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人が資源

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「役場からやってくれと指示を出したわけじゃなくて。10年ほど前に地域の有志たちが、何か面白いことをやってみようよって言ってはじめたものなんです」

埼玉県小鹿野町にある尾ノ内渓谷。

美しい氷の柱が目の前に迫る、大迫力の尾ノ内氷柱が印象的な場所です。

思わず息を飲むほどの圧倒的な美しさ。夜はライトアップされ、幻想的な景観を求めて期間中3万人もの人が訪れるそう。小鹿野町の一大名所になっています。

なんとこの尾ノ内氷柱、実は地域の住人たちが、穴を開けたパイプを張り巡らせて地道につくったもの。

夏からはじまる準備や冬の間の管理運営など、ほとんどを地域のボランティアが行なっていると聞いて、驚いてしまいました。

このほかにも、地域住民の手で生まれた観光名所がいくつかある小鹿野町。その文化を大切にしながら、地域住民とともに町の魅力をつくっていく地域おこし協力隊を募集します。

関わってほしい仕事はいくつかあるそうです。ただ、どれも基本的な活動は自由度の高いものになりそう。地域住民と楽しみながら、町の名物をつくっていける仕事だと思います。


池袋駅から特急電車に乗って2時間弱。そこから車で1つ山を越えると小鹿野町に入る。

都心から80kmと近く、秩父地域にあるというわりに知名度が低いのは、町内に鉄道が走っていないことが理由の1つかもしれない。

その代わり、町には美しい自然がある。四季を通して花々が咲き、水源を町内にもつ清流が、集落を縫うように流れている。

町にはかつて盛んに行われていた農村歌舞伎がまだ残っていて、「花と歌舞伎と名水の町」なんて呼ばれることもあるらしい。

町の奥へ進むと、登山者やロッククライマーが後を絶たないという両神山や二子山が町を囲うようにそびえていた。

この日は、協力隊が所属することになる町役場のおもてなし課を訪ねる。

迎えてくれたのは出浦さん。生まれも育ちも小鹿野町の方だ。

「俺は嘘は言わないよ。今回募集する地域おこし協力隊の方は、役場の便利屋じゃなくて、ここで生計を立てて生きていく移住者になってほしいと思っています」

一見とっつきにくそうに見えた出浦さんは、取材をはじめてみると、とてもお話好きな方だった。話は止まらず、いつのまにか話題は尾ノ内氷柱のことに。

「あの氷柱は10年ほど前に、地域の住人がつくってみたことがはじまりなんです。その後、地域のみんなで研究と工夫を重ねて、管理や運営もするようになった。町からの持ち出しはほぼゼロでこれだけの事業をやってるんですよ」

気候に影響される氷柱は、つくることはもちろん、その運営自体もきっと簡単なことじゃないはず。

なんと、氷柱と並ぶほどの観光客が集まるという小鹿野町のダリア園もまた、地域住人の発起からはじまった事業なのだそう。

運営は近隣の住民が行っていて、関わる人にお給料を支払えるほど収益を出しているのだとか。

「運営の多くを住民がしていて、宣伝にかかる費用やSNSの発信といったことは町が受け持つ。町は後方支援的な立場で、住民主体になってるのが小鹿野町の観光なんです」

もちろん、今まで役場が主導した観光事業もあった。でも、結局長続きするのは住民主導のものだ、と出浦さん。

「いろいろやってみて感じるのは、住んでいる人が資源だなということ」

人が資源。

「『役場にやらされてる』という気持ちじゃ町の魅力づくりはうまくいかないですよ。地域住民が1つの目標に向かって、一生懸命に頑張ろうという気持ちで動かなきゃ」

「日本全国どの地域もそうだと思います。自分たちで地域を盛り上げたいと思える住民が多い地域は、やっぱり強いですよね」

役場職員という立場でトライアンドエラーを繰り返してきた出浦さんの言葉は、実感をともなっている。

「ひとつの考えに固まっちゃうと、役場から新しい提案をしてもなかなか地域の人たちには受け入れられない。『そこまで手が回んないよ』って言われちゃうんです」

だから、地域おこし協力隊が必要ということ?

「そうです。固まったところに同じ地域の人が入るのは難しい。だから、しがらみのない新しい風が必要だと考えています」

うまくいっている事業があるとはいえ、ここ数年は新たな挑戦ができていないと感じているそう。

これからは、通年で人を呼べるようなもの、もっと多くの住民を巻き込めるような何かを打ち出したいところ。

今回募集する協力隊には、まだ花開いていない町のポテンシャルに気づく目とその魅力を地域の人と協力して開花させていくガッツがほしいそう。

「たとえば、カラフルなダリアを使った染め物とか、料理とか。今ある資源を使って発想してもいいんじゃないかな」

なるほど。でもいきなり動いてしまうと、住民の方に引かれちゃような気もします。

「そりゃ最短ルートでは難しいかもね。遠回りでも階段を踏めば実現できることはあるから。町の人にはいくらでもつなげるし、キーマンになる人はどんどん紹介しますよ」

「提案してきたことに、俺はなるべくノーとは言いたくないんです」


出浦さんが「彼なんて、入職してすぐに毘沙門水のスパークリングをつくっちゃったんだ」と紹介してくれたのは、同じくおもてなし課の宮本さん。

社会人になってまだ2年目の若手の方です。

毘沙門水というのは、小鹿野町で湧出する名水のことだそう。

「僕らが突拍子もないことを言っても、泰成さん(出浦さん)は実現性を考えてアドバイスをくれます。人脈もすごいんです。協力隊の人もきっとお世話になると思います」

そうお話してくれる宮本さんも小鹿野町出身。尾ノ内氷柱の運営に住民として参加しているのだと教えてくれた。

「小学生のころは放課後に川に行って、川魚のカジカを捕まえて焼いて食べたりしていました(笑)」

まさに小鹿野町ならではの贅沢な遊び方。都内の大学で出会った友人たちを呼んで河原でバーベキューをしたときには、小鹿野の自然の豊かさに驚かれたという。

「都内に出てみて、小鹿野町を知らない人がこんなにもたくさんいるんだってことに驚きました」

「同じ埼玉県の人でも、秩父は知ってても小鹿野にはピンとこない人が結構いて。もっと多くの人に小鹿野の良さを知ってほしいなって思っています」

宮本さんは、どういうところが小鹿野の良さだと思います?

「人がいいですよ。基本みんな家の鍵をかけないんですけど、朝起きたら誰かが野菜を置いてってくれたり」

「道で偶然会ったら『飯一緒に行くか、風呂行こうぜ!』って連れて行かれたり。つながりはすごく強いと思います」

ただ昔から人の出入りが少ない土地柄か、とてもシャイな方が多いという小鹿野町。町外から来た人として深く住民と関わっていくためには、郷にいれば郷に従えという覚悟は持っていたほうがいいかもしれない。


「僕が住んでる地域は、お祭り以外にも消防団の飲み会やソフトボールなどが町内一盛んなところで、週一くらいの頻度で集まりがあるんです」

苦笑いしながら、そう話してくれたのはおもてなし課の佐藤さん。

大学卒業を機に、小鹿野町役場に入職、移住してきた。
オートバイによる町おこしをしていたこともある小鹿野町は、バイク乗りたちの間ではよく知られているそう。

バイクと車が大好きだという佐藤さんも、学生時代から小鹿野に通っていたことをきっかけに移住を決めた。

「正直僕は地域の集まりごとって苦手なんですよ。なのに何も調べないで一番行事が盛んなところに住んじゃったんです(笑)。まぁ、参加してみると、みんな優しくて世話好きで楽しいんですけどね」

すると、隣で話を聞いていた出浦さんが再び加わります。

「田舎はそういうの面倒くさいよ。苦手なら無理はしないほうがいい。そういう集まりが少ない地域をご紹介します」

「でも、地域の飲み会や冠婚葬祭のおつき合いはきちんとしたほうが活動はしやすくなるでしょうね。俺もそうだけど、とっつきにくいようで、話してうちとけてくるとみんなすごい親切だからさ(笑)」

その町にはその町のコミュニケーションのとり方がある。地域に入るなら、はじめから壁をつくるのではなくて、思い切って飛び込んでみたほうがいい方向に向かうような気がする。

新たに入る人は、協力隊としてまず何をすることになるのでしょうか。

「しばらくは町のなかを歩いてまわる時期は必要だと思う。最初のインスピレーションは大事にしてほしいから、下手に予備知識は与えないほうがいいのかなって思っています」

「そこで面白いと思えたものを動画に撮って配信するとか、インスタ映えするものを探したり。できることからやってほしい」

可能性を見つけたら、自分で行動してみるところから。

そのとき、協力してくれる人が増えていくのが一番大事なことだと思う。

すでにある資源を活かした商品や、地域の名物を新たにつくるもよし。商品ができたら、道の駅やダリア園などで販売することもできる。

町の空き施設“鳳鳴館”も必要があれば使って良いそうだ。もともと飲茶のレストランだったから、立派なキッチンもついている。

役場の人たちがマンツーマンでついてくれるわけではないので、日々頭をフル回転させながらより良い魅力づくりを考える必要がありそうだ。

そうしてできたつながりや事業が、きっとその後の自分を助けてくれるはず。


インタビューを終えた後、お話にあった尾ノ内氷柱に連れて行ってもらいました。

平日だというのに料金所、駐車場や売店にたくさんの地元の人がいる。売店で働いているお母さんたちに話しかけてみると、楽しそうな表情で「好きでここに来ているのよ」という言葉が返ってきた。

地域の人が進んで参加している。それが町の名物になって、町が活気づく。

こんな素敵な物語が、これからも自然に生まれて続いていくといい。本来の町おこしって、こういうことなんだろうなぁ。

お母さんたちが持ち寄ったというお惣菜をほおばりながら、そんなことを考えました。

気になった方は、一度小鹿野町に来てみてください。

そこで、まずは自分から声をかけてみる。何かがはじまるかもしれません。

(2018/1/9 取材 遠藤沙紀)

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