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※この求人は、都合により早めに募集期間を終了いたしました。(2018/11/15)いずれは地元に戻って何かはじめたい。人が集う場所をつくってみたい。
特に宿や食、場づくりに興味があるならいい機会だと思います。
紹介するのは群馬県・四万温泉にある「つるや」という宿です。

湯治場として年配客中心だったまちに若いお客さんを呼び込んだり、温泉とグランピングを掛け合わせた施設をオープンしたり。
自分たちの宿から、四万のまちを元気にしていく方法を考え続けている。
ここで、お客さんをもてなしながら宿全体を運営していく人を募集します。
一人ではじめるのは不安だという人も、経験がない人でも大丈夫です。よかったら続けて読んでみてください。
四万温泉へは、新幹線と在来線、そしてバスを乗り継いで3時間ほど。東京駅から直接、高速バスで行くこともできます。
この日は私もバスに乗車。平日の朝早い時間帯にもかかわらず、車内は旅行客で満席。海外からやってきたバックパッカーの姿も見かけた。
四万温泉に着実に賑わいが生まれていることが実感できる。
つるやに入ると、「お久しぶりですね」と代表の関さんが声をかけてくれた。

東京の旅行会社で働いていた関さんが、家業のつるやに戻ったのは30歳のとき。
老朽化した宿はぼろぼろ、若いお客さんもやってこない。多額の借金を抱えて身動きがとれなくなっていた宿を立て直すためだった。
「こんな状況で一体何ができるんだろうと悩みましたが、自分ならどんな宿に泊まってみたいか考えました。大規模な工事をしなくても、今日からはじめられることがきっと何かあるはずだと思って」
チェックアウトを遅い時間にしたり、お風呂を貸切で使えるようにしたり。鹿がのぞきにくるほどの自然から着想し、露天風呂を「鹿覗きの湯」と名付けてPRした。

そして2017年につるやに次ぐ施設としてオープンさせたのが「おんせんグランピングShimaBlue」。
独立した7つの客室にはそれぞれ温泉がついていて、事前準備なしでも気軽に贅沢なキャンプが楽しめる。
「四万に既存であるものといえば、温泉と自然。その魅力を活かすためには、従来の温泉宿のあり方に縛られなくてもいいんじゃないかなと思って。新旧がうまく融合すれば、四万温泉全体をリゾート地としてもっと楽しんでもらえるはずだと考えています」

「まわりから無理だと言われながらも2つの宿を運営するまでになって。気がついたことがあるんです」
気がついたこと?
「うん。これからは、まずスタッフが楽しみながら働けること。そして宿自体も合理的に運営していくことが必要だということ」
「ちゃんと仕組みを整えれば、少ない人数でもお客さんに満足してもらえるサービスを提供できると思うんです」
たとえば夕食の時間は、一般的に旅館が最も忙しいとされる時間帯。
つるやは部屋食のスタイルなので、タイミングを図りながらお膳を運び、下げてきたものを洗って、と慌ただしく時間が過ぎていく。
一方のShimaBlueは、事前に各部屋にバーベキューの用意をしておき、好きな時間にお客さん自身が調理して食べるスタイル。少ないスタッフで余裕をもって仕事ができる。

「だからこそ今後はお客さんのためでもあり、働くこちら側のためでもある仕組みをつくらないと、この会社も四万の未来もないんじゃないかって思うんです」
これからのつるやのキーワードは、旅館に素泊まりして食事は外でとる「泊食分離」という考え方。
たとえばつるやに宿泊しているお客さんが、ShimaBlueや近隣の飲食店に食事に出かける。そうすれば街に人がまわり、宿泊費を抑えられるぶん連泊して長く留まれるかもしれない。
一方で、宿泊客のニーズも多様化している。ヴィーガンのメニューを用意してほしいなど、これまではあまりなかった対応も増えた。
「昔なら特別な対応として認識されていたことが、今では当たり前になってきている。おもてなしはすごくいいことなんだけど、過剰にするとスタッフが疲弊してしまうんですね」

まずはつるやとShimaBlue、それぞれのスタッフが手の空いている時間に行き来してサポートし合うことからはじめている。
今後は泊食分離の一つとして、つるやにレストランを併設することも計画しているそう。より効率よく働ける仕組みを模索しているところだ。
「だから一緒に働き方を模索してくれる人や、この会社や僕に溜まっているノウハウを使って自分の力をもっと試してみたい、自分でやってみたいっていう人に集まってほしいんです」
そんな関さんとともに働いているのが、須永さん。

「私、普段は温泉にも旅館にもあまり行かなくて。ただ記事に載っていたスタッフの表情とか文章を読んで、直感でここかも、と思って」
「気になったけれど、一度はスルーしました。私は栃木の出身だけど四万温泉なんて聞いたことがなかったし、こんな山奥で生活できるのかなと思ってしまったんです(笑)」
それでも入社を決めたのは、関さんの言葉に後押しされたから。
「社長がどんどん新しいことに挑戦していて、『まずは来て、やってみたらいい』と言ってもらって。構えずに飛び込んでみればいいのかなと思えました」
最初の仕事はフロント業務がメインで、その後お風呂掃除や夕食の配膳などを学んでいく。
「新卒は指導係に教えてもらえるイメージでしたが、ここはそうじゃなくて。もちろん基本的なことは教えてもらえますが、良くも悪くも自分次第な環境なんだなと感じています」
ドリンクのつくり方や、シーツをきれいに早く敷くためのコツ。先輩の動きを間近で見ながら、自分なりに考えて手を動かしてみる。

たとえば、どういうことを考えるんですか。
「些細なことですが、赤ワインを持っていくときにお水も欲しいかなと考えたり、離乳食の温めを頼まれたら、一緒にお子さん用のカトラリーを用意したり」
“やるべきこと”をやるのは当たり前。その一歩先に踏み込んで、“やったほうがいい”と思えることまで気を配るのだという。
ときにはお客さんの旅の相談に乗ることもある。
「どんなことに興味があるのか、この旅で何を体験してきたのか、話を聞くことからはじまります。先日お泊まりになった方は、自然に触れたいということでカヌーなど体を動かすアクティビティをご紹介しました。四万は川の水が透き通るくらいきれいなんですよ」

「親しみを込めて下の名前で呼んでくださったり、お帰りの際の記念撮影にまぜていただいたり。そういう時間が何よりの励みになりますね」
しっかりと目を見ながら、丁寧に答えてくれる須永さん。やわらかい空気をまとった人だけど、凛とした芯の強さも感じる。
考えながら場所をつくるということはおもしろい反面、地道で、どこに向かっていいかわからなくなることもあるように思う。
須永さんは、つるやをどう思っているんだろう。
「そうですね…私にとっては、試せる場所、と言いますか。自分を試しているとずっと思っていて。失敗も、慌てたこともたくさんあるけれど、全部糧にしていこうという気持ちです。かなり鍛えられたと思います(笑)」
今後は宿の運営体制も改善していきたいと考えているそう。
「試せる場、とは言ってもスタッフの数も少ないですし、もう少し効率よく進められることもあると思うんです。微力ながら、マニュアルづくりですとか、自分にわかることは共有していきたいと思っています」
「最初は、戸惑うことも多いかもしれません。僕もそうだったから」
須永さんの話を受けて、そう話してくれたのがつるやの副リーダーとして働く飯倉さん。

「とくに最初は、関さんからいきなり『新しい企画を考えてみてよ』と言われても、どうすればいいのかわからなかったのが正直なところで。だけどわからないなりに経験を積むと、少しずつできることも増えていくと思います」
飯倉さんは現在、スタッフのシフト管理や業者さんとのやりとりも任されている。調理場では、板前さんと一緒に原価も踏まえてメニューを考えることもあるそうだ。

「大変だけど、良い経験になったと思います。場所を運営していくために必要なことは、一通り経験できているのかな。普通大きな旅館ではこんなふうには働けないですよね」
飯倉さんは、地元で商売をはじめたいという夢があるのだそう。
「料理人の友達もいるので、一緒に何かできそうだなと。今はゲストハウスの運営に興味があります。楽しみながら仕事をつくっていければいいですよね」
とても小さな芽ではあるけれど、つるやでは少しずつ自分の夢を形にするスタッフも出てきています。
なかにはつるやで働きながら、四万温泉で飲食店を開く計画を立てている真っ最中の人も。
「計画を見てみると、まだまだ甘くて穴だらけ。ただ、やってみたいという気持ちがうれしいんです。その気持ちを育てながら夢を叶えてほしい」と関さんは話してくれました。

「こんな田舎の旅館経営者が何を言っても信じてもらえないかもしれない。でも旅館も地域も変わるべきだと本気で思っているし、やりかたによってはすごく面白いんだよって。その変革を一緒に考え、自分自身で体験してほしいです」
「僕のことも会社のことも使ってくれていい。もっと自分自身のスキルを広げたり、夢を実現したりっていう場所にしていきたいですね」
1日1日、この場所で試すように働くことからはじまるのかもしれません。