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人の手と、やさしさで
ありそうでない
ビターな文房具をつくる

水玉と縞々。

ふたつを掛け合わせて名付けられたのが、「水縞(みずしま)」。

水玉好きなデザイナーの植木さんと、縞々好きの文房具店の店主・村上さんが立ち上げた文房具ブランドです。

名前の模様にとどまらず、さまざまなオリジナル文具をつくっています。

たとえば、「イロイロメモパッド」。グラフィックのかけらや、素材の異なるさまざまな紙がまとまったメモ帳。

パリパリ、ざらざら。透ける紙、クラフト紙。

めくるたびに書き味も異なる。日常使いはもちろん、手紙やプレゼントに添えるのもたのしい。

ほかにも、大人が楽しめるちょっとユニークなノートや、時計の文字盤や日本地図などのスタンプ、わらばん紙や透け感のある紙などを使ったレターセットなどもある。

どんなプロダクトも、配色が抑えられていて、すっきりとしている。使う人がアイデアを足して完成させる楽しさもあります。

水縞の運営・デザインをするのが、東京・吉祥寺に拠点を構えるノンブル。

今回の募集は、生産・販売管理を担う人。

工場への発注やパートナーさんへの手配、国内外の卸先への発送から在庫管理まで。現在、幅広い業務を担っているスタッフの相棒として、二人三脚で動いてくれる人を探しています。

あわせて、パートタイムのデザインアシスタントも募集します。

 

吉祥寺駅を出て少し歩いた先に、白いざらりとした外壁の建物が見えてきた。階段を上ると、扉に小さく「nombre」の文字。

昨年の秋、西荻窪の事務所から引っ越してきたばかり。

迎えてくれたのは、代表の植木さん。つづけてひょこっと控えめに、スタッフの三好さんが奥から顔を出してくれた。

さあ取材を始めようかという矢先、植木さんのスマートフォンが鳴る。

電話の向こうは、学校から帰宅した娘さん。「友達が遊びに来たのだけど、紅茶を淹れてもいいか?」という、なんともかわいらしい相談だった。

「危ないから電子ケトルでお湯を沸かしてね」と電話口で返す植木さんと、横でほほえむ三好さん。

ほぐれた雰囲気のなか、大きな木のテーブルの向かいあわせで座る。ぽつりぽつりと、ブランドの成り立ちから話し始めてくれた。

水縞が生まれたのは、今から20年ほど前。

当時、吉祥寺の設計事務所で働いていた植木さん。そのすぐ近くにオープンしたのが、文房具店36サブロだった。

「近所の大好きなお店という感覚で、よく遊びに行ってたんです」

「当時、設計事務所の中で家具や布など小物のプロダクトもつくっていて。店主の村上さんに話したら、お店に置いてくれるようになったんです。納品がてら、お店に行ったり、夜な夜なおしゃべりをするようになって」

ゼロから物をつくるのが好きなデザイナーの植木さんと、世の中の文房具を見る目を持つ村上さん。

違う立場だからこそ、ひとりではつくれないものを生み出せる。出会って1年半後にはブランドが立ち上がった。

ありそうでないものをつくりたい。それが変わらぬコンセプト。

初期のころから定番で、と見せてくれたのが、水玉としましまをプリントした透明な袋。

さりげない柄が、ちょっとしたプレゼントを渡すときにちょうどよさそう。

「シンプルで使いやすいものは世の中にあふれている。自分たちだからこそつくれる新しいものは、正直、以前よりも難しくなっているなと感じます」

教えてくれた一つが、「自在ハンコ」。

透明なアクリルの持ち手に、好きなスタンプパーツをペタペタと自由に貼り替えて使うことができる。

「私、ハンコがすごく好きで。パソコンのきれいなフォントとも違うし、手書きとも違う。カチッと決まるけれど、押すとちょっと滲んだり、少しゆらゆらしたりする。きちんと感と温もりの混ざり具合が、たまらないんです」

持ち手も印面も透けているため、上から覗いてピタッとずれることなく押すことができる。

数字や図形だけでなく、最近では、作家さんのイラストを用いたコラボレーションも次々と生まれている。

「みんなが欲しいと思っているのに、ロットやコスト、技術といった何かしらの製造の壁があって、実現できていないもの。それをかいくぐって形にすることを目指しています」

大切にしているのが、「中量生産」という考え方。

「一点物でもないけれど、何千個もつくる大量生産でもない。100、200、300といった数をどうつくるか考えるのが、割と好きなんです」

すべて機械に頼ってつくる大量生産ではなく、あえて人の手を借りる。

まずは、工場との長いお付き合い。「こんなことできますか?」と気軽に相談すると、いつも一緒になって面白がってくれる。

オフィスに届いた文具や資材を丁寧に袋詰めするのは、顔なじみの内職さんたち。

すべての工程で人の手が加わっている。そこで生まれる絶妙なブレも、水縞の温もりや個性になっているんだと思う。

「男性も女性も、おとなもこどもも、どんな人の手元にもスッと馴染むような。かわいすぎない、ビターな文具って言葉がしっくりきていて。そんな水縞らしさをこれからももっと広げていけるんじゃないかなって」

 

その広がりを支えるのが、隣に座る三好さん。

もともとは映画やCMの撮影現場で、セットデコレーターとして13年間働いていた。

「水玉やしましまの透明な袋がとにかくツボで、全種類買い集めて自宅にストックしていました。大ファンだったんです」

コロナ禍を機にこれからの人生を見つめ直したとき、偶然求人記事を見つけた。

当時の面接のことを、代表の植木さんが楽しそうに振り返る。

「10年以上もハードな現場を経験してきた方だから、どんな人が来るのかなと身構えていたんです。いざ会ってみたら、本当に物腰が柔らかくて。面接で強みを聞いたとき、『大きい車、ハイエースを運転できます』ってぽつりと言ったんですよね」

「それが妙に頼もしくて、みんなで楽しくなっちゃって。ガッツはあるけれど決してとがっていない、その愛らしい人柄に惹かれて満場一致で採用が決まりました」

照れくさそうにはにかむ三好さん。2023年の夏に入社し、最初はオンラインショップの発送業務からスタート。

次の年からはイベントや巡回展の企画運営に携わり、さらにオンラインの卸業務へ。いまや生産・販売管理全般を担っている。

新しい商品が生まれるとき、まずは植木さんがデザインを考えて工場へ最初の入稿を行う。そこからバトンを受けとるのが三好さんだ。

必要な資材を集めて、パッケージの準備を整え、工場から届いた文房具を内職さんたちの元へ。手作業できれいに袋詰めされた商品の検品を行い、ようやくリリースされる。

「水縞は定番だけでも300商品以上あるので、最初は頭の中を整理するのがちょっと大変でしたね」

販売が始まってからも仕事は続く。注文をさばき、在庫をチェックしながら再入荷の手配や、お客さんからの問い合わせに返信する。

「毎日考えることも動かす手も変わる、マルチタスクの日々です」

「前の仕事もかなりのマルチタスクだったので、これが大変なことなのか自分ではよくわからないんです」とひょうひょうと笑う三好さん。

とはいえ、海外からの注文も右肩上がりに増えているいま、三好さん一人が現場のあらゆる管理を抱え込むには、少しずつ限界が見え始めてきた。

新しく入る人は、まずは発送業務から始めて商品を覚えていく。ゆくゆくは全体の流れを共有し、どちらが欠けても業務がスムーズに回るような、対等な関係を築いていきたい。

「小規模だからこそ、日々のちょっとしたコミュニケーションが大事だなと感じています。つい口頭の会話だけで発注の確認を済ませてしまうことがあって。あとから『本当にあの数で進めて大丈夫だったっけ?』と不安になることもあるんですよね」

小さなことでもLINEなどで文章に残し、誰が見ても進捗がわかる仕組みを新メンバーと一緒に整えていきたい。

1日はめまぐるしく、手を動かす時間も多いけれど、おだやかで、平和な空気が流れているという。

「面接の帰り道、あたたかすぎて泣きそうになったのを今でも覚えています。ミスがあっても、責めるのではなく『じゃあ、これからどうしようか』とすぐに前を向いて話し合える。それが心強いなと思います」

「イベントに出れば、お客さまが喜ぶ顔を見られる。卸先のお店の人や、加工を頼む職人さんたちも、いいものをつくろうと協力してくれる。いろんな顔を思い浮かべながら、仕事を頑張れる。人を想い、お互いに優しさを持ち寄れる人がいいですね」

 



「三好が急にケガでもしたら現場がストップしてしまう。だからこそ、仕事を半分こにして、二人三脚で動いてくれるパートナーが必要なんです」

遠隔でデータ管理や海外窓口を支える根井さんも、海の向こうから三好さんを気にかけている。

現在、根井さんが暮らしているのはオランダ。日本との時差は7時間。現地の朝の時間帯に合わせて、オンラインで取材に参加してくれた。

2008年に入社し、長年国内のサポート業務や製造管理を一手に担ってきた根井さん。オランダへ移住したのは、今から3年ほど前のこと。

「子どもが生まれてから、漠然と海外で子育てをしたい気持ちがずっとあって。そうしたらコロナ禍になってしまい。モジモジしていたらいつまで経っても行けないなって」

長年勤めてきたノンブルでの仕事をどうするか。意を決して代表の植木さんに相談した。

「理由をちゃんと説明したら、オッケーしてくれて。『遠くに行っても一緒に仕事をしましょう』って言ってくれたことがうれしかったですね」

今はオランダを拠点に、パソコンを使ったデータ管理や海外窓口、ヨーロッパ市場の開拓などを遠隔で担っている。

ノンブルでの勤続年数は、気づけばもう15年以上。

「やっぱり、居心地がすごく良いんです。思ったことはすぐ言えるし、相談もしやすい。会社なんですけど、家族みたいというか」

時差を挟んだ日本のチームとのミーティングも、カチッとしたルールがあるわけではなく、話したいことがあれば、その都度集まるという柔軟なスタイル。

お互いの自立を信頼しているからこそ、心地よくつながっていられる。

今年の夏休みには、お子さんの休みに合わせて日本へ帰国し、オフィスに顔を出すことも楽しそうに話してくれた。

「大きな企業から来られる方だと、ちょっとびっくりしちゃうかもしれないです。かっちり決まっていることが少ないので。そのぶん自由だし、みんながそれぞれの持ち場でのびのび働いている環境ですよ」

 

最初から完璧でなくても。まずは文房具を一つずつ覚えるところから。

やさしさと、信頼を持ち合わせて。水縞と一緒に歩める人を待っています。

(2026/05/20 取材 田辺宏太)

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