心が惹かれるものには、どんな背景があるんだろう。
形や色、素材、使い心地。その一つひとつに、つくる人の考えや試行錯誤が重なっています。
その過程を知ると、ものの見え方も変わってくる。
関坂さんは、デザイナーやつくり手との対話を重ねながら、ものづくりに向き合ってきた方。
1701年創業の漆器メーカーを経営し、ショップ「ataW(アタウ)」を運営。
自社ブランド「SEKISAKA」をはじめ、国内外からセレクトしたプロダクトが並ぶ空間。洗練されていて、どこに目を向けても発見があります。

今回は、福井県越前市にあるataWの店舗運営スタッフを募集します。
店舗での接客を軸に、企画展やオンラインショップの運営、SNS発信など業務はさまざま。東京や海外の展示会に同行する可能性もあり、ショップとものづくり両方に携わることができます。
1701年創業の老舗メーカーでありながら、20代を中心に若手メンバーが引っ張っている環境。デザインやアートが好きな人にとって、学びの多い毎日だと思います。
近年、この地域では移住者が増え、交流も盛んです。日々の暮らしも楽しみたい人は、ぜひ読んでみてください。
福井県の丹南(たんなん)地域。
車を走らせると、なだらかな田んぼ道に遠くの山々がどこまでもつづく。秋晴れで気持ちがいい。思わず窓を開ける。
鯖江駅から10分ほどで、ataWが見えてきた。

この近辺は、漆器や和紙、打刃物、箪笥といった伝統工芸から、繊維、眼鏡まで、多様なものづくりが盛んな地域。
代表の関坂さんは、家業を受け継ぐ12代目。国内外のデザイナーと協業し、新たなものづくりに取り組んでいる。
店内には、デザインプロダクトやオブジェクト、作家ものの器、洋服、家具など、国内外からセレクトされた商品が並ぶ。
奥に進むと、気になる漆器のお椀があった。

「片山椀は、倉庫に眠っていた自社の漆器のお椀をもとに再構築しました。鯖江市片山町は、越前漆器の発祥地であり、セキサカの創業地です。赤いお椀は、移転先の越前市赤坂町にちなむ赤坂椀。並べたときに寄り添うよう、新たにデザインしました」
なめらかな曲線と、手に馴染む触り心地。受け継がれてきたかたちをベースに、関坂さんの視点によって、いまの空気を纏う道具へとアップデートされている。
専門学校でプロダクトデザインを学び、海外を旅するなかでヨーロッパのデザインや文化に惹かれた。オランダの美術大学Design Academy Eindhovenへ編入したあと、東京のデザイン事務所で数年間働いた。
祖父の代から、旅館や学校、機内食、介護施設向けの食器の製造・卸を中心に事業を続けてきたセキサカ。
「当時、会社の経営は厳しく、業務用ブランドには区切りをつけようと考えていました。家業を継ぐなら、培ってきた産地の技術を活かし、自分の生活でも使いたいものを、デザイナーとゼロからつくりたい。それが、自社ブランド『SEKISAKA』の出発点です」
関坂さんは業務用ブランドを地元の同業者に譲渡し、新たなものづくりへ舵を切った。
「初めての展示会は友人のデザイナー二組とつくった2つの商品だけで、卸先もほとんど見つかりませんでした(笑)。それでも開発を続け、商品が増えるにつれて、少しずつブランドの世界観ができてきました」
SEKISAKAは、さまざまなデザイナーと協業する。デザインや素材、用途は異なるけれど、一部の商品に共通の色を使い、ブランドとしてのまとまりを生む。

「『Form Follows Feeling』。心が動く形や佇まいを、デザイナーと一緒に探っていくんです」
「デザイナーとも、職人や工場とも、僕自身が直接対話を重ね、デザインに込めた思いを製品になるまでつないでいく。そうすることで、デザインの純度を保ったプロダクトを世の中に届けることができます」
使い方をひとつに限定せず、使う人の発想に委ねる余地がある商品たち。最近発売した「TUB」も、現代のタライとして、ものを入れたり運んだり、暮らしのさまざまな場面で使うことができる。

「お店ではお客さんに『これってなんですか?』『何に使えますか?』とよく聞かれます。伝え方次第で、工夫して幅広く使っていただけると思います」
ataWの前身「与十郎」は、セキサカの創業300周年を記念して開店。先代の名にちなむ店名から、代替わりを機に「与」を訓読みした「ataW(アタウ)」へ改名した。
「ataWの開店当初は、まだ自社ブランドがなかったので、セレクトショップとしてスタートしました。2度の改装を重ね、品揃えや見せ方も地道に更新するなかで、県外からも足を運んでいただけるようになりました」
「店舗スタッフには、接客だけじゃないプロダクトとの関わりがあると思います。プロダクトについて、直接デザイナーに聞く機会もありますし、海外のデザイナーもよく来てくれる。商品開発を間近で見られるので、楽しんでもらえたら」
ここで働くには、デザインの知識や磨かれた感性が必要なのかなと、少し身構える。

「感覚や美意識は人それぞれ。ものへの好奇心と、仲間やお客さんに誠実に向き合う姿勢があれば大丈夫ですよ」
「遠方から来てくださる方も多いので、お客さんとの対話を大切に、ものの魅力を自分の言葉で伝えてもらえたらと思います」
ataWで働くため東京から移住したのは、ショップスタッフの金森さん。

入社して5年目、新しく入る人の先輩になる。
大学でデザインを専攻するなか、つくり手と使い手の間に立つ伝え手の重要性を考えるようになった。お店づくりに興味を持っていたとき、ataWの求人を知る。
「ataWは実際に訪れたことはなかったのですが、自社商品やセレクトされているものが好きでSNSで見ていました。産地内でメーカーの視点を持ちながら、伝え届ける場として存在するataWは、当時の自分の興味にぴったりで。チャンスのように感じて応募しました」
見ず知らずの土地での暮らし。不安はありましたか。
「この辺りは移住者のコミュニティがしっかりあって、同年代も多いです。車が必要なときも『地元の人が安く譲ってくれるよ』と教えてもらって。移住者を受け入れる体制が整っているし、ご年配の方や職人さんも可愛がってくれて、地域の輪に入りやすかったです」
「出勤も、満員電車から車通勤になり、夕焼けに向かって帰る景色はとてもきれいで。冬の雪かきも早起きで体力を使いますけど、新鮮な体験でした」
ataWも、午後は光が入ってドラマティックな雰囲気に。

平日でも、近所の常連さんや県外のお客さんが来店する。20代から70代、さまざまな人と出会う。
「客層が広いのはギャップでした。コミュニケーションを取りながら、しっかりお客さんをお迎えする。けっして来やすい場所ではないので、ここまで足を運んでくださった方を特別扱いしたくて。お買い物をしなくても、いい時間になったなと帰っていただけたら」
使い道が決まっていないプロダクトは、どんなふうに伝えていますか。
「『そんな使い方もできるんだ!』とお客様にとって発見につながる提案を心がけています。このトレイだったら、ものを置くだけじゃなくて、壁に飾るのも面白いですよ!とか」

「デザイナーと関坂のやりとりを見て、プロダクトをよく観察して、咀嚼するから発案できる。接客の仕方を考えるのも、楽しい過程になると思います」
金森さんは店頭に立ちながら、オンラインショップの運営、SNS用の写真撮影、企画展の進行などさまざまな業務を日々おこなう。最近では、オンラインショップのリニューアルを担当した。

「在庫管理とオペレーションから見直しました。ウェブデザインやコーディングも外注できましたけど、やってみたいと思って勉強しながら制作しました。入社したときに予想もしなかった、いい経験ばかりです」
「ataWのファンだったから全部が楽しいですね」と照れくさそうに笑う。
店舗運営スタッフは、金森さんを入れて3人。お客さんがいないときに、急遽SNS用の撮影をすることも。
「仕事の分担や1日の流れは、その日の状況に合わせて調整しています。決まった業務に加え、やるべきことを自分で考えて柔軟に動く力も必要になってくると思います」
「少人数だからこそ、シンプルに思いやりを持って一緒に働きたいですね。自社でものづくりをしていて、つくり手の顔を浮かべながらお客さんに伝えられる。なかなかこんな場所はないはず。いろんな仕事を楽しんでもらえたらうれしいです」
広報スタッフの豊田さんは、新しい人が入るまでのあいだ金森さんとお店を運営している。事務所とお店、シームレスなのもセキサカの特徴。

「前職も販売スタッフでした。小売だけではなく、商品ができるまでの工程、卸しや展示会など、一連の流れを見られるのはおもしろい会社だなと思って、転職。事務所と店舗、いそがしさを互いに見ながら手を貸し合えるのも働いていて助かっています」
ataWには接客のマニュアルがない。これまでの経験もあったけれど、あらためて自分のやり方を探していった。
「お客さんとの対話を通じて、だんだん掴んでいくものがありました。ネットで買える時代だからこそ、温かみのある接客を意識していますね」
店舗では年に4回ほどデザイナーや作家を招いてイベントを開催。企画の進行、準備や後片付けなど同じ毎日が過ぎることはない。

「波がしっかりあるので、わくわくした気持ちで働けています。作家さんとお話しするのも刺激的ですし、ただ販売だけしているって感覚はあまりないかもしれません」
「先日は、東京で開催された展示会に連れて行ってもらいました。自社ブランド『SEKISAKA』の販路を広げる、B to Bの展示会で。普段とちがう、バイヤーさんなど企業の方に触れ合えるのも新鮮な時間でした」
やるべきことは多い一方で、連休が多くしっかり自分の時間も整えられる。
「展示の前後は残業もありますが、1時間以上は滅多にありません。店休日は水曜と木曜。GWやお盆、祝日は出勤しますが、別の日に休みを取り、店休日と合わせて3、4連休になることも。店舗スタッフでもまとまった休みが取れるのはうれしいですね」
ataWで働くなら、どんな人が合うでしょうか。

「私自身、デザインの専門的な勉強はしていなくて、この会社に入ってから教えてもらいました。学ぶことが好きだったり、接客やお話を楽しめたり、前向きな人だとここで働きやすいと思います」
取材を終えて、関坂さんにプロダクトのサンプルを見せてもらいました。
1年かけて、いろんな色や形を試す。ものができあがるまでの道のりは果てしないと改めて感じます。
「周りの評価や流行にかかわらず、自分が心からいいと思えるかどうか。その感覚には、正直でありたいと思っています」

この言葉に、セキサカのプロダクトが持つ芯と美しさがあるように思います。
ものづくりを間近で見る。お客さんに伝える。直接反応が返ってくる。
実りある日々が、ここで待っていると思います。
(2026/09/11 取材 久保泉)


