しごとばーってどんなとこ①
「しごとバー」をご存知ですか?
「職人」「NPO」「デザイン」など、さまざまな分野で働いたり活動したりしている方をバーテンダーとしてお招きして、お酒を飲みながらお話できるイベントです。虎ノ門・リトルトーキョー内のBAR「ジャノメ」で開催されています。
しごとバーはどんな方にもご参加いただけますが、「参加方法がわからない」「ひとりではちょっと入りづらい」という声を聞きます。
そんな人に向けて、しごとバーの様子をお伝えする「しごとバーってどんなとこ?」を日本仕事百貨のインターン生で企画しました。
全4回でお届けします。
*虎ノ門のリトルトーキョーは9月末クローズしましたが、移転先の清澄白河でも同じような場をつくり、しごとバーも続けていきます。今後も、ぜひご参加ください。
虎ノ門駅から8分ほど歩くと、虎ノ門ヒルズの道路向かいにリトルトーキョーが見えます。
(リトルトーキョーまでの地図はこちら)
リトルトーキョーに到着したら、木の扉を抜けて奥に進むとBARジャノメの入り口があります。
中へ入ると「こんばんは!」と迎えてくれるのは、ジャノメの看板バーテンダーのヒロくんです。人見知りの方は、まずは気さくで明るい笑顔のヒロくんとお話して、緊張をほぐしてもらうのもいいかもしれません。
飲み物を注文したあと、ヒロくんが「お好きな席にどうぞ」とBARの隣にあるイベントスペースに案内してくれました。開始より少し前の時間でしたが、すでに10人近くのお客さんが来ていました。
今回お伝えするのは、4月22日に行われた「自分で本づくりナイト」です。
ゲストはおばあちゃんの代から印刷会社をやっているという、藤原印刷の藤原章次さん。
ライター、学生、クリエイター、印刷同業者の方、求職中の方など。さまざまな人が集まるなか、写真や映像を交えながら、実際に本をつくる工程についてのお話を伺いました。
「最近、本当に個人の方が本をつくられる機会が多いんです。当社では毎月のように、個人の方の本や雑誌をつくっています」
藤原印刷では目的や予算に応じて、紙の種類や色、製本方法をカスタマイズした何万通りものオーダーメイドの本がつくれるそうです。本のデザインによっては、手作業で裁断や製本をしていく場合もあるとのこと。こだわり抜いて、伝えたいことを一番伝わるデザインにすることができます。
「必要とされる段階から本づくりをお手伝いします」という藤原さん。装丁デザインやレイアウトができない人も、藤原印刷のサポートを受けながら本をつくることができるとのこと。生まれたお子さんのために、世界で一冊の絵本を作ったお母さんがいたそうです。
「一冊あたり100円代作れる本もあるので、出版社以外にも企業・個人の方が本を作っています。そうやって、流通に乗っていない本が増えていくのも面白いですよね」
なんだか、わたしにとって本づくりが身近なものになりました。
藤原さんのお話で一番驚いたのは、私たちが日ごろから読んでいる本は、とてもたくさんの人が関わりながら、長い工程や地道な作業を経てできあがっているということです。
微妙な色合いを表現するために特別な色をつくり、まばらにならないようインクをまぜる職人さん。印刷用の金属板を肉眼でじっと見つめて、傷がないかどうかを毎日、一日中検査する人。どの過程においても、ミリ単位の傷も、ズレも許されない。
版をつくり、印刷し、製本するという本をつくる過程には、想像もしていなかった細かな「しごと」がたくさん隠れていました。
一人ひとりの思いが込められて、丁寧につくられた本。もっと本を大切に読みたいな、という気持ちが沸き上がってきました。
藤原さんのお話が終わったあとは自由な時間です。藤原さんに質問したり、参加者同士でお話したりと、本の話から仕事の話、趣味の話に和気あいあいと盛り上がりました。
わたしのとなりに立っていたのは「自分がどんな仕事をしたらいいのか考えたい」という就活中の大学生。むこうには「本づくりに興味がある」というライターの方や「本の表紙をつくってみたい」というクリエイターの方も。
ほかにも、「いろんな仕事をしている人に出会ってみたい」という方や「緊張しながらはじめて来た」という人、「今日で5回目くらいかもしれない」というリトルトーキョーの常連さん。今夜もさまざまな方が集まっていました。
しごとバーは23時で閉店です。年齢も職業も様々な方に出会い、雑談から将来のことまでいろんなお話ができました。どの人もいろんな想いを持って多様な生き方をしていることに、なんだかエネルギーをもらいます。
そして、藤原さんが熱く、生き生きと話す様子が印象的でした。こだわりや誇りを持って、丁寧に本をつくっていく姿勢がとても素敵でした。
しごとバーにまだ来たことのない方も、ぜひ足を運んでみてください。そこに集まる素敵な人たちや、まだ知らないしごとに出会えるかもしれません。
(2015/8/3 木村愛)