コミュニティをつくるヒト4-2
前回のNui.に引き続き、今回もゲストハウスを訪ねます。ナカムラケンタのお気に入りの場所でもあり、ゲストハウスの草分け的存在でもある「月光荘」。築50年余りの木造家屋を手づくりで改装し、自然に囲まれた格好のロケーションに佇む沖縄・那覇にあるゲストハウスです。
今回は、そんな月光荘沖縄の代表を務める、“船長”ことトモレッド(有馬智明)さんにお話を伺いました。
ケンタ はじめた当時はどんな思いでしたか?
トモ 当時、雨柊が32歳ぐらいかな。やってみようかなみたいな感じで、あんまり考えてなかったんじゃないかな。こんな木造の建物をいじれてなんかできたら面白いよねってぐらいで。長くやろうとかさ、この家を何十年もサポートするためにではなくて。ロケーションもすごくいいし、こんな場所でこんな木造の家があってそれを自分で好きに直せて、宿代もらいながらそこで飲んでって、そういう暮らしができたらいいじゃないかと思って。それで、「やっちゃおう!」みたいな。
ケンタ なるほどね。あんまり後先考えずに。
トモ ぜんぜん考えてないね。
ケンタ もうとにかく楽しそうだからやろうと。
トモ うん。みんなから「台風どうすんの?」って言われても、「わかんない、どうなんだろうね」とかさ、そんな感覚で、まさか12年も続けられるなんて、当時まったく想像がつかないことじゃんね。だいたい全部壊されちゃうような古い建物で、残らないはずだったんだけど残ってるからね。
ケンタ 昔ながらの沖縄っぽい建物ですもんね。
トモ そうそう。だいたいドミトリーなんていうのも当時なかったしね。
ケンタ すごいなぁ。なんか2000年の頭って、そんなに昔じゃない気がする。僕がいま33歳なんですけど。だけどこの写真見るとやっぱすごい時間の流れを……。
トモ あははは(笑)、まぁケンタくん20歳前後の頃かな。
ケンタ 想像できないですよね。12年後のことなんて。
トモ 想像できないよね、どうなってるかなんてね。台風もまぁ耐えて、今年も無事だったなとかさ。だからといって来年のいまの時期にこれが全部ばっちりな状態で立ってるかもわからないしね。
ケンタ そうですね。なるほどなぁ。
トモ たぶんこんな感じだろうってはじめて、だんだん、こういう問題があるからああしようこうしようって。自分中のイメージだけじゃたぶん出てこないことも、みんなで相談してくっつけていく。
ケンタ そうやって積み上がっていった場所って、利用者としてはとても居心地がいいです。
トモ うん、だからだんだん変わってくるよ、だんだん使いやすく。スタッフの対応も臨機応変で。
ケンタ じゃあ、未来のこともあんまり考えてないわけですね。
トモ まぁあればラッキーじゃない(笑)。続ける限りは続けたいけどね。
ケンタ そうですよね、楽しいですしね。
トモ そうそうそう。まぁそれがいつまでもなんとしてもしなきゃいけないってことじゃないかもしれないし、わからないし、時代もどうなるかわからないから。
ケンタ 沖縄にはどれぐらいの頻度で来ているんですか?
トモ 月一で来てるよ。普段は和歌山に住んでるから。去年から移ったのよ。12年沖縄に住んで、結婚して子どももできて、南部に住みながら、月光荘に来て。寝泊まりして戻ってみたいな暮らしで。それで、今度はちょっと内地に住んでみて、内地から行ってみようかなって。
ケンタ なるほど、それも思いつきで?
トモ 思いつき(笑)。内地に住むことでまた広がってくるし、陸続きで会える人も増える。
ケンタ ゲストハウスのほかに、イベントもやられてますよね。
トモ うんうん。東京大阪とか色んなゲストハウスに行っては合宿したりとか。例えばライブイベントやって近くに宿があったらうれしいじゃない? そういう宿をやってる仲間に連絡とってさ、泊めてよって。そこで友達のゲストハウスにも遊びに行けるし、ソロライブとかもしたりして、集まれるし。何よりゲストハウスで飲めて遊べたら楽じゃんね。勝手が効くし、すぐ寝れるし。寝床のあるスタイルが好きなんだよね。
ケンタ ご存じかわからないですけど「Nui.」って知ってます?
トモ あぁ、東京の? 前に行ったよ。
ケンタ あそこも一階にバーがあって、流行っているんですけど、あのスタイルはいいですよね。
トモ そうだね、集まれるもんね。
ケンタ 近所のバーに行ってるみたいな感じで。
トモ そうそうそう、「今日はもう終電いいや」ってなったらね(笑)。そのスタイルがやっぱいいなと思った。
ケンタ 月光荘はその先駆けですよね。
トモ まぁそうね。ここ(沖縄)は電車がないからね。電車もないし、お酒飲む文化だしね。どっちかっていうと終電ってよりも県内の人が車で遊びに来て、「え、帰るの?」って。それでコインパーキングで一泊分払うんだったらドミトリーに泊まって飲んだ方がいいんじゃない?って。内地だったら、終電逃したらそのまま飲んだらいいじゃない。そのスタイルってすごくいいなと思うし、東京にあったらいいよね。
ケンタ やっぱり人と飲んだり話したりするのが好きなんですか?
トモ 好きだね。
ケンタ そういう場をつくって勝手にそういうのを楽しんでもらうのも。
トモ 好きだね。好きだからできるんだろうね。
ケンタ たしかに。いいですよね。この場所をきっかけに、いろんな出会いもあったでしょうしね。
トモ そうだね。出会いの数はすごいだろうね。宝ですよ宝。内地にいるとイベントとかどっかでする度に、「あぁ~! 何年前のあのとき来てた人だよね」って話になるもんね。
ケンタ 僕もこの場所で出会いに恵まれた一人なので、面白いなと思います。
トモ 街の中に、集まる場所として一個そういう所があるといいよね。
ケンタ ここに行くと誰かに会えたり、知らない人でも仲良くなれるような、そんな場所がいいですよね。
トモ 自分も東京に行く度に、「そういうのつくってくれ~!」って言われるよ(笑)。つくりたいんだけどなかなかね~と思って、でもそういう縁があったらなぁとは思ってて。
ケンタ そうですね。
トモ でもほんと、やらなきゃ見えんというか。想像できることってけっこう少ないというか。例えばはじまりの時点で想像できることって意外とあるんだけど、実際やってみて、あぁこういうことがあるんだ、こういうポイントがあるんだってことに気付いて、それをクリアしていくと、次にあれが、ってなって。それを自分のペースで確実にポイントをクリアしていければずっと続くと思うし。どこかで嫌になるとかできなくなるとか飽きるとかしたら、終わるかもしれないけど。ずっと興味があって追求していけばね。
ケンタ いい方にいくんでしょうね。
トモ もしその場所がなにかの理由でどこかに移ることになっても、それが何か別の形になっていくと思うし。東京も目の前はビルだけど一歩入ったらそういう街はまだ残ってるじゃない? そういうローカルで大衆的で昔から変わらない世界っていうの? 人情風景っていうかさ。駅行けばいわゆるチェーンみたいなところばっかりだけどさ。そうじゃない、昔からあるような風景がいいよね。
ケンタ そうですね。そういう場所の方が僕も好きです。