コラム

動かずにはいられない!
だって1年後には、
丸ごと生まれ変わるんだから

「自分が自分であるために、動き続けないといけないんです」

幼いころ、父と一緒に「ゴジラ」の映画を観たことをきっかけに、大学に入ると仲間と自主映画を撮り始め、休日はほぼカメラと編集機材のそばにいる生活を送った。

気づけば、それが自分の武器になり、仕事になっていた。子どもが生まれて親になっても、カメラを構え続けている。

好きなもの、得意なことを続けるには、自分を動かし続けること。それが自分を最も活かすことになる。

今回の清澄白河しごとひと蒐集散歩では、そうやって生きるように働いているご近所さんに話を聞きました。

 

清澄白河駅のA3出口から、道路を挟んだところに清澄庭園がある。その隣にある清澄公園が今回の待ち合わせ場所。

夕暮れどき、公園には犬と散歩する人が集っている。

入り口で待っていると、からし色のTシャツを着た人が自転車を走らせて、こちらへ近づいて来た。

「こんにちは〜」と、穏やかな声とやわらかな目尻で挨拶してくれたのが、「つぼけん」こと坪谷健太郎さん。

ご近所に住まいがあり、よくリトルトーキョーにも遊びに来てくれる。

自転車の荷台が一般的なものと比べて大きい。ロングテールバイクといって、もともとお子さんが幼いころに送り迎えをするために使用していた。今は、仕事で使用する機材を積んでいるそう。

落ち着いたところで、公園のベンチに座り話を聞く。

ー つぼけんさんについて教えてください。

本業は映像制作です。15年以上、テレビの情報報道やドキュメンタリーのカメラマンやディレクターをしてきました。3年ほど前に別の部署に異動して、今は新卒採用などさまざまな映像コンテンツをつくっています。

当時は、東日本大震災の被災地に密着したり、南極地域観測隊に同行してドキュメンタリーを撮影したり。数週間から数ヶ月ほど現地に滞在することもありました。

とくに印象的だったのは、ホームレスの方への取材。夕方のニュース番組で、密着ドキュメンタリーのコーナーを担当することになって。自分で密着するホームレスの方を探す必要があったので、多摩川の河川敷をうろうろしてたんですね。

そこで偶然出会ったホームレスのおじさんがおもしろい方で。たとえば、豪雨で住居が流されたら、飼っている烏骨鶏が産んだ卵をご近所に渡しに行く。田園調布が近いので、セレブの奥さまたちとしっかりと人間関係を築いて、お返しに建材を支援してもらって、住居を再建していたんです。ものすごいパワーが、いまだに印象に残っています。

ー さまざまな状況や人に体当たりで撮影してきたんですね。そのタフさはどこからきているんでしょう。

基本ポジティブで、辛いこともすぐに忘れちゃう性格だからかもしれません(笑)。

あと僕、仏像が好きなんです。それで、20代でチベットに行って、寺院で僧侶を撮影させてもらったことがあって。現地の言葉はできなかったけれど、身振り手振りと教えてもらったお経を一緒に唱えていたらなんとかなって。それに比べたら、「日本語が通じるだけで楽勝だ」って思うんですよね。

もちろん大変なこともたくさんありました。たとえば、テレビは視聴率の反応が目に見えてわかる勝負の世界でもある。でも、それも含めて好きなんです。つくったものは、年齢とか性別とか関係なく評価される。フェアだと思うんですよね。

ー 今後はどんなことを考えているんでしょう?

これまで映像専門で仕事をしてきたんですけど、写真を撮ることもずっと好きでした。今は個人活動として「Zinstant(ジンスタント)」をつくっています。「ZINE」と「インスタント」をかけた造語で、写真を撮影して即席でつくる冊子のこと。

たとえば、小中高生と一緒に地元の商店街に行って、店主のみなさんを撮影して、Zinstantにしてプレゼントしたこともありましたよ。

きっかけは、趣味で続けているポッドキャスト。「ほぼ教育最前線 あなたにかわって、私が聞きます。」と言って学校教育に関することをテーマにしています。僕自身、小学生の子どもがいて、ブラック校則とか「それってどうなの?」と学校教育について疑問を持つことがありました。

でも、その番組を通して全国の先生たちに出会うことですごく素敵な人たちも多いことを知りました。先生自身が自己肯定感を持てば、周りにいる子どもたちにもそれが伝わって、10年、20年後には、子どもたちが素敵な大人になっていくかもしれないと思ったんですよね。

人って多面的。この人合わないかもと思っても、接し方を変えてみると、すごく魅力的な側面も見つかるかもしれない。写真を撮って切り取ることで、そんな体験をする人を増やしていきたいんです。

自分に対しても、他人に対してもいいところを見つけて伸ばすのが好き。僕の個性と写真を組み合わせることで、役に立つことをしたいと思っています。

ー 最後に、つぼけんさんにとって自分の仕事はなんでしょう?

学校だと、勉強する時間も登校する時間も、ある程度やるべきことが決められている。でも、大学生になる18歳の春休みに、やっと好きな映像を突き詰めていけるってワクワク感を味わって。

そこからずっと熱が冷めていないんです。だから、あんまり仕事っていう感覚はなくて、好きで続けていたら、いつの間にか仕事になっていました。それが、生きるように働いているってことなのかな。

生物学者の福岡伸一さんの本に書いてある、「動的平衡」という言葉が好きなんです。人間の細胞は常に入れ替わっていて、見た目は変わらなくても、1年後には細胞単位で、骨の髄まで新しくなる。常に細胞が動き続けてないと人間は人間の形でいられないんです。

僕は、現状のままとか同じことを繰り返すのが苦手で。動的平衡という言葉を知って、しっくりきたんです。なので、つぼけんのままでいるために、動き続けていたいです。

(2025/07/24 取材 大津恵理子)

9/13(土)13:00〜17:00にリトルトーキョーでつぼけんさんと一緒に「写真とコピーで記録する今日 ZINEをつくるワークショップ」を開催します。当日は、その場でZINEを作成し、持ち帰りができます。

つぼけんさんの目線で、撮影について伝授してもらいます。きっと見慣れた日常でも、切り取り次第で違って見えるかもしれません。ご興味のある方は、ぜひご参加ください。

🔗「9.13 (Sat) 写真とコピーで記録する今日 ZINEをつくるワークショップ」

このコラムでは、わたしたちのオフィスがある東京・清澄白河でさまざまな人に話を聞き、「自分の仕事」のヒントをあつめる企画です。