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ボールパークのまちで
建物が生まれ変わる
そのあとの景色を

北海道北広島市。

札幌駅までは列車で16分、新千歳空港までは20分。札幌と空港のちょうどあいだくらいにあるまちです。

2023年の春、このまちに北海道ボールパークFビレッジが開業しました。北海道日本ハムファイターズの本拠地、エスコンフィールドHOKKAIDO。それで知った人も多いと思います。

北海道の新しいランドマークとして全国から人が訪れ、市内の観光入込客数は年間459万人まで増加。

ただ、今回訪ねたのはそのボールパークではありません。

JR北広島駅西側、「駅西口」と呼ばれるところ。

駅西口エリアは、長年、未利用・低利用の土地があり、駅前の賑わい創出につながる土地利用が課題でした。

そこで、2021年、市は株式会社エスコンと10年間のパートナー協定を締結し、現在、北広島の新たな顔づくりを進めています。

今回、この駅西口の賑わいをつくる地域おこし協力隊を募集します。

市が後方支援を行い、エスコンなどが立ち上げる民間主導のエリアマネジメント法人との連携をしながら、行政や地域の人たちと一緒に企画を考え、みずから動いていく仕事です。

 

北広島駅の改札を出ると、いたるところにプロ野球チーム、北海道日本ハムファイターズの旗や看板が。ファイターズ、そしてボールパークのまちというのが、駅から伝わってくる。

西口を出た正面には、2025年の春に開業した複合交流拠点施設「トナリエ北広島」と「エスコンフィールドHOKKAIDOホテル北広島駅前」。トナリエには飲食店やドラッグストアなどが入っている。

その奥には197室の分譲マンションと認可保育所からなる居住交流施設が完成間近で、この秋には引き渡しが始まる。

少し歩けば北広公園が改修工事の最中。2026年秋のリニューアルオープンに向け、重機の音が響く。

一方で、長年、札幌市のベッドタウンとして成長したまちということもあり、朝・夕の通学通勤以外、駅前が閑散としている課題もある。

ただ駅西口がエスコンフィールドの玄関口となったことで、駅周辺は多くの人が集まるエリアになりつつある。そこで、官民連携で駅前開発が始まったところ。

計画通りに次々と建物は建つ。問題は、そこに人が計画通りに集まるかどうか。それはまったく別の話だ。

向かったのは、トナリエのなかにあるコワーキングスペースの会議室。窓からは駅の周りがよく見渡せる。

まずは、市役所の企画課で駅西口の活性化に取り組んできた畑中さんに話を聞く。

「もともとここ、公園だったんですよ」

そう言って、畑中さんは目の前の広場を指す。

「民間のエスコンさんに土地を売り払いをして、複合交流施設が建てられました」

「もとが公園だったからこそ、この施設も市民の方が憩える空間にしてくださいと、一緒に協議を重ねて。屋内外にたくさん、皆さんが集まれる場所や、憩えたり賑わったりできる場所をつくっていただいています」

市と株式会社エスコンが官民連携で、駅西口周辺エリア活性化事業に取り組みはじめたのが2019年度。

2023年には協議会を立ち上げ、地域の人や地元の商工会、観光協会と連携しながら、この広場でイベントなどを開催してきた。

「キッチンカーを集めたマルシェに、夏祭り。リングを持ってきて、プロレスのイベントをしたこともあります。あとはサンセットヨガとか。いろんなイベントを企画しました」

イベントの主となってきたのは、市の職員をはじめとする協議会のメンバー。

「もう、ものすごい泥臭いです。訪れた人が少しでも楽しんでもらえたらと、いろんなことをやってきましたね」

ただ、イベントが全てうまくいったかというと、そうではないと畑中さんは話す。

ボールパークに向かうシャトルバス乗り場は、広場の目の前にある。試合日には、何万人という人がここを必ず通る。だから当然、その人たちに向けて何度もイベントを実施した。

「でも、ボールパークに向かう人たちは、ほとんど寄らないんです」

寄らない?

「目的意識がボールパークなので。向こうでご飯を食べるし、向こうで飲むんですよ。一刻も早く球場に行きたいから、駅前のイベントにはなかなか立ち寄らない。これは痛いほど経験してきました」

459万人が、目の前を素通りしていく。

「だったらもう少し、市民に向けてやろうぜって。市民の視点をもっと大事にしていこうって」

ターゲットは、この街に住んでいる人。目指すのは日常的に使える駅前。

「駅前に行くと何かおもしろいことをしているとか、何かつながりができるとか。そんなエリアにできたら、すごくいいなと思います」

言葉にすると簡単だけれど、これはかなり地道なことでもある。

たとえば、花壇。

駅前には花植えの活動があって、「満開クラブ」と呼ばれている。町内会のような枠組みではなく、有志の集まりなのだそう。

「満開クラブに入っているおじさんやおばさんが、僕らが動いてないところでも熱心に動いてくださっていて。草取りとかしてくれたり、枯れたつぼみを取ったり」

夏祭りには、エスコンフィールドの横にある北広島高校の生徒会が手伝いに来てくれた。

先日開かれた協議会の定例会には、千葉から移住してきて、西口のマンションを買った人がふらりと顔を出したという。どんな活動をしているのか、興味があったらしい。

「少しずつ、地域の人が集まる拠点というか。そういう風になってきたように感じています」

こうした地域主体の活動は「部活動」と呼ばれていて、協力隊の業務にも位置づけられている。部活動に顔を出すこと。メンバーやまちづくりに関心のある人が集まるLINEのオープンチャットを運用することなど。

実際には、草を取っている人の隣にしゃがんで話をする。そんなところから始めていってほしい。

この11月には、協議会が一般社団法人になる。エスコンに加えて、北海道各地でエリアマネジメントを手がける会社や、駅前の設計を担当している東京の会社も入る予定。

協力隊員は市とエリアマネジメント法人、そして地域をつなぐ役回りになる。

「市とエスコンの距離は、かなり近いです。定例会議だけでも、もう百何十回。何日か会わなかったら久しぶりだね、みたいな感じですね」

「向こうは民間なので、収益性も重要だと思うんです。一方で僕らは賑わいという、数値では測れないものを重要視している。ぶつかるところは絶対あると思うんですよね」

それでも、と畑中さんは続ける。

「目指すのは駅前の価値向上。民間側も、賑わいが生まれたら資産価値が上がるわけなので。目的が一緒であれば、うまくいくのかなと。意見も忌憚なくぶつけ合えます」

「僕ら、西口チームって言われるんですけど、羨ましがられるんですよ。役所でチームって、あんまりないので」

 

そのチームの、エスコン側にいるのが三﨑さんだ。

エスコンに入社して2年目。千葉県の出身で、大学は東京の音楽大学に通っていた。

専攻は声楽。オペラをしていたそう。

大学生のころ、声を使う仕事を探していて、大学スポーツの実況の仕事をもらった。野球のルールを覚えようと見はじめたプロ野球が、たまたまファイターズ。動画を見ているうちに、そのままハマってしまったという。

「友達と北海道に行ったのが、コロナ禍のときだったんです。ガラガラの札幌ドームに見に行って」

「打球の乾いた音とか、選手の息遣いとかがダイレクトに聞こえてくるんですよ。こんなに臨場感があるんだって感動しました」

初めての北海道は夏。涼しくて、ご飯がおいしかった。SNSで野球ファンに店を尋ねると、みんな親切に教えてくれた。

人生のどこかで北海道に住みたい、と思うようになったのはそれからだった。

大学院ではまちづくりのデベロッパーのインターンに誘われる機会があった。そのときに、エスコンフィールドのエスコンがデベロッパーだということに気づいたそう。

「ファイターズが好きで、まちづくりに興味があって、北海道に住みたい。三本の線が一点で交わった感じですね。それで入社したいと思いました」

「エスコンが開業した初日に遊びに来たんですけど、まだ駅前は何もできてなくて。アスファルトしかないイメージだったので、駅前ってなんもねえなって思ったのを覚えています」

その「なんもねえな」だった場所で、今は働いている。

一年目は、知ることで精一杯だった。今年に入ってからは、市内の祭りに顔を出して、関係性を深めている。

意外だったのは、地域の人の年齢層。

「高齢社会と聞いていたんですが、みんなアクティブで。若い人もいて。人がすごくおもしろいなと思いました」

「難しいのは、情報の拡散ですね。東京だとInstagramに載せて、ターゲット広告でリーチできると思うんですけど、このまちだと東京と同じようにはいかない」

効くのは、紙のチラシを直接配ること、市役所を通して小学校に配ってもらうこと。そして何より、口コミ。

「どのイベントをやっても、知ったきっかけの上位に来るのが口コミなんですよ。お友達から聞いたとか、噂で聞いたとか」

「そういうのって、キーになる人がいると思うんです。情報発信するママとか、おじいちゃんたちの井戸端会議とか。そういうところにリーチできるように、もっと市民生活の中に深く入っていく必要がある。ゆくゆくは一緒にイベントをつくり上げられるようになれたらいいですよね」

三﨑さんはどんな人と一緒に働きたいですか。

「熱しやすく、冷めにくい方ですね」

熱しやすく、冷めにくい。

「おもしろいプレイヤーはたくさんいらっしゃるんです。彼らのアイデアに興味を持って、一緒に何かやろうって、具体化してイベントをつくり上げる。そういう方がいたら、さらにおもしろくなりそうだなと」

畑中さんの答えも、重なっていた。

「人と話すことが好きで、人の話を聞くことが好きな人。たとえばコンサルとかイベントの企画運営の経験とかはあるに越したことはないですが、必ず求めるようなスキルではないと思っていて」

「すぐに新しいものを生み出さなくとも、まずは協議会ですでにやっているイベントのお手伝いとか。まず知ることを1年間かけてやってもらえたら。その後、自分らしいアイデアを2年目以降に加えていただきながら、企画していってもらいたいですね」

住まいは市が民間の賃貸住宅家賃の一部を負担してくれる。届け出て承認を受ければ、兼業もできる。

任期は3年。その先については、まちづくり法人に入ることは歓迎。ほかにも、起業するという道もある。

「我々も全力で応援させていただきたいと思っています」

取材の最後に、ふたりの原動力は何かを聞いてみた。

まずは畑中さん。

「決められたレールじゃなく、ゼロからつくり上げる喜び。行政って、決められたものが多いんですよね。でも、この駅前の開発は何も制約がない。だからこそ、こんなイベントをしたら喜んでもらえるんじゃないかって、ゼロからエスコンさんと一緒につくり上げられる。それがおもしろいです」

続いて三﨑さん。

「自分は、その時々で一番おもしろいと思える選択肢を取ってきました。北海道に来たのも、エスコンで仕事をしたらおもしろそうだと思ったから。自分がいいと思うものを突き詰めていったら、多分、周りの人もいいと思ってくれる。勝手な自信を持ってるんです」

「北広島は、おもしろいですよ」

 

開発は建物を建てて終わりではない。そのあとにここで何を起こすのか。それがこれからの肝になるところだ。

まちを形にしていく、その一員になってみませんか。

11月20日には19時から「ローカルハブスペースOFF TOKYO (東京都中央区日本橋小伝馬町21-1)」にてリアルイベントがあります。詳細はこちらから。ぜひお越しください。

(2026/09/01 取材 稲本琢仙)

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