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料理が好き、という人はたくさんいると思います。自分のお店を持つのを夢見たことがある人も、家族や友人以外の人に料理をふるまってみたいと思う人もいるのではないでしょうか。
そんな人たちに、東京青山の「まかでき食堂」を知ってほしいです。
有機野菜を中心としたランチを提供するお店で、日替わりの料理人が切り盛りします。メニューや調理方法は、すべて料理人にお任せ。
唯一決まっているのは、その週に仕入れた野菜で定食をつくること。

料理人と言うと大げさだけれど、飲食店での経験はなくても大丈夫だし、働くのも週に2日から。とにかく料理が好きで、自分の料理をたくさんの人に食べてほしいという人なら、やりがいを持って働くことができると思います。
ホールスタッフは、そんな料理人のサポートをする人。入社後にはカフェの研修をして、ドリンクの提供も担当します。
自分のお店を持つのは難しくても、ここならチャレンジできるかもしれないと思ってもらえたらうれしいです。
東京・外苑前。地下鉄の駅を出て、青山通りから外苑西通りに曲がる。アパレルや雑貨屋が立ち並ぶなかに真っ黒な建物が現れた。

この外観で、有機野菜の定食?と少し不安になりながら、エレベーターで6階へ。
お店に着くと、外観とは異なる温かみのある空間にホッとする。まずは、代表の織田さんにお話を聞いた。

実家が漢方薬局で、食への関心が高い家庭で育った織田さん。過去にはレシピサービスサイトのクックパッドで働いていたこともあり、「食には人を巻き込む力がある」と考えていた。
「自分で会社をつくってからも、何かしら食との関わりを持ちたいと思って。知り合いの主婦の方にお願いして、専任の調理スタッフとして、まかないをつくってもらっていたんです」
その後、社員食堂だった場所を一般開放するようになり、営業がはじまった。「まかないできたよ」がお店の名前の由来。
ここで提供するのは、旬の有機野菜がメインの定食。野菜は、会社でまとめて仕入れている。

実は織田さん、3年前に徳島県神山町に移住し、リモートワークで働いている。道の駅などで自ら見つけた野菜を、お店に送ることもあるそう。
産地に寄り添った仕入れ方を大切にしているのが印象的。

「普通の飲食店は、コストや効率重視でメニューが決まっていますけど、ここは違うので。そういう考えに凝り固まってほしくないなと思います」
自由で柔軟な発想で、お店や料理を捉えられることが大切。
飲食業界で働くなかで、決められたやり方に疑問を感じている人や、もっと自分の色で料理をつくりたいと思っている人に合っているのかもしれない。
まかでき食堂は、6月に店舗のリニューアルを行った。そのなかで、共同代表となったのが山岸さん。

織田さんとは、大学の同級生。山岸さんも、同じくクックパッドで働いていたことがあり、役員を務めた経験もある。
どうしてそこまでつながりがあるのか尋ねてみると、クックパッド創業者の佐野さんも同じ大学の同級生なんだとか。
「クックパッドができたきっかけに、農家さんの影響があったようです。農家の食卓って、すごく豊かなんですよ。同じ野菜がたくさん取れても、代々伝わるレシピがあったり、漬けたり干したりして食べる時期をずらしたり。工夫して、飽きずに美味しく食べることができるんです」
「旬のものを無駄なく食べるレシピって、貴重な人類の知恵なのに埋もれてしまっている。日本中にあるそんなレシピを、伝えていくべきだっていうところから生まれた会社なんです」
その考え方は、まかでき食堂のあり方にも大きく影響している。
「普通の飲食店は、メニューに合わせて食材を仕入れますよね。でも何がどのくらいオーダーされるかわからないから、いつも多めに用意して、最終的には廃棄が出てしまう」
「まかでき食堂は、手に入る食材に合わせてメニューを決めるし、定食1種類だけだから廃棄もほぼ出ないんです」

「世の中には、『自分の料理をいろんな人に食べてほしい』って思う人がいっぱいいるはずなんです。でもやっぱり、自分のお店を持つのはすごくハードルが高くて、実現するのは難しい」
最初に社内のまかない担当として働いていた主婦の方は、プロとしての経験はなくても、毎日すごく美味しそうなお弁当をつくる人だったそう。
「そういう人が週に2日、自分のお店に立つような気持ちで料理を提供できる場所にしたいんです」

「おいしいものに出会ったら、『この味付けはなんだろう。自分もやってみたいな』って考えるような人がいいかな。もっとおいしいものを出したいとか、今までと違うものをつくりたいとか、そういう探究心や好奇心は常に持ってほしいです」
「それを続けていけるのは、本当に料理が好きな人。この仕事は、頭の中が料理でいっぱいな人に向いているんだと思います」
今後は、料理人が腕を上げて売上に結びつけば、直接それぞれのお給料に反映されるような仕組みをつくりたいと考えている。
「お店の利益の何割かを、料理人の方が受け取れるようにしたいなと。評判になってお客さんが増えていったら、その分だけプラスになる。そうしたら、もっと頑張ろうって思えるでしょう」
織田さんと山岸さんは、この外苑前以外にも店舗をつくりたいと考えているそう。
「日本中の料理上手な人が、無理のない働き方で料理を提供できるお店を、いろんなところにつくりたいんです。料理人の顔がちゃんとわかって、繁盛すればそのぶん自分の収入につながるような」
「チェーン店とは違う、料理人の個性を活かした新しい仕組みのお店を、広めていくことができればいいなと思います」
前回の応募者のなかには、「料理人はできなくても何かしら関わりたい」という気持ちから、ホールスタッフになった方もいたそう。場所などの都合で難しい人も、少しでも興味があったらまずは手をあげてみてほしい。
続いてお話を聞くのは、日本仕事百貨の記事をきっかけに、料理人として働くことになったikuraさん。フリーランスの料理家として働いている。

だんだんと、趣味で料理教室に通うだけでは、物足りなくなってきてしまった。時間があれば、レシピのことを考えているほど。
「これなら、料理の道に進んでもきっと後悔はしないなと思いました」
退職して、調理の専門学校へ。卒業後は、料理教室の講師や助産院の食事担当として働いてきた。
「フリーランスの仕事以外にも、何かできないかなと考えていて。子どもも小さいし、週に数日だけの仕事を探していました。それに、料理人がつくりたいものを尊重してくれるお店だったら、理想的だなとも思っていて」
偶然見つけたまかでき食堂の仕事は、希望にぴったり合っていた。
働きはじめて半年ほど。朝の9時半に来て仕込みをして、12時から16時まで営業というペースで、週に2〜3日働いている。
どんなものをつくるか事前に考えてはいるものの、最終的には、当日冷蔵庫の中にある材料を見てメニューを組み立てていく。

「“旬の野菜の定食”って、響きはすごくいいと思います。でもそれって、実は1ヶ月くらい同じものなんですよ。夏はキュウリやトマト、秋は葉物やお芋が毎回届く。工夫を続けないと、自分もお客さんもマンネリに感じてしまいます」
それでも料理人次第で、やりようはいくらでもある。反応がすべて自分に返ってくるのは、大変ではあるけれど、やりがいも感じられる。
「友人や知人が食べに来てくれたり、常連さんが新しいお客さんを連れて来てくれたりするとうれしくて。料理は人をつなぐんだなって実感します」

一皿一皿、その場でつくる料理だからこその温かさが伝わるんだろうなと思う。
「まだまだお店のシステムは確立されていないから、個人の判断が必要になることもあります。大変なことはあるけれど、料理を楽しむ気持ち、いろいろなものをつくってみたいと思う気持ちを大切にしてほしいなと思います」

リニューアル後にはカフェ営業もはじまり、お店でできることの幅は広がっている。
「たとえば、焼き菓子やデザートが得意な方が入ってくれたら、もっとカフェを充実させることもできるし。夜の営業とかワークショップとか、もっといろいろなこともできるのかなと思います」
リニューアル後のまかでき食堂は、よりパワーアップしているように感じました。これから入る人も、お店の可能性を、さまざまな関わり方で広げていくことができるように思います。
料理が好きで、少しでもやってみたい気持ちがあるなら、ぜひチャレンジしてみてほしいです。
あなたの料理を待っている人が、たくさんいると思います。
(2018/4/12 取材、2018/11/22 更新 増田早紀)