山のサハラさん
2021/4/13

4月13日 火曜日

小笠原から本州に戻り、八ヶ岳の山小屋へ帰る日までの間。年末まで働かせてもらっていた、京都は美山へ茅葺き職人さんとこに寄らせてもらいました。

会いたかった人との再会は嬉しい。わたしからたっぷりと土産話をし、職人さんからも近況を聞く。そうして、一緒に葺いた屋根の完成を見に出掛けました。

茅葺き屋根というとすすっぽくて重厚なイメージだったけれど、なんとまあ、黄金色に光っていた。かつて日本が「黄金の国ジパング」と呼ばれた由来の一つには、この茅葺き屋根が連なる景色からともいわれているらしい。

これまでのわたしは、古くて時間が蓄積されたものに心が動くことが多かった。葺きたての屋根という真新しいものに心が動いた時、そんな感覚自体が新鮮に思えました。

葺きたての若やかさは、始めの数ヶ月しか見ることができないといいます。

たまにわたしも、人から若いねとか、青いねと言われることがある。自分でも未熟さが恥ずかしく思うような場面があったりして、この頃は早いとこ落ち着きたいと思っていました。

けれども、そんな時間は否が応でも過ぎ去るものであり、その若さというものも日々変化していく。

手っ取り早く何かを得ようとするのではなく、時間をかけてみるからこそ、幾重もの色や匂いが重なってゆくのかな・・

同じものでも刹那に同じではないことを味わえるようになれば、仕事や暮らしの中で繰り返される地道な作業すらも、全く違う手応えとなるかもしれない。

あれ・・ただ茅葺き屋根を眺めていたのに、気付けば自分自身を振り返っていました。

職人さんと別れて京都を出発する。長野に向かって車を走らせると、八ヶ岳が見えてきた。長旅から帰ってきたなと思う瞬間です。

今年で山小屋勤務も5年目。

このシーズンでは、大胆かついっぺんにこなしていたような仕事も、一つずつ着実にやってみることを小さな試みにしたいと思います。

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「山のサハラさん」は、日本仕事百貨のメールマガジンから生まれたコンテンツ。全国を旅するように働く佐原真理子さんが綴る日記です。