コラム

経営者→みんなの会社へ
いいチームってなんだろう?
シゴトヒトの場合02 

いいチームってなんだろう?

日本仕事百貨を運営するシゴトヒトでは「いいチームを探求し、つなげて、広めていく」をミッションに掲げ、さまざまな事業に取り組んでいます。

自社での取り組みの紹介や、ゲストに組織づくりの経験を聞くこのコラム。

今回は、前編に引き続き、わたしたちシゴトヒトの取り組みを紹介します。

自分の給料は自分で決める。売上目標は部署のメンバー全員で話し合って決める。

新しい人事制度の設計も、年次や経験に関係なく、集った有志のメンバーが主体となって考える。

代表のナカムラケンタがシゴトヒトが立ち上げてから17年目。「ケンタさんの会社」から「みんなでつくる会社」へ。組織として大きく歩みを進めた一年でした。

変化の最中、はたらく人はどんなことを感じてきたのでしょうか。

部署の異なる4人のスタッフに話を聞きました。聞き手は、編集者の阿部です。

(左から順に)
杉本丞(すぎもと・たすく) :
2021年春入社の編集者。入社して2ヶ月で横浜→奄美の自転車旅に出る。
槌谷はるか(つちたに・はるか) :
2023年夏入社。FC(ファシリテイティブ・コミュニケーション)部所属。窓口担当としてクライアントの相談に乗りつつ、社内外の組織づくりでファシリテーションを担当。
大津恵理子(おおつ・えりこ) :
編集者として2023年、年明けに入社。シゴトヒトで一番若い。
中野悟史(なかの・さとし) :
2023年秋入社。CD(コミュニケーションデザイン)部所属。リトルトーキョーの運営を主に担当する。

 

 

数人の組織から17人のチームへ

悟史:
僕、入社したとき驚いたのが、この会社、数字少ないな?!ってことで。

売上目標もあるにはあるけど、詳細な進捗表もないし、達成できなくてもあんまり当事者感がないというか。

自分の給料は自分で決めるとか、はたらく人主体の組織を目指していくうえでは、数字の把握は欠かせない。定量的な視点で議論することを意識づけてきた一年だったと思う。

とくにこの数ヶ月はチームで目標づくりをしたこともあって、数字への意識がみんな、ぐわっと上がったように感じていて。

組織としての成長度すごいな! と思うのと同時に、やっとスタート地点に立てたような気がしてる。

槌谷:
編集チームの杉本くんはどう感じてた?

杉本:
うーん。ここ一年で新しく入社した人たち、よく手が動くなって。

節分の日に豆まきやろうってケンタさんが言い出したときに、悟史くんが「じゃあ鬼の仮面つくります」って、ものの数分で本当につくったのが衝撃的で。

一同:
そこ?(笑)

杉本:
いや、推進力のある人が増えたなと感じて。

組織のファシリテーションやLIFE BOOKS&JOBSとか、ずっとやりたいって話してたことが事業として形になったのも、この一年。

槌谷さんとか悟史くんとか。前向きに仕事に取り組む人たちの存在が、すごく大きかったなって印象があります。

槌谷:
わたしが入社したのって、全社での合宿を始めてから半年ちょっとのころで。そのころから採用される人の雰囲気も変わってきたと思う。

もともとはほとんどの社員が求人記事を書く編集者だったけど、それ以外の部署での採用も増えて。

合宿前からシゴトヒトにいる杉本くんにとって、その変化はポジティブだったの? それともネガティブな感じ?

杉本:
今日時点では比較的ポジティブ。日によって変わることもあるから、あくまで今日は(笑)。

一同:
(笑)

杉本:
2024年の取り組みでいうと、全社で取り組んだ読書会がよかったなって。

『トヨタの問題解決』って本を読んで、会議もそのフレームで考えるようにして。共通言語を持てた感じがした。

槌谷:
たしかに。

これまでのシゴトヒトって、数字や定量的なデータというよりは、一人ひとりの感覚や、感情に寄り添ったコミュニケーションをすごく大事にしていた印象で。

だから入社したときびっくりした。こんな会社が存在するんだ! って。新しい世界に飛び込んだ感じ。

入社して以来、数字やデータで語ることを推進してきたけれど、一方でシゴトヒトのよさを無くしちゃうんじゃないか、って不安も大きかったんだよね。

でも、変化に対してポジティブな反応を示してくれる人が多くて。

この一年、シゴトヒトらしさというものが、自分のなかで「怖いもの」じゃなくて、「守っていきたいもの」になっていった感じがしてます。

 

ぶつかることはこわくない

槌谷:
いちばん若い大津さんはこの一年の会社の変化、どう感じてる?

大津:
そうですね。わたしも今日時点では、ポジティブです。

一同:
(笑)

大津:
議論のなかで「この事案に対して、全員なにかしらフィードバックをしてください」と求められる場面が増えて。

自分の頭で考えないといけない、判断しないといけないんだと、意識が変わった。

もともとは、ひとに任せたいというか、引っ張るよりはついていきたいと思うタイプ。

社会人経験も浅いから、まわりに比べると知らないことも圧倒的に多くて、意見に自信を持てない。そこは苦しんだかも。

でも、シゴトヒトの理念や目指す姿には共感しているし、新卒で働けるのはすごく恵まれた環境だと思うから、最大限吸収したいと思っています。

槌谷:
わたしは仕事柄、編集のメンバーとかかわる機会が多いんだけど、チームの雰囲気、変わったよね。

入社したばかりのころ、編集部のミーティングに参加させてもらったことがあるんだけど、喋ってる人がほとんどいなくて、びっくりした記憶があって(笑)。

様子を見てると、みんな言いたいことがないわけではなくて。考えていることはあるんだけど、言わないというか、言えないというか。

最近のミーティングはみんなめちゃくちゃ喋るし、一人ひとりの発言量が増えたよね。

ぶつかることもあるけれど、ぶつかりあえるのって健全だなと思う。

杉本:
やっぱり合宿での時間が大きかったなと思います。

異なる意見をぶつけあうことも、別に相手を傷つけるものではなくて、あくまで議論であるってことが、身に染みてわかってきたのかな。

 

自分ごとで考える意味

槌谷:
CDチームはこの一年、どうだった?

悟史:
リトルトーキョーがリニューアルしてちょうど一年が経つのかな。

僕は、最初から関わっていなかったのもあるんだけど、チームとして「リトルトーキョーをどうしたい」というのがないまま進めてきてしまったのが反省で。

たぶんケンタさんのなかに理想像はあって。断片的には共有はされるんだけど、全体像はよくわからないという状態がずっと続いていた。

たぶん、会社としても個人としても、進め方がわかってなかったんだよね。

なんでもケンタさんの言葉を待っちゃうみたいな。 一方でケンタさんもあまり口を出さないよう、意識していたんだと思う。

最近は自分たち主導で進めている感覚がある。

11月、リニューアル一周年を記念して24時間イベントをしたんだけど、企画から実施まで3週間だったかな?

「やりたい」から形にするまでが早くなった。

槌谷:
うまく回り始めたのってどうしてだろう? ケンタさんのスタンスなのか、進め方がわかってきたのか。

悟史:
それこそたぶん、ここ1、2ヶ月で目指す姿が見えてきたんだと思う。

シゴトヒトは10月が期初で、今年度の目標は各チームで設計したんだよね。はじめて。

単に売上いくらじゃなくて、どういう場所にしたいのか? から3年後や1年後の姿を想像して。そこから逆算して、売り上げの構成を考える。

数字に落としたときに、何がどうなったらここはいい場所って言えるんだろう? とを議論する時間があったことで、チームとしての共通認識を持てたように思う。

槌谷:
けっこう時間をかけて話したよね。1ヶ月くらいかけて話し合って、10月頭に発表して。

悟史:
そうね。日常業務をやりながらありたい姿を考えるのって、結構むずかしい。

別チームのつっちーにファシリに入ってもらったのも大きかったと思う。

合宿みたいにぐっと考える場を会社として設けるとか、節目節目でそういう機会をつくらないとなかなか見つめ直せないなと。

槌谷:
シゴトヒトの合宿、泊まりがほとんどだし、年3回くらいやるし、こんなにやって大丈夫?! って、入社当初はびっくりしたけれど(笑)。今ではすごく大事だなと感じてます。

自分たちのやりたいことや、やってきたことをちゃんと見つめ直す。それだけに集中する時間があるのって、貴重だよね。

杉本:
話を少し発展させると、チームの動きが早くなったのは、編集も同じで。権限をどんどん移譲したことも大きいかなって。

もともと、編集チームは属人的な仕事が多かった。たとえばサイトの統計データは一部の人しか見る権限がなかったんだけど、あるときから全員が閲覧できるように枠組みを整えて。

そうすることで、一部の人にのしかかっていた負担が減るし、一人ひとりの理解も深まるから、幅広い視点で議論ができるようになった気がする。

でも、そう感じられるようになったのはここ数ヶ月。今期の目標づくりと合宿の影響が大きいと思う。

数年前からケンタさんは「権限をどんどん委譲して、自分以外が判断することを増やしていきたい」と話していたけれど、正直大変だろうなって。

権限を与えられても、戸惑うことのほうが多かった。いやいや、編集長が決定するものじゃないの? とか。

移行期はすごくしんどかったな。

悟史:
属人的な仕事が減ると、頼りやすいし、頼られやすくもなるよね。

一人で全部やらなきゃいけなかったことが、ちょっと手伝ってと言いやすくなる。視点も増えて、いい循環が生まれると思う。

 

「ケンタさんの会社」から「みんなの会社」へ

槌谷:
みんなの話を聞いていて、2024年は目に見える変化が多かったんだなって感じていて。

合宿の取り組みを始めたのは、わたしが入社する前の2022年の秋。

そこから時間をかけてコミュニケーションの土台を整えてきたからこそ、いまの変化があるんだと思う。

少し視点を変えて、2025年はどんな一年にしていきたいですか?

悟史:
この会社を変えたいっていうよりは、すごく正しいことしてるから、 もっと給料もらっていいよなと思う。というか、もっともらえるようにしたい。

いいことをしているけれど、給料は少ない、みたいなことが僕はすごく嫌だなって。

槌谷:
たしかに。給料上げたいよね。

悟史:
ね!

そのためにも、組織として新しい形を模索したいし、みんなでがんばりたい。

たぶん制度をつくるだけじゃうまく回らないから、試行錯誤しながら整えていく一年になるんだろうね。

大津さんはどう?

大津:
そうですね。

個人的には、組織をどうするということよりは、まずは編集の技術とか、一つひとつの案件で期待に応えられるようにするところをがんばりたい。

だけど、いろんな組織の話を聞く仕事だから、少なからずシゴトヒトと比べる機会は多いだろうなって。自社の働き方を考えるきっかけにもなると思う。

なんだろうな。波に乗っていきたいです。

槌谷:
波、乗りましょう!

杉本くんはどう?

杉本:
…組織っていうよりかは、僕も個人としての働き方に興味があって。

前の合宿で新しい仕事のブレストをしたときに、売り上げの一部を自分の興味のある分野に使うってアイデアが出て。

たとえば僕は猫が好きだから、指名料をいただいたら野良猫の保護団体に寄付するとか。転職に悩んでいる人にインタビューしてコラムにするとか。

もうちょっと個人の色を出して、共感してもらう人と関係性をつくっていくのは楽しそうだなって。

悟史:
いいね。

リトルトーキョーでも考えてることがあって。売上や集客を上げることを目標にしてはいるんだけど、真面目にふざけられる場所というか、好きなことをできる場になればいいなと思ってる。

杉本くんが企画してくれた卓球大会も、よかったよね。

毎回参加してくれる人もいたんだけど、それってすごいことで。そういう企画が日替わりである状態っておもしろそうじゃない?

杉本:
いいね。卓球大会はシゴトヒトのみんなにもかなり手伝ってもらったけど(笑)。

悟史:
僕らが企画するだけじゃなくて、関わる人からやりたいことがどんどん出てくるようになってくといいな。

…あと、メディアも面白くできたらいいなと思ってる。

リトルトーキョーをテーマにした連載コラムを日本仕事百貨にも載せるとか。せっかくオンラインでもオフラインでも場を持ってるんだから、もっと互いに盛り上げていきたい。

杉本:
ですね。

こういう思いつきはいっぱいあるんだけど、毎回頓挫するのってなんでかなあ(笑)。

槌谷:
おもしろそう!

リトルトーキョーはリニューアルがいいきっかけになったと思うけど、「日本仕事百貨」はケンタさんが始めたものって意識が強いと感じてて。

でも、今いる人たちそれぞれの個性がもっと表に出てもいいのかもなって、話を聞いてて思います。

 

あとがき 

「ケンタさんの会社」から「みんなの会社」へ。

確実にその歩みを進めていると感じたふたつの対談でした。

経営者とスタッフでは、見えている景色が異なる。

ぶつかって、わかりあって、わたしたちはちょっとずつ「仲間」になっていったように感じます。

「いいチーム」には果てがない。

これでいいんだろうかと不安を感じることもあると思います。

そんなとき、悩みを相談できたり、大丈夫だよ、と背中を押したりできる存在でありたい。

これからもわたしたち自身、探究を続けていきます。同時に、同じように組織づくりで試行錯誤する人たちとつながっていきたい。

その積み重ねの先に、「自分の仕事をする」人が増えている未来があると信じています。

ともに育っていけたら、こんなうれしいことはありません。

みなさんにとって「いいチーム」とはどんなものでしょう? 感想や意見もぜひお待ちしています。

 

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「森が広がってゆくように 『自分の仕事』を みんなのものに」

2024/11/20取材
聞き手・編集 阿部夏海
撮影 稲本琢仙
イラスト 後藤響子
デザイン 荻谷有花

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