求人 NEW

小さな家から
大きなまちを動かす
らいおんの建築

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

たとえば、地元にカフェができたとして。

休日の朝は早起きをして散歩がてらそこで朝食を食べてみよう。たまには家族とまったり外でお茶をするのもいいかもしれない。新しいお店ができたことを口実に、ちょっと友達を誘ってみようかな。

今までなかった“カフェ”という存在をきっかけに、いろんなアクションを起こすことができる。

カフェはひとつの建物であると同時に、人の流れを生み出す装置でもある。

今回紹介するのは、そんな建物というコンテンツを通じて、まちや暮らしを考える設計の仕事です。

リノベーションスクールや北九州家守舎などまちづくりの活動にも広く携わる嶋田洋平さんが運営しているらいおん建築事務所で働く人を募集します。

“建築事務所”でありながら、新築を建てることはほぼありません。中古物件のリノベーションが主な仕事です。

ひとつの建物の再生だけでなく、その周辺の環境にもいい影響を与えられるように、様々な“きっかけ”を生み出していくこと。

これからの建築に必要な、柔軟な思考を鍛えられると思います。


東京・雑司が谷。

地下鉄の駅から、どことなく懐かしい商店街を歩いて5分ほど。スーパーマーケットの脇のビルの2階が、らいおん建築事務所のオフィスになっている。

エレベーターの扉が開くと、フロア全体がオフィスになっていて、パーテーションの向こうから、談笑している声が聞こえる。

まずはミーティングスペースで代表の嶋田さんに話を聞く。

「空き家が増えていくなかで、使われていない建物の使い方を考えることは、建築家としてすごく大切なことだと思うんです」

建築家として。

「そう。単にひとつの建物の使い道だけじゃなくて、その建物を起点に、街にどんなインパクトを与えられるかっていう発想が必要だと思うんです」

建物を再生することで、街も生まれ変わる。

嶋田さんたちが手がけた物件の中には、竣工から数年を経て、それを実証している例もある。

「以前、北九州・小倉にある商店街が疲弊して、シャッター商店街のようになっていたんですね。そこで使われなくなった建物をリノベーションして、クリエイターのためのワークスペースをつくったんです」

商店街の再生だからといって、必ずしも物を売るという機能にこだわる必要はない。大切なのは人の流れを生み出すこと。

もともと空き店舗だった建物にクリエイターが入居するようになると、商店街の周辺にも少しずつ影響がではじめた。

「最近、そのエリアに新築の商業ビルが建ちはじめました。古いアーケードが撤去されて、エリアの価値が上がって。街が生まれ変わりました」

「一度は使われなくなってしまった建物が、再び必要とされるためには、その建物だけを見ていたらダメなんです。周辺のエリアとどんな関係にあるか、街をどんな風に変えていけばいいか、街の課題を一緒に考えて、未来を与えていく必要があるんです」

建物をつくるというより、まちづくりそのもの。

らいおん建築事務所が再生する建物も、個人の住宅にはじまり、小さな空きビル、そして地方の公共施設へと広がってきた。

「建物の使い方を考えるからこそ、設計っていう仕事が生きる。建築家が建築の設計だけじゃなくて、ときには事業を生み出してもいいと、僕は思うんです。今後、そんなふうに柔軟な発想ができる人を育てたいんですよね」

嶋田さんがこれまで手掛けてきた物件はどれも、建築としての造作そのものだけでなく、コンセプトがユニークだ。

たとえば、“オバケが出る”と言われ、空室が続いていたマンション。ただおしゃれにリノベーションして入居者を待つのではなく、入居予定者自らが改修費用の一部を出資しながら、希望通りにリノベーションできる仕組みを提案することで、ふたたび賃貸住宅として人が暮らす空間になった。

ほかにも、イベントスペースを備えたカフェ「あぶくり」の運営や、リノベーションやまちづくりのワークショップなど、嶋田さんとらいおん建築事務所の活動は、“建築家”という枠を超えて幅広い。

「まあ、あとはうちの小沢さんに聞いてください。彼女に聞けば、ここでの仕事のイメージが分かりやすいと思います」

と、足早に仕事に戻っていった嶋田さんに紹介されたのが、建築士の小沢さん。

「嶋田さんのことを知ったのは、5年くらい前。何かのセミナーでリノベーションスクールのお話をされているのを見たのが最初でした。そのあと日本仕事百貨の記事も見て、おもしろそう!って思ったんですけど、そのときはタイミングが合わず。入社したのは2年前です」

以前は住宅メーカーの子会社で設計の仕事をしていたという。

「そのころは、一ヶ月に3〜4棟着工させるようなスピード感で、お施主さんとの打ち合わせのために土日も出勤したり、みんな身を削ってやっていました」

「結婚して子どもが生まれたらそんな生活は続かない。それに、世の中にそんなにたくさん新築が必要なのかなっていう疑問もあって」

第一子の出産を経て前の会社を辞め、らいおん建築事務所に。今は子育てをしながら時短勤務で働いている。

ここでの仕事は建物の設計だけでなく、事業プロデュースや時にはみずからDIYでお店づくりを行うなど幅広い。営業担当もいないので、打ち合わせや見積もりも含めて、自分たちで考えていく必要がある。

「住宅メーカーの経験だけではわからないことが多くて、私は全然即戦力じゃなかったと思います(笑)。だから、図面を引くとか、基本的なことはできたほうがいいんですけど、アトリエ系の事務所でガンガンやってた人じゃなくても、少しずつ覚えていけると思います」

最初は、プロジェクトの資料づくりなどからはじめたという小沢さん。しばらくして、ある個人所有の物件のリノベーションを担当することになった。

「もともと、医師であったお施主さんのおじいさんが、診療所と住居を兼ねて使っていたという4階建ての建物です。とにかく古い物件だったので、まずは断熱などを整えて快適に住めること。そしてお施主さんがダンス教室を開きたいということで、1階にスタジオを併設することになりました」

まずはお施主さんの話を聞きながら、建物のコンセプトを決めていく。

「話を聞いているうちに、その方はその空間に来ることで“元気になる”っていうことをすごく大切にしているんだと感じたんです」

元気になる。

「ただダンスを習うだけじゃなくて、街の人たちが体を動かしてちょっとおしゃべりができたり、自分がレッスンを受ける以外の時間も楽しく過ごせるような」

そのためには、どんなレッスンスタイルがいいだろう、建物にはどんな機能が必要だろう。

お施主さんと一緒に具体的な教室のイメージを浮かべながら、間取りや空間を組み立てていく。

「それで教室の脇に、休憩スペースをつくることにしたんです。休憩しながら人のレッスンを見学できるようにソファを置いて、あとは自分たちでお茶を入れておしゃべりをすることもできるように小さなキッチンを備え付けて」

どんなことに対してもマニュアルがあり、営業は専門の担当者がいる大手の住宅メーカーとは違い、ここでは設計士自身が限られた予算の中でそれをどう実現するか、自分でバランスを考えていく。はじめのうち、小沢さんはその部分でもっとも苦労したそうだ。

「でも、よく考えたら今までは与えられたマニュアルの1パターンだけが正解だと思い込んで、すごく視野が狭かったと思います。ここに来てから、設計事務所って本当はすごくいろんなことができるところなんだなって思えるようになりました」

らいおん建築では、要望に合わせて柔軟にリノベーションのプランをつくっていくだけでなく、ときには事業まで含めてプロデュースすることもある。

「たとえば、“神田川ベーカリー”というパン屋さん。設計はもちろん、オープンのときは製造販売も自分たちで行いました。私も含め素人ばっかりだったんですが、プロの職人さんに特訓してもらって」

「普通、建築の仕事をしていて、パンをつくったりお客さんとの対面販売をしたり、経験できないですよね(笑)。本当に勉強になったなと思います」

らいおん建築事務所がそんなふうに幅広く活動できるのはどうしてだろう。

「そこは、嶋田さんの力というか。周りの人を巻き込んで、プロジェクトを動かしていくのがすごく上手いんです。嶋田さんが未来のことを話していると、『そうか、楽しそう!』って、いろんな人が集まってくるんですよね」

小沢さんは、今担当している物件の竣工を見届けてから、第二子出産のために、来年1月から産休に入る予定。

今回の応募で入る人は、引き継ぎ期間はありますが、本格的に小沢さんと一緒に働くことになるのは産休明けからになりそう。


らいおん建築事務所は、嶋田さんを入れて所員は現在4人。

建築の実務の面で、きっと心強い相談役になるのが、同じく建築士の原下さん。

「もともとは“メンター”ということで誘われました。まあ、相談役というかいろんなことをやる番頭さんみたいな感じですかね」

原下さんは嶋田さんと同じく、もともと“みかんぐみ”出身。大学時代は、建築を含むデザイン全般を学んでいた。

「これからは嶋田さんが言うように、新築だけでは成り立たないっていうのもわかります」

「建築って一般的に“もの”をつくる仕事ですけど、本当は目に見えない“こと”を起こしていくっていうか…。ここの面白さはそれが見られることなんじゃないかと思ってます」

“もの”でなく、“こと”?

「たとえば、新築だと住宅1軒つくったらそれで完結してしまうんですけど、リノベーションはそこが起爆剤になって、自分が手を触れていないものにもポジティブな影響が広がっていくんですよ。」


みなさんのお話を聞き終わってワークスペースの写真を撮っていると、嶋田さんが「事務所の写真?僕撮りたい!」とカメラを構える。

すると、打ち合わせに来ていた方も「もうちょっとミーティング感出そうか?」と、笑顔で乗ってくれる。

嶋田さんが楽しそうなことをはじめると、少しずつ場の空気が変わって、みんなが動きだす。

いろんな人を楽しく巻き込みながら、街と建築の未来を考える。

たわいないやり取りの中に、ほんの少し、嶋田さんとらいおん建築事務所の仕事が垣間見えた気がしました。

(2018/9/13 取材 高橋佑香子)

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