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類は友を呼んでいく

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「どんな人を募集するのがいいだろう」

今回の取材はそんな話からはじまりました。

具体的な仕事が決まっていないのに、取材をして大丈夫なんだろうか。正直に言うと、最初は不安になりました。

けれど話を聞いているうちに、この人たちとなら大丈夫。そう思えるようになりました。

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今回訪れたのは佐賀県江北町。

ここで、まちのことを一緒に考えている仲間たちに出会いました。

「募集するなら、江北町にある空き家活用に取り組んでくれる人がいいんじゃないかな」

みんなでそんな話をしたけれど、もしこの様子を知って仲間になりたいと思う人がいれば、経験や役割は問わないそうです。

まずはこんな場があることを知ってもらえるとうれしいです。

  
佐賀市からは電車で15分ほど。最近よく耳にする武雄市や波佐見町の手前にあるのが江北町。各地へのアクセスのよさから、昔は宿場町として栄えたそうだ。

ミーティングがあると聞いて、町役場へ向かう。

会議室に入ると6人ほどの人が話をしていた。みんなこの周辺に住んではいるけれど、デザイナー、家具職人、住職、馬の飼育をしている人、地域おこし協力隊などさまざまな仕事をしている。

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「地域おこし協力隊をあらたしく募集しようと思うのですが、どんな人がいいでしょうか」

町の職員である坂元さんが声をかけ、ミーティングがはじまった。

集まっているのは「まちづくり座談会」のメンバー。まちづくり座談会では、月に1回近況報告をしたり、まちのことを話したりしているらしい。略して「座談会」。

ちょうど今夜開催される座談会の前に、スタート当初から関わっている人たちが準備のために集められていた。

「座談会のメンバーになってくれたら、うれしいよね」

「そもそも座談会はどこを目指していくんだろうね。法人化っていう話もあったけれど、なんだかそれも違う気がするし」

「メンバーと考えたとき、あえて地域おこし協力隊として募集するものなのかなって考えちゃいました」

「なにか手に職を持っていて、この場所ではじめてくれるような人がいいんじゃないかな」

「でもそういう人は、もう自分ではじめているよね。ここではじめる理由ってなんなんだろう」

ひっきりなしに話が飛び交う。和やかな雰囲気だけれど、みんな真面目に考えながら話をしているのが伝わってくる。

しばらく話を聞いていると「どう思いますか?」と意見を求められた。

「もう少し話を煮詰めてもらってから求人を出したほうがいいと思いました」

正直にそう答えると「そうだよね」と話を素直に聞いてくれる。その後には具体的にどんな役割が必要なのか相談がはじまった。

このまちのことはまだよく知らないけれど、なんだか話をしているうちに座談会のメンバーになったような気分になってしまった。

当初1時間くらいで終わると聞いていたのだけれど、気がつくと3時間ほどが過ぎていた。

  
座談会の幹事のような役割を担っているのが、町の職員である坂元さん。

「前は福岡で商社マンやってたんです。長男だったこともあって戻ってきてね」

各地域で起きているまちづくりの事例をよく知っていて、勉強熱心な方なんだな、というのが伝わってくる。

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今、座談会の活動の中心は上小田という地区。ここは江北町の中でも高齢化、少子化が進んでいて、空き家も多い地域だった。

3年ほど前、築75年はたつ古民家を改装してアトリエにしながら暮らす夫婦が引っ越してきたというのを耳にした。

「とにかくきれいになっていて。どうしてこの場所なんですかって話を聞きに行ったんです。そこから、月に1回くらいは会って情報交換でもしましょうってことになりましてね」

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家具職人の本山さん夫婦との出会いから座談会がはじまった。何度も開催していくうちに、デザイナーやカメラマンなどのつながりが生まれていく。

「クリエイターにはクリエイターの人脈があって、広がっていったんですよね。なにかが生まれるような雰囲気ができてきたのかなって。興味を持ってくれた人が来やすいようにしようと思ってます」

気がつけば、まちづくり座談会には毎回20から30人もの人が集まるようになった。

「おもしろいことをやっていきたいんですよね。移住者、というか仲間が増えていったらいいなって思います」

坂元さんが取り組んでいる仕事の1つが、江北町にある空き家を紹介するウェブサイト「空家に暮らす」の運営をすること。

もちろん物件情報も載っているのだけれど、サイトを覗くとここで暮らす人たちの雰囲気を感じることができる。

地道に空いている家を探しながら、この2年ほどで20軒ほどを紹介することができた。移住促進の取り組みに苦戦している地域もあるけれど、ここではいい流れができている。

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地域おこし協力隊として活動をしている村元さんにも話を聞いてみる。

思いついたら即行動派の坂元さんが言うには「まじめな人」。話をしていると、1つ1つをちゃんと考えている人なんだなというのが伝わってきた。

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熊本出身で、自社開発ソフトのインストラクターなどをしていたという村元さん。どうして江北町で暮らすことにしたんですか。

「専門の学校も出てないしお金もなかったけれど、デザイナーさんのようなものづくりの仕事にあこがれていたんです。経験はなかったけれど、東京で見習いからウェブデザイナーをはじめました」

それから10年ほど、主にディレクターとしてウェブ制作の仕事をした。毎日のように深夜まで働いて、休みの日にはリフレッシュのために登山やサッカーをする生活を送っていた。

「徐々に大きい仕事をまかせてもらえるようになって。無理をして体を壊してしまったんです。仕事自体はおもしろいけれど、ずっとは続けられない。自分の人生を生きていないんじゃないかって思ったんです」

いつか九州には戻りたいと考えていたので、これを機に東京を離れる決心をした。何をするか考えているときに出会ったのが、地域おこし協力隊という制度だった。

せっかくならおもいっきり山奥で生活でもしようかな、と思っていたとき、イベントで江北町のブースを見つけた。

「最初は正直、ふーんっていうくらいで(笑)でも面接に行ったら、その日に坂元さんが町内を連れ回してくれて。たくさんの人に会わせてくれたんです。せっかくなら仲間のいるほうがいいなって、そのときに決めました」

実はもう1ヶ所面接の話があったのだけれど、そこではあまり”人”を感じることができなかった。

生活するまちを決めるのに、坂元さんの存在は大きかったそうだ。

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引っ越してきてからは、春に協力隊を卒業する高塚さんと一緒に住みながら働くことになった。

「翌日から、お寺で子ども座談会っていう合宿に参加することになっていて。すごいパワーの男の子たちと過ごして、そのまま児童クラブを任されました。朝から晩まで、子どもたちと遊んで。あいまに頼まれた仕事をして。とにかく過酷な日々でしたね(笑)」

役所と児童クラブの行き来をする日々。子どもたちの見守りをするのも確かに大事な地域の仕事だけれど、地域おこし協力隊ってこれでいいのかな、と思うようになった。

もっと地域の人たちと出会いたい。そう思って開設したのが「おへそのおへそ」というコミュニティスペース。

子供連れのお母さんたちが立ち寄る場所になり、マルシェや上映会など、人が集まることができそうなイベントを開催するようにもなった。

「嬉しかったんですけど、ずっと人を迎えていると仕事が進まないんですよね。はじまってから、オープンする曜日や時間を決めて。少しずつ自分たちのペースでできるようになっていきました」

この場所の運営や児童クラブのほかにも、江北町をPRするためのイベントへの出張や地域からの頼まれ仕事。ほうっておくとどんどん仕事が舞い込んでくる。

「ホワイトボードでスケジュールを公開して。打ち合わせのときにはわざわざそれを持っていったりして。私たちの状況を理解してもらうことも一苦労でした」

具体的な仕事の内容が決まっていなかった地域おこし協力隊の仕事。本当に試行錯誤を続けながら、ここで過ごしてきたことが伝わってくる。

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今年は地域おこし協力隊としての最終年度、3年目を迎える。

「最近とくに、地域おこし協力隊ってなんだろうって考えるようになりました」

くわしく教えてください。

「パン屋さんやデザイナーさんとか、独立して生きている人たちがここにはたくさんいるんです。自分の手で稼いで、それをまちに還元していくのを目の当たりにしている。行政からお金をもらってまちづくりをしている自分に違和感や不自然さを感じることもあったのが正直なところです」

地域おこし協力隊として仕事をはじめても、3年後には新しい自分の仕事を見つけなければいけない。地域を元気にするのも役目だけれど、その後に備える時間でもあると思う。

村元さんは、フリーランスでウェブやイベントの企画運営をしていこうかと考えはじめたところ。地域おこし協力隊でなくなっても、この地には残ることは決めたそう。

「ここでいいかなって。すごく人がやさしくて、居心地がいいんですよね。仲間もいるし、定住することは早い段階から決めていたんです」

周りでがんばる仲間や広がっていくネットワークは、村元さんにとってとても大きな刺激になったんだと思う。この場所のことが好きだというのが感じられて、こちらまでうれしくなった。

夜になると、まちづくり座談会がはじまった。先ほど会ったメンバーに加え、続々と人が集まってくる。なかには他の市町村から座談会の様子を見にきた人もいる。

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企画しているイベントのお知らせや、新しく参加している人の紹介など。それぞれの報告が終わった後の議題は、引き続き「どんな人に仲間にきてもらいたいか」。

「大きなお金を払って有名な人に関わってもらうよりも、仲間のようになれる人がいいな」

「やっぱり、軌道に乗りはじめた空き家の事業を担当してもらうのはどうだろう。不動産や建築の知識がある人がいいんじゃないかな」

「家もそうだけれど、ここで暮らす人を増やすには仕事もつくっていく必要があるよね」

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「地域おこし協力隊が来てくれたことで、すごくいろいろなことが起こったよね。最初からできることがなくても、前向きな人が仲間になってくれるだけでいいと思う」

「ここにきたら独立しなくちゃ、というわけではないから。まずは気軽にきてほしいな」

話はとだえることなく続き、ガヤガヤとにぎやかな時間が過ぎていった。

「時間も遅いので、今日はこの辺で!」と坂元さんが声をかけたあとも、みんなそれぞれに集まって話をしている。

普段の生活のなかでは交わらないかもしれないまちの人たちが、一緒になってこれからのことを話す。

まちづくりって、こういうことなのかな。そんなことを考えながら、夜が更けていった。

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取材の後にも坂元さんはこまめに連絡をくれて、江北町の様子を教えてくれます。この人たちが味方にいるのは、本当に心強いと思います。

まずは座談会に参加してみませんか。気がついたらいつのまにか、仲間になっているかもしれません。

(2016/2/26 中嶋希実)

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