コラム

あと10年で会社をたたむ?
代表が今、思うこと

「あと10年で会社をたたもうと思っている」

社長からそのような話があったら、どんなことを考えるだろうか。

実際に、あと10年を区切りとして、社員全員でこれからの10年を考え始めた会社があります。

株式会社ウダツ。日本仕事百貨では、これまで13回取材をしてきました。

会社の終わりを考えるって、あまりないことかもしれません。

もしあったとしても、経営者だけが考えることなのかも。

でも、それぞれが本音で話し合って、一緒に考えることもよいのではないかと思いました。

もしかしたら、会社を終わらせることにならないかもしれません。

 

代表の宮島さんから相談いただき、2日間の合宿を開催しました。

まずは宮島さんが考えていることを深く知るために、公開インタビューをすることに。

このコラムはそんな2日間の合宿をまとめたものです。

あと10年でたたむかもしれない会社ですが、求人もしています。ありのままの会社に興味をもっていただけたらうれしいです。

 

 

株式会社ウダツはリノベーション物件の再販会社。

自分たちが物件を仕入れてオーナーとなり、外注しないで自ら施工し、ユーザーへ直販するところまでを一気通貫でおこないます。

郊外の一軒家を貸切で利用できる「セカンドプレイス」の企画運営もしています。

今回の合宿は、築40年の古民家をリノベーションした「セカンドプレイス館山」で行われました。

1日目は夕方から全員で準備をして、テラスでバーベキュー。

2日目の朝は、お互いのことをより深く知るためのワークをいくつか行いました。

普段はリモートワークや現場で働くことがほとんどのため、全員で顔を合わせるのは年に数回。

「新しくテニスを始めた」という話に驚いたり、「吹奏楽の仲間と一緒にフルートを吹いて、ストレスを発散している」という話にいいねと伝え合ったり、プライベートの話が盛り上がる。

コミュニケーションが活発になってきたところで、日本仕事百貨のナカムラから宮島さんへインタビュー。

全員が一つの円になって話を聞きました。

 

区切りをつける理由

ケンタ:
これから宮島さんには、どんな会社にしていきたいのか、10年後どういう状態になっていたいのか聞いていきます。その前に、どうしてウダツを始めたのか少し聞かせてください。

宮島:
そうですね。新卒で入った大手マンションデベロッパーは徹底した成果主義の会社で、毎月の飲み会でさえも「今月上げた数字のぶんだけ焼き肉を食え」みたいな。

そういう世界は、人間関係やしがらみといった余計な要素がなくて合理的だから、20代のアグレッシブな僕にはあっていたんです。

30歳までには独立しようと考えていたけれど、居心地の良さから30代後半まで続けちゃって。そのあともすぐに独立はせず、不動産ファンドの運用会社へ転職しました。

当時は不動産ファンドバブルだったので、ハードだけど楽しかった。給与も良かったから、このまま働き続けるのかなと思っていたら、突然リーマンショックがきて。

神さまが背中を押してくれたのだと、ようやく独立を決めました。

思いを込めて独立というよりは、流れに乗って「今やるしかない」という感じでしたね。

ケンタ:
独立してからはどうでしたか?

宮島:
1棟のオフィスやマンションなどの投資用不動産を扱いたかったんだけど、最初から高額な融資をしてくれるところはなくて。しょうがないから、中古分譲マンションの一室をリノベ再販しようと決めてコツコツやっていたら本数がどんどん増えてきて。そうやって今に至ります。

なので、ビジョンや目標を明確にして進めるというよりは、そのときの流れやメンバーに合わせてやってきたって感じかな。

ケンタ:
状況というか、ご縁というか。そういうものが積み重なって今があるんですね。

そんな中で、「10年後には会社をいったんたたむ」という話も聞いていますが、どんな思いなんでしょうか。

宮島:
僕はいま60歳で、10年後には70歳になります。自分はやりたいと思っていても、身体や気力、若い人の感性や暮らしへの想像力が何歳まで継続するかはわかりません。

あとは、今のメンバーは30代と40代が中心だから、ビジネスパーソンとして一番良い時期です。そんな時期に代表がいつ辞めるのかわからないというのは、みんなに失礼というか。不安もあるだろうし、そりゃ困るよねって思うわけです。

じゃあ、これからの10年は初心にもどって売上目標を立てて必死にやってみようかなと。

その代わり、10年経ったら辞める。

状況によっては会社をたたまないで、株を譲って経営のバトンを渡すかもしれない。

いい投資家と出会えるか、マーケットが好況か、メンバーがやめるのか、いてくれるのかどうか、これらは自分でコントロールできないけれど、僕が10年で辞めるということだけは主体的に決められることだって思ったんです。

ケンタ:
直前になって「辞めます」と言うよりも先に伝えるほうが、誠意があるんじゃないかということですね。

もし70歳になっても「あれ、意外と元気だな」と思ったら、そのときはどうしますか?

宮島:
そうであっても辞めると思います。

 

自分に合った姿、なりたくない姿

ケンタ:
誰かにバトンを渡して会社を引き継ぐという選択肢もあるんですね。

宮島:
5年前くらいから軽く話している主要メンバーはいます。ただ、話を聞いてみると、経営を引き継ぎたいとは思っていないんだなと判断しました。

ケンタ:
今のところは継承する人が決まっているわけではないと。売却という選択肢もありますか。

宮島:
ありますね。ただ一個人が買えるような値段ではなくなってきたので、投資家を見つけてくることになるかな。社内からやってみたいと手をあげてくれたら、だんだんとバランスシートを軽くしていくことで、株が買いやすくなるようなサポートもできます。

ケンタ:
これまでの話を聞く限り、10年後も会社が続いていく可能性はあるんですね。そうなったとして、自分が離れた先で会社がどうなっているとうれしいですか。

宮島:
うまくいってほしいと願うだけで、こうあってほしいということは特にないですね。

これまでの実績が信用となって借り入れもできるし、ウダツという名前を生かすこともできるので、そこは新しい人に考えてもらいたい。

ケンタ:
新しい人に考えてほしい。

宮島:
はい。売上利益の拡大を正とすれば、自分はそれほど優れた経営者ではないと思っているんですよ。

友人の中には、従業員が数百人の会社を経営している人もいれば、売上が数百億という人もいます。それは、求心力やマネジメント力、成長への強い思いなどを持っているからだと思うんです。

でも、今のかたちが自分には合っていて。

いいなと思った人がいれば採用して、その分だけ売上を増やす成長速度なら、1件ずつのクオリティを落とさずに済むし、高い粗利率を最優先課題にできる

そうやって、みんなにたくさんの給与を支払えるような財務体質にしていくほうが、よっぽどいいと思っているんです。

新しい人にも自分に合うやり方でやってほしい。70歳を超えて経営に口を出すような人になりたくないしね(笑)。

ケンタ:
じゃあ企業価値を算定して、その金額で売却できれば誰でもいい?

宮島:
いや、誰でもよくないです!思いがなくてお金だけ出すよみたいな人に売るんだったら、たたみます。

 

継承したいと思える人

ケンタ:
では、どんな人に引き継いでもらいたいでしょうか。

宮島:
やっぱり僕と話が合う人じゃないですかね。不動産だけでなく建築についてもそれ以上に深い話ができる人がいいかなと思います。

両方の視点で話ができる人って稀なんです。

施工技術的なことや工事原価、デザイン性、立地の特性やそこに住む人の暮らしにフィットした間取りかどうかみたいな話は、粗利率を高める肝になります。

でも、空間やプランニングよりも、立地と築年数と価格だけで家を買う人が多数派で。

だからこそ、僕から見るとミスマッチな物件でも、価格を安くすれば売れちゃうんですよね。

そこに強い関心はない人が不動産業界には結構多いんです。

ケンタ:
話が合うことが大事であれば、しっかりと話すためにも引き継ぎ期間は必要なんでしょうね。キャラクター的な部分はいかがですか。

宮島:
好ききらいの話になりますが、大きな売上目標を掲げてそれに向かって数字を達成していくタイプの人とはあんまり話が合わないっていうか。深く信頼関係を築けないかな。それは素晴らしいことだけど、自分とは違うのかなと思います。

あとは当たり前の話ですが、裏切らない人ですね。

ケンタ:
もし引き継ぎたいという人が2人現れたとして、2人ともその要件はすべて満たしているとしたら、どういうポイントで1人を選びますか。

宮島:
うーん、直感かな。顔つき?、あとはなんだろう。

最初に会った時にどういう印象を自分が持ったのかに立ち戻って決めるかもしれないですね。

僕は履歴書を見るのが好きで。今はメールで送るようになっちゃいましたけど、例えばレターパックに入れてくるのか、封筒に履歴書を3分の1に折って、80円の切手貼って入れてくるのか。

どうしてこの写真を採用したのか、字や表現の仕方はどうか。これは文房具屋で買った履歴書なのか自分でつくったものなのかなど。

その上で、その人のライフストーリーを見たときに、こういう経歴で今に至ったんだって、ストンと腑に落ちると、会ってみたいってなるんです。

決めつけだったり、色眼鏡で見ていたりするのかもしれないけど、「会いたい」とか「この人いいな」っていう直感に割と自信があって。

だから、たぶん最初の印象を思い出して決めるんでしょうね。

 

 

「10年でたたもうと思っている。」という言葉だけを聞いたら、働く人たちは不安ばかりが募ってしまうと思います。

10年という区切りに込めた思いや、いろんな選択肢が具体的に話されていくにつれて、ウダツの皆さんは少しずつ自分に寄せて考えることができたように見えました。

 

後編では、一人ひとりの感想や問いに対して、宮島さんが返していく様子をお届けします。

 

後編はこちらから。

株式会社ウダツでは新しいメンバーを募集しています。これからのウダツで働く経験は、自分自身の生き方や働き方をより深く考える機会にもなるはずです。

興味がある方はぜひご応募ください。

2025/10/11取材
聞き手 ナカムラケンタ
編集・撮影 長島遼大
デザイン 浦川彰太