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時間を超えて
受け継がれるジュエリーに
日々、向き合い続ける

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

凪いだ水面のように、滑らかに磨き上げられたジュエリー。

「主張しすぎず、身につける人の一歩後ろにある。それくらいがちょうどいいと思うんです」

デザイナーの石原さんの言葉通り、「SHIHARA」のジュエリーは、たしかな存在感はありつつ、そっと静かな佇まいが印象的だと感じます。

まるで機械で削り出されたかのような、ミニマルで洗練されたデザイン。こう見えて、すべて日本国内で職人の手作業で生み出されています。

今回募集するのは、SHIHARAのジュエリー職人。

長年、製作は協力工場に委託していたものの、内製化の割合を増やしていくため、自社スタジオをオープンしたのが数ヶ月前。ここで研磨や刻印、石留めなど、仕上げ工程全般を担当します。5年以上の経験がある、即戦力となる人を求めています。

ごまかしの効かないデザインだからこそ、自分の技術力もよくわかる。集中できる環境下で、一つひとつのジュエリーと丁寧に向き合っていくことができると思います。

 

表参道駅を出て、アパレルショップやギャラリーが並ぶ骨董通りを10分ほど歩いて行く。

角をひとつ曲がったところにあるビルの1階部分がSHIHARAのスタジオ。中は、オフィススペースと製作スタジオに分かれている。

「仕事をする場所が美しければ、いいものを生み出すことにつながる。そう思い、内装も一からつくりました」

そう教えてくれたのは代表でデザイナーの石原さん。普段から写真は控えているとのことで、今回は手元を撮影させてもらう。

カンカン!と金属を打つ音が、時折隣のスタジオから響いてくる。

「郊外に工場を構える会社って多いじゃないですか。でもここは、青山のショップから歩いて10分ほどの距離。顔の見える場所にあるから、ブランドとしての一体感が生まれるし、一連の流れの中にいる感覚を職人も得やすいと思っています」

2010年にスタートし、ジュエリーの企画・製造・販売・卸を行ってきたSHIHARA。

リングやネックレス、ピアス、ブレスレット。そう聞いて誰もがイメージするようなデザインを問い直し、構造や身につけ方を再提案してきた。

たとえばピアスのキャッチや、ネックレスのクロージャーなど、不可欠だと思われていた金具をなくし、デザインに組み込んでいる。

「ジュエリーは宝飾品とも言われるように、人を飾る役割があるもの。とはいえ、前に出過ぎないように意識しています。ジュエリーがユニークでなくても、つける人がユニークであればそれでいいわけですから」

自然体の、その人らしさを形づくる1ピース。

どんな人にも馴染むジュエリーだからこそ、100%職人の手でつくられるにも関わらず、完成品には手仕事の風合いを一切残さない。

「いわゆる温かみのあるハンドメイドとはまったく逆。お客さんが店頭で見て『ほしい』と思ったサンプルと、まったく同じ精度のものをつくり続ける。人の手でこれをやっていくのはすごく大変なことなんです」

これまで、信頼できるつくり手に製造を委託してきたものの、国内のものづくり市場は縮小傾向にある。

SHIHARAのジュエリーを求めるお客さんが増えているぶん、今のままの生産体制ではオーダーに対応しきれなくなってしまう。

「将来のことを考えると、やっぱり自分たちでハンドリングできる生産の仕組みをつくる必要がある。一からすべて内製化はできなくても、その範囲を少しずつ広げていきたいと思っています」

「ジュエリーブランドをやっている以上、自分が生きている間だけブランドが続けばいいとは思っていない」と石原さん。

ジュエリーという商品の性質上、その人と一生を添い遂げるものになる。さらに誰かに受け継がれて、次の時代まで残っていくかもしれない。

「たとえば50年後、『リングのサイズが合わなくなったから直したい』とお客さまが思ったとき、可能な限りブランドが存続していくことが、つくり手の責任だと思うんです」

とはいえ普段は、表には出ない職人の仕事。意識を向けられる機会の少なさが、衰退の理由のひとつになっていると石原さんは考える。

ジュエリーブランドである自分たちがスタジオを構え、発信することで、業界全体に関心を寄せる人を増やしていきたい。

「うちをきっかけに、ジュエリー職人に興味を持ってくれたらうれしい。SHIHARAに入社するしないに関わらず、業界全体へのアプローチとしてやるべきことかなと。巡り巡って、職人になりたいという人が一人でも増えてくれたらいいなと思っています」

 

日々スタジオで一緒に働くのはどんな人たちだろう。

最初に紹介されたのが職人の田中さん。

製造委託先として、立ち上げ当初からSHIHARAのジュエリーを手がけていた方で、スタジオ設立にあわせて入社。ここでの作業分担や納期はすべて田中さんが管理している。

田中さんは、この道20年以上のベテラン。

10代のころにシルバーアクセサリーづくりに興味を持ったことがきっかけで、高専卒業後にジュエリー職人の道へ。

「ジュエリーのような、光るものが好きなんです。ダイヤやリングの素材を、自分の手でジュエリーの形に昇華させていく瞬間が、この仕事の楽しいところですね」

「SHIHARAのジュエリーは、ほかと比べて本当にシンプルなので、ちょっとした違和感もすぐに伝わってしまう。1から10まで気を抜けない緊張感があります」

スタジオでは、工場での鋳造が終わった、いわゆる「キャスト上がり」の状態からジュエリーを手がけていく。

リングの場合は、届いた製品をオーダー通りのサイズに合わせ、滑らかに磨きあげる。

その後、ダイヤモンドを取り付けたり、結婚指輪であれば刻印を打ったりして、一つひとつを仕上げていく。今は3人の職人がいるので、習熟度に合わせて担当する工程を決めているそう。

今日、田中さんが製作しているのは、「One-Stone Necklace」というネックレス。

一般的には留め具はチェーンについているが、この商品ではトップの石座に留め具が内蔵されている。

ダイヤモンドとチェーン、たった2つの要素で構成された、限りなくシンプルなデザイン。

製作はまず、留め具が問題なく機能するように、研磨しながら調整していく。

その後、石とチェーンを取り付けて完成となる。

「これは0.3キャラットのダイヤモンドで、この石だけでも何十万という高額なもの。顕微鏡で拡大して、破損がないかチェックして。お客さまが使っているときに石が取れないよう、爪がしっかり被さっているかよく確認して留めていきます」

同じシリーズで販売数の多い0.1キャラットの商品だと、1日に7〜8個ほど仕上げるそう。石が小さくなるぶん、作業の難易度はそちらのほうが高いという。

「ただ、基本がしっかりできていれば、ここでの作業はとりわけ難しいものではないと思います。差が出てくるのは、それを何分で終わらせられるか、というところ。うちのやり方も知ってほしいですが、ほかでどんな方法でやってきたのか、ぜひ学びたい気持ちもあります」

一緒に働くのは、新卒のスタッフ1名と、前職で5年ほどの経験があるスタッフが2名。

今はまだ「田中さんしかできない」という作業も多いので、普段のラインナップを一通り任せられるような、二番手になる人が来てくれたらうれしい。

任せられる人を増やし、田中さんはこれから、より難易度の高い一点もののジュエリーを手がけていきたい。

田中さんはどんな人と一緒に働きたいですか?

「負けずぎらいな人でしょうか。なんにでも果敢に挑戦してくれるといいですね」

「むずかしい作業に直面したときも諦めずに、どうすればできるか考えられる人が合っている。一緒に働く2人もチャレンジしたいという気持ちが強いので、そういう人がいいなと思いますね」

 

今まさに、技術向上に熱心に取り組んでいるのが山本さん。

学生時代は工芸学科で鍛金を専攻。新卒で不動産の営業職を経て、ペアリング製作のインストラクターを5年ほど経験。半年前にSHIHARAへやってきた。

「鍛金を学んだことが社会でどう活かせるかわからなくて、新卒では不動産の仕事に就きました。やっていくうちに、営業として誰かのつくったものの魅力を伝えるよりも、自分で考えて手を動かす仕事がしたいと再認識して、ジュエリーの世界に入ったんです」

「婚約指輪としてもらったのがSHIHARAだったので、そのときからブランドのことは知っていて。これからはじっくりものをつくる仕事にウエイトを置きたいと思い、転職を決めました」

今つくっているのは、店頭に置くバングルのサンプル。リング以外を手がけるのはこれが初めてだそう。

はじめは細長い棒状の素材から、パーツを切り出し、それぞれを45度に面出し。

直角になるようレーザーで仮止めした後に、接着剤となる金属を流し込む。今は、はみ出た金属を削り取り、正しく角度が出るように調整しているところ。

寸法が細かく決まっているので、仕上げはコンマミリ単位。計測を繰り返しながら作業を進めていく。

「SHIHARAに入社してからスタジオができるまで、数ヶ月間は検品の仕事をしていたんです。寸法や左右対称を厳しく見ていたけれど、実際に自分が製作するようになると、それを形にするのがいかに難しいことなのか実感します」

「常に悩んではいるけれど、ずっと同じことで悩んではいない。前回よりも早く仕上げられたり、自力でこなせる品番が増えていったり、検品で落ちるものが少なくなったり。自分の成長がわかるので、やりがいを感じられます」

基本的には作業音だけが響く、静かな工房。黙々と作業する時間が長いけれど、単純作業という感覚ではないみたい。

「オーダーを受けて、行き先が決まっているものをつくっている実感は強いです。結婚指輪をはじめ、長く使うものを手がける重みは感じます」

「今つくっているサンプルも店頭にずっと置かれるものですし、誰かがこれをきっかけに買ってくれるかもしれない。どちらの仕事も、種類の違う緊張感や責任感がありますね」



自分が手がけたジュエリーが、誰かの一生ものとなる。

目に見えるデザインには表れないけれど、SHIHARAのジュエリーには、手がける職人の想いがしっかりと込められています。

誰かのためのものをつくりながら、自分の腕が磨かれていく。そんな毎日を重ねていくなかで、得られる手応えがあると思います。

(2025/08/26 取材 増田早紀)

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