※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
熟練された職人の技術。暮らしの積み重ねを反映した美しさ。日本のものづくりに関心のある人は、ここ数年で増えてきているように感じます。
一方で、後継者がいなかったり、実生活で使われなくなることで失われていく技術があるのも現実です。

技術をただ残そうとするのではなく、先端技術や美しさなどの要素を加えることにより、現代の生活に合ったものづくりを行っています。
2年前に生まれたこのブランドは、日本国内にとどまらず、世界ブランドへと成長している真っ最中。今回は、主に企画営業を担当する仲間を募集します。
ものづくりへの情熱と、ビジネスとして挑んでいく冷静さ。この2つを兼ね備えた人が似合う仕事だと思います。
東京・外苑前。
ライフスタイルショップやデザイナーズブランドなど、洗練されたお店が並ぶ街にNAGAE+のオフィスはある。
最初にお話を伺ったのは、取締役でありブランドマネージャーも務める鶴本さん。とてもうれしそうに、仕事の話をしてくれるのが印象的。

富山県高岡市にある親会社、株式会社ナガエの社員たちと協働しつつ、鶴本さんとスタッフ1名のほかに、アルバイトやイベント時に手伝ってもらう販売員さんが関わりながら仕事が進んでいる。日本での取引先は130以上、今は海外にも販路を広げているそうだ。
言葉の通り、少数精鋭。やることも多いだろうし、大変そうですね。
「そんなことないですよ。毎日がドラマチックというかね、とてもやりがいがあって楽しいんです」
鶴本さんの話を聞いていると、仕事をすること、ものづくりをすることに対する情熱が伝わってくる。
美大を卒業後、現代アートのマネジメントを15年経験。海外で生活していた時期も長かったそうだ。
「アート作品をつくるために日本の職人さんに協力してもらうこともありました。外から見ることで、日本のものづくりの素晴らしさを感じていたんです」

「海外での生活や子育てをきっかけに、今まで以上に企業の社会的責任などに強く関心を持つようになりました。作品をつくり出すことに関わってきた私が社会に貢献できることってなんだろう。そう考えて、自然な流れで日本のものづくりの世界に入ることになりました」
鶴本さんはその後、新潟・燕三条にあるまほうびん工場とともに、真空チタンカップのブランド「SUSgallery」を立ち上げる。
燕三条で築いてきた金属加工の技術を用いて、都市で生活する人が使いたいと思えるデザインに仕上げる。生活スタイルから提案をすることで、、現代の生活でニーズのあるブランドづくりを行ってきた。
「燕三条でものづくりをする上で、私が核にしていたものは『技術』でした。NAGAE+の本社がある高岡の、象徴だと感じたのは『美』。そのとき、日本のものづくりブランドをつくるための、本当の象徴を見つけた気がしたんです」
加賀藩主前田家の城下町として栄えた高岡。400年前から仏具や花器などをつくる鋳物の産地として、脈々と受け継がれてきた金属加工の技術と歴史と美がある。
「高岡の美」というのは、具体的になにかを見たときに感じたんですか。
「美しい金属製品はもとより、高岡の町にただよう感覚です。工房で職人さんと話をしていると有名なアーティストの名前が自然に出てきたり、美しさの感覚に共感できたり。長く培われてきた文化的な歴史が醸し出す空気感です。町のそこ、ここに奥ゆかしい美の感覚がそこはかとなくただよっているんです」
「私が感じた高岡の美は、現代の私たちの生活を輝かせてくれるはず。この考えを核として、ブランドをスタートしました」

「1つの産地、1つの素材と技術だけではなく、日本各地にある技術を組み合わせてブランドをつくる。高岡を拠点に、メイドインジャパンでないとできないものをつくる。HERMESのような、生活のすべてを提案できる世界のブランドを目指しています」
高岡の金属加工をベースにした食器から、磨き技術を駆使したマッサージツール、アクセサリーなど。商品の幅は着々と広がってきている。
大胆さと柔らかさを兼ね備えたネックレス「Pleated necklace」は、富山の絹づくりと刺繍、茨城のプリーツ加工や東京のチェーンメーカーなど、さまざまな土地の職人さんと協力してできたもの。

「TIN BREATHには色のバリエーションがあって、実は失敗から生まれたシリーズがあるんです」
失敗から。そんなこともあるんですね。
「商品の開発をしているときに、たまたま別の色が混ざっていて。職人さんに聞いてみたら、いつもと違う工程を経て失敗してムラが出たんだろうって。とても味わいのある色だったので、これどうやったんですか?ってしつこく聞いてね」
通常とは違う工程を経てできた仕上がりは安定しないものだから、最初は職人さんはあまりつくりたがらなかった。それでも鶴本さんは自分の感覚を信じて、職人さんに粘り強くお願いをして商品化にこぎつけた。
そうして生まれたアンティークゴールドは落ち着きがあり、今ではとても人気の色になっているそう。
「職人さんにはそれぞれ人生の経験と重みがあって、話をするとメモすることが山のように出てくるんです。私たちが関わることで、職人さんもあたらしい挑戦を楽しんでもらえる。そんな関係ができたときにはうれしくなりますね。一緒につくっているんだなって」

「SHIKICOLORS」という、鮮やかな色が特徴的な酒器をつくったときのエピソードを話してくれた。

共同開発のお願いをするために町工場へ向かうと、出てきたのは強面の社長さん。話をしたところ、最初は難しいからと断られてしまったんだそう。
「それでも『一緒に世界ブランドをつくりましょう!』って何度も交渉して。『しょうがねーな』って言われながら、少しずつ扉を開いていったような感覚でしたね。職人さんの技が一流店舗の売り場に並び、世界を輝かせるようにしますと約束したんです」
「日本のものづくりを世界のブランドにする。この言葉が口先だけになってしまったらダメなんです。一生の仕事としてやる覚悟が伝わるから、一緒に仕事をしてもらえる。職人さんたちへの尊敬と感謝の気持ちは、いつも持ち続けていますね」
どの商品の話を聞いていても、納得できるものをつくるために、たくさんの壁を越えてきたことが伝わってくる。粘り強さや泥臭さも必要な仕事なんだと思う。
「最初に大変じゃないって言いましたけど、本当に大変です(笑)。でもね、日本のものづくりを世界ブランドにするという目標のため、1つ1つ自分でやるって決めてやる」
「その先には職人さんとの信頼関係の構築だったり、できたものを発表したときの社会からの賛美、そして使ってくださる方の生活を輝かせることができる。それがくせになって、またイバラの道に入っていっちゃうんですよ(笑)」

今回募集するのは企画営業スタッフだけれども、ただものを売ればいいというわけではない。少人数でやっているからものづくりにも関わるし、ブランドのイメージをつくっていくような役割も担うことになる。
海外で展示会をするなど販路を開拓することのほかにも、実際に商品を使ってお酒を飲んだり、ブランドが提案する美を体感してもらうイベントを企画することもある。
女性はもちろんのこと、男性からの視点やアイディアも大歓迎とのこと。

鶴本さんの右腕としてさまざまな仕事を担っていて、今は来週からはじまるニューヨークでの展示準備に追われているそう。

NAGAE+に立ち上げから携わっている。モノづくり、流通開拓、営業アシスタントなどを担うなかで、きめ細やかに人とか関わっていくことが大切だと感じているそう。
「あたらしいものをつくるって、1人では決してできないことなんですよね。いろいろな立場の人と関係ができていくのがおもしろいです」
「前に働いていた業界は規模が大きかったから、いくらでも代わりがいるようなところがあって。今の会社では、誰がやるかで仕事が大きく変わってくるんです。自分だから一緒にやりたいって言ってもらえるように、頑張ろうと思っています」

「コミュニケーションには気を使うようにしています。職人さん、親会社の社員たちや商品を扱ってもらう店舗、もちろん鶴本とも。1つ1つの仕事を丁寧にすることで、信頼関係を積み上げていくような仕事だと思っています。そこを大切にできる人が向いていると思いますね」
そんな話をしていると、鶴本さんがとてもうれしそうな顔をしてやってきた。
「川崎さん、交渉していたあのタイアップが決まったの!うれしすぎてすぐに伝えたくって」
こうして仕事を楽しんでいる鶴本さんには、周りを巻き込んでいくパワーがあるんだろうな。2人が喜んでいる姿を見て、こっちまでうれしくなった。
日本のものづくりを仕事にする。あたらしい仲間は性別を問いません。
大切ことは、新たな世界をつくりだそうという情熱を持つこと。それに加えて、ビジネスとして成立をさせるための冷静さも必要になると思います。
9月24日には鶴本さんを東京・清澄白河にお招きして、しごとバー「金属世界ブランドナイト」を開催します。まずは気軽に、話をしてみてください。
(台風が近づいてきていることを考慮して、開催日が9月17日から9月24日に変更になりました)
(2017/9/14 中嶋希実)