山のサハラさん
2020/6/29

6月29日 月曜日

悪天候の日は登山者も少なくなり、小屋番にとってはささやかな余暇。

そんな時に繰り返し観ているのが、91年に公開された高畑勲監督のアニメ映画「おもひでぽろぽろ」です。

東京で生まれ育ちながらも田舎に憧れる、主人公のタエ子。

幼い頃のわたしはその姿に自分を重ねて、自分も大人になったらきっと、山と川と海の近くで暮らそうと思い続けました。

物語は、大人になったタエ子の現在と、小学生時代の思い出を行き来しながら進んでいく。そうして最後は、子どもの頃に大切にしていたところへ辿り着くのだな・・と感じさせられるシーンが映し出されます。

「おもひでぽろぽろ」を観終わったら、ぜひ自身の小学校の卒業文集を読み返してみてほしい。

12歳のわたしが書いた文集には、「将来の夢は絵本作家です」とありました。前に、あらためてそれを読み返して驚いた。

「面白い絵本をつくるために、自然がたくさんあるところに住んで、散歩をいっぱいして、いろんな体験をしたいです」

大人になったわたしは、絵本作家ではなく、八ヶ岳の山の中で小屋番をしています。違う道を選んだようで、実は、小学6年生の時に想像したような人間に向かっている道中にあるのかもしれない気がした。

大人になってから新しく出会う自分も在る中で、根っこに据える自分自身は、既に小学生くらいまでには存在しているのだろうか・・自分を探すというよりは、還っていくような。

部屋にこもり、ちょっとした時間のゆとりの中で、懐かしい思いに触れてみる。

明日も天気予報では、雨のようです。

山で暮らしはじめてから、雨もいいものだな、と思うようになりました。

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「山のサハラさん」は、日本仕事百貨のメールマガジンから生まれたコンテンツ。全国を旅するように働く佐原真理子さんが綴る日記です。