地域に入り、人と人をつなぎ、場をつくる。
手応えはあるけれど、ひとつの地域でがんばるだけでは越えられない壁もある。もっと国の制度など、根本の仕組みを変えていかないといけなのではないか。
地域づくりの現場に立ってきた人ほど、感じていることかもしれません。
そんな問いを抱えている人に、ぜひ知ってほしい仕事があります。

1992年にブラジルで開催された地球サミット。
採択されたリオ宣言には、地球環境問題に政府や企業だけでなく、市民やNPO・NGOも一緒になって取り組むべきだという、「パートナーシップ」の構築を目標におきました。
地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)は、そうした流れを受け、日本で環境問題に取り組む主体をつなぐための場として設置された組織。現在は、一般社団法人環境パートナーシップ会議が管理運営を受託しています。
全国各地で地域の環境保全活動を支援している地方環境パートナーシップオフィス(EPO)を統括し、持続可能な地域づくり、そして日本の環境政策を前に進めることを目指しています。
今回は、GEOCで環境政策と地域の現場をつなぐコーディネーターを募集します。
必要なのは、特別な専門知識より、人への興味と丁寧な対話力。地域づくりに片足を置きながら、国家スケールの仕組みづくりを動かしていく。
現場の熱も、行政の理屈も、どちらも放っておけない。そんな人にぴったりな仕事だと思います。
表参道駅から、大通りを歩くこと5分。
青山学院大学の向かいに国際連合大学を発見。その一角にあるのが地球環境パートナーシッププラザ。オレンジ色の看板に誘導されて、入り口に向かう。

中にはセミナースペースや環境関連の資料が並ぶ図書コーナー。環境活動に取り組むNPOや事業者、行政関係者などが日々訪れるそう。
掲示物には、「GEOC30周年」という文言が目立つ。
迎えてくれたマネージャーの江口さんにも、話題を振ってみる。

「あ、そうなんです。特設ページをつくったりイベントをやったり。昨年ごろからこれまでの歩みを振り返りながら、棚卸しをしているところで」
GEOCは、1992年にブラジルで開かれた地球サミットをきっかけにして1996年に開設された。その後2006年、運営に関わろうとするメンバーによって、一般社団法人環境パートナーシップ会議が設立。以来、環境省よりGEOCの運営を継続受託している。
また、環境パートナーシップの枠組みには、GEOCのほか、より地域に密着した拠点として全国に地方環境パートナーシップオフィス(EPO)がある。EPOは、地方環境局の管轄地域に置かれ、全国に8拠点。
国とEPOの間をつなぐのがGEOCなら、GEOCと地域の現場をつなぐのがEPO。そうやって、国と地域の課題や要望を双方向的につないでいくことがGEOCに求められている。
「地域が抱えるニーズやボトルネックは、国の省庁が政策を考えるときに必要な情報でもある。だからいま、ほかの省庁でも単に補助金を出すだけじゃなく、地域の中に受け皿をつくったり、人と人をつなぐコーディネーターや中間支援組織がトレンドになりつつあって」
「僕たちはそれを30年前からやってきたんですよね。だからほかの省庁や自治体、企業の参考になる先輩的な側面もあるのかなって、ここ数年すごく意識するようになりました」

現場と行政のあいだで対話を重ねてきたことで、国の施策を少しずつ動かしてきた。
その追い風となるのが、環境省の地方組織である地方環境事務所が地方環境局に格上げされたこと。
もともとは国立公園の管理などが中心だった地方の拠点。けれど近年では、地域の脱炭素化をはじめ、クマなどの鳥獣被害対策まで、自治体や現場と連携して解決すべき課題が急増している。
「国が一律で指示を出すのではなく、地方の現場が主導して動ける仕組みが必要だ」
地方組織の権限や存在感が向上することは、EPOやGEOCに対する期待に直結する。
「僕らは環境省の職員でもないし、国会議員でもない。コンサルティング会社でもないけれど、地域づくりに片足を置きながら、国家スケールの環境政策を動かす仕事ができる。そんな場所は、たぶんここにしかないと思いますよ」
今回募集するのは、EPOを統括するスタッフ。
先輩職員の鈴木さんに、入社経緯から教えてもらう。前職は小学校の教員だったそう。

「教員時代、子どもたちが『将来海外に行きたい』『お寿司を好きなだけ食べたい』って大きくなったらやってみたいことを語るのを聞いていて、ハッとしたことがあって。そもそもこの子たちが大人になったとき、そのやりたいことができる可能性が社会にどのくらい残っているんだろうか、って大きな問いが生まれたんです」
学校で環境教育を実践してみたものの、社会を変えるまでには果てしない時間がかかる。もっと前線で、未来への仕組みづくりをしよう。そう思ってたどり着いたのがGEOCだった。
環境省とEPOの間に立つ鈴木さんたちが日々行っているのは、各地域のEPOとの会議の調整、情報共有、合意形成など。現場で起きていることをどう環境省に伝えるか、日々言葉や図解を駆使しながらコミュニケーションを重ねていく。
立場も異なるからこそ考え方やものの見方は違う。
でも互いに現状を良くしたいという気持ちはあるわけで、その両者を通訳することが大切になってくる。

たとえば、環境省から新しいモデル事業の公募案が届いたときは、地方や地域とのチューニングをする。
「『このスケジュールだと地方で準備する時間があまりにも短すぎる』『この応募条件だと届けたい対象者に届かない』って、まずはGEOCが現場目線で環境省と壁打ちをして打ち返す」
「そこから練り直したものをEPOに展開して、現場で上がってきた声を聞いて、また環境省とすり合わせる。地域の未来にとって有益な政策を、一緒につくり上げていくんです」
また、数字だけでは測れない価値を、行政の言葉へ落とし込んでいくのも重要な役割。
「イベントをやって100人集めました、みたいな目に見える成果だけじゃなくて。EPOが間に入ることで多様な関係者が集まり、対話の場が生まれること自体が大きな価値なんです」
「それを行政に伝わる言葉に翻訳して伝えないと、『この事業で数字がこれだけなのか』みたいに思われてしまうこともある(笑)。だからこそ、裏方としての通訳がすごく大事なんです」
とはいえ、制度も仕組みも聞き慣れない言葉ばかりの未知の世界。未経験から始める仕事としては、ハードルが高いようにも思える。
「大切なことって、教員時代とあまり変わらなくて。目の前にいる人はどんな世界を見ているんだろう?何を大切にしているんだろう?って考えの背景に迫っていくことから始まるんですよね」
「最初から完璧に理解し合えるような関係性をつくろうとするんじゃなくて、『どこで話がズレちゃったんだろうね?』って振り返りながら認識をすり合わせていく。本省にもEPOに対しても、認識のすり合わせを粘り強く重ねて、少しずつ共通認識を広げていく。大変ですけど、そのプロセスがおもしろいんです」
そのやりとりを「往還(おうかん)」という言葉で表現する鈴木さん。現場の声を汲み上げ、行政の言葉へ翻訳して返し、また現場へと巡らせていく。

「はじめは先輩と一緒に全国各地へ出張して、EPOとの打合せや地域の対話の場に同行して雰囲気を肌で覚えていきます」
「出張先では、自治体やNPO、事業者さんなど、多様な人たちと出会えるおもしろさがある。地域の生の言葉を拾って、本省の動きに沿わせて翻訳して還していく。この往還の一翼を担っていることは、誇れることだなと思っています」
最後に話を聞いたのは、GEOCと同じく環境パートナーシップ会議が受託運営している、関東EPOスタッフの髙橋さん。前職では新潟県の農協で働き、地域づくりをしていた。

「求人をみて、農協で身についたコーディネート能力や地域での暮らしの手触り感を、次の場所でも活かせるかもしれないと思ったのが転職のきっかけでした」
現場の手触り感を大切にしながら、より広域で持続可能な仕組みづくりに関わりたいと、関東EPOに所属することに。
より地域に近い各エリアのEPOにとって、GEOCはどんな存在なのだろう。
「EPOからすると、GEOCを地域の現場に呼ぶこと自体がひとつの武器になるんです」
「中央に近い人として、イベントや協議の場に呼ぶ。EPOはより地域に近い関係性の中にいるので、その先のことを考えると言いにくいこともあるんです。そこに、地元とのしがらみがないGEOCがぽんと入ることで、地域に新しい風が吹いたり、光が差したりするんですよね」

全国に8つあるEPOも、地域独自の風土や関わるプレイヤーの関心、組織の熟度によって、それぞれのフェーズや得意分野にはグラデーションがある。
「地域によって、地域の規模や人の雰囲気、テーマも課題も違うからこそ、どこも手探り。EPOのスタッフは現場に入り込めば入り込むほど、地域の熱や感情に巻き込まれて、一緒に悩んだり立ち止まったりしてしまうこともあるんです」
「そんなときに、『感情はそうかもしれないけれど、客観的な視点から見るとこうだから、そこはこう考えてみる方がいいんじゃない?』って引き戻す。壁打ち相手としてGEOCは大切な存在なんです」
髙橋さんは、どんな人が向いていると思いますか?
「環境分野の専門知識があるかどうかよりも、まずは目の前の人に興味を持てるかどうかが一番大事だと思います。現場の人の情熱に耳を傾けたり、行政の人のロジックを理解しようとしたり。違う価値観を持つ人の間に立って、対話を楽しめる」
「私みたいに地域の現場で働いてきたとか、鈴木さんのように教師をした経験があるとか。現場で人に向き合ってきた経験は活かすことができると思っていて。地域に足りないものはなんだろうとか、現場と国の政策で合っていないことがあるんじゃないかとか。そういうことを考えたい人と一緒に働けたらうれしいですね」
片足は地域に置いたまま、もう片方の足を一歩前へ。
その一歩がいつかどこかの地域を支え、そこで暮らす人たちを救う仕組みになっていくのだと思います。
(2026/09/09 取材 大津恵理子)


