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いつかはこんな生き方をしてみたい。ずっとチャレンジしてみたいことがある。叶えたい夢をあたため続けて、一歩踏み出せずにいるのなら、思い切って環境を変えてみるというのはどうでしょう。
取材に訪れたのは埼玉県小鹿野町。ここで今、地域おこし協力隊を募集しています。

自らの活動を通して、移住を考えている人や町民に、勇気と元気を与える存在となってほしいそう。
とはいえ、そこまで力まなくても大丈夫。まずは役場の人たちと話し合いをしながら、できる範囲での活動をはじめるところから。
自分の夢のために生業づくりをするもよし。町の活動に集中して任期終了後は町内の企業に就職するもよし。小鹿野町を舞台にどんな生き方ができるかはその人次第です。
小鹿野町は、埼玉県の西北部、群馬県との境目にあります。
池袋駅から特急に乗って2時間弱で西武秩父駅に到着。
この日は、移住促進を担当する小鹿野町役場総合政策課の山中さんが車で迎えに来てくれました。

「小鹿野町は鉄道が通ってないので、お客さんが来るといつも秩父駅まで迎えに行くんですよ。あ、お母さん」
偶然、山中さんのお母さんとすれ違う。小鹿野町にはスーパーが一つしかないので、買い物に秩父市まで出ていたらしい。小鹿野町民にとってはよくあることのようだ。
30分ほど車を走らせ山をひとつ越えると、小鹿野町の中心部に到着。かつて各地から江戸へと抜ける宿場町として栄えた名残りは、大通り沿いに並ぶ古い宿や細い路地にわずかに感じられる。

「小鹿野には大学がないので、進学とともに若い方が町外に出ていってしまうんです。Uターン自体も減っていて、人口も減ってきています」
一昨年には町内の3校の中学校が廃校になった。とくに若い女性と子どもが減っている。
山中さんは大学進学を機に町を出た経験がある。どうして戻ってこようと思ったのだろう。
「うーん、どうしてだろう。その理由をはっきり口にできないところが、町のPR不足につながっているんだと思います(笑)」
「町民のみなさんも『この町が好きだけど、言葉でその良さを表せない』っておっしゃる方が多いんですよ」
すべての水源を町内に持っている川はどこも美しく、険しい山あいを行くと四季折々に日本古来の植物が花を咲かせる。そんな豊かな自然を求めて、毎年多くのアウトドア愛好家がやってくる。
ちなみに小鹿野町は、月に2回はどこかでお祭が開かれていると言われるほどお祭が多いそう。祭では歌舞伎が奉納されることが多くて、その時期になると町民は役者になったり、裏方になったりと大忙しだ。

アピール不足もあってか、町外から転出していく人を補えるほどの移住者を、今までは集められてこなかった。
そんな小鹿野町が、本格的に移住促進に力を入れ始めたのは実は昨年末から。まだまだやれることはたくさんある。
「具体的には新たな移住者向け情報サイトのコンテンツを考えてもらったり、移住促進のためのイベントを運営してもらったり。あとは、空き家やアパートの情報の収集など、この町に住むための情報収集と発信が基本の仕事になると思います」
どういう取り組みを行えばその地に移住したいと思えるのか、新たな隊員には移住者としての感覚が期待されている。

「移住者を増やしたいという気持ちはあります。でも、本当はどんな人でもとにかく来てほしいというわけじゃなくて」
どういうことでしょう。
「自分らしい生き方をしたい、ここで暮らしを楽しみたい。そういうポジティブな動機を持った人たちが小鹿野に集まってくれるというのが理想なんです」
「だから、今回募集する地域おこし協力隊の方にはそういう生き方を体現してもらいたいと思っています。なんだか面白い人がいる、面白いことが起こっている町だ。そんなふうに感じてもらうための第一歩になってほしい」

まずは町からお願いされる仕事をすることから。
挑戦したいことがすでにある人にとっても、活動を通して見つけようという人にも、チャンスの多い3年間になると思う。
自立に向けた人や仕事の紹介など、町としてできるかぎりのサポートはしてくれるとのこと。
夢を叶えるために奮闘する姿や、町のために活動する姿は、移住者だけでなく町民にとってもきっと刺激になるはずだ。
「小鹿野町って、地域のために何かしたいと思っている人がすごく多いんです。公に関わりたい、でもはじめの一歩が踏み出せない。そんな町民たちを巻き込んで、町を活気づけられるといいなって思っています」
年間数万人もの観光客を小鹿野町に呼び込んでいる尾ノ内氷柱やダリア園は、なんと、すべて地域住民が企画して手づくりしたもの。

自分の住んでいる町のことを考えている人たちが多い。
だからこそ、隊員にはバランス感覚も必要だと考えている。
「自分の主張を通すだけだと、ここでは暮らしづらくなっちゃうと思います」
「自分のやりたいこともやりつつ、地域住民の大事にしてきた思いとか、そういうものにも寄りそってくれるといいですね」
どんな人がいいのだろう。うまくやっていけるのだろうか。
そんなことを考えていると、山中さんが1人の女性を紹介してくれました。
一昨年移住をしてきて、小鹿野初のゲストハウスを昨年オープンさせた北川愛子さん。

「まずはこたつに入って。お茶をどうぞ」
リラックスした空気を纏っている北川さんは東京都出身。大学を卒業したあとは10年以上都内にある金融関連の企業に勤めていた。
夢だった飲食店を開くために脱サラしカフェで働くうちに、たくさんの人が交流できるゲストハウスを開きたいと考えるようになったそう。
そのタイミングで知人に紹介されたのが、小鹿野町にホテルを持っていた大家さん。空き家になっているこの建物を、宿泊施設として活用してほしいという話が舞い込んだ。
「ここを紹介されるまでは小鹿野の読み方さえ知らなかった。建物を見にはじめて町を訪れたときは、人が全然いなくて驚きました」
夢だったとはいえ、はじめることに不安はなかったのでしょうか。
「食いっぱぐれない範囲でやればいいやって思いました。まちのことを全然知らないうちに決めちゃった。我ながらチャレンジャーですよね(笑)」
「小鹿野町は観光目線で盛り上がってるコミュニティがほとんどなくて、まだ誰も何もはじまっていない場所。いろんなことができそうなブルーオーシャンだってことに面白さを感じたのも決め手だったように思います」
昨年春のオープンからまだ1年経っていない。けれど、北川さんはすっかり町に馴染んでいるように見える。
「実際に移住して来たら町の人に拒絶されることはなくて。『こんなところにつくってくれてありがとうね』『移住してきてくれてありがとうね』ってすごく感謝されます」
これまで移住者が頻繁にいた地域ではないのに、なんだか意外な気もする。
ただ、お話をうかがっていると、北川さんは理解を得るためにすすんで町の人たちと関わってきたことがわかってきた。
ゲストハウスのオープン準備中からFacebookを立ち上げ活動内容をオープンにしたり、ゲストハウスでごはん会を開いて旅行客との交流の場をつくったり。
Facebookの更新は今でも逐一行っていて、自分が何者で、どういうことをしたいのかを見えるようにしているそう。

単なる宿には収まらず、地元の住民を誘って音楽祭を開いたり、マーケットを開いたり。最近は地元の若者を誘って、小鹿野の魅力を発掘するおがの探検隊という企画もはじめている。
「一緒に発掘していくことで、この町って実はこういう面白さがあったんだ、小鹿野って結構面白いじゃんって、地域の人に改めて感じてもらえるんじゃないかなと思っています」
「今は、ゲストハウスが成功するかどうかはあまり力んでないんです。それよりも町がちょっと賑やかになる、町の人が楽しそうな顔になる。そのエネルギーを感じた外の人が町に遊びに来てくれるようにしたい。それが今目指しているところですね」
仲間や、味方をつくっていくことで、自分の活動の幅も広がる。地域で活動していくには北川さんのように、まずはこちらから地域に対してオープンな心を持つことが大切なのかもしれない。
「数少ない移住の先輩だと思うから、人付き合いの仕方といったことでも。何か困ったことがあったら相談にのりますよ」
「私は人を結びつけて面白いことをするのが得意なので、何かやりたいことがあるなら紹介することもできますよ」
「喜んで迎えるので、思い切って飛び込んでほしい」と話してくれる北川さんは、終始にこやかで安心感がある。
こんな移住の先輩がいるというのは、きっと心強い。
最後に話を伺ったのは、総合政策課課長の浅見さん。

人と町をつなげたり、その人の活動を通して町民によい影響を与えるというのが今回の隊員のミッション。
「今回は来ていただく人によって、活動内容が違ってくるのだろうと思っています。まずは面接の際に小鹿野町でどういうことをしたいのか、希望や夢を聞かせてほしいです」
移住というのは、人生が大きく変わるものです。
軽い気持ちで来るのは難しいかもしれないけれど、挑戦するタイミングを探しているなら、またとない機会だと思います。
ぜひ一度、小鹿野町を訪れてみてください。
(2018/1/31 取材 遠藤沙紀)