15年も、同じまちのことを発信し続ける理由って、なんだろう。
仕事でもなければ、誰かに頼まれているわけでもない。長い間淡々と続いているものには、きっと無理のない理由がある。

たとえば、自分のまわりにいる人が、ほんの少しご機嫌になる。その変化を見て、自分もまた救われる。自分のためにやっていることが、結果として誰かのためにもなっている。
自分の「好き」と「得意」が重なったとき、人は物事を長く続けられるのかもしれない。
今回の「清澄白河しごとひと蒐集散歩」では、ウェブサイトとSNS等で「清澄白河ガイド」を15年続けてきた調(しらべ)さんに話を聞きました。
清洲橋通りを東京現代美術館のほうへ進んでいくと、「中華 洋食 ことぶき本店」というレトロなお店を見つける。今はもう閉店しているみたい。
今回はこの建物の裏側にある「清澄白河実験室-ことぶき-」へ。

路地裏にひっそりと佇む場所。木造で、中は整頓されていてスタイリッシュ。
「1階は不定期で開店するショップ。月1回、マルシェを開催していて、オリジナルのコーヒーシロップを販売したり。2階は、『清澄白河写真室』っていう、家族写真の出張撮影のスタジオでもあるんです」
そう丁寧に紹介してくれる調さん。2階に案内してもらい、話を聞く。

―本当にさまざまな活動されていますね。あらためて調さんについて、教えてください。
主に「清澄白河ガイド」っていう情報発信をSNSでやっています。今は、清澄白河だけでなく、森下、門前仲町… 周辺のエリアに広がって、8つくらいガイドのアカウントがあって。15年目か… 新卒の子がもう37歳でしょ、だいぶ中堅ですよ。数えると重みを感じますね。
「調」って、ペンネームではなくて、本名で。ぴったりな名前ってよく驚かれます(笑)。
2022年からは「清澄白河実験室」という屋号で、podcastでしゃべったり、クレープ屋さんやったり、コーヒーシロップをつくったりしています。
自分が面白がれて、かつまちの人に少しでも喜んでもらえる活動ができたらいいなって。それで実験室という名前で活動しているんです。
もともとは神奈川県育ち。前職は豊洲のITの会社で働いていて、引っ越し先として見つけたのが清澄白河でした。来てみると川と公園があって空が広い。ゆったりしたまちの空気が自分に合っていて最高だなって。でも、同級生に清澄白河と言っても「どこ?」って、あまり知っている人がいなかったんです。
こんなにいいまちなのに、なんで知らないんだろうって。知ってもらいたい気持ちで、2011年から「清澄いいね」というFacebookのファンページをスタートさせました。小名木川(おなぎがわ)の桜が素敵だったので、その投稿が最初でしたね。
投稿の仕方はずっと一緒です。お店だったら外観と食事の写真を撮影して、注文した内容を記載するくらい。感想とか意見は添えないんです。もともと文章を書くのが得意ではないのもあって。淡々としているから、たまにbotじゃないかって言われます(笑)

―どうして15年も続けられるんでしょう。
同じことを淡々と続けていくのは、好きとは違うけど苦ではないんです。それに加えて新しい発見があるっていうのがちょうどいいんでしょうね。
ガイドとして一番喜ばれることって、新しいお店の情報なんですよ。フォローしてくださる方も待ってくださっているし、私自身もこの発見がワクワクする。今度こんなんできるんだって知ると、純粋にうれしいんです。
20、30代のころは、自分の好きなこと、楽しいことがずっとわかんなかった。でもガイドを続けてきたおかげで、ご縁が広がって。カメラマンにもクレープ屋さんにもなって、コーヒーシロップもつくってお店も構えた。腕があるわけじゃないんですけどね。ご縁がなければ、やってなかったです。
やったことないことに対して、ハードルを感じないのかもしれない。いろんなことをしたいって思うんですよ。見たことない行ったことないところを訪れてみたい。これからも今の自分じゃ思いもよらないことをやっている可能性もあるな。

―今後はどんなことを考えていますか?
自分がすごく好きなまちがある人っていると思うんです。その想いを、清澄白河ガイドのようなモデルで形にできて、きちんとお金が回る。
そうなればお店の人もまちに住んでいる人も、ちょっとハッピーになる。そうすると発信者もうれしいし、続けるモチベーションになる。そういう流れをつくりたい。
これまでガイドは、お店からお金をいただかずに発信してきました。ただ、活動を継続するためにはお金を生む仕組みも必要だと感じていて。少しずつ認知されて、発信力もついてきたいま、これからはお店やまちの力になる仕事として、対価をいただきながら活動を続けていきたいですね。
一つのモデルになれるように、直近は「清澄白河実験室-ことぶき-」を清澄白河のお土産屋さんにしたいと思っています。ちょっとした野望は、羽田空港にコーヒーシロップをお土産として置いてもらうこと。そこまでできるとうれしいですね(笑)。

―最後に、調さんにとって自分の仕事はなんでしょう?
清澄白河ガイドは、私の好きと得意が重なったところ。生きがいだなって感じます。
自分の周りにご機嫌な人が増えたら、私はハッピーなんですよね。たとえば、嫌なことあったときに、ガイドを見て「このワインおいしそうだな、今週末行ってみよう」ってなる。それでハッピーになってくれたら、その嫌な気持ちは連鎖しないと思うんです。
自己満足だけじゃなくて、少しはまちの人のためになっている。それが日々のエネルギーになるし、もしかしたら自分にもなにか返ってくるかもしれない。いろんなまちでそういうのが増えたら、平和になっていくのかなって。ささやかですけどね。
(2025/10/17 取材 大津恵理子)

このコラムでは、わたしたちのオフィスがある東京・清澄白河でさまざまな人に話を聞き、「自分の仕事」のヒントをあつめる企画です。
