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思わずまとってみたくなる、色とりどりの、ふんわりとしたストール。東京の下町で、美しいストールづくりをしている会社があることを知っていますか。

今回は、この工場が世界へ向けて発信するストールブランド
”marumasu”を一緒につくりあげていく人を募集します。
募集しているのは3職種。
銀座の直営店で国内外のお客様に商品の魅力を伝える販売スタッフ。
ストールのデザインや、服、雑貨への展開をはじめるためのデザイナー。
ストールを日本だけではなく世界で紹介していく営業スタッフです。
老舗であるにも関わらず、どんな事でも挑戦してみよう、という柔らかな姿勢がとても印象的でした。
染色に興味がある人もまったく知らない人もぜひ読んでみてください。
都会のローカル線、京成金町線に揺られて柴又駅へ。
あまりののどかさに、ここが23区内だということを忘れてしまいます。

入ってすぐのギャラリースペースには、色とりどりのストールが並んでいてとても華やか。
美しいこのストールをつくっているのはどんな人たちなのだろう。
待っているとそこに現れたのは丸枡染色の4代目・松川さん。
10年前に入社し、今は共同代表である父親から事業の引き継ぎをしながら、“marumasu”のアートディレクターもされています。

そのあとも時代とともに変化していき、中でも薄手の繊細な素材への染色は評価が高く、海外のハイブランドの仕事も多いそうです。
美大を卒業後、販売の仕事をしていた松川さん。急な人手不足で父親から声がかかるまで、家業の染色にはまるで興味がなかったそう。
「入ってわかりましたけど、父はまさに染色のプロフェッショナルで誰よりも仕事に厳しい人でした」
はじめて知る父親の姿。染色の奥深さに、松川さん自身も惹かれるようになります。
「でも、最初は業界の勝手がわからない。布の展示会では、プロならびびってしまうような有名なデザイナー相手に、入社して3か月なのに自信満々で接客してしまったりしていましたね(笑)」
わからないなりに夢中で働くうち、気づいたのが日本の繊維業界の厳しさ。

今までどおり頼まれたものをつくっているだけで、これから先続けていけるのだろうか。
そんな危機感がきっかけで、当時はめずらしかったファクトリーブランドを立ち上げることを考えます。
最初に発案したのが”monomatopee”(モノマトペ)というストール。
独自の特殊加工をすることによって模様部分が紙のように硬くなり、平面から立体的に変化するという斬新なものです。

加工方法や機械の設定、デザインの微調整など100回以上のテストを重ね、やっとの思いで完成しました。
「それまでは生地の染色しかしていなかったので、サンプルをつくるにしても縫製なんてもちろんよくわかりません。ミシンがないからホッチキスで留めて。50ページもあるような仕様書をつくって『こういう形に縫製してほしい』と縫製工場に持って行ったり」
「そしたら『変な縫い方ですね、そんな分厚い仕様書なんて持ってくる人いないですよ』なんて工場の方に笑われて(笑)」
からりと笑いながら話す松川さんは試行錯誤の時間さえ楽しそう。そんな松川さん、日本の染色が生き残っていくためには”守る”だけではいけないと考えている。
「『伝統を守る』という受け身な姿勢ではなくて、日本のいいものをつくり続けるためには、常にバージョンアップしていく。新しいことにどんどんチャレンジしていきたいんです」
評価の高かったmonomatopeeにとどまらず、今度はインクジェットプリントのストールづくりに挑戦します。
そうしてできたのが“marumasu”というストールブランドでした。

取材のときに一枚一枚ひろげて見せてくれた”marumasu”のストールは、色彩もとろけるような質感も、ため息がでるようなものばかり。日本でもこんなストールがつくれるのだということに、あらためておどろいてしまった。
業界で生き残っていくため、丸枡染色は変化をいとわない。むしろその変化を楽しむ姿勢はストールのように軽やかです。
そんな丸枡染色は先日はじめての”marumasu”直営店を東急プラザ銀座にオープンしたばかり。新しく入る販売スタッフはここで働くことになります。
販売スタッフの山本さんは、松川さんが大学の授業に来た縁で、この春入社しました。

「『きれいな色に吸い寄せらせて思わず入ってきちゃいました』というお客さまが多いです」
「どんな人にも絶対に似合う色があると思うんです。何枚も試していただいて、似合う色を一緒に見つけていくのが面白いですね」
ふんわりとしていて、華やかなストールは、使う人を元気にしてくれるんだろうな。
山本さんはにこにこと、楽しそうに話してくれます。
「『これどこの?』ってよく聞かれるんですけど、『実は東京の柴又で作ってるんです』って答えるとすごく驚かれます(笑)。『良いものは海外製だ』と思われている方が多いみたいで」
たしかに、東京の染色工場でストールが作られているなんて驚きだと思います。
銀座という土地柄、海外からのお客さまも多いようで、MADE IN TOKYOはとても喜ばれるみたい。
「規模は小さいけれど工場が近くにあるから、ストールができるまでの背景を理解した上で売り場に立つことができるんです。」
「きっと大きいブランドの中で働いている人たちより、愛着を持って販売できているんじゃないかな」

丸枡染色のストールは自分たちで素材選びから製品づくりまで行なっているから、スタッフは製品にいたるまでの人の想いやストーリーを知っている。ただ、「もの」を売るのではなく、大切な商品の「こと」を伝える。そんな仕事だと感じました。
続いてデザイナーの田中さんにお話を伺います。
ストールの企画やデザイン、商品PRのためのデザイン、ときには生産、さらには海外の展示会への出張など、オールマイティーに動いています。
やさしい雰囲気の中に、凛とした芯を感じる女性です。

「仕事を探してみたら、知識を活かせる場所がほとんどなくて。そんなときにこの染色工場をみつけました」
工場に入ってみてどうでしたか?
「普通の工場はコツコツと地道な作業も多いイメージがあるかもしれないですけど、ここはそれだけじゃないんです」
それだけじゃない。
「100年以上培った染色の技術、知識のベースがある上で、自分たちでものをつくって売ろうとしているところが面白いですね」

ストールのあの美しいデザインはどんなふうに生まれるのかも聞いてみる。
「日々どんな柄をつくろうかなって考えています。たとえばペットボトルにストールを透かしてみたらグラデーションがきれいに出て、これを柄にできるかなと思ったり。道を歩いているときも、柄にしたら面白そうなタイルの写真を撮っておいたり。そういう蓄積をデザインに起こしていきますね」
人によってデザインの進め方は違ってくるそう。
現在2人いるデザイナーのうち、「感性でつくるタイプ」なのが田中さん。対してもう1人のデザイナーさんは、松川さんいわく「理論的につくるタイプ」とのこと。

「ストールだけではなく、1年を通してブランドとして発表できる服や鞄などのアイテムも展開したくて。一緒にデザインできる人を探しています」
なんだか楽しくなりそうな予感。変化を楽しめる人が良さそうです。
最後はふたたび松川さんに、営業スタッフについて聞いてみます。
「最初は日本の取扱い店を一緒に担当して知識や経験を積んでいきます。毎年2~4回、パリの展示会での新作発表で注文を取ったり、取り扱ってほしい有名店に商品を持ち込んで商談もします。次は、NYの展示会にも行けるといいですね」

求めているのは、英語でコミュニケーションが取れる営業スタッフです。
「世界中のバイヤーの方と、まずは信頼関係をつくっていくことがとても大切なんです。商品が生み出される現場を肌で感じながら、一緒に世界へ挑戦していける人を、社内で育成したいと思っています」
年に数回の展示会のシーズンは海外に、それ以外のときは国内の営業を。marumasuの未来をつくる現場だから、海外営業の経験や、日本の染色を広めたいという強い想いがある方に来てほしい。
老舗染色工場から海外への架け橋になる。そんな仕事なのかもしれません。
今回の募集は販売、デザイナー、営業という3職種。だけど仕事に境目はありません。
それぞれの特徴を活かして、スキルや成長次第で、役割を変化させられるそう。
まさに少数精鋭、適材適所といった感じ。
自分に合っている仕事ができるって、とても幸せなことだと思います。
最後に松川さんはこんなふうに話してくれました。
「自主的に、誠実に向き合って、切り開いていける人なら。経験はなくても大丈夫です」
「ただ、作家になるためにノウハウだけを学びたいという方はお断りいただいています。みんな人生をかけて働いてくれていますから」
これからも変化をし続ける丸枡染色を、一緒につくり上げていけるような、柔軟な人がいい。
伝統を感じつつ、自分の力でいろんなことに挑戦してみたいと思っている人には、測りしれない可能性に満ちた仕事だと思います。
伝統をバージョンアップさせ続ける丸枡染色。ぜひあなたも、変化をいとわずその流れに飛び込んでみてください。
(2016/6/21 今井夕華)