「リウマチや膠原病(こうげんびょう)の患者さんは、砂漠ではぐれてしまった象のような存在なんです」
取材の冒頭、あずまリウマチ・内科クリニックの東院長はそう話してくれました。
リウマチや膠原病は、本来ならウイルスなどの外敵から自分を守るはずの免疫が、何らかの原因により誤って自分の体を攻撃してしまう病気のこと。
関節が腫れて激痛が走ったり、放っておけば骨が変形して歩けなくなったりするほど深刻化することもあります。

ただ、その初期症状は風邪や疲れと見分けがつきづらく、本人ですら見過ごしてしまいやすい。
「自分はリウマチなのかもしれない」と気づかず、体調不良の原因がわからないまま、不安のなかで迷っている人たち。
今回募集するのは、そんな人たちに向けて光を届ける、広報・ブランドマネージャー。
医療の専門知識は必要ありません。現場にある事実を丁寧に拾い上げ、必要としている人へ届ける仕事です。
西武新宿駅から、急行電車に揺られておよそ50分。埼玉県の狭山市駅に到着。
改札を出てすぐ、駅直結のビルの3階に、あずまリウマチ・内科クリニックはある。

エレベーターを降りると、廊下のスペースに小さなカウンターが設けられている。
「こちらで、院内に入る前にすべての患者さんのヒアリングをしています」
スタッフの方がそう教えてくれる。
熱があるかだけではなく、喉の痛みや咳はないか、いつもと違う様子はないか。中に入る前に、感染症の兆候を確認して、少しでも懸念があれば、一般の患者さんとは動線を分ける。
徹底ぶりに驚きつつ、バックヤードの休憩室に案内される。
迎えてくれたのが、東院長。

「僕たちが扱うのは、リウマチや膠原病という病気です。患者さんの9割以上がその方たちで、これは全国的にもかなり珍しい環境です」
「年齢を重ねた人の病気だと思われがちですが、実は働き盛りの女性や、ときには乳幼児も発症する。誰しもが、他人事にはできないものなんです」
この病気には、患者さんが日常をとり戻すまでに、いくつかの道のりがあるという。
まずは、診断がつくまでの“悩み”。
「内科に行っても原因がわからず、『様子を見ましょう』と言われる。でも体調は悪いまま。内科や整形外科を転々とした末に、ようやくうちへ辿り着く患者さんも少なくないんです」
病名がわかり、治療が始まると、次は“コントロール”に入る。
患者さんの年齢や生活背景は人それぞれ。その人に合わせて薬の種類や量を微細に調整し、症状が落ち着いた状態、“寛解(かんかい)”を目指す。

リウマチや膠原病は、症状がなくなれば終わりではなく、長く付き合っていく病気。落ち着いた状態を、維持していくことがとてもむずかしい。
さらに、治療では、暴走する免疫を薬で抑え込む。それはつまり、ウイルスや細菌と戦うための防御壁を、あえて下げるということ。
「薬で免疫をコントロールしている状態だと、風邪をひいても熱や咳が抑えられることがある。本人が感染症にかかっていることに気づかないうちに重症化してしまうこともあるんです」
なんとなく胸が苦しい。そう訴える患者さんを検査してみたら、実は肺炎を起こしていたというケースも過去にあった。
だから、数値やデータだけを見るのではなく、患者さんの生活そのものに耳を澄ませる。
「階段の上り下りが楽になった」「ペンが握りやすくなった」。
そんな何気ない会話から、患者さん自身ですら気づけない体の変化を拾い上げて、二人三脚で進んでいく。

象徴的なのが、「りうまちコール」という仕組み。
24時間365日、患者さんが専用ダイヤルにかければ、医師につながるようになっている。
「『薬を飲み忘れてしまった』という相談から、真夜中に『転んでしまった』という連絡まで。ときには『猫にひっかかれたけど大丈夫か』なんてこともあります」
些細なことのように思えても、免疫を抑えている患者さんにとっては、小さな傷から菌が入ることが命取りになりかねない。
「自己判断で薬を中断したり、逆に飲んでしまったりするのが一番怖い。だから、どんな小さなことでも電話してほしいんです」
単に病気を診るというより、その人の生活、ひいては生き方にまで寄り添う。その過程にこそ、クリニックは本気で向き合おうとしている。
「採算が合わない、やりすぎだ。そう言われることもある」
それでも、手を離さないのはなぜか。東院長が、一枚のスライドを見せてくれた。
広い砂漠をたった一頭でさまよう、象の絵。院長自ら描いたんだそう。

「不安じゃないですか。砂漠を一人で歩くのは」
完治して終わりではないからこそ、患者さんは不安と孤独のなかにいる。
「どこに行けばいいのか、これからどうなるのか。そんな患者さんを、僕たちは『群れ』として迎え入れたい。もう一人じゃないよ、と安心できる場所でありたいんです」
自分たちが大切にしてきたことがブレないように。そして、地域にこの場所をしっかり残していくために。
1年ほど前からリブランディングに取り組みはじめ、ようやく自分たちの輪郭が言葉になってきた。

そこで必要になったのが、広報という役割。
これまでもYouTubeやホームページで情報を発信してきたけれど、「言いたいことを出しているだけ」の状態だった。
「砂漠で迷う人に『あそこに光が見える』と気づいてもらわなきゃいけない」
新しく入る人は、まずは現場に入り、どんな患者さんが来て、どんなことに困っているのかを観察したり、スタッフの話に耳を傾けたり。現場の空気を肌で感じるところから。
そのうえで、リウマチや膠原病という専門的な情報を、誰にでもわかる言葉へと翻訳していく。
主戦場は、Webの世界。
多くの人が、まずはスマホで自分の症状を検索する時代。だからこそ、Webサイトの記事をつくったり、SNSを活用したり。いわゆるオウンドメディアの運営が中心になる。
どうすれば必要な人に情報が届くか。Web上での見せ方を考え、文章を編集し、発信していく。
ときにはオンラインコミュニティをつくって交流の場を設けたり、リアルの場を企画したり、自由な発想で仕掛けていってほしい。
どのくらい自由かというと、「たとえば、カエルの鳴き声を聞く会をやってみてもいいのかな」と、東院長がアイデアを話してくれるくらい。
「患者さんのなかに、虫や生き物が好きな方がいて。ほかの患者さんも一緒になって、外に出てみるのもいいでしょ」
以前開催していたリウマチカフェという交流会も、そんな発想から生まれたもの。

患者さん同士の交流はもちろん、診察室での関係性から一歩離れて、お茶を飲みながら人と人としてフラットに話す。診察室だとどうしても緊張してしまうけれど、ここなら素直な気持ちを話せる。
Webでの発信を軸にしつつ、ときにはそんな体温の通った企画も織り交ぜていく。
大切なのは患者さんが「一人じゃない」と感じられること。そして、病気に対する理解が深まること。そのゴールに向かっているなら、ルートはどこを通ってもいい。
「1000個の種を撒いて、1個でも芽が出ればすごいこと。僕らには思いつかないようなアイデアで、面白がって仕掛けてほしいんです」
現場の様子を教えてくれたのは、医事課で主任を務める鈴木さん。

医事課は、病院の受付や会計などを担う部署。新しく入る人にとって、現場のことを一番近くで相談できる存在になると思う。
鈴木さんは地元が近く、都内のクリニックなどでキャリアを積んだあと、3年前にあずまリウマチ・内科クリニックへ転職してきた。
「入院施設のないクリニックに、CTや骨密度計、エコーまで揃っていることに驚きました。直感的に『ここは今後、さらに発展しそうな場所だな』と思ったんです」
現在は医事課のリーダーとして、13名ほどの事務チームをまとめている。
「広報の部署ができるのは、大賛成です。専任のポジションの人が、自分たちの取り組みを正しく、スピーディーに届けてくれたら、これほど心強いことはありません」
たとえば、まだ発信できていないことの一つに、検索の入り口の話があるという。
「関節が痛い、体がだるい。そんな不安な気持ちで検索したときに、うちのホームページがパッと出てくるようにしたいんです」
すでにリウマチと診断されている人だけでなく、今の症状に困っていて、どこに行けばいいかわからない人。そんな人が内科を転々としてしまう前に、迷わずにたどり着ける道をつくってほしい。

ただ、自由な文化だからこそ、大切にしてほしいこともある。
「多くの部署が密に連携して動く組織です。だからこそ、リアルタイムの報告や相談が、スムーズに仕事を進めるための鍵になります。ここを疎かにしない人と、一緒に働きたいですね」
最後に話を聞いたのは、事務長のサポート役を務める吉川さん。
院長のスケジュール調整から、外部との窓口、さらには備品の手配まで。組織の潤滑油として幅広く動くポジションだ。

新しく入る人が企画を立てるとしたら、吉川さんはそれを形にするための土台を整えるパートナー。
たとえば、外部の人を招いてイベントを開催するとして。
「広報の方が企画して、告知の記事を書く。私は会場を押さえたり、ケータリングを手配したり、案内状を送ったり。企画がスムーズに実行できるように、裏側からバックアップします」
もちろん広報担当者も、社内の情報を集めたり、外部のメディアと交渉したりなど、運営や調整のスキルは求められる。細かいタスクを同時進行でさばいていくこともあるはず。
吉川さんは広報の仕事について、一般の方に向けた発信だけでなく、ほかの病院やクリニックとのつながりを強めることも重要だと考えている。

「今、近くの大きな大学病院に患者さんが集中していて、パンクしそうな現状があるんです」
比較的症状が落ち着いている患者さんを、専門医のいるこのクリニックが引き受ける。そうすれば、大学病院はより重篤な患者さんの治療に専念できるようになる。
「『リウマチならあずまさんがいるから安心だ』と、地域の先生たちに知ってもらえれば、結果として地域全体の医療がスムーズに回るようになるんです」
「先生たちに向けた勉強会を企画したり、連携を深めるためのパンフレットをつくったり。一般の方への発信とはまた違った視点で、一緒に仕掛けていけたら面白いですね」
医療の専門知識がなくても、できることはある。むしろ、患者さんと同じ目線から伝えられることがあるはずです。
何より、誰かのために自分の伝える力を使いたい。
そんな想いを持つ人が、この場所には必要です。
(2025/12/07 取材 田辺宏太)


