山のサハラさん
2020/4/25

4月25日土曜日

登山口にほど近い山小屋、夏沢鉱泉を朝早くに出る。標高2,650m、硫黄岳山荘まで登ってきた。

今日から、雪に埋もれている山小屋を掘り出すため、雪かき、雪かき、の毎日を送ります。

外出自粛を守るため、八ヶ岳を含めた山々も、今や入山自体が難しい。登山者で賑わう季節は、いつやってくるだろう。先は見えないけれど、再び訪れるその日のために、小屋番総出で小屋開けをします。

1日中ずっと雪をかくものだから、時折ひと息ついておしゃべりする。わたしも隣に居た小屋番と、何故だか恋の話になりました。

新入りの彼は、ここ、山へ来る前に恋人に振られてしまったらしい。山小屋で働きたいと彼女に伝えたところ、ムリムリムリ!と言われたみたい。

それでもよく来たね、とわたしが言うと、彼は「悲しくて涙を流したけれど、自分を偽らずに居たかったから」と言いました。

けれども、いいな・・・。

きっと、彼は八ヶ岳へ来なければ知らずにいた、自分自身にも出会うことになるんじゃないか。

その彼の身ごなしに、なんだか羨ましい気持ちになってきて、わたしはせっせと雪をかきはじめます。

山が夕陽に染まる。

あっという間に外はまっ暗になり、薪ストーブの火が暖かさを増していく。

屋根の氷柱を折ってきて、ウイスキーで乾杯したら、また雪が降ってきた。

せっかく雪をかいたのに、明日は振り出しかな・・・と肩を落としかけた時、「まあ、いいか」と誰かがぽつりと言いました。

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「山のサハラさん」は、日本仕事百貨のメールマガジンから生まれたコンテンツ。全国を旅するように働く佐原真理子さんが綴る日記です。