子育て広場「URACCO」という施設があり、この日も木のおもちゃで遊ぶイベントが開かれていた。すぐ隣に図書館もあるので、多世代の交流拠点として活用していけるかもしれない。

いい流れができつつある一方で、課題も。

「子育て世代には木育のよさを知ってもらえていると思うんですが、ほかの世代の方からは『なぜ松浦で木育なのか?』という声をいただくことも多いです。より広く、市民に木育の主旨を知っていただきたくて」

たとえば、講座や木工体験のワークショップなどを開催するのもひとつ。

あとは、水産関係の方々とも連携できるといいですね。森から海へのつながりをめぐるツアーを企画するとか。松浦ならではの木育の意義を伝えられるし、市外からも興味を持ってもらえそうです。

思い浮かんだことを伝えてみると、「ああ、それもいいですね!」と荒木さん。

「地域おこし協力隊の方に求めたいのは、外からの目線なんです。自分なりのアイデアを形にしてみたいという方が合うんじゃないかと思います」

着任したら、まずは木育を理解するところから。

とはいえ、そもそも木育自体が比較的新しい概念で、「こうでなければ」という決まりもない。やるべきことが具体的に固まっているわけでもないので、自分なりに考えて実行していく行動力は求められる。

林業はもちろん、子どもの教育や生涯学習、ものづくりや水産まで。木育というテーマを掘り下げていくと、いろんな人と関わることになる。

これまでは子育て・こども課のみなさんを中心に取り組んできたものの、もう一歩前に進むためには、垣根を超えて動ける人が必要。今回募集する協力隊は、いろんな人とつながりながら、木育の新しいあり方をつくっていくような仕事になるのだと思う。

 

続いて話を聞いたのは、子育て・こども課で家庭相談員をしている水口さん。

「主な担当としては、ひとり親さんの相談員をしていて。夏休みの宿題に出せるように、親子での作品づくりをもともとやっていました。木育はその延長で関わりはじめたんです」

今年の木育キャラバンでは、木工体験のワークショップを企画。端材を使って自由にものづくりができるブースを設けた。

当初は大人向けのワークショップのつもりだったものの、蓋を開けてみると親子で参加する人がとても多かった。

「ネットで検索したり、見本を参考にしたりするのは大人だけで、子どもたちは何も見ずにつくるんです。こうやって使うともっときれいだね、かわいいねって。こんなところに穴あけるの?とか、発想がすごい。子どものほうが確実に上手です」

子どもがつくった作品を見た親御さんは、「この子、こんなに上手だったんだ!」とびっくりすることも多いそう。子どもだけでなく大人にも学びがある、いい企画だなあ。

水口さん自身、3人の子どもを育てるお母さん。木育に関わるときには、いつも意識していることがある。

「どんなイベントをするときも、子どもたちが楽しくあればいいなと思っています」

「もちろん、木育だから森林の大切さを伝えていくのも大事。そこまでつなげられたらいいですけど、イベントに来て楽しかった、木と触れ合えてよかったって思ってもらいたいのが一番ですね」

幼いころから親しみを感じていたら、大人になっても森や木のことを自然と考えるようになるかもしれない。そういう意味でも“楽しさ”は大事だと思う。

これから入る協力隊との接点も多い水口さん。どんな人に来てもらいたいですか?

「アイデアが出てくる人。自分がこうしたいと思ったら、課長を丸め込んででも、実行できる人がいいかなと(笑)」

「あとはポップで楽しい方がいいですね。ちなみに席はわたしの隣だと思います。…これで応募こなかったら困るな。大丈夫ですかね?」

短時間のインタビューでも、水口さんの明るさが伝わってきた。課長の荒木さんとも、普段から気軽に意見やアイデアを交わしているんだろうなと、軽やかな関係性が窺える。

決まりきった業務が少ないぶん、はじめは何をしたらいいか戸惑うかもしれないけれど、自分からアクションを起こせば一緒に動いてくれる心強いチームだと思う。

 

もう一ヶ所、荒木さんとともに訪ねたのは、市役所から車で10分ほどに位置する有限会社吉原建設。

本業は、住宅のリフォームや古民家再生を手がける建設会社。2020年のウッドスタート宣言を機に木育にも力を入れていこうと、新しい設備を導入して木のおもちゃづくりができる環境を整えてきた。

たとえば、「きもち」という名前の積み木。

つるっとした手触りが肌になじんで気持ちいい。

「手で握った感覚を頼りに、端材を切って研磨してつくっていくんです。1個つくるのにだいたい30分かかります。不思議なことに、ワックスをかけるとこのツルツル感が出ないんですよ」

身振り手振りを交えつつ、製作者の吉原さんが教えてくれる。

「木育を進めていくにあたって、木材の流通サイクルが地域内で循環していないのが課題だと思っていて。“松浦だから”できるものづくりをしていきたいんです」

そこで吉原さんは、木材の乾燥機を自作。さらに、もともとは松浦産の木材である証明がなかったため、森林組合と協力して出荷証明の仕組みも整備した。

今は松浦産のヒノキなどを使って、松浦鉄道をモチーフにした新しい誕生祝い品の製作や、移住者の方と協力して、木くずから抽出したアロマの商品化も進めている。いずれは樽型のバレルサウナもつくりたいのだとか。

「適切に手入れされてこなかった松浦のヒノキは、建築材料としての質は劣ります。一方で香りに関しては、専門家いわく高品質らしくて。おもちゃやオイルをつくるにしても、この香りをブランドにできないかと考えています」

木育関連のものづくりは、今のところ息子さんと吉原さんの2人体制。本業のかたわらでやっていることもあり、大量生産はむずかしい。

ちなみに今回入る協力隊も、関心があればここでの作業に関わることは可能なんでしょうか?

「まったく問題ないです。協力隊の方にぼくが見ておいてほしいのは、完成品ができるまでの過程ですよね。そこにも深く入ってほしくて」

ものづくりへの関心だけでなく、趣味でキャンプをする人や、アウトドアが好きな人など。素材となる木や、そのおおもとの森や自然を身近に感じている人のほうが、よりよい形で木育を推進していけるんじゃないかとのこと。

「松浦は水産業が盛んなまち。その起源である山に親しむところから、川の流れのごとく、関わる人を増やしていけるような人に来てもらいたいです」

 

水産のまちならではの木育。前例はほとんどありません。

松浦の木に詳しい高齢の方、吉原さんのようなものづくりのプロ、海の漁師さんなど。さまざまな分野の人たちに学び、仲間になってもらいながら、新しいムーブメントを起こしていく。

木に触れるなかで、自分の可能性も伸ばせる環境だと思います。

(2025/07/04 取材 中川晃輔)

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