奈良市と日本仕事百貨が共同で行うサテライトオフィスプロジェクト。
日本仕事百貨のメディア上で特集ページを開設し、奈良市のいいエリアや、オフィス、物件を紹介する記事を公開しています。
2025年2月19日には、日本仕事百貨のオフィスがある清澄白河のリトルトーキョーで、トークイベント「サテライトオフィスをつくる まちの個性を活かす-奈良編-」を開催しました。
第2部では、「奈良市」をフィールドに、サテライトオフィスをかまえる意味について、お話をします。
なぜサテライトオフィスが必要なのか。なぜ奈良なのか。
これからの新しいはたらき方のヒントにもなるはず。
「サテライトオフィスをつくる まちの個性を活かす-奈良編-」というテーマで話を聞きました。
聞き手は、日本仕事百貨の中野です。
――まずは自己紹介からお願いします。
BONCHI・中島章さん
みなさんはじめまして。一般社団法人TOMOSUの中島です。
奈良市さんからの委託を受けて、市の創業支援施設「BONCHI」を運営しています。
誠勝・山本大視さん
株式会社誠勝の山本です。株式会社誠勝は、歴史的な資料や貴重な記録をデジタルアーカイブし、誰もが活用できる仕組みを提供するサービスを展開しています。
2021年から奈良市にサテライトオフィスを構えています。
奈良市・兎本さん
はじめまして。奈良市役所の産業政策課の兎本です。
「企業立地コンシェルジュ」として企業さんが奈良市に進出される際の支援から進出後のサポートまでをワンストップで行っています。
奈良市・高田さん
同じく企業立地コンシェルジュの高田です。
東京圏の企業さんと話していると、奈良市にはたらく場所というイメージを持っていない方が多い印象だったので、これをきっかけに奈良に来ていただけたらと思います。
――誠勝さんが奈良にサテライトオフィスを構えた経緯を教えていただけますか?
誠勝・山本大視さん
最初は単純な理由でして。
弊社へのご依頼のなかで、関西圏からの問い合わせが全体の5パーセントしかなかったんですよ。
貴重資料の電子化をする際、どうしても弊社の本社がある東京まで資料を持ってくる必要があります。貴重な資料の長距離移動にはリスクがあるので、近場の企業に頼む傾向があるんですね。
それで、関西圏の売り上げを伸ばすためには、関西に進出すべきだと思ったんです。
――なぜ奈良だったんでしょうか?
誠勝・山本大視さん
奈良市さんのリアクションが早かった。問い合わせをしたら、次の日に「東京へ会いに行きます」と。
補助金以外のいろいろなサポートも心強かったです。あとから知ったことですが、補助制度などをうまく活用しつつ、サテライトオフィスを開設するのには手間もかかる。資料作成のサポートも含め、奈良市でよかったなと。
――奈良市さんはサポートが手厚いんですね。
奈良市・兎本さん
奈良市は観光のイメージが強いので、問い合わせが多くあるわけではないんです。
なので、一社一社大事にしたいという思いがあります。たとえば、物件探しや、当日の同行もします。
また誘致して終わりではなく、進出後の関係性も大切にしています。奈良の産業を一緒によくしていくためのパートナーだと思っています。
市内のデジタルサイネージなどを活用して、企業が開くイベントの広報支援を行う。あるいは大学をはじめとする学術機関とおつなぎする。誠勝さんとは、2ヶ月に1度の情報交換会も行っていて進出後の関係性も大切にしています。
BONCHI・中島章さん
僕たちが奈良で運営している創業支援施設BONCHIも、兎本さん、高田さんのいる産業政策課と一緒につくっていることを強く感じます。
「委託者と受託者」という関係になりがちだと思うんですが、奈良市は二人三脚感がある。
――奈良市さんが親身にサポートしてくれるんですね。まちとして、奈良市にはどんな魅力がありますか?
誠勝・山本大視さん
欠かせなかったのは、災害の観点ですね。貴重資料を扱う会社なので、災害による被害は最大限避けなくてはいけない。
あとは人材の面。奈良県は女性の就業率が全国でほぼ最下位ですが、伸び率が高い。つまり、女性がどんどんはたらくようになっています。
人材採用の面では狙い通りになっていて、東京とは圧倒的な違いを感じています。弊社は4月から新卒が2名入るんですけど、ともに奈良での採用です。
東京では大手企業との競合もあり、採用が難しい。奈良には、奈良で働きたいという優秀な層が一定数いる。人材採用という面はかなりよくなっていますね。
――次は中島さんにBONCHIの話をうかがいたいです。改めてどんな場所なんでしょうか?
BONCHI・中島章さん
BONCHIは、奈良市の創業支援施設です。
コワーキングスペースが併設しているので、日常的な仕事場としてはもちろん、会議やイベントにも使っていただいています。
奈良市には、奈良県よろず支援拠点さんや奈良商工会議所さんといったこれから創業する方を支援する機関が充実しています。
そことの違いを考えたときに、もう少し手前の部分で、どうしようか迷っている方々に対しても、サポートするような施設になっています。
リトルトーキョーでは6月に「ならわい」という奈良県の方が地元企業の新規事業を考えるイベントを開催しました。
そういった外とのハブになるようなプロジェクトを企画しています。
――コワーキングスペースはどういう人が利用しているんですか?
BONCHI・中島章さん
4割くらいは比較的小規模の企業の経営者、3割はフリーランス。2割くらいが企業に勤めている方。残りは学生の方ですね。
年代でいうと30代、40代がメインの層ですが、学生向けのプログラムも行っていることもあって、10代の学生から70代までいらっしゃいます。
――いろんな方がいらっしゃるんですね。利用者はBONCHIにどんなことを求めているのでしょう?
BONCHI・中島章さん
単に作業机を求めているわけではないと思います。というのも、東京に比べて家賃が安いので、リモート環境を自宅に整えやすい。実際に自宅に仕事部屋をつくっている方も結構多いです。
ただ、一人で仕事をしていると、人と喋りたくなったり、交流したくなったり。そこを求めて利用する方が多いようです。
大越はじめさん
物理的機能に加えて、コミュニティという心理的機能を求める人が多いんですね。
BONCHI・中島章さん
確かに、BONCHI BAR+(ぼんちばーぷらす)という月に一回の交流の場に必ず来てくれる人もいますね。
――東京や大阪と比べての奈良の良さはなんでしょうか?
BONCHI・中島章さん
やっぱり時間の流れがゆっくりしていることですかね。抽象的な話にはなるんですけど。
BONCHIがあるのは、近鉄奈良駅から歩いて5分ほどの場所なんですけど、その周辺を普通に鹿が歩いている。だから、休憩時間にカメラを片手にリフレッシュしたり、歩きながらアイデアを考えたり。
効率性や合理性ベースから思考を切り替える場所として、奈良はすごくいい。
大越はじめさん
奈良市の人口は35万人なんですが、これって東京でいうと豊島区、新宿区と同じくらいなんです。でも、面積は豊島区の20倍ある。
それってつまり、1人の市民が自由に使えるスペースが20倍あるとも言える。誰かと会いたいときは会えて、一人になる余白もある。
BONCHI・中島章さん
BONCHIには、フリーランスの専門的なスキルをもった方々や、会社を経営されている方もいらっしゃって。
webサイトをつくりたいという話だったり、ドローンを飛ばしたいといった会話が、いわゆる受注、発注の関係ではなくて、顔の見える関係性の中で生まれていますね。奈良市さんの協力もあって、企業と大学がつながって共同研究につながることもあります。
――奈良市さんの協力が新しい可能性を生み出しているんですね。まさに「コンシェルジュ」ですね。
奈良市・高田さん
「行政は民間企業に比べてスピード感が遅い」と言われることがあります。私たちがコンシェルジュとして企業さんの前に立って、各部署の連携をスムーズにして、一緒に事業をしていきたいです。
サテライトオフィスの誘致がはじまって5年ほどが経ち、立地協定を結ばせていただいた企業さんも8社に増えました。
――トークテーマである「まちの個性を活かす」についても聞きたいです。「はたらくまち」としての奈良の魅力とはなんでしょうか?
誠勝・山本大視さん
会社が奈良に進出したとき、私も奈良に2年間住んでいました。そこで感じたのは、アイデアが出やすいということ。
「著名な数学者が輩出されるのは、日本やインドといった風景がきれいなところ」という説があります。奈良もそうかもしれません。
一方で、東京と比べると時間の流れがゆっくりなのでどうしてものんびりしがち。そこは自制しています。
BONCHI・中島章さん
BONCHIを立ち上げた2020年はコロナ禍と重なりました。オープニングでやろうとしていたことが、軒並みできなくなり、翌月には緊急事態宣言で休館して。
そのときに、BONCHIで『いい仕事ができるまち』というコンセプトを打ち出しました。
奈良に観光地やベッドタウンというイメージを持っている方も多い。でも、1000年続くお寺や行事が近くにあったり、自然へのアクセスもいい。クリエイティビティを高める要素はたくさんある。歩いたら世界遺産があって、原始林がある環境って、なかなかないと思うんです。
なので、何かを生み出す仕事には適していると思う。都市の効率性とは違った、オルタナティブな場所。
個人的には、3年ぐらい奈良ではたらくキャリアは面白そうだなと思います。そんなサテライトオフィスの使い方も面白いんじゃないかな。
――おもしろそうですね。最後に奈良市の二人から一言お願いします。
奈良市・兎本さん
企業さんが奈良にくるとアクセスの良さだったり、自然との距離に驚かれることが多いんです。百聞は一見にしかずというか、ぜひ一度来ていただければうれしいです。
奈良市・高田さん
来ていただいたときは、私たちもしっかりコーディネートできるように頑張りますので!
(文章:中野悟史)
当日の様子はYouTubeでアーカイブ視聴することができます。
〈特集ページ〉つくる?サテライトオフィス 社員も社長も会社も変わる
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