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これから不動産業界って、どうなっていくと思いますか?
人件費も建築費も値上がりし、コロナ禍を経てライフスタイルも変わりました。これまでと大きく変わったところもあれば、変わらない部分もあると思います。
今回の取材では「スペシャリストじゃない働き方が求められている」と感じました。
新築すればいい、仲介すればいい、というわけではなくて、ニーズが多様化している。立地やスペック、広さによって決まるのではなく、関わる人によって価値が大きく変わっていく。
そういう時代に必要なのは、さまざまな知識や経験を持っている人。
テナワン株式会社は、あらゆる中小ビルの課題を解決する会社です。
科学的な根拠に基づいた成功シナリオを描く。その実現に向けて戦略的に取り組みながら、経験に基づいた柔らかな企画も形にする。
それが実現できるのは、物件のビフォーアフター、そしてその先まで関わり続ける会社だから。
業務を分解すると52のノウハウがあるそうです。物件の選定や評価、購入資金の調達、ビル経営に売却。ほかにもたくさんあります。
テナワンで3年働くと、52すべてを網羅できます。
基本的には実務での経験を目指しますが、足りない部分は教育してくれるとのこと。3年後に独立してもいいし、そのまま働き続けてくれてもうれしいそうです。
3年後には自分で物件のオーナーになることもできるかもしれません。地元に帰って、ビルを購入して場所づくりをしたり、様々な提案ができる設計事務所をつくったり。
東京の不動産がほとんどで、一部横浜もあります。希望があれば地方物件のノウハウも蓄積できる仕事です。
西麻布の交差点。都会を象徴する一等地。
この交差点の角のビルでシェアオフィスを運営しているのがテナワン。
中に入って、窓の外を見てみると、ビル群の向こうに六本木ヒルズ。目の前の首都高を車がビュンビュン走っている。
「ごめんなさい、お待たせしてしまって」
テナワンの代表、石田さん。
実はサラリーマン時代からの上司で、今も大変お世話になっている方。日本仕事百貨があるのもこの方のおかげです。
ところで、テナワンという会社名はどういう意味なんでしょう?
「よく『テナントナンバーワンですか?』って言われるんだけど、実は福井弁でやんちゃ坊主とか聞かん坊とか、そういう意味もあるんだよね」
「もともとバリューレイズという会社名だったのだけれど、それってオーナー向けの言葉で。自分たちはオーナーからフィーはいただくのだけど、どれだけ面白い場所をテナントに届けられるか。それが自分たちの強みだし、やりたいことでもあって」
石田さんは建築学科を卒業して、まずマンション開発を行う不動産会社に就職した。2年目でバブルがはじけると出向先で転籍となり、不動産を整理して販売する「処理部隊」として働く。
プロパティマネジメントからアセットマネジメント、売買や賃貸の仲介など、ありとあらゆる経験をして起業する。
最も得意にしているのが「困った物件」。
空き家など、困った物件は増えていくと思う。
これから不動産の世界はどうなっていくのか石田さんに聞いてみる。
「不動産業はずっと残っていくと思います」
そうですね。人間という肉体があるんだから、その器となる建築や不動産は必要です。
「ただ、インターネット社会が進んで、コロナ禍を経て、いろいろなことが前倒しされている。たとえば、必ずしも通勤しなきゃいけないわけじゃなくなった」
「住む場所も、働く場所も、選択肢が広がった。自分の推測も入っているんだけど、都心の事務所ビルの空室率は上がっていて」
どれくらい高いんでしょうか。
「リーマンショック後の大不況で8%くらい。5%を超えると、借り手が有利になると言われていて。今は都心5区の小型ビルだと平均6%くらいだね」
不動産の世界は、コロナ前後で大きく変わってしまった。
新しい時代に何が求められているのか。
すると石田さん。
「不動産の仕事って、主に6つに分かれている。開発、賃貸、売買。そしてそれぞれに住宅か、それ以外かがあるので、かけ合わせると6つの領域」
「不動産業界には、マンションの売買仲介しかできません、開発しかできません、という人がとても多い。つまり、スペシャリストが多いのだけれど、業界全体のことをできる人が重宝されるようになっていくと思います」
ある程度の新築の仕事は残るとしても、住宅の着工件数は減っている。建築費も高騰しているので、既存の建物を有効活用するケースは相対的に増えていく。
そうなると、更地にして開発して仲介して、というようにシンプルなやり方だけでは太刀打ちできない。
一つひとつの不動産を前にして適切な解を導いていく力が求められる。
「新築一辺倒から、既存の建築の活用が増えるのは間違いないよね」
テナワンでは都心5区の中小ビルに特化しながらも、石田さんは地元・福井でも仕事をしている。
話を聞いていると、地方都市には日本の未来の風景が広がっているように感じた。東京もいずれ地方都市のようになるかもしれない。
「地方都市では、価値がゼロの物件が増えています。もっと言えば、マイナスのものも」
マイナス?どういうことだろう。
「たとえば、建物が古かったら土地の値段しか評価されないけど、それ以上に解体費用がかかれば、マイナスになるんです。土地の評価が2000万で、解体に2500万かかるなら、マイナス500万になってしまう」
それでも不動産を所有していたら税金などは取られていく。オーナーとして売却したいと考えても値段がつかない。
「でも自分たちなら解体しないで使うこともできる。安い金額だけど購入して感謝されることが多いです」
事例として紹介してもらったのが、福井市内にあるシェアオフィス「LUFF」。
もともと専門学校だった建物。福井では一番の歓楽街「片町」に立地している。
この物件に出会ったのが3年前。リノベーションスクールという、古い物件の利活用を考えるスクールにて、対象物件となったのがきっかけだった。
「学校を閉じてから、長いこと使っていない状態。リノベーションスクールでも取り上げられたんだけれど、そのときは動かすことができなくて」
第1印象はどうでしたか?
「ネガテイブな話から言えば、まず古いからそのままでは使えない。鉄筋コンクリート造だから解体したらお金がかかる。あと車社会なのに駐車場がつくれないから工夫しないと厳しい」
ロードサイドのお店とかは、無料の駐車場ですよね。
「そう。あとはここ、専門学校だったでしょ。学校法人って、資産を勝手に売ったり貸したりできないんじゃないの?と思った」
「そしたらやっぱりそうで。まずは学校法人の解体からはじめなきゃいけなかった」
普通だったら難しい物件。ポジティブなことはなかったんですか?
「まず屋上が広くて、空が抜けていて気持ちいい。まわりに高い建物がないからね」
「あと元学校っていうのも面白いかな。使われなくなったミシン台とかたくさんあって。飲み屋街にあるのも面白いと思ったね」
建物のある片町は福井県民なら誰もが知っているエリア。東京の歌舞伎町みたいなところ。オフィスをつくるなんて面白いけれど、そんな場所で働くなんてピンと来ない。
どんな解を導くか。
1階だけなら飲食店でも良いかもしれない。ただ、エレベーターもないので2階以上は厳しい。古い物件なので、大きな用途変更をするには現行の法規に合わせて改修しなければいけない。それでは費用が莫大になってしまう。
そうなるとオフィスしかない。
ただ、石田さんには勝算があった。
同じく福井市内で、オフィスには向かない立地の物件をオフィスにリノベーションした経験があった。
「そこも本来、事務所があるようなエリアじゃないんです。ただね、意外と快適で。ランチにも困らないし、駅前だから車がなくてもいいし、いざとなればカーシェアを利用すればいい。すぐに自然豊かな場所にも行けるしね」
地方都市の駅前で職住近接の暮らし。需要があるんじゃないか。
周辺にどんな貸事務所があるか、自転車に乗ってリサーチしてみる。するとほぼシェアオフィスのようなものがない。
さらに3階にシェアできるスタジオをつくろうと考える。イベントもできるし、撮影もできる。さらにそこに人が集まったら、借り手も増えていくのではないか。
ほとんど値段がつかないような物件だけど、初期費用や収益などを計算して、あらゆる角度から価値を算定。誠意を持ってオーナーに説明すると、物件を購入することができた。
当初の見込み通り、学校法人の解体からスタートすることで、オーナーにも喜ばれた。
2022年の5月にオープンして、2023年の6月には満室になった。誰も見向きもしなかったオフィスに価値が生まれた瞬間だった。
こういうケースはこれからどんどん増えていくと思う。地方だけでなく、東京近郊でも起きるはず。
100の物件があれば、100の解がある。扱う人によって大きく価値がかわっていく。
スペシャリストよりも、あらゆることを経験し、広範な知識を持っている人が求められるようになる。
テナワンで働くと、どんな成長ができるのか。あらためて石田さんに聞いてみる。
「仕事を52段階に分けました。福井の話だと企画よりだったけれど、地道な業務もたくさんあります。たとえば、テナントと接する機会も多い。クレームなどもあって、それは迅速に対応しきゃいけないんだけれど、話をすると楽しくてしょうがなくて」
「あとはマーケティングも大切なこと。大家さんには家賃を高めに設定して、交渉されたら下げればいいという方も多い。でもネット上で検索する場合は、デジタルに希望条件の幅を設定して検索するから、そこから少しでも外れた物件は表示すらされない」
テナワンでは、あらゆる不動産に関する仕事をします。地道なこともたくさんあります。
契約書も作成するし、クレーム対応もするし、修繕計画も立てる。滞納したときの対応もあるし、ビルのメンテナンスの知識も必要になってくる。
あらゆることを経験するからこそ、普通の人にとっては「どうしようもない」と思う「困った物件」でも、解を見つけることができる。
面白い仕事だと思います。
(2023/5/11 取材 ナカムラケンタ)