山のサハラさん2020/5/18
5月18日 月曜日
今日はヘリの日。
ヘリコプターで、食料や灯油などの燃料を山小屋まで荷揚げする日です。
歩荷をするとなったら、一番上の硫黄岳山荘まで大体3時間の道のりを、人によって20~50㎏の荷物を背負って歩く。けれど、ヘリコプターであれば、ヘリポートから10分もかからないうちに600㎏の大荷物がいっぺんに飛んでやってくる。
ヘリの作業は、ヘリポートで運ぶ荷物を用意する人たち、山小屋でヘリコプターの到着を待ち、反対にヘリコプターで下げるゴミなどを用意する人たち、といったように上と下で分かれて行います。
早朝、ヘリポート作業組におにぎりを握って送り出したわたしは、ヘリコプターでの荷揚げが必要のない夏沢鉱泉でひとりお留守番です。お客さんが居るなら、接客や夕食の仕込みを全てこなすので大変だけれど、今はまだ休業中。
常に他の小屋番と一緒に居るので、ひとりの時間は貴重なものです。そんな日を無駄にするわけにはいきません。さて、なにしようかと企む自分がいた。
まずは、朝ごはん。
昨晩、差し入れられたミスタードーナツ。夜だったから食べるのを我慢したが、もう待てない。
やることをやって、お茶にする。
冷蔵庫に、残り少ない牛乳を見つけた。いつもは他の小屋番に気を遣って飲むのをやめるところだけれど、今日は気にせず贅沢なココアを淹れてみます。
昼ごはんは、買っておいたチキンラーメン。仕上げに落とした卵が硬くなりすぎないよう、真面目につくります。
またやることをやったら、休憩。
薪ストーブの前に椅子を並べてベッドをつくり、寝転びながら、ひたひたと本を読みます。この頃にはすっかり、なんていい日だろうかと思う。
ふと、時計に目をやる。もうすぐみんなが帰ってくる時間です。
いそいそとベッドを解体し、ココアのカップやチキンラーメンのどんぶりを洗う。
疲れて帰ってくるだろうみんなが食べたいものを想像し、そうしてわたしは、夕飯の支度に取り掛かることにしました。
「山のサハラさん」は、日本仕事百貨のメールマガジンから生まれたコンテンツ。全国を旅するように働く佐原真理子さんが綴る日記です。