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「地域で育てるけえね」
一から農業を学び、
地域にパワーを与える協力隊

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「田舎に住んで農業をしてみたい」

その思いを実現しようとするとき、いろんな地域が選択肢にのぼります。

移住は大きな決断になるから、慎重に場所を選びたい。でも、数ある市町村の中から、どうやって自分に合う地域を見つければいいのだろう?

そんなとき、「地域のサポートがある」ことは、重要なポイントのひとつになると思います。
広島県・神石高原(じんせきこうげん)町

県東部の山地に位置し、岡山県とも接する町。今回、その中のしんさか(新坂)地区で、農業分野の地域おこし協力隊を募集します。
現在、しんさかでは高齢化が進み、地域の主要産業である農業の担い手は、年々減少しています。

危機感を感じた住民は、農業の法人化や唐辛子の加工品開発など、地域を守っていくためソフト面の活動を早くから続けてきました。その成果もあって、当初の予想よりも人口減少の速度はゆるやかになっているそう。

今回協力隊を募集するのは、そんなふうに頑張ってきた地域に新たなパワーを与えてほしいから。

地域と行政、どちらも協力隊を迎え入れる準備は万端な様子。

町役場は長年、協力隊の育成に力を注いでいて、定住が決まった後のサポートも手厚い。地域には十分な土地や機械もあるし、未経験でもノウハウを一から教えてもらうことができる。

田舎で農業をはじめる。その選択肢のひとつとして、この町のことを覗いてみてください。

 

神石高原町までは、山陽新幹線の福山駅前からバスに乗って1時間と少し。ゆるやかな山道を登って行った先の高原地帯にあって、家や農地が山あいに点在している。

まずお話を聞くのは、協力隊と地域をつなぐ役割を担う、神石高原町役場の矢川さん。もともと一般企業の営業だったそうで、キビキビとした受け応えのなかにユーモアもあり、会話が弾む。

「高度経済成長期から、福山に人が流れていくようになりました。人が少なくなって、田舎の人は自分たちの地域に誇りが持てなくなっている。その誇りを再生するのが協力隊のミッションだと考えています」

任期の3年間で、地域に良い変化をもたらすこと。そこに一番の重きを置いて、協力隊・行政・地域の協力体制を築いてきた。

「たとえば、町の協力隊4人全員が集まって、地域の課題について考えるワークの時間を毎週設けています。そこには地域の方も毎回来て、アドバイスしてくれるんです」

実はこの取り組みを提案したのは、8年前の協力隊第1期生だった。

「行政から押し付けるんじゃなくて、協力隊自身で考えたことをやってもらいたいんです。僕たちの役割はそれをサポートしながら、彼らが地域に貢献できる人材になるように育成していくこと。その責任放棄をしてはいけないんです」

思っていたような成果が出ないときは、途中で活動内容を変えることもある。地域にもっとも貢献できる活動を、一緒に考えながら進めていく。

行政や地域との距離が近いおかげか、神石高原町内での協力隊経験者8名の定住率は100%を誇る。すごいことなのに、矢川さんは誇張する素ぶりはない。

「過去にしんさかで活動していた協力隊のOB・OGは、町の別の地域に住んでいるんです。しんさかには借りられる空き家がなくてね。でも、それじゃダメだって地域の人たちが一生懸命探して説得して、最近見つかったんですよ」

矢川さんの車に乗せてもらい、次は、そんなしんさかの人たちに会いに行く。

「たくさん人が待っちょると思いますよ」

 

話を聞いていた町役場から20分ほど山道を走って、しんさかのコミュニティー施設に到着。自治振興会「源流の里しんさか」のみなさんが待っていてくれた。

しんさか地域は、神石高原の中でも特に高齢化が進んでいる。今日集まってくれたみなさんは主に70代で、地域コミュニティの中心を担う方々。

まずお話を聞くのは、自治振興会の会長で、農業を営む横山さん。

横山さんが主に育てているのはホウレンソウ。他のみなさんも、かぼちゃに椎茸、唐辛子やこんにゃくいもなど、バラエティ豊かな野菜を育てている。

「この辺りは高原で、1日の温度差もあるし、年間の暑い日と寒い日の差も結構あって。じゃけえ、取れる米や野菜はおいしいんです。源流の里っていうくらいだから、水もおいしいし」

豊かな農業を守っていくため、米の生産を共同で行う団体を20年前に結成し、法人格も取得。共同の田んぼや設備を持っており、みんなで協力して仕事をしている。

「もし農業ができなくなると、この地域そのものがダメになってしまう。地域を守っていくための活動です」

協力隊として赴任する人は、この法人の仕事を手伝うことが主な任務になる。

朝と夕方に働き、暑い時間は休む。季節によっても仕事量に差がある。そんな農家の働き方に少しずつ慣れるところから。未経験なら草刈の手伝いや、イノシシ対策の電気柵が倒れていないかなど田んぼの見まわりからはじめ、徐々に作業を覚えていく。

とは言え、「米づくりだけで食べていくのは厳しい」と、長年農業を生業にしてきたみなさんは口を揃える。新しくここで農業をはじめるなら、地域の方と同じように、米だけでなく自分で他の作物を育てたほうがいい。

「じゃけえ、その人次第では、水田の一部を転換して、ハウスに切り替えたりするのもえかろうと。法人が間に入って土地利用を援助しようという、話し合いもしとるんです。来た人がやってくれることにはなんでも協力しようと」

使える土地はたくさんあるから、そこをうまく活用すれば、農業で生計を立てていくことはできる。それに、法人が持っている機械や設備を自由に使えるから、初期投資にかかる費用も少ないはず。

3年間、法人と並行して野菜づくりのノウハウを地域の人から学び、最終的に自分がやりたいものを見つけて、続けていくのがいいと思う。

横山さんの家では、40代の息子さんが跡を継ぐために最近Uターンで戻って来たそう。過疎集落の特集をテレビで観て、他人ごとに思えず、しんさかに帰ってくると決めたんだとか。

「農業を本格的にやるのは初めてじゃけえ、今は大規模なハウス農家のところに研修に行っちょるんですよ。そこで習ったことをもとに、ここに合ったやり方を自分で考えてやっていく」

「近所に息子と同じ境遇の人がおらんけえ。『協力隊の人には話し相手になってほしいし、協力しながらやっていきたい』って言っとったねえ」

息子さんが帰ってくるのは9月。こんなふうに似たような境遇の人がいると、地域に飛び込むハードルはぐっと下がるように思う。

他にも、地域にはUターンの人たちが何人かいるそう。彼らは会社勤めをしていたりして、普段は地域に積極的に関わることは少ない。

今回、協力隊として来る人には、地域の“担い手”になってほしいというのが本音。

「地域の行事や役員会にも積極的に参加してほしいなあ」「いずれは農業法人の中心にもなってもらいたい」と、期待もにじむ。

とはいえ、それが若い人にとって負担になることも、よくわかっている。

「もし私だったら、入ったばっかりの地域で、すぐ役員になれって言われたら困るよ。3年かけて、徐々にコミュニケーション取れるようになっていくんやろう」

そう話すのは、農業のかたわら地域で加工品の製造を行っている今井さん。

「正直、農業は死ぬまでできる仕事なんでね。全部自分で担おうとせず、最初は私たちを手伝うくらいの気持ちでええんです」

「自分の子どもが帰ってこんのに、よそから来た人にあれもそれもやってくれ言うのは違うと思う」
横で話を聞いていた細川さんも同意する。細川さんもUターン経験者。

「僕も10年前にサラリーマンを早期退職して帰って来て、右も左もわからんかったけえね。農業も地域のこともわからんのに、こっちばかり期待していたら、その人にはすごく負担になる」

「時間が解決してくれることはありますからね」

細川さんは、移住して3年目から、地域の組織の中心になったそう。協力隊の人も、3年かけてゆっくり地域の一員になっていくつもりでいいと思う。

担い手になってほしいという気持ちは、もちろん本心。でも何よりも、まず地域に新しいパワーがほしい。若い人にしんさかで生き生きと過ごしてほしい。

それを何より望むみなさんが、次々と思いを言葉にしていく。

「若い人がおるだけで元気が出るけえね。ぱあっと明るくなるような気がするしなあ」と話すのは、農業をしながら民泊もしている方。

ほかにも「うちの空いとる部屋使ってもええし」とか「無理のない範囲で行事に参加してもらえるような環境に、こっちがしていかんと」など口々に話す。

特に印象的だったのが「地域で育てるけえね。農業も、草刈機のエンジンのかけ方から教えてあげるよ」という言葉。

地域で、育てる。

それぞれ、いろいろな思いはあると思う。でもその一言が、この地域と協力隊の関わり方を表しているように感じた。

 

現在、協力隊として活動するのが、広島市出身の西村さん。個人で行っているネット通販の事業と並行して、しんさかの加工品販売のプロモーションなどを行っている。

地域の人たちとはもう2年の付き合い。取材中も、中間の立場で話をまとめてくれていた。分野は違っても、これから赴任する人にとって、心強い先輩になると思う。

「しんさかは、人がいい。いつも、『お茶でも飲んでいきんさい』、『野菜持っていきんさい』って言ってくれる。協力隊の任期が終わっても、しんさかとさよならしたくないけえね」

町の補助金を利用し、しんさかにも行きやすい地域に空き家を購入したと言う西村さん。ご夫婦で住むとはいえ、近所に同年代のいない寂しさはないのでしょうか。

「むしろ、都会ではなかった付き合いができているんです。2回りくらい歳が違う方でもけっこう話が合ったりしてね」

これからは、新たなビジネスとして干しいもを売っていきたいと考えている。その話に興味を持って、さつまいもを育てるのに協力してくれている方もいる。

「任期後も地域と僕がwinwinの関係でやっていけるように、ビジネスを広げていきたいんです。これから来る人も、3年後のことも考えながら、協力隊の活動に取り組めるといいと思います」

 

取材のあと、法人が所有する施設や空き家、町の神社などを見て回っていると、みなさんが気にかけて、いろいろ説明をしてくれる。

なんだか胸が、ほっこりあたたかい。

ここで伝えられたしんさかの物語は、ほんの一部。面接で地域に来て気づくことや、住んでみてからわかることは、たくさんあると思う。

それに、実際に訪れて人に触れるからこそ、たしかに感じられる温度はあるはず。

とても元気なみなさん。

これからも元気であり続けるためのパワーをくれる人がいたら、きっともっと頑張れるんだと思う。

しんさかのみなさんのあたたかさが、あなたの心にぽっと灯っていたらうれしいです。

(2018/07/19取材 増田早紀)
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