求人 NEW

ニッチな技術で
カクテルシェーカーをつくる
自動車部品メーカーの挑戦

時代が移りゆくにつれて、昔はよく使われていたものが、だんだんと別のものに代替される。寂しさもあるけれど、ある意味自然なことなのかもしれません。

ただ、せっかくの技術が失われてしまうのは惜しいもの。

今回紹介する横山興業株式会社は、そんなピンチをチャンスに変えてきた会社です。

今年で創業73年を迎える横山興業株式会社は、愛知・豊田で、自動車用シート部品の製造や、建築資材の製造・販売、太陽光発電設備の販売・施工など、幅広い技術を活かして暮らしのニーズに応えてきました。

自動車部品の加工技術から生まれたのが、バー・キッチンツールブランド「BIRDY.(バーディ)」。

ブランド設立から10年、部長である横山さんがメインに企画し、その想いに共感したスタッフが一緒に形にしてきました。

その使い心地が認められ、英国のバーテンダーとのコラボ商品をつくるなど、国内外でニーズが高まっています。

今回の募集は、BIRDY.を立ち上げた商品企画部で販促企画を担うスタッフ。あわせて工程管理スタッフも探しています。

販促企画職は主にオンラインショップ・SNSの運営や、イベント出展など、BIRDY.の魅力を伝えていく仕事です。少人数のスタッフのため、受注や出荷業務を担うこともあります。

海外への販路が拡大しつつあるため、興味や経験があれば、海外への営業もチャレンジできます。

学び続けるのが好き。同じことを続けるよりは、いろんな仕事をしてみたい。好奇心の強さが活きる仕事だと思います。

 

東京から名古屋まで、新幹線で1時間半。名鉄名古屋駅から電車を乗り継ぎ、土橋駅で降りる。

駅の改札を出て、線路沿いの一本道を東へ進んでいくと、両側に大きな工場が。自動車のまちの雰囲気を感じる。

20分ほど歩き、住宅街のなかに見つけた「BIRDY. FACTORY」の看板。ここにBIRDY.の製品がつくられている緑ヶ丘工場と事務所がある。

もともと商品企画部は別の場所にある自動車部品の工場にあったけれど、新規事業の拡大とともに2年半前に移転してきた。

中に入るとバーのようなショールームが。工場の見学ツアーを開催したり、ショールームにプロのバーテンダーを呼んでブランドのセミナーをおこなったりしているそう。

話を聞いたのは、商品企画部の部長を務める横山哲也さん。

会社は哲也さんの祖父、俊三郎さんが創業し、今は兄の栄介さんが代表を務めている。

BIRDY.のブランドを立ち上げたのは、2013年のこと。

東日本大震災により自動車部品の生産が海外へ流れたことや、電気自動車の普及に伴う部品の製造数の減少への不安が、新規事業立ち上げのきっかけになった。

会社の主力である自動車部品の製造とは、畑違いの新規事業。苦労も多かったそう。

「会社全体で危機感はあったんです。新しいことをやっていかないとって。ただ、これまでは依頼されたものを製造、販売してきただけだったので、自分たちで一から何かをつくることが難しかったんですよね」

「自動車部品や建築資材を生産して販売をしてきましたが、あらためて横山興業はどんな技術を持っているのか、棚卸しをしました」

そのなかで浮かんできたのが、金型メーカーと技術提携をしたときに開発した研磨の技術。

「この研磨の技術は、横山興業の職人の手でしか出せない繊細な技術なんです。それを活かして、ほかでは真似できない商品をつくりたくて。まずは試作品として、日本酒のタンブラーをつくりました」

「ただ、これまでやってきたこととまったく違うものなので、当時社長であった父や役員の兄に納得してもらうのはむずかしそうだなと。ある程度完成するまでは一人で企画して、職人さんに頼んで試作品をつくって、飲食店に持ち込んで評価をヒヤリングして、の繰り返しでしたね」

ニッチな技術だからできる、ほかにない商品。それを突き詰めた先にたどり着いたのが、カクテルシェーカーだった。

目をつけたのはカクテルシェーカー内部の研磨。表面を完全に滑らかにするのではなく、あえてミクロの凸凹をつくる。その凸凹が細かな泡をつくり出し、お酒や果汁の風味が最大限に引き出されるんだそう。

その研磨技術は、熟練の職人でしか実現できない。

「試作品でつくったカクテルをはじめて飲んだとき、あまりの違いに驚いて。同時に、商品の開発を決意したんです」

「ただ最初は、その道のプロが考えたものじゃないからって、受け入れてもらえないことが多くて」

それでも、イベントやお店に足を運んで、商品を使ってもらえるようコツコツと動き続けた横山さん。

苦しい状況を変えるきっかけとなったのが、世界的に知られるイギリスのバーテンダーとの出会い。その後、ドイツで開催された世界最大級のバーの展示会に参加したことを機に、バーテンダーと商品の共同開発を始めることになった。

地道な営業の甲斐もあり、日本でもメディアに取り上げられることが増えた。バー業界以外の販路開拓をと開発していたキッチンツールも売れるようになり、ブランドとしての認知も広がりつつある。

「ただ、ブランドのポリシーは大事にしたくて」

「メインとする顧客はあくまでプロの飲食関係の方々。開発する製品にはクオリティの面で一貫性があって、プロが驚いてくれる商品を出し続けていきたいと思っています」

現在、BIRDY.の企画・販売を担う商品企画部の事務部門は哲也さんを含めて4人。オンラインショップ・SNSの運営やイベントへの出展、販路の開拓など全員で分担しながら進めている。

新しく入る人は、SNSやオンラインショップの運用とイベントへの出展など、販促企画に関わる業務が6〜7割ほど。そのほか、出荷や受注業務にも手を貸してほしい。

「正直、今のメンバーだけでは取りこぼしているビジネスチャンスも多くて。新しく入る人の力も借りながら、国内外でBIRDY.のファンを増やしていきたいと思っています」

「アクセルになってくれる人が来てくれるとうれしいですね」

今ある仕事を任せられることもある。けれど、新しく入る人の発想で新しく仕事ができていくこともきっとあるはず。まずは哲也さんやほかのスタッフの想いも聞きながら、仕事を考えていくのがいいと思う。

 

「一人ひとりに役割はあるけれど、少人数なのでいろんな業務を任される。それが大変でもあり、楽しい部分ですね」

そう話すのは、商品企画部の係長を務めている藤井さん。入社して8年半になる。

「はじめBIRDY.専属の社員は私しかいなかったんです。販売、検品、出荷。オンラインショップの運営もやったし、イベントでお客さんの接客もしました。製造以外のことは、だいたいやってきたかな」

出版社での編集や、テレビ通販の物流管理の経験がある藤井さん。BIRDY.の立ち上げ初期から、哲也さん一人では力が及ばなかった売り上げの面を支えてきた。

「私はブランドイメージを守りつつ、売り上げを伸ばしていかなきゃという思いを強く持っていました」

「部長の横山ははじめのころ、これは売れる! と思っていたようですが、認知が進んでいないこともあり、思うように商品があんまり売れない時期もあって。なので売り方を見直したり、販路も開拓して、いろいろなところへ営業に行ったし、小売のノウハウもなかったので、パッケージに載せなきゃいけない情報も私が経験してきたノウハウをつぎ込みました」

前職での経験も活かしつつ、幅広い役割を担ってきた藤井さん。

「バーツールのブランドなので、国内での販路拡大は限界があるんです。なので海外展開を進めようと。ただ、すぐに売り上げが上がるわけではなくて」

そこで、これまでつながりをつくってきた飲食店から日々の困りごとをヒヤリング。その結果、効率よく食器やバーツールを拭けるサプライ商品をつくることに。

「地元の繊維商社さんとコラボレーションして、キッチンタオルをつくったんです。プロだけじゃなく、一般の人も注目してくれて。今は売り上げの半分以上がキッチンツールになっています」

「同じことをずっと続けるより、いろんなことを学び続けたいんですよね。大変だけど、ほかの会社では経験できない面白いことができているのかなと思っています」

 

知らないことを知る。その過程を楽しんでいるのは、プロダクトデザイナーの村嶋さんからも感じる。

入社して2年目で、前職は家具メーカーでデザインをしていた。イベントの出展は村嶋さんが担当しているため、新しく入る人とも関わる機会が多いと思う。

「自動車部品メーカーが、自分たちの持っている技術を応用してカクテルシェーカーをつくったっていうことに魅力を感じて入社を決めました」

その気持ちは、イベント出展のときにも活かされている。

「イベントも一般の方向けとプロ向けでアピールの仕方が違うので、デザインや演出もそれぞれ変えていて」

「最近は一般の方向けのイベントに行くことが多いんです。何度も出展しているので、『あのときのお兄さん!あの商品の使い心地よかった!』って言ってもらえるんですよ。お客さんと直接関われることは楽しいですね」

入社して2年。デザイナーとしても、試行錯誤しているところ。

「キッチンタオルを販売したことで、お料理好きの方が購入してくださることが多くなってきていて。愛知県って、常滑とか美濃とか、やきものが多い地域なので、食器をつくってみたらいいんじゃないかって提案したんです」

「ただ、ブランドコンセプトとして一番大切にしているのは、プロに向けた製品をつくること。それで却下されてしまったんです。でも、また考えればいいかって。スタッフも落ち込むような雰囲気ではなくて、また考えようって切り替えられる人が多いと思います」

「いい意味で緊張する職場じゃないんです」と村嶋さん。少人数だからいろんな意見を言いやすいし、意見が合わなかったときも、とことん会話して擦り合わせていく。

藤井さんも村嶋さんも、これまで経験したことない業務を担ってきた。その大変さをわかってくれる先輩がいることは心強い。

「僕も新しい製品のデザインがメインなんですけど、『何の仕事してますか』って言われると、いろいろやっているので一言では言い切れないです(笑)。知らないことを学ぶのは自分磨きだと思っているので、一緒に楽しめたらなって思っています」

たとえば、海外物流やSNSでの発信の経験をもっている人であれば、直接国内外への販売に活かすことができそう。ほかにも、一見関係なさそうな経験をもっているとしても、先輩や同僚の経験と掛け合わせることで、大きな力になり得る可能性もある。

 

それぞれの強みを活かせるのは、ここで働く上で大きなやりがいになりそうだ。

これまでの経験を存分に活かしながら、経験がないことにもチャレンジして新たなスキルを身につけていく。

ピンチをチャンスに変えるヒントは、学ぶ意欲にあるように感じました。

(2024/01/25 取材 大津恵理子)

問い合わせ・応募する

おすすめの記事