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人が吸い込まれるお店

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

どうせ働くなら、気持ちよく働きたい、と思います。

自分がいいと思うものを提供したいし、お客さまも心底、共感してくれて手にとってくれる。もちろん、そのために努力しないといけないことはあるけれど、日々の営みはいい循環の中にありたい。

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群言堂で働くということは、そういうことなんじゃないかと思いました。

群言堂は洋服や雑貨、それに最近では化粧品なども販売しています。島根県の石見銀山に本店があり、今では全国にお店があります。古民家や旧駅舎を改装したところもあれば、百貨店の中にも入っています。

どのお店にも共通するのが、居心地がいいところ。もっと言えば、思わず吸い込まれてしまうお店です。

今回はこちらの店舗で働く人とグラフィックデザイナー兼コンテンツエディターを募集します。


群言堂の東京のオフィスがあるのは、神保町の駅から5分ほどのところ。周りはオフィスやマンションばかりの一角に「東方学会本館」という建物がある。大正時代の建築だそうだ。中に入ると、まるで学校のような雰囲気で、廊下も広々としていて、大学生のような気分になる。

「こんなところをオフィスにするなんて!」と思いながら、階段で3階に上がった。

オフィスでは、ちょうどミーティングが終わったところで、そのまま話を伺った。

まず話を聞いたのは、横浜店の店長である高田さんだ。

「私は40歳のときに主人を亡くしたんです。下の子がまだ小学生で、上の子が中学3年生になったときでした。本当に突然のことで。これからの生活を考えて働かなきゃいけないわけです」

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「40歳から働くわけですから長く働けること。そして自分の好きなことを考えたら、私は和物が好きだった。着物もすごい好きだったんですよ」

和服を販売している会社を訪れてみると、70歳を過ぎても働いている方がいた。これなら歳を活かせそうだと思った。

「友人に話したら『カモは鉄砲家になれないでしょ』と言われて。私は勧誘を受けたら、すぐに買ってしまうタイプだったので。つまりカモ。だから、あなたは向いてないって言われて。私も不安はあったんです。もともと家も商売をしていたわけではないし、経験もないし」

「それでも呉服の仕事をはじめました。そしたらやっぱり甘くて。裏に行くと、ものすごく棒グラフの世界なんです。つまり、成績にシビアな会社だったんですね。そうこうしているうちに、出社拒否みたいになってしまいました」

そのあと、ちりめんの洋服を販売するお店で働きはじめる。すると、そのお店が入っている百貨店に群言堂が出店することに。

「知り合いはみんな群言堂に行ってましたね。私もまずはお客さんだったんですよ。里山の空気や季節を感じるDMにも感動しましたし、いつか石見銀山にも行ってみたいな、と思いました」

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すると、家から離れた場所に、ちりめんのお店が移転することになってしまった。子どもも二人いるので心配だった。そこで縁があって、群言堂の町田店で働くことになる。

「そのときは黄金期でしたね。新聞の一面にも取り上げられたりして。もう16年くらい前のことです。当時、まだ石見銀山の本店は今のような賑わいにはなっていなかったので、まずは東京のお店に来ていただいて、どうして石見銀山に本店があるのかお客さんに話してください、とよく言われていました」

今ではどこのお店も賑わっていますよね。どうして群言堂のお店って、あんなに人がたくさんいらっしゃるんでしょう?

「そうですね。まず掃除はよくしました。所長がお店にいらっしゃるときは緊張しました。まずバックヤードを見られて、そこからいろんなところを確認してまわるんです。すると自分たちは気づかなかった、ホッチキスの跡とか、すべて指摘されるんです」

「すると所長は『神様がいらっしゃるところ、たとえば神社とかは、空気がよどまない。そのためにはまず掃除をはじめなさい。あとは草花。できれば買ってきたものじゃないものを』と話される。そうやって十分の一でも本店と同じような空気がつくれたらと思います」

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その「空気」って、一体なんでしょう?

「そうですね。掃除以外には、お客さまとの会話を大切にする、ということもあったかと思います。会話を教えてもらったわけではないんですけど、いろんなご縁があるお店で。お客様も好きなものが同じ方が多いですし、お洋服を買いに来たわけじゃなく、百貨店の地下に食品を買いにいらしたついでに寄っていただいたりとか」

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「あとはスペック二重織という商品があるんですけど」

スペック二重織は表にスペック染めを使ったもの。スペック染めは新潟生まれの染色方法で糸を斑点状に吹き付けて染める技術。微妙な濃淡やかすれ感があり、独特なムラが出て味わい深いのが特徴とのこと。

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あるとき高田さんは、ジャケットを購入したい方の接客をした。その方はウールの素材のものが気に入ったそうだけれど、どうしてもスペック二重織をオススメしたくなった。

「たしかにスペックのグレーのものって、すごい地味に見えてしまうから敬遠されがちなんですけど、お召しになると上品なんです。それで『私、こちらも好きで。えこひいきなんですけど、ぜひ着てみてください』と話したら、笑いながら着ていただけて」

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「いかがですか?全然、地味に見えないでしょ?とお話ししたら『たしかに、そうね』とおっしゃっていただけて。娘さんもいらっしゃっていたんですけど、お召しになったら『やっぱり私もこっちだと思う』となって。結局、スペックを購入いただきました」


話を聞いていると、お客さんとの関係がより良い感じがする。接客というよりも、会話をしているというか。

すると、高田さんとの話を隣で聞いていた六浦さんがこんな話をしてくれた。

「いきなり、お似合いですね、とは話しませんよ。それよりも、この生地は石見銀山のサカキの実を拾って、それで染めた色なんですよ、というように話してみたり。そうやって興味を持っていただけたら、触っていただく。それで心地よかったら、着ていただけるんです」

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六浦さんは、日本橋にあるコレド室町店の店長。

西荻窪駅前にある古民家を改装した店舗Re:gendo(りげんどう)で働きはじめたあと、1年間本店で働き、そのあとコレド室町店で働くようになった。

それにしても「お似合いですね」という言葉は、アパレルのお店ではよく聞く言葉。よく聞きすぎて麻痺しているのかもしれないけれど、なんだか「似合うんだし、買わないわけにはいかないでしょう?」という意味も感じられる。言葉によって、ジリジリと逃げ場がなくなっていくような。

それよりも、その商品がどういうものか説明してもらったほうがいい。「なるほどなあ」と思って、さらに興味があれば、自分からもう一歩踏み出すことになるのだから。

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なるほど、群言堂は、押し付ける感じがないのか。でもそれは裏を返せば、お客さんのほうから来ていただかなければ商売は成立しない。

「そうなんですよね。だからこそ、お店に引力があるんです」

引力?それって、具体的にはどういうものでしょう?

「やっぱりお掃除が大切です。入社したらすぐ見ることになるんですけど、バックルームには『清掃十訓』というものが貼ってあります。具体的なマニュアルというわけじゃないんですが、清掃への姿勢の話なんです」

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「他にも先輩からいろんな話を聞くことになると思うんです。例えば、机を拭くときは、ちゃんと置いてあるものを持ち上げて拭くとか。品川にある古いお家で、はたきの掛け方とか雑巾の絞り方とか教えてもらいました。そうやって掃除をしていくと、いろんなことに気がつくようになりました」

汚れに気がつくようにもなるし、ディスプレイも「見えて」くるようになっていくはず。そうすると、自然に草花を活けることの大切さもわかるだろうし、最近だと紅葉したものを店内に並べることもあるという。

ほかにも引力ってありますか?

「高田さんの話にも近いんですけど、やっぱり接客や会話ですね。この前、すごくにぎやかな日があって、すべてのお客さまとお話しできないくらいで」

「そこにおなじみの方がいらっしゃったんですけど、『私は全然大丈夫よ、一人で見るから』とおっしゃっていただけて。そしたら他のお客さまのことまで気にかけて話しかけて下さったんです。そのあとおなじみの方と話しかけられた方のお包みをしながら三人でお話して。最後に『またどこかで』とお二人はお話していたんです」

掃除が行き届いた空間に、自然とお客さんは惹かれていく。接客も買ってもらうことが目的ではなくて、まず興味を持っていただけるように、そっと横にいるような感じ。こちらが背中を押すのではなく、お客さんから興味を持っていただけるようなお店をつくっていく。

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そうしていると、お客さんはだんだんお店の味方になっていくのだろうな。ただ買ってもらうために働くよりも、こちらのほうが気持ちいいと思う。

もちろん、興味を持っていただく努力は大変なものがあるはず。日々の清掃はもちろんのこと、あらゆる勉強もしなくてはいけないし、接客以外にもお客さんを石見銀山にご招待することなどもあって、仕事は多岐に渡るそうです。

でもそういうことをひっくるめて納得できるなら、いい仕事だと思う。


最後に高田さんがこんな話をされました。

「私はそろそろ身を引く時期に来ています。今、考えていることは、群言堂で働いて経験したことを、自分の生活に生かしたいんです。本店で働いた方が東京のお店に来ると、向こうの風が吹くんですよ。それがすごい素敵だなと思って」

「やっぱり何か身にまとっているものがあるんです。それはとても大切なことであるし、その方にとって、すごい財産になると思います。よく所長が会社ではなくて、人を育てる学校のようなところだね、って話をされるんですけど、私みたいな古い人間の再生もしているように感じるんです」

吸い込まれるのは、何もお客さんだけじゃないのかもしれません。

これを読んだ方も、もし吸い込まれそうになったら、まずは横浜店の高田さんやコレド室町店の六浦さんたちに会いに行ってみてください。

(2017/10/10 取材 ナカムラケンタ)

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