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9.2 Sat
ぐるりの食卓
ぐるりの食卓 -島根の石見食品さんと囲む-

働く人や暮らし、生き方など、とりまくことをぐるりと話しましょう。「同じ釜の飯を食う」人たちのふだんの食卓の様子をコラムで紹介、一緒に食卓を囲むイベントを開催します。

※このイベントは終了いたしました。

※このイベントは申込期間が終了しました。お申込ありがとうございました。

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こんにちは、日本仕事百貨の並木仁美です。

かしこまらずに会話をしながら、じっくりといろいろな生き方・働き方に触れられる場所、「ぐるりの食卓」をはじめます。

おいしいものを食べて、飲んで、おしゃべりもたっぷり。一緒に食卓を囲みながら、働く人や暮らし、生き方など、とりまくことをぐるりと話しましょう。

島根県にある3つの企業を訪ねて、みなさんと食卓を囲んできました。今回一緒に食卓を囲んだのは、石見食品のみなさんです。

そして、その食卓は清澄白河のリトルトーキョーにもやってきます。

読んでいて「こんなごはんを食べてみたいな」「この人たちと話をしてみたい」と感じられたら、ぜひリトルトーキョーのイベント「ぐるりの食卓」に遊びにきてください。

>> ぐるりの食卓とは

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萩・石見空港を出てJR浜田駅に着くと、駅前には、少しレトロなビジネスホテルや居酒屋が立ち並ぶ。

そのホテルのうちの1つ、7階にあるレストランが今夜の待ち合わせ場所だ。

石見食品株式会社は、島根県浜田市で豆腐・油揚げ・厚揚げなどの製造販売をしている会社。驚くなかれ、その生産量はなんと島根県内でトップを誇る。

けれども大量生産ばかりではなく、手づくり、こだわりの商品も多く手がけているそう。自社のお豆腐も献立に取り入れてくれると聞いていたので、食いしん坊の私はこの日をとても楽しみにしていた。

エレベーターを上がっていくと、通された個室にはすでに石見食品のみなさんが。

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8名がずらりと並び、大きなテーブルに並べられた会席料理。正直なところ、思っていた以上に豪華な席で若干の緊張感が漂う。

思わず、「いつも飲みにいくときは、こういう場所なんですか?」と尋ねると、「いえ、全然。今回は少しはりきりすぎてしまって…」と苦笑気味に返してくれたのが代表の石田さん。

なるほど、そうだったんですね。「お腹減った!」という声が聞こえてきそうなので、ではさっそくはじめましょうか。

グラスに各々飲み物を注いで、乾杯!今日はよろしくお願いします。

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島根県の西部、日本海に面している浜田市は海の幸も山の幸も豊富な地域。なかでも浜田港で水揚げされる「ノドグロ」は全国的にも有名だ。

浜田沖の海域は、良質なプランクトンが多数生息しているから、他の海域で育ったものに比べて脂がよく乗っているそう。

煮付けにさっそく箸をつけると、身はふわっと柔らかい。一口食べると、脂の甘みを感じるけれど、くどくない上品な味わい。さすが「白身のトロ」といわれる魚だ。

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そして本日のメインとなるのが、石見食品が56年間つくり続けている豆腐を使った料理たち。

まずはシンプルにやっこでいただく、ざる豆腐、枝豆豆腐、なめらかな山芋とろろ豆腐の三種盛り。素朴な大豆の香りと風味が口いっぱいに広がる。思っていたより、硬めのしっかりとしたお豆腐なんだな。

隣の席の西井さんが、そのこだわりを教えてくれた。

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「本来の豆腐の硬さです。味を濃くしたり甘くしたり、添加物を加えることもしていないんです。なぜなら手を加えた豆腐は、食べたその時は美味しくても、いずれ飽きられちゃうかなって思うから。毎日食べても飽きないものを、うちは目指している」

なんとなく、大きな工場での豆腐づくりって、機械で統制されて、均一なものができやすいのかなとイメージしていた。だけど、意外にも手作業の部分が多くあるそう。

「おぼろ豆腐は手作業でカップに盛り付けているし、豆腐は使う大豆や温度によってもにがりの量が変わってくる。日によっても担当する人によっても、出来上がりに差が出るね」

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へぇ知らなかった。じゃあスーパーに並んでいるお豆腐も、毎日違うんですね。

「だからお客様から『今日のはいつもより硬いんだけど』なんてお電話をいただくこともある。毎日食べてないと気づかないことだから、愛してもらっているんだなって思います」

そんなお話を聞きながら、続いて出てきたのはお豆腐の天ぷら。硬めのお豆腐だからこそ、外はサクッとしていて、中も水っぽくなく食感がいい。

海藻のエキスがたっぷり入った浜田の藻塩をつけていただくと、やさしい甘みでいくつでも食べられそう。後日リトルトーキョーで開催するイベントでもお出しする予定なので、是非お越しください。

ところで、豆腐づくりについてとてもわかりやすく教えてくれた西井さんは、もとは関西で働いていたひと。社長の石田さんとは同級生なんだそう。島根にUターンしてきたときに声をかけられ入社に至る。

「なんでこの仕事を続けているのかって聞かれると、僕の場合は友達がやっている会社だから支えたいというのが一番強いかもしれない。すごく個人的な想いだけどね」

「あと、この仕事にしてよかったことがある」と西井さん。どんなことですか?

「前は夜勤もあって、家族と会えない時間も多かったのね。娘がいま中3で、普通はお父さんを嫌いになっちゃう年齢だろうけど、そういうのもなくて。今日もこの会がなかったら、剣道部が終わって迎えにいってる頃かな」と話す姿は本当にうれしそう。

友達想い、家族想いな西井さん。きっとこういう人が職場にいたら、心が折れかけたときにもふんばれる気がする。

「島根は人があったかいんですよ」と言いながら、料理を取り分けてくれた村尾さんと、入社2年目の若手、岩井さんにも話を聞いてみます。

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村尾さんは、2人のお子さんがいるお母さん。

「スーパーに買い物に行ったら、もう人と話す時間で2時間くらいかかっちゃう。なかなか帰ってこないから、家族にいやがられるんです(笑)」

2時間!それだけ関わりが密接なんですね。ほかに、島根のいいところってありますか?

「うーん…ずっといるから改めて聞かれると…なんだろう。私は隣の江津市から通っていますけど、海が…夕日がきれいですよ。これ、うちのリビングからの景色です」

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わ、本当だ。すごい贅沢ですね。岩井さんは、何かあります?

「趣味でロードバイクをやっていて、海とかダムとかいろんなところに行くんです。島根は景色がきれいで、道がよく整備されてて。自転車でどんどん行けるから、それがいいところかも」

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「僕は地元が浜田なので。みんな都会に出て行くし、僕もそうしたいなと思ったんですけど。他愛もない話を聞いてくれる先輩もいて、なんだか辞める理由もなくて。都会に出るのも、もうめんどくさいなって(笑)」

お酒も進み、そういえばあんなこともあったよね、と失敗談も飛び出す。今は厚揚げをつくるチームで班長をしている田中さんは、新人の頃を振り返る。

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「おぼろ豆腐をひっくり反したのが、もう大事件で。1ケース180個を6ケースとか重ねてて。溝みたいなところに、台車が引っかかって。倒れる時って、本当にスローモーションになるんですよね」

全部でいくつになるかなんて、数えたくもない。なんだか私まで変な汗をかいてきた。

トラウマになるくらいの出来事だったけど、「大丈夫だから」と片付けを手伝ってくれた先輩のおかげで気を持ち直したそう。すると石田さんたちからも「いや、俺もあるよ」「俺も…」との声が。

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お酒の席とはいえ、社長や先輩、後輩も関係なく失敗談を言い合える風通しの良さがすごいなぁ。

すると、「たぶん田中さんの人柄もあると思うんですよ」と石田さん。

人柄、ですか。

「何度も失敗している人なら怒るだろうけど、ちゃんとどうしたら失敗を繰り返さないか自分で考えてて。大きな失敗をしたのは、それっきりなんです。だから笑い話にできると思うんですよ」

「地元の僕らより、彼女のほうが島根の魅力を伝えらえるかも」と紹介してもらったのは、荒木さん。

第一印象は物静かで、繊細な感じ。だけどしっかりと自分の言葉で、話してくれようとする芯の通った人だと思う。地元は福岡。Iターンで島根にやってきました。

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「実は、移り住む前に3回、島根に遊びにきたことがあるんです」

福岡から3回も!きっかけは何だったんですか?

「大学2年のときに、友達と旅行にきて。ちょうど出雲大社の、平成の大遷宮が60年に一度あるときで。松江城にも行って、船に乗って堀川めぐり。割子そばも食べました。結構いろいろあるんだなって、すごく楽しかった」

そのときのことが忘れられず、3月には石見銀山を訪れる。次の夏には、3度目の島根。さすがに、友達にはもう行かないと断られた。

「夜は民宿に泊まりました。私しかお客さんがいなかったから、宿のおばあちゃんの車で温泉行ったり、夜ごはんも一緒にスーパーに買い物に行ったりして」

そこまで、荒木さんを惹きつけたものは一体なんだったんでしょう。

「うーん…回を重ねるごとに関わりが深まって。なんだか自分のテンポに合うような感じというか。福岡でも、天神とか博多の街の方って忙しい感じがあるけど、そういうのがあまりないのが良かったのかも」

実際に暮らしてみてどうですか。

「私は島根に住むぞっていう目的で来たから、そのあとどうしようかなって。自分の好きなところに住み続けるっていうだけのことでも、結構大変なんだなって思います」

大変。

「はい。たとえば仕事も、毎日豆腐をつくり続けて。同じことをやればいいんだけど、それが難しい。だから今度中学生が工場見学にくるんですけど、その案内を担当させてもらったり、今日みたいな場にも参加したり。自分で何かないかなっていつも探しています」

「家も、浜田にあるシェアハウスに住んでいるんです。将来がどうなるかはわからないけど、今はいろんな経験や考えを取り入れたいと思っています」

仕事柄、いろんな地域へ入っていった人の話を聞く。だけどどこにいても、自分の道は自分で切り開くしかなくて、その覚悟みたいなものに触れると、胸がぐっと熱くなる。

石見食品のみなさんはすごく真っ直ぐで嘘がない感じがする。その空気が心地よくて話題は尽きない。でも、そろそろお開きの時間だ。

最後に石田さんが、石見食品の未来について話してくれた。

「蟻とキリギリスでいったら、蟻みたいな生き方ですよね。お豆腐も一緒で、インパクトはないし、さりげない。でも身体がうれしい感じ。そういうのが本当の美味しさだと思って」

「そこは変わらないんだけど、今後は時代に合わせてもう少し幅を広げていきたいなって。食文化も多様化しているし、忙しくて料理をしないという人も増えている。だからお豆腐の延長で、たとえば大豆の加工品をつくったりもしたいんです」

「体によくて、お肉の代わりにもなるようなもの。田舎からでも、いろんな発信ができると思うんですよ」

毎日、同じものをつくり続ける。一見「普通」のことが、仕事も日々の営みも、当たり前のようで何よりも難しいのかもしれない。

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だけど、飾らず、おごらずこうして毎日豆腐をつくっている人たちのことを知って、私も毎日を頑張ってみようと少し勇気づけられる。

食が人と人を近づけてくれる、そんなうれしさを改めて感じる夜でした。

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今回お話を伺った、石見食品の西井さんと荒木さんをお招きして、一緒に食卓を囲むイベントをリトルトーキョーで開催します!

日時:2017年9月2日(土) 18:00 〜 21:00 (開場 17:30)
定員:12名(応募者多数の場合は抽選とさせていただきます)
参加費:4500円
(ごはん7品+デザート、1ドリンク、小さなおみやげ 付き)

コラムでご紹介した石見食品のみなさんとの食卓が、東京にもやってきます。浜田の脂の乗ったノドグロや、お豆腐の天ぷらなど地域ならではのごはんと一緒に、みんなでわいわいお話しましょう。
もちろん、島根のお酒もご用意しますよ!

※このイベントは申込期間が終了しました。お申込ありがとうございました。

日時
2017/09/02 18:00~21:00
会場
リトルトーキョー
参加費
4,500円

※このイベントは終了いたしました。

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