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「いわゆる施設・設備点検の仕事が多いですけど、基本的には何をやってもいいんですよね。建設でも解体でも、設備の新調でも」
「大体の仕事は僕もやったことないし、ほかのスタッフもやったことないんだけど、『どうやってやるんだろう』ってみんなで調べて。できそうな会社を見つけてきてやる、みたいな」
そう話すのは、ダイヤモンドプロジェクトで代表を務める村上さん。
楽しく挑戦し続ける人たちに取材してきました。
ダイヤモンドプロジェクトは2003年に創業した会社。
コンクリートの切断やコア抜きなど、ダイヤモンドカッターをつかった工事をするところから始まりました。今ではバングラデシュとの事業を手がけたり、最近だと子ども向けのスポーツ教室事業を立ち上げたり。
今回募集するのは、米軍基地事業に携わる人。
事業内容は、基地内にある病院、小学校、飲食店などの設備の点検・保守。
新しく入る人は、専門の業者に依頼したり、報告書を英語に翻訳したり、現場で通訳したり。
基本的な仕事の流れはあるけれど、案件は毎回異なるため、常に新しいことに挑戦していきます。
英語が使えること以外は、特に必要なスキルはありません。
向かったのは、横須賀米軍基地。
品川から電車で50分ほど。京急汐入駅で降り、歩いて集合場所へ。ダイヤモンドプロジェクトのみなさんが待ってくれていた。
基地に入るには申請が必要なため、関所のような場所へ。
身分証明書の提出に、顔写真と指紋採取。
ちょっとピリッとした空気に緊張しつつ、無事に許可が下りてホッとする。
いざ、基地の中へ。
米軍基地の敷地面積は約2400㎡。なんと、東京ドーム約50個分の大きさ。
軍事施設はもちろんのこと、団地のような集合住宅、スーパーマーケット、ファストフード店に学校。ほかにも、ボウリング場や巨大なグラウンドなど。
映画で見たアメリカの風景のワンシーンが、そこかしこで感じられる。基地というより、ひとつのまちが形成されている感じ。
穏やかな時間が流れている。
今回新しく入る人は、主に横須賀基地とダイヤモンドプロジェクトの事務所がある横浜市を行き来することになる。
現場仕事は基地へ足を運び、事務作業はオフィスで行っているんだそう。
静かな場所に車を停めて、まずは代表の村上さんに話を聞く。フランクな性格で、一緒にいて楽しい気持ちになる。
「もともと、父親がダイヤモンドカッターの会社を経営していて。4年ぐらい一緒に働いていたら、自分でやったほうが面白いんじゃないかと思って。27歳のときに独立しました」
米軍基地での仕事は、どうして始めようと思ったんでしょうか。
「ダイヤモンドカッターの仕事って、下請けのなかでも一番末端のところなんで、立場として弱いんですよね。もちろん丁寧に接してくれる業者さんもいるけれど、もっと対等な立場で仕事をしたいと思って」
知り合いの紹介で、約8年前から米軍基地での仕事をスタート。
はじめての仕事は、マクドナルドのキッチンのダクト調査。フライドポテトを揚げるダクトから、油がポタポタと垂れていた。
「めちゃくちゃなダクトだったんだよね。点検口を開けてダクト内を覗こうとしても、頭が入らないぐらい狭いとか」
「ほかの業者は面倒くさくてやりたがらないから、うちに回ってきて。じゃあやりますって言って、ダクトにカメラを突っ込んで調査しました」
調べてみると、中は油でギトギト。業者から上がってきた報告書を英語に翻訳して、米軍へ提出。誰もやりたがらなかった仕事をダイヤモンドプロジェクトが担当したことで、さまざまな依頼が届くように。
「映画館でスクリーンを上げ下げするロープが切れちゃったんだけど、直せる?」、「ついでにスピーカーの音が割れてて…こっちも直せる?」など。何でも屋ぐらい、内容は多岐に渡る。
一つひとつ、一生懸命取り組んでいった結果、基地からの信用をゲット。
「始めてみたら、基地の雰囲気がすごく良くて。たとえば、ガソリンスタンドのノズルが、10個あるうち2個ぐらい壊れていても、全然気にしていないんだよね」
「『壊れたけど、いつ来れる?』みたいなサービスコールが入っても、今すぐ飛んできて直せって言う人もいないし。余裕を持って仕事を進められるのがいいなって思う」
次に話を聞いたのは、入社して3年の長嶺さん。きちっとした感じと親しみやすさ、両方持っている方。
新しく入る人も気軽に相談できると思う。
「案件をとったあとは必死ですね。できる業者さんを探してこないといけないので」
たとえば、と言って教えてくれたのは、ポートセキュリティバリアの部品交換。
主に外から侵入してくる船を防ぐバリアのようなものだけど、その一つの部品が劣化して、交換する必要があった。
「やったことはなかったけど、入札で取れて。かなり珍しい仕事なので、ネットで検索しようにも、誰に聞けばいいのかわからず悩みましたね」
そういうときはどうするんでしょう。
「まずは、相談できそうな業者さんに対して作業の内容を文章と写真で送って。できるかできないかどうか確認します」
「できないって言われることが多いんですけど、じゃあどこだったらできますかとか、誰か紹介してくれませんか、みたいな感じでどんどん近づいていきます」
今回の作業は、海上での作業が必要。そこで、船を出せる会社と海上で作業できる業者に分けて探すことに。
その結果、事故のために沈んでしまった船を引き上げる会社と取引が決まる。また、海上で作業をできる人たちを探し、たどり着いたのが重量鳶(じゅうりょうとび)と呼ばれる大型重機を扱う建設業者。
探すことも重要だけど、そこからの交渉も大切なポイント。
「建設業者さんも海上での仕事はやったことがなかったので、最初は難色を示されて」
どうやって口説かれたんですか。
「気持ちです、パッション(笑)」
そうなんですか(笑)。
「どうにかやってもらえないかって頭を下げて。あとは向こうへのメリットですよね。米軍での仕事って単価も高いので、業者さんにとってもいい話というか。新しく入る人も、ゆくゆくは交渉できるようになってほしいかな」
現在、米軍事業部で取り組んでいるほとんどが入札案件。今年の1月から4月までで、30件ほどを担当したそう。
入札案件は、Webサイトに依頼内容がアップされるところから始まる。
たとえば、レストランの冷蔵庫のメンテナンス案件が出てきた場合、契約期間はどれくらいか、メンテナンス頻度は月に1回なのか、半年に1回なのか。
「細かい事柄が書かれた契約書があって。英語で500ページぐらいあるんですけど、その中でも見るところは30ページぐらい。要点を見極めるのが大切です」
そのあとは、協力会社が見つかりそうか調べつつ、現地調査に協力してくれる業者を手配。
どれくらいの金額で受注できるかを見積もって、入札期限までに米軍に提出する。落札できた場合は、作業の承認を担当部署からもらい、作業開始という流れ。
「冷蔵庫のメンテナンスの場合は、現場の担当者と連絡をとって、スケジュールの確認をして。来月のこの日に作業時間が3時間必要なんだけど、行ってもいい? みたいな感じで、調整します」
業者にも連絡をして、基地に入るのに必要なパスの準備をする。作業には必ず立ち会いが必要なので、当日は現場へ出向く。
そのあとは、業者から報告書が上がってくるので、それを英語に翻訳して米軍に提出して一区切り。
「良きパートナーを見つけるのも仕事のひとつ。応募してくれる方には、どんな仕事にも挑戦する精神と、いろんな人とコミュニケーションをとる心意気が大切ですね」
7月に入社したばかりの鍵和田(かぎわだ)さんは、まさにそんな方だと思う。パッと笑う姿が印象的な方。
「もともと、子どもと関わる仕事をずっとしていて。もうすこし英語を使いたかったのと、キャリアを広げたいなと思ったときに、この仕事を見つけました」
入ってみてどうですか?
「とにかく仕事内容がよくわからなかったのがギャップです(笑)。未だにわからないこともあるし、自分で勉強しなきゃいけないんですけど、苦ではなくて」
「検索したり、業者さんと話していくなかでわかってきたり。わからなくても、楽しいが勝つんですよね」
普段は、どんな働き方をしていますか。
「事務所で報告書を1日中翻訳する日もあれば、現場で作業をして、また事務所に帰ってくるときもあります。ポートセキュリティバリアのときは、4日間ずっと海に出て、その次の週からレポート作業を始める、みたいな」
「ほんとに毎日同じ日がなくて。急に米軍から呼び出しの連絡があることもあるし、毎日楽しいっていうか、飽きることがないんですよね」
上がってくる報告書はすべて日本語。翻訳ツールを使用しつつ、それが文法的に合っているかどうかなどを確認し、必要であれば修正していく。
簡単な作業であれば、10ページほど。ただ、工場全体の点検などは協力業者が複数に渡るため、合計で300ページにも及ぶことがある。
米軍基地事業部のメンバーは、長嶺さんと鍵和田さん、そしてアメリカ人のメンバーを含む合計3人。今後、スペイン出身の方もチームに参加予定。大きい案件などは、みんなで協力して取り組んでいく。
現場に立ち会うときは、ヘルメットを着用。作業員の方と一緒に作業を手伝うこともあるので、いろんなことに興味を持てる人だと楽しいと思う。
最後に、長嶺さんが今後の展望について教えてくれた。
「今は横須賀基地をメインにしていますが、ほかにも、厚木や横田基地の仕事を受注することもあります」
「ビジネスが成り立っていれば、代表の新さんは文句を言わない。どんどん事業を大きくしていくのにも賛成だし、後押しもしてくれます。今後は、沖縄の基地で仕事を受注して、ゆくゆくは支部をつくるのも目標なんです」
基地内で印象に残っているシーンがあります。
ふくよかな女性が、二人乗りのベビーカーを押しながらランニングをしていたこと。
基地では緩やかな時間が流れていて、そこにはたくさんのアメリカ人が暮らしている。ベビーカーを押しながらランニングをするという発想は、自分にはなかなかないものだったけど、人の目を気にせず、我が道をいく彼女はとても楽しそうでした。
アメリカの文化に触れつつ、どんどん挑戦していく。
ほかではできない経験だと思います。
(2024/05/02 取材 杉本丞)