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日本仕事百貨は、「生きるように働く人」のための求人サイトです。それは、生きることと働くことに境界線がなく、「好き」と仕事を分けないということでもあると思います。
好きなものに囲まれて仕事ができて、好きなものを好きといえる。
ありのままでいていいんだ、と認められる。
今回伺ったのは、まさにそんな場所でした。
株式会社loop&loopは、イスラエルの革靴のお店「NAOT(ナオト)」と、洋服や雑貨を扱うお店「風の栖(すみか)」を運営している会社。
それぞれの店舗スタッフと、「風の栖」オリジナルの洋服などをつくる服飾スタッフの募集です。とはいえ、役職にとらわれず、やりたいと思ったことには挑戦できるのがこの会社のいいところ。
自分らしく働きたい人には、ぴったりだと思います。
奈良駅から少し歩いたところにある、古い町家の残るエリア「ならまち」。古書店や雑貨屋さん、昔ながらの文房具屋さん、和菓子屋さんなど気になるお店がたくさんあって、海外からの観光客の姿も。
人通りは多いのだけれど、まち全体がどこかゆったりとした雰囲気で、はじめて来たのになんだか居心地がいい。
「NAOT NARA」と「風の栖」は、そんな「ならまち」にあります。
はじめにお邪魔したのは「NAOT NARA」。オープンから1年半ほどの新しいお店です。
「1週間くらい前からヒゲを伸ばし始めたんですよ。社長としてのオーラがないんじゃないかと社員に言われまして(笑)」
少し照れながら話すのは代表の宮川 敦さん。
「解決策、そこ?!」と、すぐさまツッコミを入れるのは、奥さまの美佐さんです。お二人とも気取らない雰囲気で、仲のいいご夫婦。
株式会社loop&loopは、敦さん、美佐さん、そして美佐さんのお母さまである村上さんの3人で立ち上げた会社。
イスラエルの革靴「NAOT」を扱っている「NAOT NARA」と、金・土曜日のみ開く東京の蔵前店「NAOT TOKYO」。そして、洋服や雑貨を扱う「風の栖」、3つのお店を運営しています。
もともと、美佐さんのお母さまが16年ほど前にオープンしたのが「風の栖」でした。
そこで取り扱っていた人気商品の一つがNAOTの靴。しかしある時を境に、卸元が輸入をやめてしまい、靴が入ってこなくなってしまいます。
「ちょうどその頃、二人で会社を辞めて旅に出ていたんです。30歳を迎えて、このままでいいのかなと思って」
次の町に行きたくなったら移動する。そんな放浪生活を続けて、4年間で50カ国ほどを回りました。
とても刺激的な毎日だったけれど、日本に帰ってきてからは、「世界中を旅する」という夢が叶ってしまい、やる気が出ずにフラフラしていたそう。
「放浪をしているときは、自分たちの喜びを追及していたけれど、誰かのためになっていたのかな、って」
そんなモヤモヤを抱えたまま、美佐さんのお母さまのお店「風の栖」を手伝い始めました。当時、NAOTの輸入は止まってしまった状態で、残っていたのはわずかな在庫のみ。
お客さまに靴を履いてもらった時、その喜ぶ顔に希望を見出します。
「『なにこの靴!めちゃくちゃ履きやすいなあ!ありがとう』って言ってくれたんですよ。何もなかった僕らが、人の役に立てることがあるんか、って思いました」
なによりも、履き心地がいいのがNAOTの特徴。インソールがふかふかで、一度履くとこの靴以外は履けなくなってしまう、なんて方もいるそう。
見た目の経年変化も楽しく、いろんなところへ履いて行きたくなる、育てがいのある靴なんです。
写真に写っているのは、とある学校の先生が、約8年ほど履き込んだもの。持ち主の足に寄り添ったしわが刻まれ、すり減ったかかと部分は何度も継ぎ足し、大切に履いてきた様子が伝わってきます。
「自分たちも履いていたから良さは知っていたし、『なくさないでほしい』というお客さまの声に応えたい一心で、直接輸入させてもらうことになりました」
お金もコネもない。だけど、想いと情熱はあった。それが伝わって少しずつ輸入がはじまり、日本で唯一の輸入代理店へとなっていきました。
2014年には「NAOT TOKYO」を、翌年には「NAOT NARA」をオープン。日々さまざまなお客さまがやってきます。
お二人の原点ともいえる、印象的なエピソードを聞かせてくれました。
大阪の堺からやってきた70代のおじいさまです。
「ふらっと入ってくるなり『値切ってくれ』『おまけ付かへんのかい』とヤイヤイ言われたんです。最終的に購入はしてくださったんですけど(笑)」
「いじめられたわー、なんて思っていたら、なんと後日お手紙を持ってお店に来てくれて」
実は、生まれつき足が悪かったおじいさま。
手紙には「この靴に出会えたおかげで、駅からお店までの距離を歩けたんだよ。たくさん歩けるようになったのが嬉しかった。ありがとう」と書いてあった。
感謝を伝えるために、わざわざ手紙を書いて持ってきてくれるなんて。なんだか胸が熱くなる。
「日本の総代理店になって間もない頃で、とても不安だったんですけど。それを読んだときに、僕らは間違ってなかったんやって、ホロっときました」
「利益を出すことよりも、喜んでくれるお客さま一人ひとりに大切に届けることこそが、僕らの仕事なんや、って」
何かあったときには、今でもその手紙を思い出しているそうです。
商品を買ってくれたお客さまにありがとうと言う。お客さまから、商品に出会わせてくれてありがとう、と言われる。そしてそのありがとうに応えようとする。
そんなふうにつながっていく「ありがとう」の循環が、会社名のloop&loopには宿っています。
店内には、靴のほかにも作家さんがつくった雑貨が置いてあったり、写真やイラストが展示してあったり。ワークショップやマルシェ、ライブを開催する、なんてことも。
自分たちが、「好き」で「楽しい」と思えれば、ジャンルは関係ありません。
「自分たちの好きなものって、どこか波長が合うというか、繋がるものがあって。きっとお客さまも好きなんじゃないかな、という想いでご紹介しています」
「NAOTを取り扱っていただいているのも、雑貨屋さんやコーヒー屋さん、パン屋さんに本屋さん、古道具屋さん、お花屋さん、家具屋さんと多種多様で。でもそのどこかに、『好き』が共通しているんですよね」
日本仕事百貨の記事を読んで働きはじめたスタッフの木村さんにもお話を伺いました。普段はNAOT NARAで接客、販売、広報などを担当し、NAOT TOKYOには、奈良から交代で出張しています。
木村さんは入社早々、アットホームな社内の雰囲気に驚いたそう。
「みんな、ずーっと喋ってるんですよ!だから、いつ仕事してるんだろう?と思っていたんです(笑)」
「ただ、よくよく聞いていると、話しているうちにアイディアが生まれたり、情報共有ができていたりする。これも仕事に繋がっていたんだ、ってあとから気が付きましたね」
「みなさんがありのまますぎて、最初はびっくりで(笑)だけど社長に『素、出してないやん』って言われてから、えいや!と出してみたら、すごく楽になりました」
すると、周りにいたスタッフさんたち。口々に「とんでもない豹変具合ですよ!(笑)」「ぐいぐい来ます!」と大盛り上がり。
なんだか、大家族みたいです。
最近はメンズの靴が充実してきたことで、男性のお客さまも増えてきたそう。今は女性スタッフが多いので、男性ならではの視点で、NAOTを広めていける人も大歓迎です。
重い荷物を運んだりするし、ハードなこともあるけれど、明るく素直でガッツのある人であれば、きっと楽しく働けるはず。
どんどん挑戦して、たくさんの小さな夢を叶えていけると思います。
続いて、美佐さんに「風の栖」を案内していただきました。「NAOT NARA」からは歩いてすぐの距離。
美佐さんのお母さま、村上さんが出迎えてくれました。
オリジナルの洋服をはじめ、作家さんの焼き物や、ハーブティー、金木犀のシロップなど、扱っているのはどれもスタッフのお気に入りばかり。
自分たちが本当に使いたいと思うもの、実際に使っていて大好きなものだからこそ、お客さまにも自分の言葉で良さを伝えられるんですね。
「日本仕事百貨」の記事で先日入社した、スタッフの中村さんにもお話を聞きました。
パターンを引いてオリジナルの服をつくったり、商品の企画制作、セレクト、販売まで、美佐さん親子と一緒になって何でもやっています。
アパレルブランドにいた前職での経験を生かして、風の栖ではオリジナルの洋服をいくつも企画してきました。
「自分たちで企画したものを、自分たちで直接お客さんに販売する。こんな人に渡るといいなと思っていると、不思議と似合う人が買っていかれるんです」
つくる時に基準となるのは、やっぱり「自分が毎日着たいかどうか」。
「動きやすくないとダメ、スタイルよく見える方がいい、というようにみんなで意見を出し合いながらつくっています」
ワンポイントで刺繍が入っていたり、生地に合わせて一着ずつ違うボタンが付いていたり。さり気ない遊び心も大切にしています。
女性ものがメインの洋服は、着る人を選ばないデザインが特徴的。10代から80代まで着こなせるし、海外の方にも似合うのだとか。
NAOTの靴にもぴったりで、はしごするお客さんも多いといいます。
中村さんが転職を考えたとき心強かったのは、産休から戻って働いている人が何人もいたことでした。
「30歳になって、どこまで働けるか不安だったんですけど。社内には20代から60代までの人がいるので、何でも相談できるんです」
「この前、職場の飲み会に彼氏を連れて行ったら質問攻めになっていて。全部知ってるや〜ん!って言ってましたね(笑)」
続けて美佐さん。
「みんな来て来て〜、みたいな感じでね(笑)産休、育休から戻ってきてくれたら、色んな経験をして、別の視点から企画ができると思うんです。だから戻ってきてね、って伝えています」
美佐さん自身も子育て真っ最中。以前はベビーベッドをお店に置いて、子守をしながら接客していました。
「ちょっと失礼、って授乳しにいったり。お互いさまなんです」
生活に、仕事が寄り添っている感じ。
取材でこんなに笑ったのははじめてだったし、この会社で働く人たちは、みんなとってもいい顔をしていました。
それぞれがしっかりと意志を持っていて、上の人が決めたことが下に降りてくるというよりも、みんなで決めて、みんなでやるというイメージです。
なんでも挑戦できる分、全部自分で考えて舵を切っていかないといけません。それは、自由でもあり大変でもある。
だけど、それが楽しい。
一緒に、ありのままで働いてみませんか。
(2017/01/27 今井夕華)