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もしも環境問題に関する仕事をしたいと思ったら、きっと世の中には色々なアプローチがあると思う。NPO、NGO、一般社団法人など会社のほかにもさまざまな形の組織があるし、企業内のCSRや商品開発も、環境につながっているかもしれない。

もっとも直接的な方法としては、自ら環境破壊の現場へ行き行動を起こすか、政府や組織に直接働きかけるという方法があると思う。
そういうことを、個人の取り組みとしてではなく仕事にしている人たちがいると知ったとき、最初はどんな仕事なのかまったく想像できなかった。
だけど、話を聞くうちに、少しずつ分かってきました。
今回は、世界40カ以上の国と地域に拠点を持つ国際環境NGOグリーンピースで、気候変動・エネルギーに関するキャンペーン(環境保護活動)を進めていく「キャンペーナー」を募集します。

政府や企業、そして 普通に街を歩いているような一般の人たちに、現状や課題について知ってもらい、一緒にこれからどうしていけばいいか?ということを考え行動していく組織です。
問題の深刻さと本質を多くの人に気づいてもらうために、ときには過激とも捉えられる手段を選ぶこともある。
環境へのアプローチは色々あるけれど、こんな関わり方もあるということを、まずは知ってみてほしいと思います。
グリーンピースの日本事務所に伺い、話を聞いてきました。
新宿駅を降り、大通りを一歩入ったのどかな住宅街を抜けると白い建物が見えてくる。2階のグリーンピースという緑色のロゴがかかったドアの先に、グリーンピースのオフィスがある。
ここは、環境問題や社会的課題を解決し、よりよい社会に変えるために、あらゆる戦略を立てていく拠点。
日本人だけではなく、さまざまな国からやってきたスタッフたちが働いている。そして世界中のオフィスとタイムリーに連携して活動している。

それらの環境保護活動は「キャンペーン」と呼ばれ、日々政治や社会情勢と結びつきながら、さまざまなプロジェクトを進めている。
最初に話を伺ったのは、プログラムディレクターとしてグリーンピース全体の活動の責任を担うラターナ・チアさん。

それは、世界中にあるグリーンピースの48のオフィスほとんどすべてを巻き込んだ大きな取り組みだった。
グリーンピースでは、そうした多くの人を動かすプロジェクトのことを「モビライゼーション」と呼ぶ。
モビライゼーションに長けたチアさんの力を借りたい、と日本事務所からオファーがあったことが、チアさんが日本に来たきっかけだった。

チアさんは、モビライゼーションについてこう説明してくれた。
「グリーンピースは、国際会議で各国政府に対して政策提言をしたり、企業に対して交渉することもあります。でも、いちばん大切にしているのは一般の市民の方々の持つ力、“ピープルパワー”です。わたしたちではなく、参加するひとりひとりが社会を変えるための中心的存在であり、“ヒーロー”であると考えています。」
オーストラリアの大学を出て、その後グリーンピースに入り世界中のオフィスを見てきたチアさん。日本に来て感じたことがあるそうだ。
「日本やアジア諸国に共通しているのは、歴史が深く、細やかで相手を尊重するところです。欧米だと自分自分!と自己主張が強いけれど、アジアは『わたしたち』という考え方をする。その姿勢は、これからみんなを巻き込みながら課題解決へ向かっていくために、重要な考え方だと思います。」

ただ、逆の心配もある。
たとえば、森林破壊の現状に対して、大企業のCEOに直接改善案を訴えかける、という手法をとったとき、アメリカではギリギリまでプッシュしても受け入れられるけれど、日本ではそこまでやらなくても…と引かれてしまう可能性がある。
だから、日本の文化に根ざしたキャンペーンの組み立てが必要になる。
そんなバランスも考えながらキャンペーンを進めていくのが、キャンペーナーの仕事。
たとえば、スーパーマーケットに魚介類の放射線汚染の調査について意見を届けるオンライン署名を行ったり、ミツバチの生命に悪影響を与える一因となっているネオニコチノイド系農薬の基準緩和に反対するためミツバチのコスチュームでアースデイ東京などのイベントに参加したり。キャンペーンの方法は時と場合によってさまざま。
国の政策が変わるたび、それに沿って戦略も変えていく。だからけっして同じ業務が繰り返されるような仕事ではないそうだ。

グリーンピースでは、環境問題別に解決策を議論するミーティングや、スキルシェアトレーニングなどの会議も世界中で実施される。
そのような会議に出席するときは、長期の海外出張もある。
だから、働く上では、自己マネジメントができるかどうかがとても重要だそうだ。
ただ、それよりもさらに大切なことがある、とチアさん。
「あとからトレーニングで身につけることができるものより、そうじゃないものを重視します。まずは、社会貢献したいという熱意や意思ですね。それから、戦略的に物事を考える力。この2つが大切です。」
もちろん、熱意があることが大前提だけど、ものごとを俯瞰して見ることができるバランスが大事なのだと思う。
思い通りにいかなくても、個人的に受け取らず、世界をほかの観点からも見られること。頭を切り替えて、そのつど最短・最適な解決方法を考えられること。

チアさんの言葉を、スタッフの高田さんが、べつの言葉で教えてくれた。
「熱い心と冷たい頭」
これは、国際政治学者の緒方貞子さんの言葉だそうだ。高田さんは、まさにそのバランスがとれている方なんじゃないかと思う。

ゴールデンウィークは、ドイツで行われた会議に参加したあと、そのままドイツ観光を楽しんだそうだ。
ボランティアからアルバイト、契約スタッフを経てフルタイム勤務になった。正式に勤めてからもうすぐ4年になる。
「今は時代も変わりましたが、わたしが大学に入った2000年代頃は、環境を専門的に学べる場所はほとんどありませんでした。就職するときも、環境の仕事で検索しても、ハウスメーカーの『住環境』とか、環境に優しい製品開発とか。それはちょっと違うなって。」
卒業後は、写真の現像とプリントを行う企業へ就職した。けれど、仕事が忙しくて体調を崩してしまう。本当にやりたいことをやろうと、環境を学ぶためワーキングホリデーでニュージーランドへ。
グリーンピースが監修した本を読んだことがきっかけで、帰国後、グリーンピースのオフィスを訪ねた。そこからボランティアスタッフになり毎日のように通っていたそうだ。

「メンバーが会議で、どういう議題があってそれに向けてどう動くか、というのを日本語と英語で議論する光景を目にしたとき、最前線だな、と感じてワクワクしました。」
働きはじめてから、さらに身をもってそう感じさせる出来事が起こった。
それは、3年前の東日本大震災のときのこと。高田さんがエネルギー担当になってから五ヵ月が経った頃だった。
「地震と津波が発生して、東京電力の福島第一原発事故の様子をニュースで見た直後に、日本のオフィスから世界中のグリーンピースのオフィスへ連絡して状況を伝えたんです。そのとき、世界中で同時並行で進んでいたすべてのキャンペーンがストップしました。福島第一原発で何かがあったらすぐに動けるよう、みんながスタンバイ状態になったんです。」
すぐにスカイプのチャットチームが編成され、時差を利用して24時間リレーしながら原発の状況を確認して情報を共有した。
海外の放射能防護の専門スタッフに依頼を出すと、わずか48時間後にグリーンピース本部から支援チームが日本へ到着した。

いざというときに連携できる専門家が内部にも外部にもいる。ひとつの国ではできないことも、世界規模で解決策を考えられる。
高田さんはそのとき、グリーンピースという組織の強みをあらためて感じた。
あれから3年たった今、一見沈静化して見えるけれど、原発やエネルギーについての課題はまだまだたくさんある。
たとえば、日本が原子力発電所の技術を世界へ輸出しようとしていること。太陽光や風力などの自然エネルギーと省エネで、世界中のエネルギーを100%まかなうことができるかもしれないということ。

知らない人は全然知らないことかもしれない。それに気づいてもらうには?一緒に行動してもらうには?そんなことを日々考えている。
「わたしのバックグラウンドは大学で学んだ経済学しかなかったので、それまで原発の知識もなにもなかったんです。先輩や海外の同僚に助けてもらいながら、なんとかやってきました。だから、知識よりも熱意や関心のほうがより重要だろうな、と思うんですね。」
「やっぱりいちばんは、グリーンピースへの愛着かな。わたしたちの活動を面白い、ワクワクする、と思える方に来ていただけたら。」

「グリーンピースは、人によって様々なイメージがあるかもしれません。とくに捕鯨のことで、暴力的な団体なんじゃないかとか、シーシェパードというほかの反捕鯨団体と混同してしまっていたり。実はわたしもそうだったんです。なので、最初にオフィスに来たとき質問しました。」
すると、文化とか伝統とはかけ離れた現在の捕鯨の姿がわかった。知らないことばかりだった。
「不安のある方も、いちど話す機会があるといいな。来てみたらきっと分かります。わたしのように。」
もしもグリーンピースの姿勢やアプローチが自分には合っているかもしれないと思うならば、ぜひ応募してみてください。
高田さんの言うように、直接話を聞いてみるのがいちばんです。
(2014/6/13 笠原ナナコ)