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楽しく、正しく、たくましく

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

突然ですが、今見ているスマートフォンやパソコンが何からできているか知っていますか?

スマートフォンはちょっと複雑かもしれないけれど、たとえばさっきコーヒーを飲んだマグカップ。座っている椅子。自分が暮らす家。

今はどれも製品になった状態で購入することが多いので、それが何からできているのか、どうやってつくられているか、知らないことのほうが多いと思います。

けれど目に入ってくるもののほとんどは、人が考えてつくったもの。陶器のマグカップは土を焼いてできているし、家は木や鉄、コンクリートなどの組み合わせ。

そうして身の周りのものを一つひとつ眺めてみると、世界に奥行きが出てくるような気がします。

そんな世界の奥行きを、解体する家から出た古材や古道具を通して伝えようとしているのが、ReBuilding Center JAPAN

長野・諏訪に2016年にオープンして以来、「リビセン」と呼ばれ親しまれています。

各地で解体される家から使える建材や家具を引き取り、古材・古道具として販売する。古材を使ってオリジナルの家具を制作したり、空間のデザインや施工も行っています。

今回募集するのは、古材をつかった空間の設計やデザインをしていく人。

単に設計をするというよりも、社会に誠実に、楽しくたくましく生きる人を応援する。そんな仕事になると思います。

  
長野県諏訪市。

東京からは車で3時間ほど。木造の建物が残る通りに面した建物をリノベーションして、2016年にオープンしたのがReBuilding Center JAPAN。

1階は古材が購入できるスペースとカフェ、2階3階には引き取ってきた家具や古道具がところせましと並び、次の使い手を待っている。

「ようこそ、諏訪へ!ようこそ、リビセンへ!」

とびきりの笑顔で出迎えてくれたのが、リビセンを立ち上げた東野(あずの)夫妻。

代表を務める東野くんは全体のことを考えつつ、空間の設計やデザインを行っている。

東野くんがデザイナーとして仕事をしていく上で、灯台のような存在になっているのが、大学に入ってはじめての授業で聞いた川崎和男先生の言葉。

「『お前らはデザインで世界を良くしろ』って言われて。当時はなにも知らなかったし、デザインってそういうものなんだと思っていました。課題がおもしろくって、暇さえあれば大学にいるような生活でした」

就職したのは展示会のブースを制作する会社。3年ほど働いたあと、さらにスキルを高めようと世界一周旅行に出た。

「日本でデザイナーとしてお金が稼げるようになったけど、たとえばウガンダの孤児院などパソコンもプリンターもない場所では、僕ができることがないという事実に直面しました。このままでは人として弱い、まずいなって気づいて。道具に頼らず体一つでスキルを使えるデザイナーになろうと思って、日本に戻って来ました」

そんな東野くんに舞い込んだのが、1000平米のビルを改装してゲストハウスをつくるという話。

「それまでリノベーションはやったことがなくて。このプロジェクトが成功すれば、今後のデザイナー人生が変わると思って。失敗したらデザイナーをやめるつもりで、ほかの仕事を全て断ってこれ一つにしました。あのときの未熟さとか、立場とか。すべてをひっくるめて、同じようなデザインは二度とできないと思えるような、奇跡的な現場でした」

そうして完成したのが、Nui. HOSTEL & BAR LOUNGE(ヌイ)。

Nui.をつくった大工さんとはその後も一緒に仕事をすることに。

現場につきっきりで掃除や片付けをしたり、その場でパソコンを広げて線を引いていくような日々。その中で木材の種類や仕上げ方、現場の流れなどを学んでいく。

古材の価値を意識するようになったのは、山口・萩のruco(ルコ)というゲストハウスをつくったときのこと。

「オーナーは東京からUターンして、居抜きで借りたお店でバーをやっていたんです。そこでカウンターにイチョウの一枚板が使われていました。1年後にrucoをはじめるとき、それと同じ木からとれた一枚板がまだ残ってるってことがわかって。それしかない!ってrucoのカウンターに使うことになりました」

「素材を選択するときの基準に、デザイン性以外にもう一つの価値観があることに、このとき気づきました。ただのイチョウの木じゃ駄目で。このイチョウの木じゃないといけなかったんです」

日本では空き家が増加して家の解体が進み、たくさんの古材がゴミになっている。

一方、西海岸デザインやインダストリアルデザインなど古材を使った空間づくりは人気があり、たくさんの古材を海外から輸入して使っているそうだ。

「もっと日本の古材を循環させるのが健全なんじゃないか」

古材を一生使うならば、それを取り巻く社会問題も無視はできない。そう考えるようになった東野くんが旅行で立ち寄ったのが、アメリカ・ポートランドにあるリビルディングセンター。

そこには当たり前のように古材を使い、自分の暮らしをDIYでつくる人たちの姿があった。

「古材の表面を削って新品のように使う人がいて。ここでは古材のかっこよさっていうよりも、環境意識の高さが古材を選ばせているっていうのに気がついた。自分たちで暮らしをつくる人たちの姿を見て感動したし、そこに未来を感じたんです」

日本でもリビルディングセンターをつくりたい。そう決めてからはトントン拍子で話が進んだ。

「ReBuild New Culture」という言葉を掲げ、オープンしたのは2016年9月のこと。

空間や商品、イベントなどを通して、古材や古道具を気軽に暮らしに取り入れてもらうための提案を続けてきた。

今は県外から訪れる人が7割ほど。たくさんの人が共感してくれることに、手応えを感じているそうだ。

「古材屋って普通の人にとっては身近な存在じゃない。古材はもっと気軽に使えることを広報する役割は担えていると思う。でも今はまだ、観光地みたいになっちゃってて」

観光地?

「ポートランドのリビルディングセンターは日常のなかにあるから。その土地の人が自分の家を直すためにここで材料を買っていく。それで、自分の家から廃材や古材が出たらここに持ってくる。そういう循環の拠点だから」

「目的はリビセンをつくることじゃなくて、次世代につながっていく文化をつくること。そのためにもっと地域に根ざしていきたいなって思ってるところで」

今は全国各地さまざまな場所の空間づくりに関わっている。今後は少しずつ距離の近い場所での仕事を増やし、地域を耕していきたいと考えているところ。

今回仲間になる人には、東野くんが中心になっているデザイン部門を一緒に引っ張っていってもらいたい。

東野くんの空間づくりは、お施主さんの事業計画書や収支計画書を見せてもらうことからはじまることが多いんだそう。

持続可能な商売ができる場をつくるために、空間だけでなく、事業自体を一緒に考えていくようなこともある。

「まずはちゃんと話を聞く。お施主さんがDIYできるのか、手伝ってくれる仲間を呼べる人か、関わる大工さんがどんな人なのか。いろんなことを考慮して、一番いい方法を考えてデザインしていきます」

一緒に働く人は、これまでどんな空間に関わってきた人がいいだろう。

「リビセンとしてデザインしたお店は、必ずしも俺がデザインした感じじゃなくてもいいと思っています。最低ラインは古材を使って循環させること。日本の古材であれば、リビセンで取り扱っているものじゃなくてもかまいません。あとは一定のクオリティを保てれば、ガーリーでもカラフルでもいいのかもしれない」

これまで東野くんがつくってきた空間を見ていて、譲れないデザイン性みたいなものもあると思っていたので、ちょっと意外だった。

ふらっとリビセンを訪れた人にも「Nui.っていうゲストハウスに似てますね」と言われたことが何度かあるんだそう。

「もちろん素材にはこだわるし、理由のあるものを使いたい。もともとある建物を冒涜するようなこともしたくない。その建物と、事業のことを考えていくと、自ずと選択肢が絞られていくというか。意匠として絶対譲れないところはそんなにないんだよね。俺っぽいって、なんなんだろうね」

空間づくりで大切にしていることの多くは、いろいろなお店に立ち寄り、観察することから学んだことが多いそう。

「お店を構成する要素って、内装のデザインは本当に一部で。料理がおいしいことだけでも、スタッフがいいことだけでもいいお店にならない」

「来るお客さんがどんな人たちか、どんな会話をしているか。明るさや匂い、素材の濃淡や光沢の具合。そういうものが全体でお店の空気をつくるんだと思う」

東野くんにとって、いい空間ってなんだろう。そう聞くと、はっきりと「愛されているお店」だと答えてくれた。

「そのお店をやっている人に愛されているお店。よく考えられていて、試行錯誤の結果が形になっているような空間っていいよね」

ずっと横で「うん、そうだよね」と話を聞いていた奥さんの華南子ちゃん。

「リビセンに来て『このお店には古道具と会話できる人がいるんですね』って言ってくれた人がいて。うれしかったなー」

華南子ちゃんにとって人生の大きな転機になったのが、東野くんに出会ったこと。

意外にも、それまでは自分でなにかをつくることはない暮らしをしていた。一緒に暮らすことになり、いざ引っ越しだ!というときに東野くんが図面を引いてきて、びっくりしたそうだ。

「机が欲しいって言ったら、ちょうどいいサイズの机を自分でつくってくれる。デザインも大きさもお金も妥協せずに、欲しいものは自分でつくる。なんて豊かなんだろう、これが自由なんだなって思ったんだよね」

「世界って自分たちでつくれるんだっていうのを目の当たりにして。私は東野さんと暮らすことで、世界を因数分解して見ることができるようになった。欲しい暮らしは自分でつくれるってことの心強さを、みんながもう少し持てる社会になったらいいなって」

華南子ちゃんの担当は、カフェの運営やイベントの企画など。どの仕事もスタッフ7人全員で協力しながら、全力疾走しているような状況なんだそう。

「どんどん家が解体されてゴミになってしまうことに、焦りがないわけではない。でも、もうこれは100年がかりだ!って気持ちになったら、楽になってきた。変えられるのは自分と周りからだもんね」

東野くんや華南子ちゃんと話をしていると、とても気持ちがいい。

正しいと思うことをあきらめず、目の前のことに誠実に、納得できる道を進んでいく。険しい山を愉快に登っていく姿が、共感する人を増やしているんだと思う。

「一緒に働いているみんなは、自分のできることで世界を良くしたいって思っている。世の中の矛盾に気がついちゃったら無視はできないから。リビセンを通して、みんなで戦っているような感じなんだよね」

18時の閉店を向かえ、慌ただしく片付けを済ませたあとは、毎晩一緒にごはんを食べながら終礼をしている。ワイワイと賑やかな食卓のなかで、仕事の相談事や気になっていることを話す。

ほかのスタッフにどんな人と働きたいか聞いてみると「誰かをよろこばせるのが好きな人」「考えるのをあきらめない人」「ごはんが美味しく食べられる人」という答えが返ってきた。

この人たちと一緒に生きてみよう。そう思えたら、ぜひ会いに行ってみてください。

(2018/1/29 取材 中嶋希実)

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