山のサハラさん
2020/6/8

6月8日 月曜日

「セロリ、入れてもいいですか?」

山小屋のお昼どき。ラーメンを注文されたお客さんに、そう尋ねてみる。

セロリ入りの麺とスープをすすったお客さんが「うまい」と言ったのが聞こえると、待ってましたと言わんばかりに、厨房からにっこりと顔を出す。

実はそのセロリ、今朝わたしが収穫したもの。

八ヶ岳が開山し、山小屋の営業も再開したけれど、すぐに以前のような賑わいが戻ってくるかどうかはわかりません。
そこで山小屋の社長が、小屋番をしながらできる仕事を見つけてきてくれたのです。

小屋番と農家の2足の草鞋を履くことになったことがなんだか可笑しくて、山小屋に持ち帰ったセロリを早く誰かに食べてもらいたかった。

セロリ農家さんでの仕事の開始時間は、なんと深夜の1:00から。標高2,060mにある夏沢鉱泉から麓の原村にあるセロリ畑まで、車で1時間弱の山道を下りて通勤します。

道中は小川を渡り、落石が多い斜面の下を通過したりする。いきなり鹿が飛び出してきたりもするので、深夜に一人、どぎまぎしながら車を走らせた。

初出勤の今日。真っ暗闇の畑の中、ヘッドライトで手元を照らしながら、ひたすらセロリを収穫していく。そのあとは、袋や段ボールにセロリを詰めこんで、出荷の準備をしていきます。

4:30頃になり、一気に陽が昇った。暗くてよくわからなかった農家さんの顔が見え、あらためて挨拶を交わします。

山へ帰った頃には、眠たくて仕方がない。けれども自分で収穫したセロリで、お客さんや小屋番仲間に料理をつくり喜んでもらうと、自分の中の何かが満たされていくようでした。

コロナの話はもう何べんしたかわからないけれど、再び八ヶ岳で暮らすようになり、こうしてセロリ農家でも働けることになったのはコロナが発端です。

先の未来、コロナと共に何か面白いことが待っていてほしい。

疲れているのに、なぜか身体は軽やかな日でした。

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「山のサハラさん」は、日本仕事百貨のメールマガジンから生まれたコンテンツ。全国を旅するように働く佐原真理子さんが綴る日記です。