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未来を育てる町

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

社会にあるさまざまな課題や問題を根本から解決するためのキーワードは「教育」なんじゃないだろうか。

極端かもしれないけれど、そんなふうに思うことがあります。

「教育というのは、種をまいてぱっと収穫できるものじゃないですよね。将来を担っていく子どもたちの人格形成に大きく関わる。考えを豊かにする場でありたいと思っています」

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少子化による学校の統廃合。最近は、毎年500もの公立小中高校が廃校になっているそう。

学校がなくなれば、子どものいる家族はその地域で暮らすことが難しくなります。つまり学校がなくなった地域から、人が減っていくことに。

そんな中、全国から生徒が集まる人気の公立高校があることで地域全体が盛り上がりを見せているのが島根県海士町。一時は廃校の危機に直面したこの隠岐島前高等学校学校がはじめたのが「高校魅力化プロジェクト」です。

この取り組みは現在、広島や沖縄、長野など全国に広がっています。

今回は新潟県阿賀町が「高校魅力化プロジェクト」を導入するにあたり、公営の塾を担うスタッフと、プロジェクトのつなぎ役となるコーディネーターを募集します。

気概さえあれば、教員免許を持っている必要はないそうです。

  
新潟駅で車に乗り換え1時間ほどで津川インターを降りる。周囲が山々で囲まれているけれど、中心部には大きな店舗が並んでいる。想像していたよりも山奥ではないんだな、というのが第一印象だった。

人口は12,000人ほど。2005年に4つの町村が合併したという阿賀町の面積はとても広く、町内に5つもの温泉が湧き出ているそう。

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最初にお話を伺ったのは教育委員会教育長の清野一男さんと、学校教育課の清野郁男さん。清野(せいの)という苗字はこの辺りに多いそう。

「電車も高速も走っているから、交通の便は悪くないんですけどね。新潟市から3時間くらいかかると思われることもあるんですけど。意外と近かったでしょう」

そう笑いながら話してくれた教育長に、高校魅力化プロジェクトを導入することになった経緯を伺う。

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「阿賀町には高校が1つしかありません。その阿賀黎明高校(あがれいめいこうこう)の存続が危ぶまれるという状況になったんです」

新潟県では2018年度からの10年間で、県内にある高校の再編成を検討している。その基本方針として、1学年は4から8クラスが適正規模。阿賀黎明高校は今2クラスであるため、統廃合の対象となる可能性が大きい。

「小学校は7つ、中学校は3つあります。中学を卒業した後いい大学を目指すためや、部活を続けるためにほかの町にある高校に進学していく子も少なくありません。人数が少ないので、部活での受け皿がないんですよ」

雇用の場が少ないので、町を出て行ったまま戻ってこない子のほうが多いそう。

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このままではいけない。

阿賀黎明高校を魅力ある学校にするために、3つの柱を打ち立てた。

「小中学校を再編して高校の存続を図ること、保育園から高校までの15年を通した教育を実現すること、地域ととももにある学校づくり、キャリア教育を推進すること。これらを進めていくことで、選ばれる学校を目指すことになりました」

まずは全国の取り組みを知るところから。

いくつもの市町村に視察を行う中、勉強のために海士町の高校魅力化プロジェクトを進めてきた1人、株式会社Prima Pinguino の藤岡さんを招いた勉強会を実施したのが昨年9月のこと。

「今まで考えていたことと藤岡さんの話が合致するところもあって。阿賀町はこれだ!と思いましたね」

それから話は早かった。教育委員会や議会でも理解が進み、2016年の夏からプロジェクトを開始することが決まった。まさに今、藤岡さんと連携しながらすごい勢いで準備が進んでいるところ。

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高校魅力化プロジェクトの特徴の1つは学校と公営の塾、そして外からの生徒を受け入れるための寮が用意されること。

公営の塾、と言われてもあまり想像がつかないのだけれど、どんな役割を担う場所になるんだろう。

「もちろん一般的な塾と同じように、放課後の時間で学力をつけるための勉強もします。もう1つ、キャリア教育ができる場所になるんです」

海士町では「夢ゼミ」という大学のゼミ形式の授業を展開。生徒が自分の夢や興味のあることを発表したり、グループでディスカッションをしたりしているそうだ。

学校だけでは出会えない大人の話を聞いたり、自分の夢を具体的に考えていく時間。

自分が高校生だったとき、世の中にある仕事をどれくらい知っていただろうか。社会に出てからも考え続けることかもしれないけれど、この時期に知る、触れる、そして言葉にして考える機会があったら、日々勉強することの意味合いが変わっていたような気がする。

「場所が違うから、海士町と同じというわけにはいきません。ここに合ったものをつくり、取り入れていきたいと思っています」

  
お二人の話を聞いた後、阿賀黎明高校を訪れました。公立ではめずらしい中高一貫校なんだそう。

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中田校長はとても丁寧に話をしてくださる方でした。

小さいころの夢は研究者。大学では理学部で学んでいたそう。

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「教育職にも関心があったので教職課程をとっていました。その中で教育実習にいったとき、これが天職だ!と思ったんです」

そこでやりたいことが変わったんですね。

「授業は決してうまくはなかったんですが、子どもたちが喜んでくれて。育てるってこういう気持ちなんだと感動しました。大きな刺激が入ったときって、人間変わるじゃないですか。教員にならなくちゃって思ったんですよね」

教員として生徒に教えたり、教育委員会や行政関係の仕事を経たりして、昨年3月にこの学校にやってくることになった。

「はじめて来た日に、玄関にいた生徒が大きな声で挨拶をしてくれましてね。学校ってやっぱりいいなって思いましたね」

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「1番大切なのは生徒の心身の安全です。そして子どもたちが将来幸せになるためにはどうしたらいいか、を考えています」

学校の先生という仕事は、体力的にも大変なイメージもあります。

「授業や部活動の時間が多いし、細かい苦労もあります。けれどちゃんと結果が出る。意義を感じるからこそ、取り組めますね」

「教育の目的の1つは文化継承。もう1つは人格形成ですよね。教育の効果が見えるのは10年、20年先ですが、将来を担っていく子どもたちを育てる責任のある仕事だと思っています」

  
となりで話を聞いている教頭先生の池田さんの担当教科は英語。以前にも教師としてこの阿賀黎明高校に勤務していたそうです。

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「学級担任をしていたとき、生徒の下校時や部活動の際に、地元の人たちが生徒たちと気軽に楽しそうに話していて」

そのとき、町全体で子どもたちを見守っているように感じたとのこと。

「生徒の話がたまたま出たときにも、居合わせたおじいちゃんがその子のことを知っていたり。町全体で見守ってくださっているように思いました」

「素朴で優しい人が多いんです。生徒たちも素直です。個々の家というよりは、地域がつながっていて、全体で子どもを育てているという感じがするんですよね」

町には高齢者が多いこともあってか、進学を希望する子どもたちの中には、医療や福祉系の勉強をする生徒も少なくない。

「存続運動ではなくて、行きたい、行かせたい学校になる。そのためにどう魅力をつけていくか。規模が小さいことは、手厚いケアができるので強みだと思っています」

現在、高校では教養・国際・環境の3つのコースが用意されている。高校魅力化プロジェクトを導入するにあたり、カリキュラムの再編とともに「地域」のことを学べるコースを設置することを検討しているところ。

「阿賀町の未来を担う子どもたちを育成していく場だと思っています。地域への愛着、そして誇りを持てるような活動を取り入れます。将来は町のために仕事をつくっていくような子どもたちの育成もできるかもしれません。一緒に汗を流していくような気概にある方に来ていただけたら嬉しいですね」

  
最後にお話を伺ったのは波田野副町長。

肩書きを聞いて少し緊張しつつご挨拶すると「取材と言われるとこちらも緊張しますね」と、気さくな笑顔で返してくれた。

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この町が地元だという副町長。大学では東京に出たけれど、家業を継ぐべく戻ってきたそうだ。

「同級生は10人くらいしか残っていません。雇用をつくるための取り組みも力を入れはじめていますが、ずっと先のことを考えたときに、高校魅力化プロジェクトは必要なものだと思っています」

今回の募集で入る人は、まずは地域おこし協力隊として3年間働くことになる。

「今は9人の地域おこし協力隊が活躍してくれています。舟下りの船頭さんや農業振興、鳥獣被害を担当している人もいますね。若い人もいるから、移住してきた仲間としては心強いんじゃないでしょうか」

「田舎ですから閉鎖的なところもあります。でも中にいる人は優しい人ばっかりですから。生活してみると良さがわかってもらえると思うんですけど」

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水が豊かで林業や農業にも力を入れているし、温泉や酒蔵、おいしいお米もある。町を流れる阿賀野川沿いには1泊2万円以上する旅館もいくつかあるなど、観光を目的に訪れる人も少なくない。

最初は緊張していたけれど、最後にはおすすめの日本酒や宿の話で盛り上がった。

みなさんが口をそろえて話す阿賀町の人柄は、こういうことなのかもしれないな。

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この取り組みはまだまだスタートラインに立ったところ。お話を伺ったみなさんと協力しながら、阿賀町らしい高校魅力化プロジェクトをつくっていくことになります。4月からは、学校も新しい体制に変わると聞きました。

コーディネーターや公設塾のスタッフは、学校の先生でも親でもない、高校生にとってはお兄さんやお姉さんのように身近な存在になるのかもしれません。

もちろん子どもたちに教える存在にはなるけれど、町の人や生徒たちから教わることもたくさんあるはず。

少しでも興味が持てたら、まずは話を聞いてみてください。この町の未来を育てる仕事です。

(2016/3/26 中嶋希実)

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