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壁紙ニューワールド

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「日本の壁は8割が白い、無地の壁だって言われているんですよ。でも価値観が多様化しているなかで、洋服のように壁紙も自分を表現する1つのツールになるんじゃないかと僕は思っているんです」

これは、三共紙店の代表である事代堂(ことしろどう)さんの言葉。

三共紙店はこれまで、ドラマやバラエティ番組のセットなど、主にテレビ業界で使用される壁紙をつくり続けてきました。

テレビで使われている壁紙のなんと約7割が三共紙店のもの。業界のお客さんはたくさんいるものの、オーダーメイドでつくってきた個性豊かな壁紙たちを活かして、もっと一般の住宅でも壁紙から暮らしを豊かにしていきたい。

その足がかりとして、ハウスメーカーや、空間設計事務所など、まずは空間をつくっている人たちと一緒に壁紙の選択肢を広げていこうとしているところ。

今回は、こちらで一緒に働く営業スタッフを募集します。

壁紙やインテリア業界の経験がなくても、営業経験などがある方は向いているかもしれません。企画から活用方法の提案まで、幅広く関わりたいという人にはもってこいの仕事だと思います。

地下鉄小伝馬町駅を降りて歩くこと5分ほど。三共紙店の小さなビルが見えてくる。

扉を開けると、大きな機械がいくつも目に入る。聞けば、壁紙を印刷するプリンターらしい。三共紙店では、壁紙の企画・デザインから出力までをすべて自社で手がけている。

応接室で、まずは代表の事代堂さんにこれまでの経緯を伺うことに。

三共紙店は、昭和2年に事代堂さんのおじいさんが創業した会社。

「当時は浅草で、紙問屋としてスタートしたそうです。扱っていたのは、生活に付随する紙。ちり紙やトイレットペーパー、襖紙、障子紙といったものが主な商品でした」

浅草という場所柄、歌舞伎座や明治座といった舞台で使われる紙も納めていた。その後テレビ局が開局すると、歌舞伎や舞台出身の大道具さんたちが、番組のセットを制作するように。

そこでも、三共紙店の扱う商品は重宝されたそう。

各メーカーから集めた素材は、「見本帳」と呼ばれるオリジナルのカタログにまとめられる。番組セットをつくるデザイナーさんは、見本帳からほしい壁紙を選び、オーダーするという仕組み。

「ただ、僕らは求められるものだけを用意してきたわけじゃないんです」

それは、どういうことでしょう?

「こんなものがあったら面白いんじゃないか、よりテレビ映えするんじゃないか。壁紙屋が普通ならやらないようなことにも積極的に挑戦してきました」

たとえば、フィルムに細かなスリットが入った商品。すだれのような形で、もともとは長さも幅も決まっているアメリカ製の既製品だった。

ところが、お客さんからは「コンサートでは長さが足りない」「もうちょっと幅の太いものがほしい」という声が聞こえてきた。

「うちはいろいろな素材を仕入れていて、長いお付き合いの加工業者さんもいる。世の中にないなら、自分たちでつくってしまえばいいと思いました」

今では幅や長さを変え、業者さんに裁断してもらった素材を、自分たちでつなぎ合わせて仕上げている。

常に頭を巡らせて新しいものづくりに挑戦する。テレビ業界から厚い信頼が寄せられる理由が、少しわかった気がした。

ところで事代堂さん自身は、もともと壁紙に興味があったのだろうか。

聞いてみると、「正直なところ、最初は興味がなかったんです」という意外な言葉。

転機となったのは、ドイツで開催されるインテリアの総合展示会に参加したときのこと。

「衝撃を受けたんですよね。これまで日本国内の壁紙メーカーさんの商品を見ても、感動するようなことはほとんどなかった。だけど海外の壁紙でつくられる空間は、鮮やかな発色も柄も、暮らしの空間に調和していて」

「エンターテイメントの世界だけでなく、住環境でもこういうことができる。日本もこんなふうになったらいいのにと思いました」

「ないなら、自分たちでつくる」を実践してきた三共紙店。2008年には、ついにメーカーとして壁紙の企画から製造、販売まで、自分たちで一貫して行うことを決める。

目をつけたのは、インクジェットのプリンター。ポスターや屋外看板を印刷する機械ならば、壁紙も印刷できるのではないかと考え、メーカーに直談判に行ったそう。

「僕がフラットではない、凹凸のある壁紙も持っていったから最初は不安がられましたね。結果的には大丈夫だとわかって、機械を自社に導入したんです」

実は、こんなふうにインクジェットプリンターで壁紙を印刷したのは、三共紙店が国内初。今では、ほとんどの壁紙屋がプリンターで印刷をしているのだとか。

こうして聞いていると、新しいことを臆せずにどんどんはじめていく印象がある。おもしろそうではあるものの、スピード感の早さに不安を感じる人もいるかもしれない。

「もちろん、僕にも不安はありますよ。うちは個性的な柄の壁紙も多いぶん、通常流通している壁紙と同じようにたくさんの需要があるとも思っていません。だけど、壁紙で個性を表現することを求めている方もいると思うんです」

壁紙で個性を表現する。

「家具はオーダーしても、壁紙は安い量産品というお家は多いはず。全面を柄にするわけにはいかないけれど、壁紙を使ってもっと生活環境を豊かにしたいんです」

事代堂さんが次々と新しい考えを生み出すアイデアマンだとしたら、その想いや考えを実際に形にしているのがデザイナーの山田さんです。

「これは私たちの仕事じゃないかも?と思うことでも、隔てなくやるのが三共紙店だと思います。スタッフだけじゃなくて、上の人もみんな同じですね」

その言葉通り、山田さんも「デザイナー」という役割にとらわれない様々な経験をしてきたそう。たとえば、7年前にはじめたプロジェクトでのこと。

「個人のお客さんにもオーダーメイドの壁紙を販売する、『hagoti』というブランドをゼロから立ち上げたんです」

壁紙のデザインはもちろん、カタログの制作やECサイトの運営、営業活動まで。幅広い仕事のほとんどを一人で担当したという。

「受注後は、工事にも立ち会いました。もう機械と材料さえあれば、自分で独立して仕事ができるくらい(笑)前職でもデザインの仕事をしていましたが、こんなに大きなことをやらせてもらうことはなかった。すごく大変でしたが、そこはよかったなと思っています」

結果として、宿泊施設に日本画風のユニークな部屋ができたり、個人のお宅でフランスの壁紙を再現したり。壁紙で個性を表現する、という想いは少しずつ形になりつつある。

とはいえ、すべてが順調に進んできたわけではない。hagotiでは課題点も見つかった。

「一般のお客さんには三共紙店の知名度が圧倒的に低いので、いくらDIYや壁紙の張り替えに興味を持つ方が増えたとはいえ、うまく出会うことが難しかったんです」

その経験を活かして、今年さらなる動きを考えているそう。

hagotiに替わるブランドを新たに立ち上げ、ハウスメーカーや空間設計事務所などのプロの方たちと協業。空間づくりに三共紙店オリジナルの壁紙を使ってもらうことで、一般の方にも三共の壁紙を広めていこうというものだ。

今回募集する人は、この新規事業に営業担当として参加することになる。

現在は、外部コンサルタントにも入ってもらい、一緒にブランディングを進めている段階。これまで得意としてきた柄物の壁紙に特化して、柄のみの見本帳を制作中だ。

この新たな挑戦に、一緒に挑もうとしているのが阿部さんです。新しく入る人の上司になる方。

営業担当は、どんな人がいいでしょうか。

「もちろんお客さんに選んでもらうためには商品力も必要です。でも、結局は人の力にかかっていると思ってて」

「すでに取引ができそうなお客さんの目星もついているけれど、はじめて取引するところにも話しにいきます。物怖じせずに突破口になってくれるような人が来てくれたらいいですね」

仕事は、指示を待つのではなく自分でつくっていく。

たとえば好きなアーティストがいて、壁紙にしたいと思うなら提案も大歓迎だし、三共紙店の壁紙がどんな場所に使えるのか想像しながら、営業先のアイデアも出してほしい。

アイデアが浮かんだら、デザイナーの山田さんと、自社ですぐにサンプルをつくり提案することができるのも三共紙店の強み。

社内にある資源をすべて使って、お客さんの「ほしい」という想いを形にしていくのが営業の仕事になると思う。

「だから僕は、できるだけスタッフを管理したくないんです。お客さんの要望を汲み取るとか、提案内容を考えるとか、そういうものに時間を使ってほしい。上司に報告するための書類づくりは、仕事ではないと思っているので」

もちろん、困ったら相談してほしい。その上で、自分の頭で考えながら、行動できる人を求めている。

「きっと、横沢みたいな人が向いてるんじゃないかな」と阿部さんに紹介されたのが、営業主任の横沢さん。

ブランドバックの販売職や建物の内装仕上げの仕事など、これまでの経歴はとても多様だ。

「前職で内装をやっていたから、それに近い職を探していて。軽い気持ちで面接に来たんです」

「面接後、社長に飲みに誘われて。じっくり話してみると、社長とか部下とか関係なく話を聞いてくれる感じで。それが決め手ですかね」

これまで営業としてどんなふうに仕事をしてきたのか。具体例として「パンチングメタル」という壁紙の話をしてくれた。

あるとき、コンサートのセットでこの壁紙を全面に使用したいという依頼を受けたそう。

「ところがこの商品は手作業で穴を開けていたので、一枚ずつ穴の場所が違ったんです。複数枚貼り合わせたら、つなぎ目の穴が合わなくておかしい、と指摘を受けて」

問題はこれだけにとどまらない。パネルに貼り付けたら、穴から接着剤が滲み出てしまい更なるお叱りを受けた。

「そのときは謝るしかできなくて。でも、すぐにお客さんの声を僕らからものづくりの現場に届けました。次の見本帳では、機械で正確に穴あけをして糊付きのものに改良したんです」

それを先方に伝えたところ、とても喜んでもらい、今でもお付き合いが続いている。

「他に例のない壁紙を扱うし、右から左に流すような仕事じゃないからこそ、難しいこともたくさんあります。でも誠実に、逃げずに対応してきた結果が評価されると思うんです。相手の“ほしい”をうまく形にできたら、営業冥利につきますね」

三共紙店のみなさんは、やわらかい中にも芯があると感じる。壁紙を長年扱い続けてきたプロとして、できない言い訳を探すのではなく、できる方法を探して実践する。そんな姿が印象的でした。

枠にとらわれない三共紙店のみなさんとなら、新しい壁紙の世界をつくっていけるように思いました。

(2018/5/24 取材 並木仁美)

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