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東京・谷中。観光客や地元の人たちで賑わう通りから、少し外れた住宅街。その一角に、2017年の1月、スキンケアブランド「OSAJI」の一号店がオープンしました。
ブランド名は、江戸時代に将軍や大名に仕え、匙(さじ)を使って薬を調合していたお医者さんの呼び名「おさじ」に由来しています。
お医者さんのように、使う人の健康を預かり豊かなライフスタイルに貢献するコスメでありたい。そんな願いから、皮膚科学から学んだ、安心安全なオーガニックコスメと肌にやさしい甘酒を扱っています。
現在は谷中だけでなく、吉祥寺でPOP UPショップを展開、御徒町や高崎にも新しく店舗がオープンしています。
今回は、OSAJIの店舗で働く販売スタッフを募集します。
自分たちの商品を実際に使いながら、「どうしたらもっと心地よく使ってもらえるだろう」「なぜこんなに保湿力があるのだろう」と想像を巡らせることができる人なら、きっと楽しく働けると思います。
谷中店は、お客さんが5人入るといっぱいになってしまうくらいの、小さなお店。
お邪魔にならないよう、近くのカフェに移動します。
はじめにお話を聞かせてくれたのは、化粧品事業部事業部長の茂田(しげた)さんです。
実は、驚くことに、OSAJIをつくっているのは化粧品会社ではありません。群馬県高崎市で昭和34年に創業した、日東電化工業という会社です。
「創業当初は家の照明とか、金具とか。今は8割がた自動車のエンジン部品に使われている、鉄のメッキ加工をするのが主な仕事です」
現在の社長は茂田さんのお父さまで、3代目になる。
「自動車のエンジン部品は今後電気自動車に変わっていったら不要になってしまう。だから、もしも一緒に会社に入って仕事をするときには、自動車部品とは違う分野の仕事を持って入りなよ、と父にずっと言われてきましたね」
とはいえ、会社に入る気はあまりなく、若いころは「破天荒に生きていた」と話す茂田さん。
高校時代から音楽に触れて、大学時代には夜な夜な六本木や麻布でDJをしていた。知識を頭に入れようという気持ちが湧かず、結局半年で大学を退学。
その後は、群馬で友人とライブハウスを経営する。
ここまで聞いていても、茂田さんと化粧品とはまったく結びつかない。どうして化粧品をつくるようになったのでしょうか?
「そのころ、母が交通事故にあって、ストレスから肌の状態がすごく悪くなっちゃって。今までずっといいと思って使い続けてきた化粧品が、パタッと使えなくなったんですよ」
湿疹が出ていたから、病院では化粧品をつけないようにと言われる。けれども、女性としては近所に買い物にいくときでも、何もつけずにというわけにはいかない。
「これなら使える、という化粧品にようやく行き着いてみると、普通の化粧品は何十行も成分が書かれているんだけど、2〜3行しか書かれていなくて」
「こんなにもシンプルなものがいいんだと、なんだかおもしろかった。同時に、これなら自分でもつくれるかもしれないという気持ちになったんです」
まずは化粧水から、自宅のキッチンでつくってみては、お母さまに使ってもらい、改良していく。試行錯誤を繰り返しながら、独学で無添加の化粧品づくりを学んでいった。
「化粧品をつくっているうちに、『温泉水が肌にいいから、研究してみたら?』という話をもらって。全国の温泉旅館をまわって、それぞれの温泉水を使ったオリジナルの化粧品をつくって卸したりもしていました」
友人と茂田さんとお母さまの3人で化粧品をつくっていたものの、当時は製造設備もなかったため、外注のコストがかさむ。
加えて、鬼怒川の温泉旅館が破綻するなど、観光業界での事業展開が難しくなってきた。
「これ以上、取引先を増やすのは難しいかなと。これからは自分たちで商品をつくっていこうと考えました」
そうして、日東電化工業で化粧品事業部が立ち上がったのが2005年のこと。
ずっと変わらない想いは、本当に肌にいいものをつくるということ。
「自分のなかでは、母がシンプルな化粧品を使えた理由はなんだろうっていう疑問がずっとあって。皮膚がどうなっているのか、メーカーとしてちゃんと知らなきゃって思ったんです」
皮膚の仕組みを知る。
「たとえば、化粧水は肌の奥まで浸透するって言うけど、肌は外から水が入ってこないようにするバリア膜だから、理屈に反しているんですよ。何がよくて何が悪いのかが全然あいまいで。だからこそ自分たちは嘘のない、きちんと皮膚科学に即したものをつくろうと思っています」
「そうやっていいものをつくることがすべての原動力だし、モチベーションなんですよね」
では、実際にOSAJIとはどういうものなんだろう。
教えてくれたのは、営業として働く遠藤さんです。店舗管理も担当しているので、新しく入る人とも一緒に働く機会がたくさんあると思います。
「僕らはこれまで、無添加の化粧品をバラエティショップに卸していましたが、どうしてもたくさん広告を打っていて有名なもの、雑誌に載っているものが売れていく。このままでは、想いも伝わらないし、売れ行きもよくない。自分たちのお店で、自分たちの声を届けていきたいという想いがありました」
さらに感じていたのが、オーガニックという言葉へのギャップだった。
「オーガニック=やさしい、安全っていうイメージがありませんか?」
確かに。最近は食べ物、化粧品、いろんなところでよく耳にする。なんとなく無意識に、そちらのほうがいいんだろうと思って選んでしまうこともあります。
「だけど実際に使うと、特に海外のものなんかは肌に合わないということもよくあるんです」
「なぜかというと、植物の花粉でアレルギーが出たり、山芋を肌に塗ったらかぶれますよね。肌にとって、植物ってちょっと力が強いんですよ。だからそのギャップを埋めたかった。やさしいものを求めている人に、本当に肌にいいものをつくろうという想いでOSAJIは生まれました」
OSAJIの化粧水を見せてもらうと、成分表示は水・プロパンジオール、グリセリンなどの保湿成分を中心に13種類だけ。自社工場でつくっているから、価格も2000円代と抑えめだ。
実際に使わせてもらうと、肌にさらりと馴染む。だけど乾燥するような感じはなくて、しっとりと気持ちいい。
「やっぱり、お客さんから乾燥がなくなったとか、ニキビに悩んでいたけど、うちの商品が肌にピッタリ合いましたとか、そういう声をもらえることがやりがいですね」
過去にも、オーガニック製品を扱う会社で働いていたという遠藤さん。
「以前は社内で何か提案しても、なかなか進まないことにモヤモヤしていたんです。今は、茂田もあんな感じでゼロからはじめているので、どんどん試していくことができる。そういうところは、すごく魅力的だと思います」
それは、社内で働く人みんなに共通することのよう。
「販売を担当するスタッフは、開発チームがタジタジになるくらい『ここはどうなんですか』『もっとこうしたほうがよくないですか』と意見を出します。その声が商品づくりや売り場づくりにも反映されていくし、社内でもすごく大切にしている関係性ですね」
「だからぜひ、販売スタッフに話を聞いてみてください」と遠藤さんに紹介してもらったのが石河さんです。
谷中店の店長として働く傍ら、飲食店で働いた経験を活かして店内で扱うドリンクメニューの開発などにも携わってきました。
「結構、柔軟性を求められる会社だと思います。どんどん変わっていくので、なんでもやりますよ、という感じがいいのかも」
たとえば、石河さんが考案した甘酒のこと。OSAJIの谷中店限定メニューとして提供しています。
「お店のオープン3ヶ月前に、急遽お店で提供するメニューを考えることになって。コンセプトが曖昧ななか、薬膳スープ、米粉パン、クレープなどいろんなものを試作しました」
最終的には、肌にもいい甘酒のドリンクをつくることに。
「そこから甘酒ってどういうものか勉強したり、スタッフに私が美味しいと思うものを飲んでもらって感想を聞いたりしながら今の形にしていきました」
自由な発想ができるぶん、背負う責任も大きい。だけどそれを受け入れながら、楽しめる石河さんのような人が向いていると思う。
お店にはどんなお客さんが来るんだろう。
「年代、男女も問わずいらっしゃいますね。スキンケアをしたことがないという男性や、いろんなオーガニック商品を使ったけど肌に合わなかったっていう10代の女性とか」
ただ安ければいいというよりも、肌やオーガニックの化粧品について日頃からよく考えていたり、ある程度知識を持っている人が多いんじゃないかなと想像する。
「そういう方も多いですね。先日は40代の女性で、化粧水やリップクリームをご自身でつくられているという方もいらっしゃいました」
誰かにお勧めをするには、まず自分がその内容をよく知ることから。
日東電化工業では、月に1回のペースで社内勉強会が行われています。ここでは茂田さんをはじめとする開発チームが丁寧に疑問に応えてくれるそう。
「細胞の形や皮膚の構造もちゃんと絵にして見せてもらえます。細胞膜を透過できるのは水やグリセリンだけだから、コラーゲンは浸透できないとか、一つひとつ科学的にわかりますね」
なによりも自信になっているのは、製品そのものの良さだという。
「説明しなくても、製品が何よりも語ってくれている感じがします。商品に対してもお客さんに対しても正直なのが、たぶんこの会社の一番の特徴です」
商品にも、お客さんにも正直。
「ここの人たちは、みんな自社製品を使っているんですよ。それぞれ年代は違うけど、自分に合った使い方も自分なりに探して、見つけていて」
今日は疲れているから、あれを使ってみよう。乾燥が気になるから、もう少し重ねてつけてみようかな。
そうやって自分なりに試していると、自然と商品への愛着も出てくるし、自分の肌が商品の良さの証明にもなる。
なかには売り場の人たちの声から、商品が改良されることも。
「今販売しているコンディショナーってゲルタイプなので、つけた感じがしないんです。それに猫っ毛の人がつけると、使用感があまり良くない。それを開発チームに伝えて、ちょうど2日前に新しいサンプルが届いたので、みんなで試しているところです」
商品を売るだけの仕事ではない。ちゃんと人と人の関わりがあるように思うし、矛盾なく働けると思います。
最後に、茂田さんもこんなことを言っていました。
「みんなが本当に商品を好きであるほど、こう見せたい、お客さんにこう感じてほしいというエネルギーが大きくなっていくと思うんです。お互いにアイデアを出し合って、一緒に仕事をつくっていきたいですね」
きっと肌にも心にも、うれしい職場です。
(2017/6/2 取材、2018/12/5 再掲載 並木仁美)