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深く、熱く
ガラスはこれから

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「ガラスって、基本的なつくり方は何百年も変わっていないのに、いまだに新しい表現がどんどん出てくる。知れば知るほど面白くて、もっともっと『何かある』と思わせてくれる素材なんです」

まだやれること、可能性、未知の部分がたくさんある。

今回紹介するのは、そんな“わからない”“簡単にはできない”からこそ、ワクワクしつづけられる仕事。

一つひとつを職人の手で生み出すガラスメーカー、菅原工芸硝子株式会社を紹介します。

現在、全国に店舗が8店。器を実際に使って、軽食やスイーツを楽しめるカフェを2店展開しています。

今回は千葉、東京、福岡の計4店舗で、販売を担当する人を募集します。


工場直営のファクトリーショップや、ワークショップなどを通じて深くガラスの魅力を伝える直営店、多くの人の出会いの場となる百貨店など、お店によっていろんなかかわり方がありますが、大切にしていることは同じ。ものの魅力を素直に感じて伝えることだと思います。



千葉県の東金駅から、九十九里浜方面に向かって路線バスで20分ほど行くと、菅原工芸硝子の本社に到着。

広い敷地内には、工場と事務所のほか、ショップにカフェなどが並んでいる。

スガハラのものづくりについて教えてくれたのは、社長の菅原さん。

「スガハラの世界観といっても『こういうデザインがスガハラらしい』というルールのことではないんです。ポップも、シックも、モダンも、いろんなデザインがあっていい」

「大切なことは、ガラスの魅力をアートとして表現するのではなくて、日常を彩るものとして届けることだと思います」

日常を彩るもの。

「たとえば、こんなガラスのコーヒーカップ。横から見えるミルクの層を眺めながら飲むと、同じコーヒーでも少し新鮮な気持ちで美味しく感じる。商品を通して、そんな気づきを伝えられたらいいですよね」

「本当は水でもお酒でも、何を飲むのにもコップひとつあれば十分なんです。だけど、用途や気分によって使い分けたり、グラスの楽しみ方はもっと幅広いんです。お店では、実際に使いたいと思ってもらえるようなきっかけをつくっていきたいですね」

それぞれの店舗では、商品を販売するだけでなく、スガハラの器を使って楽しむビールやワインのセミナー、テーブルコーディネートなどのイベントを開催している。

料理や食への関心は、きっと販売や営業のヒントになる。

「以前から直営店ではグラスと合わせてビールやワインを販売していたんですが、最近は特に同じものづくりの志を持った日本ワインの特集をしたりしているんです。この冬からはこだわりを持ってつくられた日本酒にも広げていこうと思っていて」

グラスがあるから、もっと味わい深くなる時間の楽しみ方。

スタッフには、ただ物を売るだけでなく職人の手によって生まれたガラスの魅力を“伝えて”ほしいと菅原さんは考えている。

「販売や営業のテクニックより、純粋にスガハラの商品を好きだということのほうが大切なんです。若くて経験が少ない人でも、『こんな使い方をしてみたい』という気持ちがあれば、お客さまにちゃんと魅力を伝えることができると思います」

品質には自信がある。だからこそ、それを強調するよりも実感を素直に伝えたい。

「世の中にはものが溢れていて、ものの価値は一概には測れなくなっています。手吹きのガラスで、プロが見ても5000円くらいの価値のあるものでも、量販店では500円くらいで手に入ってしまう」

デザインや品質だけでは、マスプロダクトに対して手工芸の優位性を語ることは難しい。

「だから、何をつくるかと同じくらい、どう伝えるかが大切なんです。ただ高級なものではなく、愛着を持てるものと暮らす楽しさを届けたい」

誰が、どんな思いで、どういうふうにつくったものなのか。

つくり手のことを伝えることも、ものへの愛着を感じるきっかけになる。

それを店舗からお客さんへ届けるために、スガハラでは日頃から販売担当と工場の職人とのコミュニケーションを大切にしている。

「店舗で働くスタッフにも、一度は千葉の工場でゆっくり、ものづくりを知る時間をとりたいと思っているんです」

本社とは離れた地域で働くスタッフも、必ずこの千葉の工場に足を運ぶ機会を設けている。頻繁に来られないところは、菅原さんが工場の様子を動画に撮って送っている。

実際に、事務所のすぐそばの工場も見学させてもらった。

肌寒い秋の小雨の日でも、工場の中はガラスを溶かす“るつぼ”の炎で少し暑いほど。

職人さんたちが細い竿の先に真っ赤に溶けたガラスをつけて、作業場所まで運んでいく。

その先には、型に向かって“吹き”の作業をしている人、くるくると竿を回しながら形を整えている人。手際よく進められる作業はずっと見ていても飽きない。

職人さんたちは、実際に手を動かして商品をつくるだけでなく、デザインの提案も含めてものづくりに関わっている。

「ガラスって、硬くて冷たくて儚いイメージが強いけれど、つくるときは熱くて柔らかい素材なんです。そのときの表情を知っているのは職人だけで、固まる前のわずかな瞬間、『ここだ』という美しいフォルムは職人ならではのデザインです」

今、吹きガラスの職人として働いているのは31名。そのうち3分の1は女性なのだそう。新卒からこの道50年のベテランまで、キャリアも幅広い。

「職人にはみんなそれぞれこだわりがあって、ワイングラスの脚の絶妙な付き方を一生懸命研究していたり、若い子たちはすごく新鮮な発想でデザインをしたり。ベテランも、若い子たちに刺激を受けながら一緒に試行錯誤しています」

菅原さんは6年前に家業を継いだときから、もっとみんなでアイデアを出し合える会社にと、心がけてきた。

「お客さまに喜んでもらうためだけじゃなくて、職人も販売スタッフもこの商品に関わるすべての人が、自分なりの楽しさを見つけられるようにしていきたいんです。それが結果として、いいものをつくることにもつながると思うから」



工場で紹介してもらったのが、入社3年目だという職人の荻江さん。

美大でガラスづくりを学び、新卒から職人として働いている。

「小さいころから手を動かすことが好きだったので、漠然と美術関係の仕事に就きたいなと思っていたんです。ガラスは大学で出会って、最初は専攻を決めるのに『吹きガラスやってみたい』くらいの動機でした(笑)」

大学で学んでいくうちに、加工の難しいガラスの奥深さに惹かれるようになった。

「ガラスって加工するときに自分の手で直接触れないんですよ。道具を介して作業をするもどかしさがすごく面白くて、上達させたいっていう一心でひたすらやっていました」

もともと、芸術的な表現を目指すよりも、素材の魅力を引き出すように技術を突き詰めることが好きだったという荻江さん。

「工場の仕事は私にぴったりなんです」と笑う。

荻江さんが、入社2年目のときにつくったのが“ルミ”という名前のグラス。

二層になったグラス底の間に、鮮やかな色が差し込まれている。

「底に色の粒をつけて、少しねじって模様をつけているので、上から見ると色が渦巻きになっているんです。茶葉がふわっと開いたり、香りや味がほんのり広がるようなイメージを表現できたらいいなと思って」

試作段階から先輩の職人に相談をして手伝ってもらいながら、はじめての商品を形にしていった。

「試作ができたら、社長や営業や販売の方と一緒に“研究会”でプレゼンをするんです。店舗で働いている方は『もっといろんなサイズがあったらいいと思う』とか、職人とは違う視点でアドバイスをしてくれました」

普段お客さんと接しているからこそ、使う人目線の気づきもあるんですね。

「そうかもしれません。販売の皆さんは工場に来ると、明るく話しかけてくれたり、積極的に『この商品はどうやって生まれたの』とか質問してくれたり。スガハラの商品が好きなのは職人と一緒なんだなって感じますね」



ショップスタッフの視点やアイデアが、そのまま商品化されることもある。

工場に隣接するファクトリーショップで働く戸田さんが見せてくれたのは、自分でデザインしたというグラス。

「丸い氷でお酒を飲むと、グラスにはまって取れなくなることがあるっていう話を聞いたことがあって。だったら、グラスの底を丸くしたら、中でちゃんと氷が動くんじゃないかなと思って、提案してみたら実際に商品化されました」

「社内に専用の“デザインシート”っていうフォーマットがあるので、提案はしやすいです。私は今までデザイン関係の仕事をしたこともなかったし、実は働きはじめるまで、ここのお店に来たこともなかったんです(笑)」

もともと近所に住んでいた戸田さん。ショップの隣のカフェで働いてみたいと思ったことが応募のきっかけだった。

ただ、カフェのほうは先に決まっていたので、ショップに入ることに。

「ここで働くようになって、ガラスの用途の広さを知りました。冷たいものだけじゃなくて、温かいスープやパスタにも使うことができる。ひとつの器でも、デザートを盛りつけたり、和食の小鉢として使ったり。日常的にいろんな使い方ができるものなんだって思うようになりました」

スガハラで生産している商品は、小さなショットグラスからカップ、お皿、花器や照明まで幅広い。

点数にして全部で4000点ほど。毎年、新しい商品が生み出されている。

「商品を一度に覚えることはできないので、まずはお客さまに人気のあるものから少しずつ。わたしは、職人さんの顔を先に覚えて、あの方がデザインした商品っていうふうに覚えていきました」

戸田さんはときどき、ショップのお客さんに職人さんの話をすることもあるのだそう。

「つくる過程を話すと、商品に興味を持ってもらえることもあります。小さなことでも、お客さんがガラスを楽しんでくれるきっかけになるのはうれしいですね」

実際に手を動かす職人の姿を通して、実感できるものの良さもある。

もとはドロドロに溶けたガラスの液だったものが、人の手わざによって、今ここに器として存在している。

頭では理解できていても、作業を見るたびに感動すると、戸田さんは言う。

「手作業なので、時間がかかる商品もあるんですけど、曲線の美しさは手づくりでなければ出せない。そこがスガハラのガラスのよさだと思います」

「私、実は一度工場で吹きガラスをやらせてもらったことがあるんです。職人さんは簡単そうにやっているけど、あれは本当に難しいんですよ(笑)」

絶妙な呼吸で竿を操り、一瞬を切り取るようにフォルムを決めていく職人さん。

ひんやりとしたガラスの手触りの中に、秘められた熱を感じるような気がしました。

(2018/9/21 取材、2018/12/19 更新、2019/12/2 更新 高橋佑香子)

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