コラム

はたらくをどう選ぶ?
企業文化という選択肢(前編)

「中川政七商店に転職したとき、すごく空気感が合うなと思って。自分ってこういう人間だったのかもって感じたんです」

座談会中、こんな言葉が印象的でした。

一緒にはたらく人たちの何気ない言葉の使い方や服装、コミュニケーションツールの使い方など。どんな人たちが、どんな空気感で働いている会社なのか。

はたらく場所を考えるとき、その会社の業績や事業内容など、見てわかる事実や雇用条件を示されることは多いけど、言語化されることの少ない「企業文化」も大切な要素だと感じます。

こうした企業文化を知り、考える機会が増えれば、もっと自分に合った職場に出会えるかもしれません。

そんな考えのもと、開催されるのが「Lifestance EXPO 2024」。6月14日〜16日の3日間、東京・品川の「THE CAMPUS」で開かれます。

さまざまな企業の企業文化を知ることができる「カルチャーパネル」の展示や、企業の想いを反映した商品が並ぶマーケット、特別ゲストによるトークショーなど、はたらくを見つめ直すための企画が盛りだくさん。入場料500円で誰でも参加可能です。

今回は、イベント参加企業の「Öffen」、「中川政七商店」、「VALUE BOOKS」の方々に集まっていただき、服装、社長との関係、コミュニケーションの方法など、大きく5つのテーマからそれぞれの企業文化について語ってもらいました。

商品やサービス、会社の採用ページだけでは伝わらない、それぞれの会社らしさを感じてみてください。対談の様子はYouTubeでも配信しています。コラムには書ききれなかったエピソードなどもあるのでよろしければご覧ください。

聞き手は、日本仕事百貨の高井です。

 

2024年5月。東京・清澄白河にある日本仕事百貨のオフィスビル、リトルトーキョーにみなさんが集まってくれた。

対談をYouTubeで発信するため、たくさんのカメラが向けられていて、みなさん少し緊張気味。

まずは自己紹介をして、座談会がスタート。

Öffen・赤羽さん
プロモーションを担当している、赤羽です。 わたしたちは、設立4年目の会社。これから企業文化ができていくんだろうなって段階なので、みなさんの話をいろいろ聞きたいなと思って楽しみにしてきました。

Öffenは、ペットボトルをリサイクルした糸から靴をつくっているブランドです。オリジナルの製造方法で、靴をつくるときに出るco2を従来の半分くらいにしていたり、セールをやるときはチャリティーにしていたり。社会に対して貢献をできるものづくりと販売を大切にしています。

中川政七商店・安田さん
中川政七商店の安田です。今日は、本社のある奈良から来ました。うちは、「日本の工芸を元気にする」というビジョンを基に事業を展開しています。

大きく2つの柱があって、一つがSPA事業。中川政七商店というブランドで、日本の工芸技術やその知恵を取り入れた生活雑貨を全国のつくり手と協業しながら企画、製造、販売しています。もう一つが、産地支援事業。日本の工芸産地のメーカーさんへの経営のコンサルティングや流通サポートをしています。

私はコミュニケーションデザイン室という部署に所属していて。お客さまとどんな風に関係を構築していくかという部分などを担当しています。

VALUE BOOKS・林さん
株式会社VALUE BOOKSの林です。実はすごく緊張していて。会社がある長野から新幹線で来たんですけど、緊張を紛らわせるために東京駅から歩いてきました(笑)。

VALUE BOOKSでは、中古書籍の販売、買い取りや、被災地にブックバスで本を届ける活動などもしています。僕は、倉庫部門の運用、採用、評価などを担当しています。

1.どんな服を着てはたらく?

――みなさんの会社らしさについてお話を聞くのが楽しみです。 まずは、職場の服装について教えてください。

中川政七商店・安田さん
全体的にナチュラルな感じですね。着心地を確認するために自社商品を着ている人も多いですし、それ以外の人も、みんな素材を楽しむような服を着ている印象があります。

――今日の安田さんの服装もさらりとした素敵なワンピース。安田さんは転職して中川政七商店に入られたんですよね。前職と比べて服装は変わりましたか?

中川政七商店・安田さん
変わりました! 前職では商談とかも頻繁にあったので、スーツやジャケットを着ることが多かったんです。でも、今は社内での仕事が多いのでスーツは着ないですね。

あと、奈良っていう土地柄も影響しているかも。道はアスファルトよりも土が多いし、あの自然のなかにいたら、ヒールじゃないよなって(笑)。

Öffen・赤羽さん
うちはアパレル出身の人が多いので、入社前から自分のスタイルを持っている人が多いです。系統としては、偏りがないというか。シャツにデニムスタイルとか、メンズでもレディースでも定番のファッションが多いと思いますね。

――Öffenはペットボトルをリサイクルして商品にするなど、環境に配慮したサステイナブルなブランド。働く人たちも、そういう観点で服選びをしているんでしょうか?


Öffen・赤羽さん
意識しているスタッフは多いと思います。私も基本的には古着とかを選ぶようにしていますし、訳あり品やB品を買って、自分でちょっと直して着ていますね。あとは、社員同士でエシカルファッション自慢みたいなのがあって。「これ、古着で1000円やった」とか、「めっちゃエシカルな糸の服やねん」とか。

――素敵です! 元からエシカルな分野に関心がある人が集まっているんでしょうか?

Öffen・赤羽さん
入社して変わったスタッフが多いと思います。もともと自分の着たい服の軸はあるけど、その選び方がちょっとエシカルになるみたいな。

VALUE BOOKS・林さん
うちは、個人が各々のファッションをしてますね。元バンドマンなら、ロックっぽい格好をしているし、アウトドア好きな人はアウトドアっぽい格好をしている。そういう人たちが共存しています。

僕と一緒に働いてる物流部門の人はストリートファッションで、口にピアスあけてたり。だから会社に入って変わるというのはあんまりないかな。

Öffen・赤羽さん
アウトドアファッションの本屋の店員さんを想像すると、めっちゃ可愛いい!

――個性的な人が多いんですね。

VALUE BOOKS・林さん
そうですね。いろんな背景を持つ人たちが同じチームにいるのは、うちならではなのかも。

たとえば、髪が肩のしたくらいまであってピアスをあけている人と、シャツを着ている真面目そうな人とか。「うちじゃなかったら混じり合わなかったでしょ」みたいなふたりが普通に会話してます。

中川政七商店・安田さん
服装に決まりはない?

VALUE BOOKS・林さん
ないですね。でも、スーツの人は本当にいないです。ちょっと前に入社した方がスーツで来たときは、社長が「スーツじゃなくていいから」って何回も言ってました(笑)。

2.どんな人たちとはたらく?

次は、はたらいている人たちの性格について。今回は、社交的、内向的という対立軸で社内のメンバーがどちらの傾向に近いかをそれぞれ記してもらった。

 

中川政七商店・安田さん
うちの会社は、「自分が、自分が」って言ってる人が少ない印象があって。「あの人はどう思っているのかな」ということを察することが得意なのかなって。議論をすることもあるけど、意見をぶつけ合うよりは、お互いの意見を合わせていく感じが多くて。そういう意味で内向的かなと思います。

――そういう雰囲気はどこから来るんでしょう。

中川政七商店・安田さん
ものづくりに正解はないからこそ、「自分は何をつくりたいんだろう」とか、「このものづくりで自分たちは何を伝えたいんだろう」って考える人たちが多いのかもしれません。

あと、私が入社したときに一番驚いたのは、みんな声がちっちゃい。それがすごく衝撃的で(笑)。多分、自己主張ではなくお互いを尊重しあう文化の流れからなのかなと思います。今はわたしの声もすごくちいさくなってるんですけど…。

Öffen・赤羽さん
安田さんの声、めちゃくちゃ綺麗だと思って聞いてました! オペラ歌手みたいやなって。

中川政七商店・安田さん
うれしい! ありがとうございます。

VALUE BOOKS・林さん
小さな声を推奨しているわけではない?

中川政七商店・安田さん
違います(笑)。でも本当にちっちゃいなーって、入社したときは感じました。最初みんなの声が聞き取れなくて。

VALUE BOOKS・林さん
みんなの声が小さい会社かあ、面白いですね(笑)。

うちにはいろんな人がいるから、譲り合いはあると思います。最初は強気なやつも、相手の意見も聞いた方がいいなって、少しずつ変わっていくというか。

Öffen・赤羽さん
うちの会社だけですね、社交的を選んでるの。なんかちょっと恥ずかしい(笑)。わたしたちの会社のメンバーは独立しているというか、それぞれに趣味とか、いろんな行動をしている感覚がすごくあって。プライベートで畑仕事をしたり、海に行ったりする人もいますし、社内で飲みに行くことも結構あります。

Öffenは神戸のチームと、東京のチームで分かれているんですけど、神戸から人が来るとき、東京のメンバーは「今日、飲み会あるかなー」って思って、なんとなく予定を空けて待ってる(笑)。

――すごい、仲良しなんですね。

Öffen・赤羽さん
月に1回くらいしか会えないっていうのもあるかもしれないです。同じ職場で毎日一緒にいるわけではないので、プロデューサーとか社長が神戸から東京に来たときは、私も「来た来た!」みたいな感じになる。

――皆さんはみんなで飲み会に行くことはありますか?

中川政七商店・安田さん
計画的な飲み会は部署ごとの歓送迎会とか、忘年会とかくらいですね。でも、帰りのバスで同僚と一緒になったりすると、「ご飯食べていこうか」って言って、ちょっとだけご飯食べて、お酒を飲んで解散とかもあります。お店も遅くまではやってないので20時半とか、健全な時間に終わる人が多いですね。

VALUE BOOKS・林さん
中川政七商店のみなさんって、いいお店というか、素材とかにこだわった素敵なお店を選んでそう。

中川政七商店・安田さん
焼肉屋さんとかが結構人気ですよ!

VALUE BOOKS・林さん
なんか意外です。チェーンとかもいくんですか?

中川政七商店・安田さん
エリア的にチェーン店があんまりなくって。個人の方がやっているこだわりのお店とかが多いから、自ずとそういうところに行くかもしれません。でも、オフィスの近くにある餃子の王将とかも好きです。

――王将美味しいですよね。お話を聞いてると、服装からお店選びまで、奈良という土地にすごく影響を受けてるんだなと感じます。VALUE BOOKSさんはどうでしょう?

VALUE BOOKS・林さん
飲み会はないです。やる雰囲気はたまにあるんですよ。「いくかぁ」みたいになって、「やめとくかぁ」ってなるのがうちですね(笑)。部署によっては行ったりとか、プロジェクトの打ち上げをしたりとかはあると思うんですけど、忘年会とかは全然やれてない。この前社長と話していて、「忘年会とか必要だよな」って。「そうですね」って私も言ったんですけどね。

Öffen・赤羽さん
「やらなきゃ」って言ってるのが面白いです。強く言わない感じが、いいですね。

VALUE BOOKS・林さん
「やっぱりそういうコミュニケーションは必要だよね」とはお互い言うんだけど、だれも幹事をやるよって言わない(笑)。そこらへんもうちらしいのかな、とは思います。


>>後編に続く<<

ライフスタンスエキスポでは、対談に参加してくださった3社のほかにも、THEやUka、銀座木村屋総本店など、さまざまな企業の企業文化を知ることができる「カルチャーパネル」の展示を見ることができます。

ほかにも、社員とお茶やお菓子を囲んで語らえる「茶話会」や、各社の想いの詰まった商品の販売、特別ゲストによるトークショーなど。

「はたらく」を多角的に考えられるイベントになっています。いろんな生き方、働き方を伝えている日本仕事百貨も協賛企業として出展予定。

入場料500円で誰でも参加可能。興味のある方はこちらからお申し込みください。お待ちしております。

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