しごとばーってどんなとこ②

素材
「しごとバー」をご存知ですか?

「職人」「NPO」「デザイン」など、さまざまな分野で働いたり活動したりしている方をバーテンダーとしてお招きして、お酒を飲みながらお話できるイベントです。虎ノ門・リトルトーキョー内のBAR「ジャノメ」で開催されています。

しごとバーはどんな方にもご参加いただけますが、「参加方法がわからない」「ひとりではちょっと入りづらい」という声を聞きます。

そんな人に向けて、しごとバーの様子をお伝えする「しごとバーってどんなとこ?」を日本仕事百貨のインターン生で企画しました。

全4回でお届けします。

*虎ノ門のリトルトーキョーは9月末クローズしましたが、移転先の清澄白河でも同じような場をつくり、しごとバーも続けていきます。今後も、ぜひご参加ください。

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第2夜

夜風が心地よいこの日、店内にはすでに5,6人のお客さん。ゲストの方との話に花が咲いていました。

今回お伝えするのは、5月22日に行われた「マチオモイナイト」

ゲストは、大阪ガス(株)に勤められながら、カフェやトークサロンなどの「場づくり」をされている山納洋さんです。

BARの隣のイベントスペースに移り、山納さんのマチオモイナイトについての説明からはじまりました。

マチオモイナイト2

「今日の主旨は、自分が愛着をもってるまちのことをきっかけに語り出すことです。安全地帯はありません。みんなに話してもらいます。いきなりですが、どちらのまちを?」と斜め前の女性にバトンパス。

ちょっと驚きながらも、どこか落ち着いた声で語りだす女性。この方の想うまちは「滋賀県高島市」だといいます。

「わたしが住んでたのは高島市のなかでも山のほうで、1時間に2本ぐらいしか電車が止まらないようなところです。今は東京で働いてるけどいずれ関西に戻りたいなって」

そのまま、その方が働いているという保育園の話に。

そこでは自然保育というのを大切にしていて、晴れた日にはこどもたちとバスに乗り込み、山や川に遊びにいったり。畑に種をまいて、採れたものをおいしくいただいたりもするそうです。

「普段口にしているものがどうやってできていくのかわかるんですよ」

それを聞いていた山納さん。何かを思い出したように、ある村で有機農業が受け入れられるようになった話をはじめます。

すると隣の男性が「僕の友人は学生の農業就職を斡旋してて。でも現地で村八分されたり大変みたいです」とつづけます。

だんだんと、はじめの話題とは別の方向へ話がすすみ、さいごは地元岡山で祖父母の農耕地を相続することになったという方の身の上話に。その土地をどう使えばいいだろうと知恵をしぼるみなさん。

マチオモイナイト3

まちのことをきっかけに、終着点が見えないままはじまったディスカッションだけど、ひとりの言葉が誰かの思い出とつながって、不思議と話が続いていく。

「こんな感じで、話題がどんどん流れていくので食いついてください」と山納さん。

山納さんは「マチオモイナイト」でどんな場をつくろうとしていたのだろう。ディスカッションを終えたあとにうかがいます。

「なにかの知識がそんなに凄くなくても、自分が育った地域に関しての知恵はあるでしょ?それを何人かが持ち寄るだけで、解決できる問題があるっていう考えを広めたいんですよ」

「今日だったら、まずじぶんの地域の魅力を語る。そのつぎに農業とか過疎化の問題がでてくる。すると誰かが『あ、それってうちの地域ではこうしてうまくいってますよ』というだけで、その問題が解決することだってあるんです。答えを知ってるのは、ひとりの専門家じゃないんだと」

マチオモイナイト4

「やっぱ日本人って、知らない人と喋るのが得意じゃない。喫茶店とかでもそうでしょ。でも、まちっていう、自分が愛着をもつテーマにするだけでこんだけ盛り上がる。場のちからを感じるんです」

「そういう場所って、利害が絡まないからフラットに出会えますよね。それこそ飲み屋の戯言かもしれない。けど仕事モードじゃないお喋りで気づくことって、いっぱいあります。その気づきってフォーマルな仕事とかに効いてきそうでしょ?そういった場所が、次に何かを生んでいくんだと思います 」

今日のように、この場で偶然出会った人と自分のまちのはなしをする。そこでひょんなことから、問題が解決することもあるのですね。

ディスカッションが終わったあとは、自由な時間です。

さいしょに写真の男性に話をうかがってみました。

定年退職後、若者の起業の手助けをする会社を鎌倉につくられたそうで、わたしが就活生だと伝えると、働き方やおすすめの会社について快く教えてくれました。

マチオモイナイト5

こんどは、ちかくにいた大学生のふたりに話を聞いてみます。今日のために北九州からやってきたといいます。

「わたしたちもこういう場所をつくりたいなと思っていて。何かしたいと思っている意識高い人が集まる場所はあるけど、積極的に参加できない人は少なくない。この先どうすればいいのか悩んでいる人はどこにいけばいいんだろう。だから、そういう人も参加できる所をつくりたいと思って、東京へ勉強にきました」

「何にもない」といわれる地域を、どう盛り上げていくか考えているふたり。

いまは大学のゼミ生といっしょに、福岡県の中間市で活動しているそうです。

マチオモイナイト6

会話の余韻が残りつつ、23時でしごとバーは閉店します。

第1夜でお伝えした「本作りナイト」は講義が中心だったけど、今日はディスカッションが中心でした。しごとバーのゲストは日替わりなので、雰囲気はその日によって変わります。だからこそ、思いがけない人との出会いがあると思います。

しごとバーにまだ参加したことがないけれど、ちょっと気になっている。そんな方が足を運んでいただけるきっかけになったら嬉しいです。

(2015/8/10 糸井茜)