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タイの食卓に
ニュージーランドと
日本の文化が混ざったら

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「料理というよりも“ごはん”という感覚で、日常の中でふらっと食べに来てもらえる場所にしたいんです」

そう話すのは、東京・清澄白河にあるタイ料理レストラン「MAKIN(マキン)」の木下歩美さん。

ランチどきには列ができる人気店で、日本仕事百貨のメンバーもよく利用しているお店。社内では木曜日の日替わりメニューのカオソイが人気です。

タイ語で“マー(おいで)”と“キン(食べる)”を組み合わせた、「食べにおいで」という意味をもつこの店には、名前の通り、誰かの家に招かれたようなあたたかさがある。

20席ほどの店内にはお客さんが肩を並べて座り、おしゃべりと料理を楽しむ。スタッフがせわしなく動きながらも、メニューの説明をしたり、お客さんとのコミュニケーションを欠かさない。活気のあるにぎわしい店内には不思議な一体感と心地よさがあり、元気をもらえる場所です。

 

「MAKIN」は、清澄白河駅のB2出口から東へ少し歩いて、大通りを入ってすぐの住宅街にある。ターコイズブルーの壁が目印だ。

扉をあけるとカラフルなランプシェードやクッションに、奥のキッチンからは鍋を振る音と、スパイスの香り。

一気に異国のにぎやかな空気が漂う。

すぐに店主の木下歩美さんが、明るい笑顔で迎えてくれた。

MAKINは、シェフのナムケット・モンチュリーさんと、歩美さん夫妻が7年前にオープンしたお店。

–お店について教えてください

タイのチェンマイにあるジンジャーというお店が好きで、参考にしているんです。カラフルで、とにかく元気があふれているんですけど、不思議と落ち着ける場所で。その空気感を再現したくて。

自然と人の会話や空気が混ざりあう、現地のにぎやかな雰囲気が心地よいお店になったらと思っています。

あとは、とにかくナムちゃんのごはんを食べてほしい、という気持ちがあるんですよね。そのためにも、料理というよりも“ごはん”という感覚で、日常の中でふらっと食べに来てもらえる場所にしています。

ナムちゃんとはワーキングホリデーで訪れたニュージーランドで出会って、そのまま現地で結婚しました。最初は1年のつもりだったんですけど、暮らしてみたらすごく自分に合っていて。気づいたら10年くらい住んでいました。

日本に戻ってきてからは、ナムちゃんはタイ料理レストランで経験を積んで、私は清澄白河のカフェ「オールプレスエスプレッソ」で働いていました。

ニュージーランド創業のロースタリーで、現地の接客の空気感に惹かれたんです。

二人でお店をもつことは「いつかできたらいいね」と話はしていたんですが、ある日カフェの常連さんに今の物件を紹介してもらって。

「こんな物件はもう出ないよ」と背中を押されて、思い切って開業を決意しました。

そのときはまだお店のイメージも固まっていなかったんですけど、流れに乗るような形でした。

オープンしてすぐにコロナ禍があって。でも、地域の方が通ってくれたり、気にかけてくれたり。去年は近くの美術館の展示の影響で、すごくいそがしい時期も経験して。

あっという間にもう7年。この場所でやっていけるんだなって、実感できるようになってきましたね。

–お客さんに愛される理由はなんだと思いますか?

長く生活していたニュージーランドの経験は、すごく影響していると思います。

向こうの飲食店では「お味はどうですか?」って自然に声をかけるんですよ。かしこまった接客というより、会話の延長みたいな感じで。

お客さんも「いつもより辛くない?」「昨日よりおいしいね」とか、普通に言ってくれるんです。最初は少し驚いたんですけど、そのやりとりがあることで、場の空気がやわらいだり、お客さんとの距離が近くなる感じがして。

それがすごくいいなと思って、MAKINでも声掛けは必ずするようにしています。

「辛すぎるかも」といわれたら味付けをやわらげたり、「もっと辛いほうがいい」という方にはチリを持っていったり。

ただ料理を提供するだけじゃなくて、食べに来てくれる人にとっていい時間をつくるために、できることを全部やってあげたい。

–今後はどんなことを考えているんでしょう?

お店が地域に根付いてきて、常連さんも新規のお客さんも増えてきました。

ナムちゃんのごはんをもっと多くの人に届けるために一緒に働いてくれる人を増やしたいと思っています。

お店というよりは、生活に近い場所だと思っているので、わたしたちとも、お客さんとも家族みたいな距離感を楽しめる人が合っているのかなと。距離が近いぶん、大変なこともあるかもしれないんですけど、関係性も深くなるので、それを前向きに楽しめる人と出会えたらうれしいです。

正社員として関わってくれる方とは、タイに一緒に行く機会もつくれたらと思っています。ナムちゃんの地元に行ったり、現地の食文化に触れたり。やっぱり実際に体験することでしかわからないことも多いので。

それに、私自身これまでいろんな飲食店で働いてきたので、これから自分のお店をやってみたい人には、伝えられることもあると思っています。

来てくれる方の次につながる時間になったらうれしいですね。

–最後に、歩美さんにとって「自分の仕事」とはなんでしょう?

ナムちゃんがつくってくれる美味しいごはんを広めることですね。

料理を提供するというよりも、その人の日常の中にある“ごはん”として、ここに来てもらえたらうれしいです。

お客さんとも、どこか家族のような距離感で、顔を合わせて、少し会話をして、ごはんを食べて、また帰っていく。

そういう時間が少しずつ積み重なっていくことが、MAKINのかたちなんだと思います。

特別なことをするというよりは、日々の中にある当たり前の時間を、ちゃんとつくり続けていくこと。

それが、私にとっての仕事なのかなと思います。

(2026/04/12 取材 中野悟史・大津恵理子)

このコラムはわたしたちのオフスがある東京清澄白河でさまざまな人に会いに行き自分の仕事のヒトをあつめる企画です

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