山のサハラさん2020/11/9
11月9日 日曜日
布団にくるまっているというのに、寒くて目が覚めた。
窓の外に目を向けると、昨日とは嘘のような白い景色が広がっていた。
とうとう冬がきました。いやあ、秋を名残り惜しむ暇もなかったな・・
しばらく雪を眺めていたら、こんなに綺麗だったっけと、来たる季節を受け止めることができました。
冬、わたしは山を下りる。
そうしてご縁があり、11月半ばからは、京都は美山で茅葺き職人さんのアシスタントの仕事を。年明けから春までは、小笠原諸島で無人島料理人という仕事をすることに決めました。
美山には、茅葺屋根の美しい家が立ち並ぶ集落がある。この屋根を葺き替えることが職人さんの仕事で、わたしはせっせと茅や道具を運び上げることが仕事となるだろう。
小笠原諸島での無人島料理人は、映画「南極料理人」を観ると想像しやすい。
南極料理人が、−50℃の氷の世界にある昭和基地での料理人なら、無人島料理人は、暖かいが水や電気もトイレにスマフォの電波すら無い島での料理人です。
私を料理人として雇ってくれたのは、小笠原の父島で生態保護などを行なっている会社。たびたび無人島へ渡っては、外来種の木を伐採したりしています。
20人くらいのチームで島に滞在し、1週間ほどキャンプ生活を繰り返し送るのだそう。その時のみんなの朝昼晩の食事をつくることが、わたしの仕事となります。
茅葺屋根の上、そして無人島。この冬、いったい自分にどんな日々が待っているのだろう・・
楽しみだけれど、山や親しい人たちが恋しくなってしまわないか。本当に何もない無人島で、仕事と暮らしをsurviveできるだろうか。
慣れ親しんだ八ヶ岳とは、今日からしばらくお別れです。
わたしの中で淡く抱いた不安とは裏腹に、やさしいけれど力強い、そんなような色で夕陽が山々を染めるのでした。
「山のサハラさん」は、日本仕事百貨のメールマガジンから生まれたコンテンツ。全国を旅するように働く佐原真理子さんが綴る日記です。