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体温を伝える

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「ひとつの商品ができるまで、いろんなストーリーがある。僕たちは、そのストーリーを伝えていきたいんです」

そう話すのは、シサム工房代表の水野さん。

シサム工房は、フェアトレード事業を中心に、ショップ運営から卸事業、ノベルティ事業、商品企画・開発をおこなっている会社です。

今回募集するのは、オンラインストアのスタッフ。あわせて直営店の販売スタッフも探しています。

フェアトレードという言葉をまだ知らなくても大丈夫。

お客さまと会社をつなぐ役割として、商品はもちろん、その背景にあるストーリーも伝えていく仕事です。

京都駅から電車を乗り継ぎ、左京区の元田中駅へ。

駅からゆっくり歩いて10分ほど、京都大学農学部のすぐ裏手にシサム工房の事務所が見えてきた。

1階の倉庫で作業する社員のみなさんと挨拶しながら、まずは2階の事務所へ向かう。

中に入ると、代表の水野さんが待っていてくれた。

穏やかな語り口で、話しやすい雰囲気をつくってくれる方だ。

水野さんが今の道を選んだきっかけは、大学時代にアパルトヘイトや人権問題を知ったこと。いわれのない差別に怒りを覚えるとともに、途上国の人々に目を向けるようになる。

差別を受ける人たちや弱い立場にある人を守りたい。

当時抱いていたそんな思いは、バックパッカーとして世界中を旅する中で少しずつ変容していく。

「荒んだスラムで転げ回って笑う子どもたちに、電気も通わないような山奥の村で逞しく生きるお母さん。旅先で目にしたのは、普通の人たちの何でもない日常だったんです」

「そんな風景を目にしたとき、彼らをかわいそうな存在としてではなく、対等な人間としてつながりを感じながら生きていきたいと強く思いました」

大学卒業後は、エスニック雑貨を扱う会社に就職。

バイヤーとしてアジア各国を飛び回るなかで、自分がいいと思える空間の中でフェアトレード商品や情報を発信していく場をつくりたいと考えるように。

「フェアトレードだったら途上国の人たちともいい形でつながれる。それでお店という形が思い浮かびました」

そうして19年前に設立したのが、シサム工房。

現在は、フェアトレード商品の開発から直営店8店舗での販売、さらに卸事業も展開している。

シサム工房の取扱商品の7割は衣料品などのファッションもの。そのほとんどが、自社デザインのオリジナル商品だ。

まずは社内デザイナーが生産者を訪ねて、その土地に根付く技術や素材などを知る。そうして文化や歴史を尊重しながら、日本のマーケットに合わせたデザインをしていく。

「手仕事なので、同じ商品でも少しずつ違うんです。そんなあたたかみを大切にしつつも、一般流通する衣料品に決して引けを取らないこと、フェアトレードに甘えないということはすごく意識していて」

シサム工房にとって、フェアトレードはチャリティではなくビジネス。そのため、ときに難しい判断を迫られることもあるそう。

たとえば手織り生地を使った衣料は、織ムラや織キズを気にする人が多く市場も縮小気味。ニーズのないものをつくり続けるのは難しく、少しずつ注文も減らしているという。

「かといって彼らと手を切るのは違う。いずれそうした手仕事も限定数のブランド化で解決していきたいんですが…。歯がゆさも感じることもあります」

「生産者と私たちの双方がフェアトレードで生計を立てるということは、対等なパートナーになることでもある。私たちも彼らのことを伝えていきたいんです」

シサム工房が大切にしてきたこと。それは、商品の背景にあるものを丁寧に伝えていくこと。

ただ売るのではなく、商品に息づく手仕事や生産者たちもそっと伝えたい。それが自分たちのできる最大の提案であり、もっと多くの人々がより良い形でつながれるかもしれない。

そんな思いから、近年力を入れはじめたのがオンラインストア事業だ。

「これまで店舗では、お客さまに寄り添いながら、商品が手元に届くまでのストーリーを伝えることを大切にしてきました。一方で、より多くの方と出会えるはずのオンラインストアは簡潔な商品説明で終わっていた」

現在はそのギャップを埋めるべく、写真や文章を増やして商品や生産者の紹介ページを充実させているところ。

同時にサイトリニューアルの考案も進めており、7月に準備開始予定だという。あわせて、FacebookやInstagramでの発信も強化していきたい。

新しく入る人は、オンラインストアに籍を置きながら、そんな“伝える役割”を担っていく。

そんなオンラインストアを長く担当しているのが、朗らかな笑顔が印象的な細谷さん。

「もともと建築系の仕事をしていて。フェアトレードに特別な興味があったというわけではないんですが、私も妻もシサムの柔らかい雰囲気が好きだったので応募してみました」

以来、主にシステム面からオンラインストアを支えている細谷さん。

オンラインストアの売上高は、年々少しずつ伸びているそう。

サイト内のコンテンツが充実すれば、まだまだ伸び代はあると細谷さんは考えている。

「たとえば福袋。売り出しを予告すると、日付が変わった瞬間に完売するんです。それにメルマガで紹介した商品は売れ行きも結構違ってくる」

「この画面の向こう側には、確かにお客さまがいらっしゃる。僕たち次第で、もっと近づけるんじゃないかなって思うんです」

そんなオンラインストアをあらゆる面で支えているのが佐竹さん。チャーミングという言葉がぴったりの女性だ。

実はご結婚・移住を機に、今年7月末に退職予定。今回募集する人は、佐竹さんの後任として同じ役割を担うことになる。

中学生のころテレビで見かけた人種差別の番組をきっかけに、途上国に関心を持つようになった佐竹さん。

自分も何らかの形で国際協力に携わりたいと考えていたころ、シサム工房を知る。

「お店に通いつめるほどではなかったんですけど、ずっと気になっていて。事業としてフェアトレードをしているのは珍しい。私もそんな形で携われたらいいなって思ったんです」

入社後、直営店の店長を経て、約2年前からオンラインストアの担当となる。

主な仕事は、問い合わせ対応や、注文から納品までの管理業務、さらに商品ページの作成など。

店舗で経験を積んでいた佐竹さんも、異動当初は苦労したそう。

「店舗では目の前の方とお話していたので、お会いしたことのないお客さまへ商品の情報を伝えたり、ご質問にお答えするのはすごく難しくて。言葉遣いひとつとっても、どうしたら伝わるだろうって悩んでいました」

伝えるべき情報の取捨選択に四苦八苦し、いたずらに時間が過ぎてしまったこともあるそう。

「でも大切にすべきことって、店舗で働いていたときと同じかもしれないと思うようになって」

大切にすべきこと?

「はい。自分がお客さまの立場だったら何をどう教えてほしいか想像することかなって。そう思えるようになったら、伝えることもだんだん楽しくなってきました」

問い合わせでは、ただ聞かれたことに回答するのではなく、質問の背景まで思いを馳せるようになったそう。

サイズ感を聞かれたときには、被服ガイドの数値だけでなく、実際に商品を手にして浮かんだ体型別のアドバイス、さらに自分や周囲のスタッフの等身大の感想をもとに返事を書く。納品書にも、簡単なメッセージを添えているそう。

なかでも印象に残っているというエピソードを教えてくれた。

「とあるお客さまが、やむを得ない理由で返品されることになって。数日後に届いた返品商品の箱には私宛のお手紙も入っていて『返品になってしまったけど、ありがとうございます。また利用します』と書いてくれていたんです」

「ほかにも、お客さまからお礼のメッセージや絵葉書、旬の果物が届くこともありました(笑)やりとりを通して私たちのことを身近に感じてくれたならうれしい。せっかく私たちを選んでくれたお客さまとは、近くで繋がっていたいんです」

こうした注文管理をしながら、オンラインストアの文章を充実させていくのも仕事の一つ。

ストアに並ぶ商品は、洋服からアクセサリー、雑貨まで幅広いため、まずは主力商品から手を加えていっているそう。

「大前提として内容に興味を持っていただかなければいけないので、はじめに商品そのものの魅力を伝えるようにしています。ファッションに詳しくない方でも分かるよう、デザインや肌触りなどのポイントを、やさしい言葉で伝えていって」

実際に商品に触れたときの等身大の感想も入れつつ、写真やデザイナーが描いたイラストなども使い、目でも楽しめるよう工夫する。

目標は、読み物としても成立するような商品説明。

商品の魅力を一通り伝えたのち、生産者たちのことをそっと伝える。

たとえば、と教えてくれたのがオーガニックコットンでできたニットの紹介ページ。

ドロップショルダーといって肩のラインが下についているため、華奢に見える。それに肌触りもふわふわと柔らかく、気持ちがいい。

実はこのコットン、種まきから摘むところまですべて手作業。

かつて農薬にまみれた農場で働いていた農民たちは、今はNGOのサポートを受けながらオーガニック農法にこだわった農園で生計を立てている——。

「このように、ひとつの商品にはデザインから生産背景までいろんな情報が詰まっていて。商品の開発資料やカタログ、スタッフ間の会話など、いろんな情報を整理してまとめています」

どんな環境で、どんな人たちがつくっているのか。

伝えたいことを伝えつつも、決して押し付けがましくならないように。そのバランス感覚を取るのは簡単ではないという。

「すべてを詰め込んでも一方通行なので。自然と興味を引っ張りながら、商品の背景まで伝えるのは大変かな」

まだまだ試行錯誤中です、と佐竹さん。新しく入る人も、文章で伝えることが好きな人がいいと思う。

「オンラインストアだからパソコンとにらめっこ、というのではなくて。もっといろんな人とつながれて、存在をお互いに意識できる。いい意味でアナログでいられる場所かなって思います」

まずは画面の向こうにいる人を想像して、関係を紡いでいくところから。

新しく入る人も、現時点でのフェアトレードの知識は問わないという。

「私がしてきたことと同じようにやらないといけないわけじゃない。服や手仕事が好きだったり、文章を書くのが得意だったり。そんな自分の興味や特技をここで活かしてほしいですね」

それに佐竹さんも、退職後も何らかの形でシサムに関わり続けることになるかもしれないとのこと。自分の後任となる人と会えるのを楽しみにしているようだ。

「お会いしたら、ずっと話してしまうかもしれない(笑)私の伝えられることは全部伝えていきたいし、気軽に相談もしてください」

遠くアジアから届けられた商品を、そのままの温度でお客さまへ届ける。

そんな働き方が、ここにはあると思いました。

(2018/03/19 取材 遠藤真利奈)

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